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ペニスーツマン VS 仮面ライダーウィザード

 紅い宝石を彷彿させるフロントが特徴的なオフロードバイク『マシンウィンガー』が広大なる平原を駆け抜ける。

 仮面ライダーウィザード、操真晴人はコヨミの形見ともいえる『ホープリング』を眠らせる場所を求めて、世界中を旅していた。

 今日もまた求める場所を探し出すことができぬままに、紅い夕日が傾き始めていた。
「焦ることはないさ……時間は、たっぷりとあるんだからな……」

 オレンジ色に染まる平原を眺めながら、晴人は誰ともなしにそう呟いた。

 どれだけの時間を費やそうとも、コヨミの意思を継がなければならない。

 誰の手も届かないような場所へ『ホープリング』を眠らせるという願いを叶えることが、晴人が『魔法使い』として行える最後の使命であった。
「アレは……何だ?」

 晴人は怪訝な表情で空を仰いだ。

 空には捩れたオーロラのような光から、何の前触れもなくスーツ姿の成人男性が出現していた。

 マシンウィンガーを止め、晴人は宙より舞い降りた男と対面する。

 その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
 その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
 また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
 はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。
『白い魔法使い』笛木奏や『金色の魔法使い』オーマを彷彿させる圧倒的な魔力量を感じ取り、晴人の『魔法使い』としての経験則が警鐘を鳴らしていた。
「もしかしたらアンタも『魔法使い』なのか? スーツ姿で魔法を使うなんて洒落てるねぇ」

 警戒心をおくびにも出さず軽口を叩く晴人に、スーツ姿の男は一切の反応を示さなかった。

 やがて、虚空を見つめていた男が口を開いた。
「久しぶりに他人の男性器を触りたくなってきた」
「な、何言ってんだよ、アンタ! 変態かっ!?」

 貞操の危機を感じ取り、晴人は股間を押さえながら一気に距離を開いた。
「坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します。またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……」
「操真晴人。指輪の魔法使い『ウィザード』だ。アンタ、唯の変態って訳じゃなさそうだな」

 晴人は油断なく数種の『ウィザードリング』を取り出し、突然名乗りだした男に応じた。
「『魔法使い』如きでは辿り着けぬ哲学の深淵、とくとお見せしましょう」

 坂上は徐にスラックスのジッパーを下げ、己の逸物をぼろんと出した。

 晴人は目を見開く程に驚愕した。

 その逸物には、桃色に輝く『賢者の石』が埋め込まれていたのである。
『ドライバーオーン!プリーズ!』

 晴人はバックル前方へリングを翳し、腰部にウィザードドライバーを出現させた。
『シャバドゥビタッチヘンシ~ン!シャバドゥビタッチヘンシ~ン!』

 魔法の呪文を符号化させた軽快なる電子音声の歌がウィザードドライバーより鳴り響く。やがて、晴人は『フレイムリング』を左手に嵌め、ドライバーのハンドオーサーへと翳した。
「変身」
『フレイム!プリーズ!』
『ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!!』

 左手のウィザードリングに吸い付くように、魔法陣が晴人の身体を包み込んでいく。 やがて、漆黒の魔法衣ウィザードローブを翻し、仮面ライダーウィザード・フレイムスタイルが降誕した。
「さぁ……ショータイムだ!」

 左手のウィザードリングを見せつけるようなポーズで、ウィザードはキザな台詞を決めた。
「チンポチンポセイヤセイヤ!チンポチンポセイヤセイヤ!」

 坂上の逸物から野太い漢の掛け声のような呪文?が轟いた。

 ウィザードドライバーが奏でる呪文も珍妙であるが、坂上の逸物が唱える呪文もまた別のベクトルに逸脱していた。

 呆気に取られるウィザードを置き去りにしながら、坂上は男性器が刻まれたリングを己が逸物の『賢者の石』へ翳した。
「変身」

 真白い魔法陣に全身を包まれ、坂上は異形へと変貌していく。

 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」

 威風堂々とした宣言と共に、哲学する男性器『ペニスーツマン』が光臨した。

 紅い宝石を模した仮面ベゼルフレイムの内側で、晴人は混乱の極地に苛まれていた。
(この男は一体何が目的なんだ? そもそも、コレは『ファントム』なのか? それとも『魔法使い』なのか?)

 眼前の敵の正体が看破できず戸惑っているウィザードへと、ペニスーツマンが凜然とした視線?を向け声をあげる。
「女に生まれ直したとして本当にオタサーの姫になったりキモオタと性行為したいですか?」
「知るか。アンタが一体何が言いたいのかさっぱりだよ。でもな……」

 真剣そのものな口調で問い詰めるペニスーツマンへ、ウィザードはあくまで軽薄な口調で応じる。
『コネクト!プリーズ!』

 魔法陣へと腕を突っ込み、ウィザードは銃と剣が一体となった武具『ウィザーソードガン』を取り出した。
「アンタが絶望を振り撒く存在だということはわかる! 行くぞ!」

 ウィザーソードガンのブライトンマズルが火を噴き、魔力で構成された銀の弾丸がペニスーツマンを襲撃した。

 クネクネと身を捩らせながら、ペニスーツマンは銃弾の雨を受ける。
「『おしっこレーザーカッター』っ!」

 ペニスーツマンはお返しとばかりに小便を飛ばす。
『ディフェンド!プリーズ!』

 燃え盛る劫火の障壁がウォーターカッターの如き勢いで放射された小便を防いだ

 ウィザードはウィザーソードガンをソードモードに変形させ、優雅な動きでペニスーツマンへと接近した。
「フゥッ!タァッ!」

 ウィザードは舞うように回転し、蹴りを織り交ぜた剣戟をペニスーツマンへ打ち込む。ウィザーソードガンのアストラルレザーがスーツを切り刻み、魔力によって硬化されしヘルメタリーブーツの蹴撃がペニスーツマンの体を軽々と吹き飛ばした。
「今年の正月も僕以外の家族が体調不良で全滅している……」

 曖昧な言葉を呟きながら、ペニスーツマンは悠々と立ち上がった。
「タフな奴だな……なら、コレならどうだ?」
『キャモナスラッシュシェイクハンズ!』
『フレイム!スラッシュストライク!』
『ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!!』

 ウィザーソードガンのハンドオーサーを展開し、さながら握手をするように左手のフレイムリングを認証させた。

 電子音声による詠唱が鳴り響き、やがてウィザーソードガンの刀身に劫火が灯る。
「タァッ!」
「うぬぅ……『包茎モード』ッ!」

 十字に引き裂くように放たれた『スラッシュストライク』をペニスーツマンは頭部の皮を引っ張りあげ防壁とすることで凌ごうとする。
「ひぎぃぃぃ~」

 無論、申し訳程度しか効果はなく、ペニスーツマンの皮に十文字の裂傷が刻まれた。
「なるほど……物理攻撃には滅法強くても、『魔法』は有効ってことだな」

 ペニスーツマンの弱点を看破したウィザードが更なる『ウィザードリング』を取り出した。
「く、喰らいなさい……『ハイメガザーメン……」
『バインド!プリーズ!』

 精液を放たんと膨れ上がったペニスーツマンの頭部を、鉄の鎖が締め上げた。

 拘束魔法に動きを封じられ、射精することが叶わなくなったペニスーツマンがジタバタともがく。
『フレイム・ドラゴン』
『ボゥー!ボゥー!ボゥーボゥーボォー!!』
「さぁ、畳み掛けるぞ」
『ドラゴタイム、セットアップ! 』

 フレイムドラゴンへエレメント変化を果たしたウィザードが『ドラゴタイマー』を腕に装備し起動させる。
『ウォータードラゴン !』
『ハリケーンドラゴン !』
『ランドドラゴン !』

 拘束されたペニスーツマンを取り囲むように、三体のウィザードの分身体が出現した。
「……ハチャメチャが押し寄せてきた」

 心なしか震え声で呟くペニスーツマンに構わず、ウィザードが複数の『魔法』を発動させた。
『『『ルパッチマジック タッチ ゴー!』』』
『チョーイイネ!ブリザード!サイコー!』
『チョーイイネ!サンダー!サイコー!』
『チョーイイネ!グラビティ!サイコー!』

 ペニスーツマンの身体を冷気が凍結させ、雷撃が焦がし、重力波が圧力をかける。

 満身創痍のペニスーツマンへと、ウィザードが止めとばかりに『魔法』を放った。
「さぁ、フィナーレだ!」
『チョーイイネ!スペシャル!サイコー!』

 胸部に現出した『ドラゴスカル』の顎より、竜の息吹が放たれた。

 広大なる平原の一角に、紅き劫火が吹き上がる。

 炸裂した『ドラゴンブレス』がペニスーツマンを身体を灰燼すら残さず焼き尽くした。
    ……かのように見えた。
「……何だとっ!?」

 ウィザードが驚愕の声を漏らす。

 竜の息吹の劫火より、ペニスーツマンがゆらりと立ち上がったのである。
「……『カウパーバリア』」

 ペニスーツマンの体には無色透明の液体がぬらぬらとテカっていた。
「まさか……『魔法』を防いだのかっ!?」

 生命の危機に瀕したペニスーツマンは『魔法』に対する耐性を身に付けていた。

 尿道を絞られ射精を封じられたペニスーツマンは、『魔法』を防ぐカウパー液を排出することでその身を守ったのである。
「ものの歩の十歩くん、島風くんコスしてキモオタにハメられてそう」

 不可思議な言葉を発しながら、ペニスーツマンが歩み寄る。

 圧倒的なる悍ましさを感じ取り、ウィザードが一歩後ずさった。環境へ適応し身体を造り変え、『魔法』にすら対応するペニスーツマンの生命力に、これまで対峙してきた如何なる敵よりも脅威を感じたのである。
「あふれ出す感情がこの身体突き破るんだよなあ!」

 ペニスーツマンは雄々しく宣言すると、懐より『ペペローション』を取り出した。オレンジ色の容器を握り潰し、ローションを全身に塗りたくる。
「『アクセルローション』ッ!」

 一声と共に、ペニスーツマンの姿が消失した。

 平原に一陣の風が吹き抜ける。

 同時にウィザードの分身体が宙を舞い霧散した。

 目にも映らぬスピードまで加速したペニスーツマンがウィザード分身体を攻撃したのである。
「……出し惜しみしている状況じゃないみたいだな」

 宿敵グレムリンを彷彿させる圧倒的なスピードを見て、ウィザードは切り札を使うことを決意した。
『インフィニティー!プリィィィィズ!』
『ヒー! スイ! フー! ドー! ボー! ザバ! ビュー! ドゴーン!』

 ダイヤモンドの如き結晶『アダマントストーン』が煌めく白銀の戦士

 操真晴人が自ら生み出した最強の『魔法』

 仮面ライダーウィザード・インフィニティスタイルが光臨した。
「行くぞっ!」

 ウィザードは『アックスカリバー』を振りかざし、高速で迫るペニスーツマンと対峙する。
『インフィニティ!』

 時間流に干渉する魔法によって加速したウィザードが、カリバーモードのアックスカリバーをペニスーツマンへ斬りつける。
『アクセルローション』のスピードに悠々と追いついたウィザードの剣戟にペニスーツマンはなす術もなく切り刻まれた。
「死ぬんだよなあ……」

 何やら諦めモードのペニスーツマンに構わず、ウィザードが決着を付けるべく最強の『魔法』を撃ち放つ。
『ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイタッチ! 』
『プラズマ!シャイニングストライク!』

 アックスカリバーのハンドオーサーへ『インフィニティリング』を五度翳すと、電子音声による呪文が軽快に響き渡った。

 やがてウィザードの振りかぶったアックスカリバーが見上げる程に巨大化し、大地を砕かんばかりの必殺の一撃『プラズマドラゴンシャイニング』がペニスーツマンへ打ち込まれた。
「頑張っていきたい……にゃんにゃかにゅんっ!『ハイメガザーメン砲』っ!」

 ペニスーツマンは咄嗟に怒りのハイパーモードへ変化し、十八番である『ハイメガザーメン砲』を射精した。

 しかし……

『キラ・キラ! キラ・キラ!』

『プラズマドラゴンシャイニング』は精液の奔流を切り裂きながら、ペニスーツマンの目?と鼻?の先まで迫っていた。

 インフィニティスタイルのスピードに翻弄され体制を崩していたために、『ハイメガザーメン砲』を射精するタイミングが遅れたのである。

 いくら早漏で知られるペニスーツマンであれど、『アクセルローション』を凌駕する程のスピードで襲撃されては後手に回ざるを得なかった。
「の……野間口律……」

 万策尽きたペニスーツマンが諦めの言葉を呟いた瞬間に、奇跡が起きた。
『プラズマドラゴンシャイニング』と鬩ぎ合っていた『ハイメガザーメン砲』の精液のほんの一滴が、ウィザードの腰部へと飛散したのである。

 一見その現象は、不快ではあるが戦闘においては何の影響もないように見えた。
  しかし、飛び散った精液はよりにもよってコヨミの形見である『ホープリング』へと付着してしまったのであった。
「なっ!?」
『ホープリング』を汚すことは、コヨミが汚されることに等しい。

 晴人は目に見えて動揺しながら付着した精液を拭った。

 ほんの数瞬の隙であったが、ペニスーツマンは見逃さなかった。
  ウィザードの意識がなくなった瞬間を見極め、ペニスーツマンがその身を大きく捻る。
「『ハイメガザーメン砲・スパイラルエフェクト』っ!」

 ペニスーツマンの全身を捻るような駆動に合わさり、精液の奔流が螺旋状に回転した。『ライフリング』の原理を用い、『ハイメガザーメン砲』の貫通力を増大させたのである。

 螺旋力を加えた『ハイメガザーメン砲』が『プラズマドラゴンシャイニング』を貫き、ウィザードの身を呑み込んだ。

 ダイヤモンドを凌駕する硬度を誇る『アダマントストーン』の装甲を傷付けることは叶わなかったが、反吐が出る程生々しい精液の臭いに耐え切らず、晴人は意識を葬られた。

☆☆☆

「……何だったんだ、一体?」

 数時間気絶した後に目を覚ました晴人は、第一に『ホープリング』の安否を確認した。『賢者の石』より生成されたリングは希少価値が高く、ペニスーツマンの襲撃はコレを狙ってのものであると推測したのだ。

 しかしながら、『ホープリング』どころか晴人の所持する全ての『ウィザードリング』にも手をつけられていなかった。

 ならば金銭目的かと荷物を確認するも、何処にも漁られた形跡がなかった。

 最期まで目的がわからず混乱するばかりだと、晴人は項垂れた。
「あんな奴が存在するなんてな……コヨミを安全に眠らせる場所を……誰の手も届かないような場所を、必ずに見つけ出してやる!」

 決意を新たに、仮面ライダーウィザード 操真晴人はマシンウィンガーへ跨り平原を疾走していく。

☆☆☆

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?