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ペニス―ツマン in アローラ 後編

 サカコは徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。
「変身!」
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「我が名は哲学する男性器『ペニス―ツマン』……命をかけて、かかってこい!」
 突如出現した珍妙な姿形のモンスターを前に、幻と呼ばれるポケモンとも相対してきたミヅキ達でさえも息を飲んだ。
「うわわわっー!?」
「これは……ゾロアークの『イリージョン』のような幻惑効果か……いや、人間に『へんしん』していたとでもいうのか……?」
 ハウはただただ悲鳴を上げ、ククイ博士は何とか持ち前の知識で理解しようと試みている。
「……あの姿は……もしかして、お母様と同じ……」
 その異形は、リーリエの母親・ルザミーネが『ウツロイド』に寄生され融合した姿『マザービースト』を彷彿させた。
「これ以上の犠牲者を出さないためにも、わたし達でやっつける! アシレーヌ、『うたかたのアリア』!」
 顔を青くするリーリエを励ますように、ミヅキが力強くアシレーヌに指示を出す。
 アシレーヌは喉を震わせ歌唱し、水のバルーンの群れをペニスーツマンへ直撃させた。
……しかし
「インターネットでは冷静になったほうがいい」
 ペニスーツマンにはこうかはないみたいだ……。
「……どうしてっ!?」
「ガオガエン、『フレアドライブ』だ!」
「ジュナイパー、『リーフブレード』!」
 困惑するミヅキを援護するように、ハウとククイ博士がペニスーツマンへ追撃する。
 ガオガエンの炎を纏ったタックルとジュナイパーの葉っぱを束ねた剣がペニスーツマンへと叩き込まれる。
「カスが効かねえんだよ(無敵)」
 そのどちらも、こうかはなかった。
 驚愕に目を見開く三人だが、続けて指示を飛ばしていく。
「アシレーヌ、『ムーンフォース』で追撃!」
「ガオガエン、今度は『DDラリアット』で攻撃だ!」
「ジュナイパー、『かげぬい』を放て!」
 三種の技が直撃し粉塵が巻き起こるが、ペニスーツマンはポケットに手を突っ込みながら腰をカクカクと動かし挑発していた。
「頑張ってアシレーヌ、『ハイパーボイス』!」
「まだまだー、ガオガエン、『クロスチョップ』だ!」
「ジュナイパー、続けて『ブレイブバード』!」
「ファッ!?」
 声による振動波も十字に交差させた両手チョップも余裕をもって受け止めたペニスーツマンであったが、翼を折り畳み突撃するジュナイパーのひこう技『ブレイブバード』の直撃を受けた瞬間には、体をくの字に曲げながら吹き飛んでいた。
「『ブレイブバード』は通った……? ヌケニンの『ふしぎなまもり』のように、無力化できないタイプがあるということか!?」
 ポケモンの『わざ』の研究家であるククイ博士が分析を進める中、ミヅキが更なる追撃を加える。
「アシレーヌ、『サイコキネシス』!」
「ンアッー! 」
 アシレーヌが放った念動力波もまたペニスーツマンへ通じていた。
 甲高い叫び声を上げながら砂浜を転げ回るペニスーツマンを横目に、ククイ博士が一つの仮説を打ち立てる。
「みず、ほのお、くさ、フェアリー、あく、ゴースト、ノーマル、かくとうは効果がない……しかし、ひこうとエスパーの技は通じた……おそらくだが、ペニスーツマンは今までに戦った『キャプテン』や『しまキング』が得意とするタイプに耐性を身につけているはずだ」
 ククイ博士が唱えた仮説に、ミヅキとハウが困惑した様子で首を傾げる。
「えーと、どういうことー?」
「確かに、カヒリさんが襲撃されたとは聞いてないし、エスパータイプの『キャプテン』や『しまキング』はいないけど……」
「あとは、むし・どく・はがね・こおり・ドラゴンだね。ぼくの仮説が正しければ、これらのタイプの技であれば通用するはずだよ」
 思案顔で理解しようとするミヅキとハウへ、ククイ博士が補足した。
「だったらー、ガオガエン、『げきりん』!」
「ヒェッ!?」
 ドラゴンのオーラを纏ったガオガエンがペニスーツマンへと突貫する。
 情けない声を上げながら、ペニスーツマンは吹き飛ばされた。
「どうやら、仮説は正しいみたいだね?」
「私の『特性』を看破するとはお見事……しかし、その全てを理解している訳ではないようだ……」
 ペニスーツマンの不気味な呟きを振り切るように、三人は一気に勝負を決めにいった。
「アシレーヌ、『サイコキネシス』!」
「ガオガエン、そのまま『げきりん』だ!」
「ジュナイパー、『ブレイブバード』!」
 有効とされる三種のタイプの技を前に、ペニスーツマンは余裕の態度を崩さなかった。
「そんなんじゃ虫も殺せねぇぞォ!」
 しかし、こうかはないようだ……。
 先程の醜態が嘘のように、ペニスーツマンは平然と受け止める。
 その身体は、ヌラヌラとした透明な液体が太陽に反射し輝いていた。
「これぞ、我が『特性』……『カウパーバリア』! このペニスーツマンに同じ技は二度も通じぬっ!」
「馬鹿なっ!? たった一度でも技を受ければ、そのタイプに耐性を得てしまうとでもいうのか!? そんなデタラメな『特性』が存在するのか!?」
 ククイ博士が声を荒らげていた。
 ミヅキとハウも、その余りにも理不尽な能力を前に顔をしかめる。
「どうする……? 耐性を得てしまう前に、『いちげきひっさつ』で仕留めるしかしないか……? こおりタイプがまだ有効であるなら『ぜったいれいど』を当てれば……」
「『すなあらし』や『あられ』による天候効果によるダメージ……あとは『かたやぶり』や『いえき』等で『特性』自体を無力化するとか……?」
「でもー、おれ達のポケモン、そんな技覚えてないよー」
 ククイ博士とミヅキが何とか打開策を考えるも、ハウの指摘に閉口してしまう。
「さて……作戦会議は終わりましたかな? 今度はこちらからイキますぞ、『タネマシンガン(意味深)』!」
 ペニスーツマンの亀頭部から、子種(タネ)が連続して放射された。
「アォォン……!?」
「アシレーヌ!?」
 こうかはばつぐんだ!
『タネマシンガン』の弾幕を浴びたアシレーヌがビクビクと痙攣しながら大ダメージを受けた。
 悲痛な面持ちとなったミヅキが、やがて一つの決意をする。
「……リーリエ、お願いがあるの……」
「……ハッ!? はい、何でしょう?」
『どうみても精子です』と言いたげな表情で硬直していたリーリエが、ミヅキに声をかけられた事で我に返った。
「今からポケモンセンターに行って、1ぴきのポケモンを引き取ってきてほしいの……あいつに勝てるのは、もう『でんせつのポケモン』しかいないと思うから……」
 ミヅキの言葉の意図を察したリーリエが力強く頷いた。
「わかりました!『ほしぐもちゃん』ですね! 急いでとってきます!」
「お願い……それまでの時間は何とか稼いでみせる……!」
 ミヅキの宣言に続くように、ククイ博士とハウが複数のモンスターボールを取り出した。
ポケモンには様々な『わざ』があるんだ。どうにかしてみせるさ」
「がんばって時間かせぐからー、リーリエーもがんばってねー」
 ハウオリのビーチに砂塵が巻き起こる中、リーリエは走り出した。
 ミヅキ達とペニスーツマンの戦闘の激しさを背に感じながら、リーリエは懸命に駆けて行く。

☆☆☆

「フハハハハハハッッッ!『タネばくだん(意味深)』を喰らえ!」
「アマッ!?」
「そ……んな……」
 ペニスーツマンの笑い声が響き渡る。
 子種(タネ)の爆弾が炸裂し、長い美脚が特徴的なフルーツポケモン・アマージョは戦闘不能に追い込まれた。
 最後の手持ちポケモンを倒されたミヅキは……めのまえがまっくろになった。
「お待たせしました! 皆さん、大丈夫ですか!?」
 マスターボールを大事に抱えながら、リーリエがビーチへと戻ってきた。
 やがてリーリエは、白い砂浜に膝をつくミヅキと、同様の状態のハウとククイ博士の姿を目撃する。
「うそ……ハウさん……ククイ博士……ミヅキさんまで……」
 アローラ地方チャンピオン・ミヅキを筆頭に、彼女に匹敵する実力者であるククイ博士とハウが悉く敗れ去ったという事実にリーリエは驚愕する。
 そして、それ以上にリーリエは怒っていた。
「ひどいです! ひどすぎます! ポケモンさん達を必要以上に痛めつけて……それで、その、汚すなんて、ひどすぎる行為です!」
 ビーチに横たわるミヅキ達のポケモンは、どれも精液に塗れていたのである。
 それは、ポケモンバトルの領域を超えた陵辱的行為であるとリーリエは憤っていた。
 所謂『おこリーリエ』である。
「ならば、どうしますか?」
「こらしめてやります! 出てきて、『ほしぐもちゃん』っ!」
 たどたどしい挙動で、リーリエはマスターボールを投擲する。
「ラリオーナッ!!」
 太陽の使者として崇められし『でんせつのポケモン』が咆哮をあげながら降臨する。
 にちりんポケモンソルガレオ
 或いは『ほしぐもちゃん』。
 コスモッグの頃より、リーリエと共に冒険を繰り広げた仲間である。
「爆弾クンニリングス魔神、クサマンコ=ペロペロリーニョ様を信仰しなさい……!」
「ひぃっ!?」
 突如宗教めいたことを語り出したペニスーツマンにリーリエは悲鳴をあげてしまう。
 そんなリーリエを庇うように、ソルガレオは牙をむき出しに威嚇をした。
「……まっ、負けませんよ! ソルガレオさん、お願いしますっ!」
 リーリエの声に応じるように、ソルガレオは咆哮する。
 ソルガレオの額に紋章が浮かび上がり、その全身から太陽の如き閃光が放射される。
『ライジングフェーズ』と呼ばれし姿となったソルガレオが天高く跳躍した。
「射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。
 大自然に満ちる精力よ、我が睾丸へ集え……!」
 呪文めいた言葉を囁くと、ペニスーツマンもまたその姿を変貌させていく。
 アローラの大自然の力がペニスーツマンの金玉に集い、身体中を駆け巡る!
「……こ、これはナッシーさん……? いえ、まさか……!?」
 その姿は、リーリエに『ナッシーアイランド』で遭遇した『アローラのすがた』のナッシーを彷彿させた。
 胴体部はそのままに、亀頭部にあたる部分が異常なまでに伸びたアンバランスな造形。
 それは、アローラの大自然の力が生んだペニスーツマンの『リージョンフォーム』とも呼べる姿であった。
「ほ、本で読んだことがあります……男性の陰茎は勃起時に数倍以上に膨張するものであると……おそらく、これがペニスーツマンさんがゼンリョクした姿……なのでしょう……!」
 よくわからない解釈をしたリーリエが、真正面からペニスーツマンを見据えた。
「こちらもゼンリョクで応えるとしましょう! ソルガレオさん、『メテオドライブ』!」
「喰らいなさい、『ハイメガザーメン砲』!」
 ソルガレオが太陽の輝きを纏いながら、天降る隕石の如く突貫した。
 対するペニスーツマンもまた、伸びきった亀頭部の先端より、精液の奔流を射精する。
メテオドライブ』と『ハイメガザーメン砲』。
 二つのゼンリョクがぶつかり合い、時空を揺るがす程の衝撃が大気を震わせた。
 白濁とした閃光に呑まれ、たちまちリーリエは意識を失った。

☆☆☆

「リーリエ! 目を覚ましてっ!」
「うぅ……ここは……?」
 ミヅキの呼びかけに、リーリエは朧げに意識を覚醒させていく。
「……お気に入りのお洋服が……ベトベトです……」
 身体に違和感があり見下ろしてみると、そこにはベトベトした白い液体がぶっかけられていた。
「ペニスーツマンが撒き散らした白い汚いの、『ネバネバネット』みたいにくっついてなかなか落ちないの! 本当にメイワクだよね。何なんだろう、コレ?」
 気落ちするリーリエに賛同するように、ミヅキが声を荒らげる。
 無論、リーリエは『本で読みましたがこれは精子です』と即答できたが、口が裂けても言えなかった。
「あの、それで、ペニスーツマンさんは……?」
「大丈夫っ! リーリエとソルガレオが、ちゃんとやっつけてくれたよ!」
 ペニスーツマンがいなくなったことを確認したリーリエはひとまず安堵した。
「『メテオドライブ』は『特性』を無視して攻撃できる『わざ』だから、ペニスーツマンに有効だったんだろうね。いい選択だったよ、リーリエ」
「リーリエー、かっこよかったよー!」
 ククイ博士とハウが、頑張ったリーリエへと賛辞の言葉を送る。
「よかったです……! 皆さんがご無事で、本当によかった……」
 リーリエは太陽のように微笑みながら、アローラに平穏を取り戻したことを心の底から喜んだ。

☆☆☆

 淡い光を放つ結晶に照らされる薄暗い世界。
 そこは『ウルトラスペース』と呼ばれる異世界であった。
「なんやこの旧態依然とした化石企業は。全トイレ逆流して下総国ウンコカーニバル勃発してくたばれや。ハナクソがよぉ!」
 いちゃもんめいた言葉を垂れ流しながら、ペニスーツマンは『ウルトラビースト』と呼ばれしポケモン達を追いかけまわしていた。
 ソルガレオの『メテオドライブ』は、副産物として『ウルトラホール』を開く効果を持っている。
メテオドライブ』の直撃を受けたペニスーツマンは、開かれた『ウルトラホール』に咄嗟に身を隠すことで危機を間逃れたのである。
 辿り着いた『ウルトラスペース』は、ペニスーツマンにとってハーレムも同然の楽園であった。
 虫の類に欲情するペニスーツマンは、特に2匹のウルトラビーストに目をつけた。
 筋肉を見せつけるぼうちょうポケモン・マッシブーンとフェロモンを撒き散らすえんびポケモン・フェローチェ。
 逃げ回るマッシブーンとフェローチェに狙いを定め、ペニスーツマンはローションを手に取り叫ぶ。
「『アクセルローション』!

 知らなかったのか? ペニスーツマンからは、逃げられないっ!」
 ローションによる摩擦を軽減したことより生まれる超スピードで、ペニスーツマンは異形のウルトラビーストを性奴隷(なかま)にするべく追い立てる。
 薄暗い『ウルトラスペース』に、嬌声とも悲鳴ともいえない鳴き声が響き渡った。