ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ その3

「坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します。またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……」
「晴風」の甲板に立つスーツ姿の男・坂上が、適当な調子で『異世界人』達へと名乗りをあげた。
 一見、平凡な風貌の男に見えるが、その瞳からは隠し切れない『虚無』が滲み出ていた。

RATtウィルス感染者』
『神喰い』
『ナナキ』
『ケガレ』
『敵(ヴィラン)』
『吐き気を催す邪悪』
『カバネ』
『テラフォーマー』
『魔獣』
『闇の魔法つかい』
『奇獣』

 その圧倒的な禍々しさは、『異世界人』達が対峙してきた様々な存在を彷彿させた。
 しかしながら、危険性という一点において、彼らの意思は統一されていた。
「……やばい……何人くらい、アイツを目撃した?」
「えっ? あの……」
 スバルが呆然とした表情で呟いた。
「他にこの艦を動かしている娘がいるだろっ!? アイツを目撃した可能性がある奴は何人いるかって聞いているんだ!」
 凄まじい剣幕で詰め寄られた明乃が狼狽しながら
「わたしも離れていたから何ともいえないけど……艦橋のみんなは、位置的に間違いなく目撃したと思います……」
「くそっ!」
 明乃の答えにスバルは焦燥した様子で拳を握りしめた。
「スバル君、説明をしてくれ。あのスーツの男が君の言う『奇獣』の元締めなのか? あの男を目視することで何が……」
「どぅぁしゅぃみゅぁしゅぅちゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
 番場の言葉を坂上の奇声が遮った。
 相対する「異世界人」達の緊張感が高まる中、坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
「変身」
 一声と共に、坂上の逸物が神々しい光を放った。
 やがて白濁とした閃光に包まれながら、その姿が異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」
 突如、出現した珍妙な姿の異形に一同は言葉を失っていた。
「何だ……あの姿は……一体、どんな生物をベースにしてやがる?」
「どうみても、人間の雄の生殖器だろう」
 燈の漏らした言葉に、ミッシェルがうんざりとした様子で応じた。
「ふざけた外見に惑わされるな! あの姿になっているってことは、多分、アイツの能力は発動している!」
「冷静になれっ! 奴の異能を知っているのなら、全員に共有させるんだ!」
 生駒の指摘に頭を冷やしたスバルが重々しく口を開く。
「アイツの姿を目撃した人間は……何ていうか、『自殺衝動』に苛まれるんだ……本人が『虚無の哲学』とか呼んでいた能力だ……知ってれば気を強く持つことで抵抗できる力だけど、何も知らない艦の女の子達には対応する手段がねぇ!」
 スバルの解説に、その場にいる全員が息を呑んだ。
 中でも、明乃の顔色は真っ青に染まっていた。苦難を共に乗り越えてきた仲間達が揃って自殺してしまうという最悪な未来が彼女の脳裏をよぎる。
「しかも『虚無』は人から人に伝染する! 一人でも染まったとしたら、今頃はどんどん増殖しているかもしれねぇ!」
「マナ汚染のようなものかな? 魔法というよりは呪術寄りの力だね」
「そんな……私なら治癒魔法で助けられるかもしれない……すぐに行かないと!」
 呑気なペースを崩さない精霊猫パックとは対照的に、エミリアは焦燥感に駆られた様子であった。
「膣は凶器。セックスは殺人術。どんな綺麗事やお題目を口にしてもそれが真実」
「船員を助けるにせよ、誰かがアレを足止めしなければならないだろう」
 訳のわからない言葉を呟くペニスーツマンに目を向けながら、番場は言う。
「俺が行く」
 端的に宣言した生駒へと、全員の視線が注がれる。
「俺は医学には疎いし、異能をどうこうするような力はない……奴と戦う役目は俺が担うべきだ。俺は『カバネリ』だから、多少の負傷で死ぬことはないからな」
「わたしも行くよ、生駒。足止めとか言うけど、あのおちんちんの怪物、わたし達でやっつけちゃってもいいんでしょ?」
 微笑みながら語る無名に「その台詞は不吉だからやめておけ」と出そうになった言葉をスバルは何とか呑み込んだ。
「生憎、私も殴る蹴るしか能がないのでな。あの存在自体がセクハラな物体を叩くのに参戦させてもらおう」
「俺も残る。魔法や超能力やらで、船員の女の子達を治療できる奴は行ってくれ。ここは人命を優先させよう」
 燈とミッシェル、二人の戦士が注射器型の『薬』を取り出しながらペニスーツマンと戦う意思を表明する。
「『自殺衝動』なんてモンにはお手上げだけどよぉ、『怪我』なら『クレイジーダイアモンド』で治せるはずだぜぇ」
「『ピンクトルマリン』の癒しの力なら、何とかできるかもしれないわ!」
「『ケガレ祓い』の領域なら……陰陽術で対処できる……はず」
スタンド使い』・『プリキュア』・『陰陽師』。
 様々な異能を持つ者達が各々の領分で出来ることを確認していく。
「うぬぬ……回復スキル持ちはあまてらすしかいないのだが……」
「私たちはえーと……回復アイテムを持っていってあげましょう! 何しろアニメ本編で一度も使っていなかったもので、十分に余っていますからっ!」
鬼斬』の姫君、静御前義経が何処からか大量の寿司(回復アイテム)を取り出し、わたわたと駆けていく。
「僕達も行こう、真咲さん! 何か手伝えることがあるはずだよ」
「それなら僕達を手伝ってほしい! 雄英高校で習った災害救助マニュアルを活用すれば、きっと多くの人を救えるはずだからっ!」
『ヒーロー』として導くような出久の言葉に、光宗と真咲が力強く頷いた。
「皆さん……ありがとうございますっ! 船内を案内しますので、どうか力を貸してください!」
 明乃に先導されながら、『異世界人』達は甲板を離れていく。
「お前は戦士じゃないだろ? 戦うのは俺達に任せて、お前が持つ『予知』能力とやらで、皆を導いてくれ」
 行くべきか否か判断がつかず足踏みしていたスバルへと、燈が言い放つ。
「すまねぇ! 船員の女の子達を助けたら、必ず戻ってくる! 死ぬんじゃねぇぞ!」
 そう言い残し、スバルはエミリアと共に船内へと駆けていった。
 残された生駒・無名・燈・ミッシェルの4人がペニス―ツマンと対峙する。
「うぬぼれるなよ 邪悪なまんこ 最後のちんぽが枯れるまで
 ここからちんぽも さがらない」
 不気味な台詞を呟くペニス―ツマンへと4人が各々の武器を差し向ける。
「黙れよセクハラ野郎……粗末なモンおっ勃てやがって……直ぐに捻りつぶしてやるから覚悟しろ!」
 ミッシェルが放った宣戦布告の言葉が、ペニス―ツマンとの激闘の幕開けとなった。
『M.O.手術適応者』と『カバネリ』。
 人外の力を秘めし戦士達がペニス―ツマンへと対決する。

☆☆☆

『『人為変態』』
 燈とミッシェルがそう宣言しながら、注射器型の『薬』を首筋に突き刺し、『変態』を遂げる。
 頭部より触覚が生成され、体表は強化アミロースの甲皮に覆われていく。
 M.O.手術により得た地球生物の力。
『大蓑蛾(オオミノガ)』と『蟻』の能力を二人は解放する。
「これが、遥か未来の技術か……『カバネリ』とは違う、人の手で造り出された異形……どんな力を持っているのか……」
 生駒が変異していく二人の姿を見ながら、思わず呟いた。
 ロクに言葉を交わしていない二人とどのように連携をとるべきか考察していると
「先に行くよ」
 首元の枷紐を外し、『カバネリ』の身体能力を解放した無名が躊躇なく突貫していた。
「馬鹿っ! 先走るなっ!」
 生駒の警告を無視し、無名は二丁の蒸気銃を構えながら、ペニス―ツマンの元へと駆けていく。
「愛は時を越え、お前は祖国に帰れ……『おしっこレーザーカッター』ッ!」
 ペニス―ツマンの亀頭部より、ウォーターカッターの如き勢いで小便が放射された。
「おしっこ飛ばさないでよ。えんがちょー」
 言いながら、無名は軽々と跳躍しながら『おしっこレーザーカッター』を避け、蒸気銃の引き金に指をかける。
 数々の『カバネ』との戦闘で鍛え抜かれた腕前をもって、無名がペニス―ツマンを狙い撃つ。
 バシュン!バシュン!という轟音と共に、ペニス―ツマンの胸元へ噴流弾が叩き込まれた。
 ペニス―ツマンはクネクネと身を捩るだけで、怪我を負った様子はない
「頑丈だな、もうっ!」
 蒸気銃を撃ち続けながら、無名が凄まじい速度で距離を詰める。
「これでも、喰らえ!」
 無名が蒸気銃の先端に備え付けられた刃を、ペニス―ツマンの胸元へと勢いよく突き立てる。
『カバネ』の心臓皮膜でコーティングされた紅い刃が、ペニス―ツマンの心臓を容赦なく貫いた
 ……かのように見えた。
「全身がキャプテンアースになってきた」
「なっ!?」
 刃はジャケットに阻まれ、ペニス―ツマンは傷一つ負っていなかった。
 動揺する無名に向け、ペニス―ツマンがその亀頭部を向けると
「足を止めるな、無名っ!」
 生駒が背後より足払いをかけ、ペニス―ツマンを転倒させた。
 甲板に横たわるペニス―ツマンへと、生駒は右腕の『ツラヌキ筒』を振り下ろす。
「ハァァァッッッッッ!!!!」
 生駒の咆哮と共に、ガシュン!という爆音が轟いた。
 一撃必殺の威力を誇る『ツラヌキ筒』の鉄杭が、ペニス―ツマンの身体を頑強な甲板にめり込ませる。
「……駄目だっ! 無名、一旦引くぞっ!」
「えっ? なんで?」
 呆気にとられる無名の手を引き、生駒はペニス―ツマンから距離を取る。
 やがて、ペニス―ツマンはゆったりとした動作で何事もなかったかのように立ち上がる。
「……うそ。アイツは『カバネ』よりも頑丈だっていうの……」
「……俺達は援護に回るしかない。悔しいが、俺達の武器では奴に歯が立たないようだ……」
『噴流弾』に『ツラヌキ筒』。
 数多の『カバネ』を屠ってきた武器が通用しないという事実に歯噛みしながらも、生駒は現状を冷静に分析していた。
「どうやら、そちらのスチームパンク的な武器は通じないようだな」
「なら、俺達のSFチックな武器に任せな」
 ミッシェルと燈。
 共にマーズ・ランキングの上位ランカーである二人には『専用武器』が支給されていた。
 対テラフォーマー用起爆式単純加速装置『ミカエルズ・ハンマー』
 対テラフォーマー振動式忍者刀『膝丸』
『己の技術』か『己の特性』を最大限に活かすという点に特化した最新鋭の武器を構えながら、ミッシェルと燈がペニス―ツマンと対峙する。
「夏だ!まんこだ!全員死亡!!」
「そーいうのをセクハラっつってな……」
 陽気な声をあげるペニス―ツマンへと、ミッシェルは鋭い眼光で睨み付ける。
「地球では嫌がってる女子に勃起したペニスを見せつけると
 訴訟・罰金・減給・免職、もしくは……」
 瞬間、ミッシェルの右肘に装備された『ミカエルズ・ハンマー』が火を噴いた。
「こうなる!」
 爆発より生じた超加速の力を乗せ、ミッシェルがペニス―ツマンの亀頭部へと拳を叩き込む。
『弾丸蟻(パラポネラ)』×『対テラフォーマー用起爆式単純加速装置≪ミカエルズ・ハンマー≫』
 重量級の『テラフォーマー』でさえも上半身ごと爆砕できる程の一撃が、ドグォン!と大気を震わせた。
「『タートル……ヘッドバット』ッ!」
「ガァッ!?」
 大きく後方へ仰け反ったペニス―ツマンが振り子のように身を起こし、ガチガチに勃起した亀頭部をミッシェルの顔面へと叩き付けた。
 皮肉にも自らが得意とする頭突き(ヘッドバット)を喰らったミッシェルが人形の如く吹き飛んでいく。
「何、やってんだ、テメェッッッ!!!」
 ヒュンヒュンと柄に『糸』が張り付いた忍者刀『膝丸』がペニス―ツマンの周囲を飛び回る。
 やがて、ペニス―ツマンは『大蓑蛾(オオミノガ)』の能力によって生み出された生物界で最も強靭な『糸』に雁字搦めに拘束されていく。
「ミッシェルさんの顔に汚ねぇモンぶつけやがって……覚悟は出来てるんだろうな?」
「……全てを諦めて股間いじりまくってもんどり打って無限に寝てたい」
 何やら諦めの言葉を呟くペニス―ツマンと向かい合い、燈は油断なく忍者刀『膝丸』を構える。
(……燈とかいう奴、手練れだ。剣客としての腕は来栖やあの美馬にも匹敵するかもしれない……)
 体捌きや構えから燈の実力を推し量った生駒が息を呑み経過を見守る中、空気が弾けた。
『大蓑蛾(オオミノガ)』×『対テラフォーマー振動式忍者刀≪膝丸≫』
 日本古武術『膝丸神眼流』の術理をもって、燈が拘束されたペニス―ツマンへと忍者刀『膝丸』を振り下ろした。
「……なッ!? 」
 燈の渾身の一閃はペニス―ツマンに弾かれていた。
『テラフォーマー』の多糖類アミロースの甲皮すら切り裂く『膝丸』の斬撃が通じなかったという事実に燈の心に空白が生じた。
「……『フル勃起、装甲(アーマー)』……」
 ペニス―ツマンは膨張・硬化していき、生物界で最も強靭な『大蓑蛾(オオミノガ)』の『糸』が、内部からの圧力でブチブチと千切れていく。
 ペニス―ツマンは虫の類に欲情するという性癖を持つ。
 故に、『変態』したミッシェルと燈の姿を見て勃起し、ただでさえ頑強なその性質を強化させていたのは自明の理である。
「諦めるなっ! どこかに弱点があるはずだっ!『カバネ』の心臓のように、致命的な急所になりうるような箇所が!」
「……あぁ! 縛法(イト)や剣術(ケン)が通じねぇなら……足腰立たなくなるまで当身技(ブッたた)くまでだ……!」
 生駒と無名が、『ツラヌキ筒』と蒸気銃を構えながら、燈の隣に並び立つ。
 その瞬間を待ち望んでいたかのように、ペニス―ツマンが身体をぶるりと震わせた。
「『重加速』!」
 ペニス―ツマンの股間に、真紅の『ネオバイラルコア』が装着された。
 燈達はさながら時間の流れが変わったかのように、『どんより』としか身体を動かせなくなる空間に捕らわれていく。
『ドライブ』の世界で獲得した『ロイミュード』として能力を駆使し、ペニス―ツマンは『重加速』を発動させていた。
「……な、ん、だ、これ、は……!?」
「『おしっこレーザーカッター 3WAY弾』!」
 燈・生駒・無名の3人は、3方向に枝分かれしたおしっこに各々の胸を貫かれ、やがて甲板へと崩れ落ちた。
「でもちんちんはこんなにギンギンなんだもん。分からないよね〜〜〜〜〜〜」
 ペニス―ツマンの勝利の宣言が、「晴風」に響き渡った。

☆☆☆

「あああぁぁぁーーーーーッッッ!!! 死なせてくださいまし!!!」
「晴風」の水測員兼ラッパ手を務めるお嬢様、万里小路楓(まりこうじかえで)が薙刀を振り回し暴れていた。
キュアップ・ラパパ! ロープよ、あの人を捕まえて!」
『虚無の哲学』に汚染され、自殺衝動に苛まれた少女をみらいの魔法が捕えた。
 ロープに簀巻きにされたお嬢様へと、『スタンド使い』康一が近づき
「音を響かせろ『エコーズ』ッ! 」
『エコーズACT1』がその能力をもって万里小路に音を響かせる。
『生きて!』という康一の声が、彼女の頭に反響していく。
 かつて小林玉美(こばやしたまみ)の『ザ・ロック(錠前)』に心を縛られた母の自害を止めたときのように『エコーズ』の能力を応用し、万里小路の心へと直に声を伝えたのである。
「……あっ……わたくしは何を……?」
 正気を取り戻した万里小路が床にへたり込む。
「まりこうじさん! よかった、早く医務室へ」
 明乃に手を取られながら、困惑している様子の万里小路が医務室へと連れていかれる。
 艦橋をはじめ、無線室・水中聴音室・電探室・機関室等、明乃達は手分けをして艦内の至るところを巡り、『虚無』に捕らわれた少女を保護していた。
(これで全員の無事を確認できた……本当に、よかった……)
 万里小路の手を引きながら、明乃はひとまずは死傷者が生じたなかったことに安堵する。
 やがて、医務室までたどり着くが、そこは大多数の人がすし詰めにされているような有様であった。
「艦長……今度はどんなパンデミックが起きているんだ?」
「み、みなみさん? 大丈夫なの?」
「晴風」の衛生長兼保健委員を務める小さな天才、鏑木美波(かぶらぎみなみ)がやや憔悴した表情で声をかけた。
「大丈夫なわけないだろう……自傷行為を繰り返す生徒達で、医務室は大盛況だよ……」
「そっか……でも、みなみさんが無事でよかった」
 明乃の言葉に、美波は自嘲的な笑みを返しながら
「わたしだって無事なわけではない。『抗うつ剤』を投与して、辛うじて正気を保っているのだからな……自殺衝動を引き起こすウイルスなんて聞いたこともないが、神経伝達物質を乱すような特性を持っているのか?」
「大丈夫だよ……わたし達に手を貸してくれる人を見つけたから」
「あぁ、あのわけのわからない力を持つ輩か」
 明乃の言葉を裏付けるように、医務室では様々な『異世界人』達が異能を行使し、「晴風」のクルー達を治療していた。
 仗助の『クレイジーダイアモンド』が少女達の怪我を治していき
 エミリアの治癒魔法の光が汚染された精神を浄化する。
 そして……
「ほら、大人しく食べてくださいっ!」
「何しやがるんでぃ、べらぼぉーめ!」
 江戸っ子気質の機関長・柳原麻侖(やなぎわらまろん)がワイワイと騒いでいた。
 傍らの静御前が麻侖の小さな口に寿司(回復アイテム)を無理矢理に詰め込んでいる。
 やがて、傷だらけだった彼女の細腕は淡い光に包まれながら治癒されていく。
「あんなんで怪我はちゃんと治るんだから、医者としての存在意義を揺るがされるよ」
 美波の愚痴じみた言葉を、明乃は苦笑で応じるしかなかった。
「アビラウンケンソワカ……アビラウンケンソワカ……」
「あ、ありがとうございます……」
 ろくろと紅緒、二人の陰陽師は霊符を翳し、「晴風」給養員を務める杵崎姉妹の怪我を治療していた。
「これで、治癒符は使い切った! 俺達もあの『ケガレ』を祓いに行くぞ!」
「わたし達も持っているお寿司は全部食べさせました!『神喰い』の討伐に参りましょう!」
双星の陰陽師』、焔魔堂ろくろと化野紅緒。
鬼斬』の姫君、静御前義経
 怪異討伐の専門家達が医務室を飛び出した。
 ペニス―ツマンとの激闘は依然、続く。