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ペニス―ツマン VS 雪音クリス

「Killiter Ichaival tron

 夜空に少女の聖詠が響き渡る。
 閃光を纏い出現した少女は、あろうことか「ミサイル」の上に両足を踏みしめ、夜空を滑空していた。

「あんのバカ共……早まりやがって……だからアタシの到着を待てっつったんだよ……」

 月の光が照らす霊峰、富士山を見下ろしながら、『イチイバル』のシンフォギア装者、雪音クリスが呟いた。
 超常災害対策機動部タスクフォース。
 通称S.O.N.G(Squad of Nexus Guardians)に所属するシンフォギア装者はノイズ殲滅という任務の他に大規模な災害が生じた際の救助活動も担っていた。
 此度富士山で起きた土砂崩れに対し、暁切歌、月読調の二名の装者が先行し救助に向かった。
 その最中、突如二人からの連絡が途絶えたのである。
 風鳴翼、マリア・カデンツァヴナ・イヴ の二名は米国にて歌姫としての仕事があり
 立花響は別の災害現場に急行している。
 そのため残された雪音クリスが急遽富士山へ向かう運びとなったのである。
「ったく……世話の焼ける後輩共だ……」
 毒づきながらも、クリスは不安に押し潰されそうな程に二人の安否を案じていた。
 制御薬「LiNKER」を服用している二人は、翼やクリスのような完全なる適合者ではない。最悪の場合、副作用によるショック症状から昏倒した可能性も考慮し、クリスは全速力で現場へと駆け抜けていた。
「頼むから無事でいてくれよ……」
 弱々しい囁きを漏らしながら、クリスを載せたミサイルは土砂に埋もれた樹海へと飛翔していく。

☆☆☆

「もうすぐ、二人のアウフヴァッヘン波形が消失した地点へ到着します。雪音さん、降下の準備を!」
 オペレーター、藤尭朔也の指示を受けクリスがミサイルから飛び降りる。
 密度の濃い樹木の合間をすり抜けるように、クリスが富士の樹海へと舞い降りた。
「オイっ! どうしたんだよ、お前ら! 一体、ナニがあったってんだよっ!」
 間も無く、クリスは二人の後輩を見つけ出した。
 切歌と調は、樹木の根元で寄り添うように倒れていた。
 しかし、その姿は……
「畜生ッ! 畜生ッ! 何処のどいつだッ! アタシの後輩にこんな真似をしでかした奴はァッッッ!!!」
「どうした!? 雪音君、現状を報告するんだ!」
 風鳴弦十郎の声すら届かない程に、雪音クリスは激昂した。
 暁切歌と月読調の身体は白濁に染まっていた。
 雪音クリスは初心な少女であるが、幼少期は凄惨な環境を過ごしていた。
 南米バルベルベ共和国の内戦に巻き込まれ両親を失った後に、彼女は奴隷同然に扱われた生活を送っていたのである。
 その陰惨たる記憶があるからこそ、クリスは理解してしまった。
 むせ返るような精液の匂いに塗れた二人が如何なる扱いを受けたのか。
「お百度レイプ」
 突如、不穏な言葉を発しながらスーツ姿の男が木陰より現れた。
 数巡呆気に取られた後に、クリスは男を睨みつける。
「何だ? まさか、テメーがアタシの後輩共を……?」
「限界までちんぽをいじめることができるのも長期休暇ならでは」
 男の言葉にクリスはイグナイトモジュールに飲まれた際にも経験したことのないような、ドス黒い感情に支配された。
「よ……よくも、アタシの後輩を……どう落とし前つけてくれるんだ、テメェーーーッッッ!!!」
「坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します。またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……」
 激情のままに吠えるクリスに対し、スーツ姿の男が冷静に自己紹介をする。
「名乗らなくていい……これから消し炭になるテメーを知る必要はねぇからなぁ!」
 クリスの咆哮を何処吹く風と受け流しながら、坂上がスラックスのジッパーを徐に下げ、己の逸物をぼろんと出した。
「なっ……!? テメーは何者なんだ……!?」
 クリスは目を見開く程に驚愕する。
 坂上の逸物は液晶ディスプレイのような光に包まれていた。
 その光彩は、人類の天敵たる『ノイズ』を彷彿させた。
「変身」
 一声と共に、坂上は異形へと変貌していく
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」
 威風堂々と、『哲学する男性器』ペニスーツマンが名乗りを上げた。

☆☆☆

「ペニスーツマン……だとぉ!?」
 S.O.N.Gの司令官、風鳴弦十郎が驚愕の声を上げた。
「ノイズの発生パターンを検知! 同時に未知のアウフヴァッヘン波形も確認されました!」
 オペレーター藤尭が突如発生した敵の分析結果を読み上げるも、その声音には困惑の色が含まれていた。
「アウフヴァッヘン波形が観測されたということはあの男は聖遺物を纏って……いや、『ペニス』という姿形そのものが聖遺物を表しているのかもしれません…… 考えられるのはギリシャ神話におけるアダマントの鎌で切断された天空神ウラノスの性器やヒンドゥーにおける破壊神シヴァの性器を象ったリンガなどでしょう か……?」
 エージェント緒川慎次が戸惑いながらも自らの見解を述べる。
「ボクの記憶の中にも、あのような生物に関する情報はありません……少なくとも錬金術に関連するモノではないかと……」
 自らの記憶を必死に辿りながら、エルフナインが弱々しく呟いた。
 混乱に苛まれるS.O.N.Gのオペレーター室内で、弦十郎はモニターに映る雪音クリスの姿を心配気に見上げていた。
「クリス君、早まるなッ! 今、響君をそちらへ急行させた! 敵の正体がわからないままの交戦は避けるんだ!」
 弦十郎の叫び声が喧騒としたオペレーター室に虚しく響いた。

☆☆☆

「男は8の倍数、女は7の倍数の年齢で同性の性器への興味が増す」
「テメーは何者なのかはこの際どうでもいい。ただ一つ、ハッキリしてんのは、テメーがアタシの後輩達を手にかけたことだってことだからなァッ!」
 意味不明な言葉を発するペニスーツマンを気にかけず、クリスは集音マイク型のペンダントを握りしめた。
『Dáinsleif』
「イグナイトモジュール! 抜剣ッ!」
 雪音クリスの身体が漆黒の閃光に呑まれ、イチイバルの赤い装束に黒の意匠が刻まれていく。
 シンフォギアシステムに追加されし決戦ブースター、イグナイトモジュールの禍々しき力がクリスの身体中を駆け巡る。
 暴走時と同等まで出力を跳ね上げる切り札をクリスは惜しみなく使用した。
「自分の中から浮かんでくるものを丁寧に掬い取れる者になりてえよ……」
 何やら鬱っぽい声を漏らしているペニスーツマンへとクリスが自らのアームドギアを差し向けた。
「鉛玉の大バーゲンッ! 馬鹿に付けるナンチャラはねえッ!」
ーBILLION MAIDENー
 心の内から浮き上がる旋律を歌い上げながら、クリスが四門のガトリング砲を掃射した。
 ペニスーツマンはクネクネを身を捩らせながは、銃弾の洗礼を浴びていく。
「ドンパチ感謝祭さあ躍れぇッ、ロデオの時間さBaby!」
ーMEGA DETH PARTYー
 腰部のリアアーマーより、数多のミサイルが撃ち放たれた。
「何のぉ……『ザーメンとりもち』!」
 ペニスーツマンの頭部から粘着性のザーメンが射精され、飛来してくるミサイルを絡め取り無力化していく。
「世の中へと文句をたれたけりゃ、的―マト―から卒業しなァ!」
ぐぬぬ……『アクセルローション』ッ!」
QUEEN's INFERNDー
 クロスボウから連射されたエネルギー矢の豪雨を、ペニスーツマンがローションを全身に塗りたくり加速することで辛うじて回避する。
「神様ッ!仏様ッ!あ・た・し・様が『許せねえ』ってんだァーーーッッッ!!!」
ーGIGA ZEPPELINー
 激情を込めた歌唱に共鳴するように、クロスボウから放たれた大型の矢が無数の鏃に分散し、富士の樹海の一帯を襲撃した。
「雨食らいまくって溺死した……」
 範囲攻撃は功を成し、ペニスーツマンの背広には複数の鏃が突き刺さっていた。
「傷ごとエグって、涙を誤魔化して、生きた背中でも(Trust heart)……支える事、笑い合う事、上手ク出来ルンデス力?」
ーMEGA DETH QUARTETー
 追撃の手を緩めずに、クリスはギア全体を固定砲台へと変形させ、小型から大型までの無数のミサイルとガトリング砲の一斉掃射をペニスーツマンへ向け撃ち放つ。
「た、タンスの角で小指強打したらそのまま死にそうなくらい声出てない……」
 樹木が消し飛ぶ程の爆撃を受けながら、ペニスーツマンが弱々しい声を漏らす。
「なれねえ敬語でも、どしゃぶる弾丸でもぉ、プチ込んでやるから(Trust heart)」
「お、『おしっこレーザーカッター』!」
ーMEGA DETH FUGAー
 飛来した超大型のミサイル二基を、ウォーターカッターの如き勢いで放射した小便が切断する。
「繫いだ手だけがつーむいーだー、笑顔達を守る強さを教えろォォォーーーッッッ!!!」
ーMEGA DETH SYMPHONYー
 二基の大型ミサイルを凌いだ矢先、ペニスーツマンの眼前には六基もの大型ミサイルが迫っていた。やがてそれらはクラスター弾の様に空中で分裂し、無数の散弾となりペニスーツマンの周囲一帯を爆破した。
 地形そのものが変形する程の攻撃に、富士山は眩い爆炎に包まれた。

☆☆☆

「やり過ぎだ、雪音君ッ! 救助要請者は避難させたとはいえ、このまま爆撃を続ければ、新たな土砂崩れを発生させかねんぞ!」
 弦十郎が懸命に指示を飛ばすも、激昂したクリスは無視を決め込んでいる。
「このままでは富士山の標高も修正かけるハメになりますよ……」
 爆炎に包まれた富士山の様子を映すモニターを見ながら、藤尭が冷や汗を流す。
「ッッッ!? クリスさん! 逃げてください! その生物は進化を遂げています! 恐らく、フォニックゲインを現在進行形でその身に取り組んでいるのですっ!」
「フォニックゲインを取り組んでいる、だとぉ!?」
 エルフナインの解析に、弦十郎が驚愕の声を漏らした。

☆☆☆

「きゃぴきゃぴのぴゃきゃこっ!」
「アレだけしこたま撃ち込んどいて、どうして原形留めていやがるんだ……?」
 何処か陽気な声を上げながら、ペニスーツマンが悠々と爆炎の中より歩み出た。
「しゃらくせぇ! だったら消し灰になるまでブち込んでやるまでだッ!」
 ペニスーツマンの常軌を逸脱した頑強さに微塵も怯まず、クリスがクロスボウ型のアームドギアを構えた。
「オタクーーー!!ウワァァァァァァーーー!!アアァァァァァァーーーーー!!!!!」
 突如、ペニスーツマンが叫び声を上げた。
 同時にスラックスのジッパーを荒々しく引き千切り、液晶ディスプレイのような光に包まれた逸物を露出させる。
 ペニスーツマンのペニスは「マイク」の形に変形していた。
「下品な一発芸を見せつけて、何のつもりだテメー……?」
ヒトカラするぞッ!」
 ペニスーツマンの一声と共に、その下半身より荘厳なる旋律が響き渡った。
「この旋律は……!? 誤魔化しが聞くもんか……あの錬金術士が奏でた『世界を壊す歌』じゃねぇかッ!」
「クリスさん! 逃げてください! オリジナルと遜色なく、70億人分のフォニックゲインが観測されてますっ! 一人では敵う相手ではありませんっ! どうか、どうか、一刻も早く逃げてくださいっ! 」
 エルフナインが一心不乱にクリスへ呼びかけたのと同時に、ペニスーツマンが圧倒的なるフォニックゲインを放射した。

「アァ、チンポチンポセイヤセイヤセーイヤアァー……(嗚呼、終焉への追走曲が薫る......)

 チンポチンポー、セイヤセイヤァ、チンポトチレッ!(殺戮の福音に血反吐と散れッ!)」

ーHIGH MEGA SAMEN CANNONー
 未知の言語で『殲琴・ダウルダヴラ』を歌い上げながら、ペニスーツマンの亀頭部より、膨大なる精液の奔流が放射される。
「な、ナメんじゃねェェーーーーーッッッ!!!」
ーARTHEMIS SPIRALー
 咆哮を上げがら、クリスが反撃の一手を射つ。
 巨大な弓へと変形させたアームドギアへ大型ミサイルを番え、ペニスーツマンへ向け撃ち放った。
 ペニスーツマンが射精した精液の奔流は、イチイバルが放った決死の一矢を呑み込み、やがてクリスの身体を包み込んだ。

☆☆☆

「オチンポ〜セイヤァ〜、オチンポ〜セイセイ〜、オチンポオワラセル〜

 (愛など見えない 愛などわからぬ 愛など終わらせる)」

 一曲歌い終えたペニスーツマンが満足気に眼前の敵を見下ろす。
 そこには、精液塗れの雪音クリスが絶望に呑まれた表情で、地べたに横たわっていた。
(チクショウっ! チクショウッ! 後輩の仇も取れないままに蹂躙されて、これじゃあ先輩失格じゃねぇかッ!)
 悔し涙を浮かべながら、クリスは自らの不甲斐なさを嘆く。
「カラオケもう意味分からん……」
 歌うのに飽きたのか、ペニスーツマンが踵を返し立ち去っていく。
「ま……ちやがれ……アタシが、アタシがあの馬鹿共の落とし前をつけなけれゃならねーんだ……」
 呪詛のように言葉を漏らすクリスに、ペニスーツマンが歩みを止めた。
「まんこ」
 ボロボロになった姿にツボを突かれたのか、ペニスーツマンが好色な視線?をクリスへ差し向ける。
「テメー、な、何を考えてやがる……チクショウ、やめろォ!」
「お前がOTONAになるんだよ!」
 ペニスーツマンが欲望を剥き出しにクリスへ迫った瞬間に、紅き鋸と翠の鎌がその背広へ叩き込まれた。
「インターネットでいつも怒られている……」
 しょんぼりとした声で吹き飛ぶペニスーツマンを他所に、クリスが驚愕に目を見開いた。
「何、発情期に入ってるんデスか! この変態生物めぇ!」
「……先輩、大丈夫?」
『イガリマ』の装者、暁切歌
『シュルシャガナ』の装者、月読調
 復活した二人の後輩が、先輩の危機に馳せ参じた。
「無事……だったのか……?」
「無事じゃあないデスよっ! この通り、身体中ベトベトで気持ち悪いったらありゃしないデスッ!」
「でも、おかげでこの通り私たちは動けるようになったよ……助けに来てくれて、ありがとう」
 二人が満面の笑みで手を差し出すと、クリスが安堵した表情でその手を掴む。ペニスーツマンに対する恐怖心は一切消え失せていた。
(手を取り合い支え合う事の大切さ……アタシとしたことが忘れていた……そうだ、一人ではハナから勝てねぇ相手なんだ……アタシ一人で抱え込む意味なんて、全くねぇ!)
 精液を拭い取りながら、不敵な表情でクリスは立ち上がる。
「お前が大好きなアニメを私が見れなくしてやる理由……!」
 不可思議な言葉を発しながら、相対する三人の装者へとペニスーツマンが亀頭部をぴくぴくと膨張させ威嚇する。
「すごいフォニックゲインを感じる……でも、負けない……!」
「いい加減にするデスよ、この全身猥褻物っ! このイガリマでその淫猥な頭部を切り刻んでやるデェス!」
「いくぞ後輩共っ! シンフォギアの底力を見せつけてやんぞっ!」
 クリス、切歌、調。
 三人の装者がペニスーツマンと相対する意思を見せた瞬間、夜空から三つの影が舞い降りる。
「わたしも力を貸すよッ! クリスちゃん! シンフォギアの底力、一緒に見せつけよう!」
「後輩達の危機に、鞘走らぬ私ではないっ!及ばずながら戦線に加わろう!」
「貴女達を決して独りにはさせないっ!」
『ガングニール』の装者、立花響
『天羽々斬』の装者、風鳴翼
『アガートラーム』の装者、マリア・カデンツァヴナ・イヴ
 三人の頼もしき仲間が現れ、クリス達に檄を飛ばした。
「間に合ったようで何よりだ。急遽、音速機を手配し、間に合わせた甲斐があったものだ」
「……ハッ! 百人力の戦力だよ。これじゃあ、相手の方に同情するぜ」
 弦十郎からの通信に、クリスは顔を綻ばせる。
 集結した六人の装者と対峙したペニスーツマンが、冷や汗だか我慢汁だかわからない液体を垂れ流しながら一歩後ずさった。
「き、今日は地球を死の星にしようと思ったけど咲日和読んでやめることにした」
 捨て台詞のような言葉を残した後、ペニスーツマンは捩れたオーロラのような光に飛び込み消失した。
「旗色が悪くなったら直ぐに逃走か……大したことねーヤツだ。シンフォギアをナメるなってんだぁ!」
 クリスが勝鬨を上げると、シンフォギア装者達が各々のアームドギアを天に掲げた。
 クリス達の勝利の凱歌が、富士の樹海に鳴り響いた。

☆☆☆

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?