ペニス―ツマン VS アベンジャーズ

※時系列は『シビルウォー』の前くらい

 国民的ヒーロー・超人・スパイ等が集まり結成されたドリームチーム『アベンジャーズ 』は、ヒドラの残党を追跡していた。
 メンバー達はナイジェリアの郊外にある古びたビルの廃墟の前に集合していた。
 ヒドラの残党が潜んでいるとの情報を掴んだ為である。

「トニー達と合流した後に、敵のアジトへ突入しよう。ただ……その、上手く言えないが……嫌な予感がする。禍々しい気配を感じるというか……ともかく皆、気を引き締めてかかってくれ」

アベンジャーズ 』のリーダーである『キャプテン・アメリカスティーブ・ロジャースが仲間達へと言葉を投げかけた。
 第二次大戦中から戦い抜いてきた戦闘経験が、何かしらの警鐘を鳴らしている様子であった。

「キャップ! 生体反応を探ってみたんだが、建物の中には、どうやら一人しか居ないみたいだぜ」
 そんなキャプテンへと『ファルコン』サム・ウィルソンが状況を報告した。
 支援偵察型のロボットドローン『レッドウィング』を駆使し、建物内部をスキャンして得た情報である。

「一人しか居ないというのは妙だな……敵の狙いは待ち伏せか……それとも情報自体がガセだったか……」
ヒドラが潜んでいるというのは、確実に裏を取った情報よ。反応が一人だけというのは気になるところだけど、何かしらの理由があるはず。例えば……」
 弓矢の達人『ホークアイ』クリント・バートン。
 諜報活動に長けた女スパイ『ブラック・ウィドウ』ナターシャ・ロマノフ。
 元S.H.I.E.L.D.のエージェントである二人がサムが得た情報を元に考察を始めた。

「仮に待ち伏せしようとする腹づもりなら……我々『アベンジャーズ 』をたった一人で相手取ろうと考えているのか? とんだ傲慢さだ。いやはや、肖りたいものだよ」
「トニー……君がこれ以上傲慢さを磨きあげたら、どんな生き物になってしまうんだい?」
 エージェント達の考察を遮るように、二人の鋼の戦士が上空より舞い降りた。
『アイアンマン』トニー・スターク。
『ウォーマシン』ジェームズ・ローズ。
 共にパワードスーツを駆使するヒーローである。

「トニー……多忙な所を協力してもらって、すまない」
「君にするな。ナイジェリアなんて、ニューヨークからでもプライベートジェットがあればひとっ飛びさ。僕だって『アベンジャーズ』の古株だ。『ニュービー』達に負けてはいられないってね」

 スティーブが労いの言葉を投げかけ、トニーは大げさに身振りを交えながら肩をすくめた。
 そんなトニーの視線の先には『アベンジャーズ』に新たに加わった二人のメンバーが佇んでいた。

「皆様のお役に立てるよう尽力しましょう」
「えぇ……少しでもこの力が役に立てば……」
 究極のアンドロイド『ヴィジョン』
 可憐なサイキッカー『スカーレット・ウィッチ』ワンダ・マキシモフ。
『ウルトロン』との戦いを経て、新たに『アベンジャーズ 』へと加わったメンバーである。

「全員集まったようだな。これより、アジトへと突入する。生体反応は一人だけになっているようだが……伏兵が潜んでいる可能性は否定できない。敵は元S.H.I.E.L.D.の特殊部隊出身の者も居るはずだ。くれぐれも油断せずに行こう!」

 キャプテンアメリカの指揮の元、『アベンジャーズ 』は廃墟のビルへと突入した。

☆☆☆

 廃墟のビルの内部は、外見とは打って変わって、銃火器や研究機材等が所狭しと詰め込まれていた。
 ヒドラの残党が潜んでいるという情報は確かな様子であった。
 キャプテンアメリカを中心に、『アベンジャーズ』は細心の注意を払いながら、捜査を進めていく。

「隣の部屋から生体反応を一人確認した。どうやら本当に一人で待ち構えているようだ」
「……気を引き締めて行こう」
 トニーからの報告を受け、キャプテンアメリカは真摯な面持ちで号令をかけた。

「『アベンジャーズ 』だ! 武器を捨てて投降しろ!」
 キャプテンアメリカが先陣を切り、ドアを蹴破るような勢いで部屋へと突入し、ヒドラの残党と思われる人物へと投降を呼びかけた。

「キモオタを5人集めて最強のキモオタ、キモオタXを作りたいんですよ〜。確かにキモオタXを作るのは難しい。でも俺はぜ〜〜〜ったいに作るぞ?」

 粗末なパイプ椅子に腰かけたスーツ姿の男が、何やら訳の分からないひとり言を呟いていた。
 その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
 その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
 また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
 はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。

「君は……ヒドラの協力者か? それとも……」
2.5次元オタク女性さんだらけの店で一人でスパゲッティ食ってる」
「何だって?」
「柔らかい尻になりたい」

 相対しているキャプテンアメリカにさえ、男は視界に入れていない様子であった。
 虚空を見つめながら、何やら狂人めいた言葉を吐いている。

「体格からして兵士ではないようね。でも、とてもじゃないけど正気だとは思えない……洗脳を受けているのかもしれないわ」
「あるいは強化人間か……ワンダ、どう思う?」

 ナターシャとトニーの推測に対し、ワンダは悲しげな表情で答えた。

ヒドラの人体実験は過酷だから……その過程で精神が崩壊してしまった人も多くいたわ……この人も実験の犠牲者の一人かもしれない……」

(バッキーのように洗脳を受けているかもしれないということか……)

 ヒドラに洗脳されし暗殺者『ウインター・ソルジャー』バッキー・バーンズ。
 スティーブは自らの生涯の親友を思い浮かべながら、悲痛な表情を浮かべた。

「落ち着いて聞いてくれ。大人しく投降するのであれば、我々は決して手荒には……」
坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「そ、そうか……僕はスティーブ・ロジャース

 突如、パイプ椅子から立ち上がり自己紹介を始めたスーツ姿の男に、対話の可能性を見出したキャプテンアメリカが律儀に名前を名乗った。

「またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……オタクのみんなももうゴールしていいぞ(死刑宣告)」

 坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。

「変身!」

 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
 瞬間、『アベンジャーズ 』のメンバーに戦慄が走った。その珍妙な姿形とは裏腹に、『チタウリ軍団』や『ウルトロン』のような恐るべき力を感じ取ったのである。

「『アベンジャーズ 』! 戦闘開始だ!」

 思考を切り替え、キャプテンアメリカが号令を下す。
 次の瞬間にはパパパンッ!と乾いた銃声が響いた。
 真っ先に動いたブラック・ウィドウがハンドガンの引き金を引いた為である。

「早く健康な肉体と穏やかな精神が欲しい。今はそれだけです」

 正確無比な射撃により、ペニスーツマンの胸元に三発の銃弾が撃ち込まれたが、意に介した様子はなかった。

「……銃弾程度では、傷一つ負わないようね」
「なら、これはどうだ!」

 アイアンマンが掌よりリパルサーレイを照射した。
 粒子ビームを浴びたペニスーツマンは吹き飛ばされ、実験機材を巻き込みながら転がっていく。

「臀部が痛えなあーーー!!健康な尻に取り替えてえなああああああああ!!!!!!!『おしっこレーザーカッター』!」

 ペニスーツマンの亀頭部より、ウォーターカッターの如き勢いで小便が放射された。
 アイアンマンとスカーレット・ウィッチは飛翔し、キャプテンアメリカとブラック・ ウィドウは素早く身を伏せることでこれを回避した。

「建物内は狭くて不利だ。ワンダ、この男を外まで飛ばしてくれ!」

 スカーレット・ウィッチへ指示を飛ばしながら、キャプテンアメリカがペニスーツマンへと突貫する。

「助けてください、臭い屁が止まりません……『タートルヘッドバット』!」
「ハァッ!!!」
 ペニスーツマンが鋼の如くガチガチに勃起した亀頭部を迫り来るキャプテンアメリカへ叩きつけた。
 キャプテンアメリカはその象徴たるヴィヴラニウムの盾を構え真っ正面から受け止めた。
 ギィーンッ!と衝撃音が鳴り響く中、キャプテンアメリカが叫ぶ。

「ワンダ、今だ!」
「ハァァッッッ!!!」

 キャプテンが作った隙を見逃さず、スカーレット・ウィッチがテレキネシスをペニスーツマンへと浴びせた。

「……腰と尻に刻印蟲埋め込まれてる」

 真紅のエネルギーがペニスーツマンに纏わりつき、その身体は宙に浮いていく。
 コンクリートの壁をぶち抜き、ペニスーツマンは廃墟ビルの外まで吹き飛ばされた。

「尻が痛くてペンギン歩きしかできなくなった」

 よろよろと起き上がるペニスーツマンの前に、逃走経路を潰すため外に控えていた四人のヒーローが立ちふさがった。

ヒドラの強化人間か……それにしても、趣味の悪い姿をしてるな」
「人間の頭を巨大なペニスにすげ替えるなんて、何を食べたらそんな発想に至るのかね」
「洗脳されている可能性を考慮して、キャップからは出来れば生け捕りにしろと指示が出ている。なるべく殺すなよ?」
「得体の知れない力を秘めているようです……! 皆さま、どうか油断なさらぬよう……」

 ホークアイ・ウォーマシン ・ファルコン・ヴィジョンの四人がペニスーツマンと相対する。

「今回の旅行、タクヤさんの体みたいな時間配分になってしまったのが反省だンアーーーッッッ!?」

 腕を組みしたり顔?で反省点を語るペニスーツマンに、ホークアイが射ち放った矢が突き刺さる。
 電撃を放つトリックアローがペニスーツマンの身体を痙攣させた。

ホークアイって人の武器、銃じゃダメなの?」
「お前!? 俺を知っているのか?」
「今だ!!!『ハイメガザーメン砲』!」

 会話で動揺を誘い隙を見出したペニスーツマンが、精液の奔流を亀頭部より放射した。

「なっ!?」

 ホークアイは精液の奔流に呑み込まれ、その衝撃と悪臭に意識を刈り取られた。
 ウォーマシンとファルコンは上空に逃れ、ヴィジョンは密度操作の能力を用いて透過し回避した。

「あのペニス男、恐ろしい量の精液を射精したぞ!」
「クソッ! よくもクリントを!」

 宙を駆けながら、ウォーマシンが両腕からバルカン砲を、ファルコンが二丁のマシンピストルを、ペニスーツマンへ向け撃ち放つ。

「会社のソフトボール大会やスポーツ大会、立食形式の懇親会には二度と行かねえ。それが俺の忍道だから……」

 銃弾の雨を浴びながらも、ペニスーツマンはクネクネと身を捩りながら何やら決意めいたものを語っていた。

「銃撃が効いていない! 奴は見かけよりも頑じょウァァァッッッ!!!」
「サムッ!?」

 ファルコンの鋼の翼は、粘着性の精液により絡め取られていた。
 飛行能力を失ったファルコンは無残にも墜落していき、やがて地面に叩きつけられた。

「『ザーメンとりもち』」
「サムにザーメンを当てたというのか! 攻撃の精度も高い……!」
「ローディ……下がってください……!」

 複数のミサイルすら回避する空中機動能力を誇るファルコンに、ペニスーツマンは易々とザーメンをぶっかけた。
 その攻撃の精密性に戦慄するローディを守るように、ヴィジョンがペニスーツマンと対峙する。

「インフィニティーストーンを6つ集めた和田さんは指パッチンして全世界の女子大生を暴行するけど代償に死ぬのでエクゾディア5枚集めた和田さんが勝つと思います」
「貴方は……この額の石が目的なのですか……!?」

 ペニスーツマンはネクタイを締め直しながら、ヴィジョンの額に熱烈な視線?を向けていた。
 アンドロイドであるはずのヴィジョンが悍ましさに表情を歪ませた。

「オタクに必要なのは安定した雇用と健康な肉体とキモくない趣味とsyamuゥゥゥーーーーッッッ!!!」

 突如、背後より撃ち込まれ複数の小型ミサイルにより、ペニスーツマンは爆炎に身を包まれた。
 アイアンマンが発射したマイクロミサイルである。

「ローディ、状況はどうなっている?」
「クリントとサムがやられた! そしてどうやら、奴の目的はヴィジョンの額にあるストーンのようだ」
「そうか……奴の目的はストーンをおびき寄せることだったのかもしれないな……」

 ヴィジョンの額の石は、ロキが持っていた『杖(セプター)』に内包されていた『マインドストーン』である。
 インフィニティストーンの1つである『マインドストーン』を元に、マキシモ姉弟の特殊能力やウルトロンは生み出された。
 巨大な力を秘めし『マインドストーン』を得ることが、ペニスーツマンの目的であるとトニーは推測した。

「ヴィジョンという人、高潔な心を持っているのは分かったが顔の色が親しみにくすぎる」
「見慣れればチャーミングに感じるさ。魅力がわからないような輩に、ウチのヴィジョンを渡す訳にはいかないな」

 軽口を叩きながらも、トニーは怒りを胸にアイアンスーツのガントレットをペニスーツマンへ差し向けた。
 相対するペニスーツマンは、懐からローションを取り出した。

「『アクセルローショ……あ痛ッ?」

 ペニスーツマンが取り出したローションは、キャプテンアメリカがフリスビーのように投擲した盾によって砕かれていた。

「小癪な……アヒィッッッ!?」

 ペニスーツマンの背広に小さなバッチのようなディスクが貼り付けられた。ブラック・ウィドウの持つリストバンド型の装備『ウィドウ・バイト』から発射されたスタンガンである。
 3万ボルトの電撃が身体を駆け巡り、ペニスーツマンが悶絶する。

「ハァァーーーッッッ!!!」
「はわわ……塗るバンテリンを臀部に塗りたくった結果、尻からサイコフィールドが発生している……」

 ペニスーツマンの身体が真紅のエネルギーに包まれると、やがて両腕を後ろで交差するような形で蹲った。
 スカーレット・ウィッチがテレキネシスを用いてペニスーツマンを拘束したのである。

「今だ、トニー! 最大火力を浴びせるんだ!」
瓦礫に当たった反動で戻ってきた盾をキャッチしながら、キャプテンが叫ぶ。

「言われるまでもないさ。ローディ! ヴィジョン!」

 アイアンマンが両手からリパルサーレイを放ち、肩部からマイクロミサイルを掃射した。
 ウォーマシンは両腕両肩の銃火器を解放し、バルカン砲・ミサイルの一斉掃射を浴びせた。
 そしてヴィジョンは額の『マインドストーン』を輝かせ、極太のエネルギービームを発射した。
 数多のミサイル群と強烈なエネルギービームの洗礼を受けたペニスーツマンは、その身を焦がされながら瓦礫の山へと吹き飛ばされる。

「……腰がくしゃみ程度の衝撃に耐えられん」

 三人のヒーローの一斉攻撃を受けたペニスーツマンが、頼りない足取りで起き上がった。

「Killiter Ichaival tron……」

 突如、廃墟に無駄にいい声が響き渡った。
 集音マイク型のペンダントへ握りしめながら、ペニスーツマンが聖詠を唱えたのである。

「クリスちゃん……シンフォギアの力、お借りします……」

 シンフォギア・システム。
 FG式回天特機装束の名称である。
シンフォギアの世界』で出会い、交戦した雪音クリスから得た『魔弓イチイバル』の力を、ペニスーツマンは発現させた。
 その両手にボウガン型のアームドギアが出現し、腰部に赤いリアアーマーが形成されていく。

「Yes! Party Time!! Yes! Golden Time!!」

 やがて、ペニスーツマンが纏うシンフォギアからポップな音楽が流れ始めた。
 シンフォギア・システムは、身に纏う者の戦意に共振・共鳴し、旋律を奏でる機構が内蔵されている。
 心の内から浮き上がる旋律を歌い上げることで、ペニスーツマンはその機能を十全に発揮する。

「パワードスーツとは……奴はまだ切り札を隠し持っていたのか!?」
「アレはナノテクか? 僕にもまだ構想段階だというのに、まさかペニス男に技術面で先を越されるとは……」

 キャプテンアメリカとアイアンマンがペニスーツマンが纏ったスーツに警戒を示した。

「揺らせ!激しく Heart Beat! 君の Emotion! さらけ出せたら無敵だ・ね!
 歌おう Singing! 踊ろう Dancing!」
「それにしても、何で奴は歌っているんだ? あのアーマーにはカラオケ機能でも付いてるとでもいうのか……?」

 シンフォギアの機能を知らないローディは、熱心に歌い続けるペニスーツマンの行動に疑問を呈する。

「こ・こ・から ちゃんと見てるよっ!」

 歌詞に合わせるように、ペニスーツマンが熱烈な視線?をヴィジョンへ向けた。
 身をこわばらせるヴィジョンに対し、ペニスーツマンがアームドギアを変形させた。

「目と目があった時 始まるのはLove Story??」

ーBILLION MAIDENー
 ペニスーツマンがアームドギアを変形させた四門のガトリング砲を掃射した。
 狙いはヴィジョンである。
 ヴィジョンは密度操作の能力を用いて透過しようと試みたが……

「がっ……!? な、何故……密度の操作が……!?」

 イチイバルの弾丸はヴィジョンを捉え、アンドロイドの身体に風穴を開けていた。
 シンフォギア・システムにはノイズの位相差障壁を無効化する為に、攻撃対象を『調律』し、通常物理法則下へと無理矢理引きずり出す機能が備わっている。
 能力を無力化され致命傷を受けたヴィジョンが、無念の表情を浮かべ地面へと倒れた。

「食い気味な気持ち 持て余す Hey Boys!!
 Right Now!! 聞かせて Right Here!! 私に」

ーMEGA DETH PARTYー
 ペニスーツマンの歌唱が響くと同時に、腰部のリアアーマーから数多のミサイルが撃ち放たれた。

「よくも、ヴィジョンをやってくれたな!」
「火力ならこちらも負けていない!」

 アイアンマンが両手からリパルサーレイを放射し、ウォーマシンは両腕のバルカン砲を用いて、飛来するミサイル群『MEGA DETH PARTY』を撃ち落としていくが……

「ウワァァァーーーッッッ!」
「ローディーーーッ!!! 」

 撃ち漏らした一つのミサイルがウォーマシンを直撃した。

「フライデー、ローディのバイタルをチェックしろ!」

 トニーが瞬時に駆け寄り、ローディのバイタルをAIにチェックさせた。
 幸い命に別状はなかったが、衝撃によりローディの意識が奪われていた。

「勝負のコスチューム 迷ってる Hey Girls!!」

ーまんこ破壊光線ー
 歌い上げながら、ペニスーツマンがスカーレット・ウィッチへと身体を向けると、その両乳首から桃色の怪光線を放射した。

「い……いや……」
「ワンダっ!」
 本能的に危険を感じ取ったことでかえって竦んでしまったスカーレット・ウィッチをブラック・ウィドウが突き飛ばした。

「アァァァッッッ!?」

 女性器を破壊せしめる怪光線を受け、ブラック・ウィドウが崩れ落ちた。

「Right Now!! コールして Right Here!! アイツに
 良い子を脱ぎ捨て 輝く夜に繰り出そう!」
「このままでは全滅する! 皆、一箇所に固まり互いを守り合うんだ!」

QUEEN's INFERNDー
 クロスボウから連射されたエネルギー矢の豪雨をヴィヴラニウムの盾で防ぎながら、キャプテンアメリカは懸命に指示を飛ばしていた。
 気絶したブラック・ウィドウを背負い、ペニスーツマンの攻撃の雨の中進んでいると

「ネオンの中で泳〜ぐ〜 熱帯魚のように 今日こそっ!……ん?」
「下がるんだ! ワンダ!」

 キャプテンの制止の言葉も虚しく、真紅のエネルギーを両手に蓄えながら、スカーレット・ウィッチがペニスーツマンへと突撃していた。

「ナターシャは私を庇って……それだけじゃない……よくも仲間達を……!」

 ペニスーツマンと真っ向から相対したスカーレット・ウィッチがその真紅のエネルギーを霧状に噴射した。
 かつて『アベンジャーズ』の面々が苦しめられた、マインドコントロールの能力である。

「……平成の終わりにかこつけて半生を振り返ろうと思ったんですけど精神崩壊したので止めました……」
「これで大人しく……こ、これは……うぅ……」

 マインドコントロールの能力を受けたペニスーツマンは虚空を見つめながら立ち尽くしていた。歌唱が止まったことにより、纏っていたシンフォギア『イチイバル』は粒子となって消失した。
 しかし、スカーレット・ウィッチはペニスーツマンの心理、即ち『虚無の哲学』に触れてしまっていた。
 それは常人では耐え難い狂気の坩堝。
 強化人間であるワンダさえもその意識を葬られた。
 これで戦闘可能な『アベンジャーズ』のメンバーは、キャプテンアメリカとアイアンマンの二人だけとなった。
 両者は並び立ち、早口で作戦を立てていく。

「僕が時間を稼ぐ……! トニー、君はメンバーを回収し離脱してくれ!」
「おいおい! 何を言っているキャプテン! あのペニス男はとてもじゃないが……」
「これまでの戦いで奴は消耗している。僕でも多少の時間は稼げるはずさ。君はスーツの機動力を活かし、メンバーを回収して逃す。これが今の状況で取れる最善の行動のはずだ!」
「消耗していると言ったな! このまま二人で戦い押し切るべきではないのか!?」
「奴の力量は底が知れない! そんなリスクは犯せない! ここは『アベンジャーズ』の全滅を避けるべきだ」

 言い切ると盾を構え、キャプテンは走り出した。
 トニーの脳裏にかつてのトラウマが蘇る。『アベンジャーズ』が自分一人を残して全滅してしまうという、最悪の幻想を。

「クソッ! こんなときにソーやハルクがいれば……!」

 キャプテンアメリカの背を見送りながら、トニーは毒づいた。
 別世界アスガルドから来訪した雷神『ソー』。
 超怪力を誇る緑の巨人『ハルク』ブルース・バナー。
 共に『アベンジャーズ』の古参メンバーであり、戦闘力においては最強を誇るといっても過言ではない力を持つヒーローである。
 ソーは故郷アスガルドへ帰り、バナー博士はソコヴィアでの戦いの後から行方不明になっていた。
 いない者に縋るなんてヤキが回ったものだ、などと内心で自嘲しながら、トニーは負傷したメンバーを抱え、安全な場所へ運んでいった。

☆☆☆

「ハァァ〜〜〜『ペニスウィング』!」
 ガキィン!と金属音が鳴り響いた。
 ペニスーツマンのガチガチに勃起させた亀頭部とキャプテンアメリカの盾が衝突した音である。
 衝撃に耐えきれずキャプテンは吹き飛ばされ、瓦礫へと体を打ち付けられた。全身が精液に塗れており、星条旗をモチーフとしたユニフォームもボロボロになっていた。
 満身創痍のキャプテンアメリカは歯を食いしばり立ち上がり、そして不敵にファイティングポーズを取りながら

『“I can do this all day.” (決して諦めない)』

 そう宣言した。
 キャプテンアメリカの心はペニスーツマンにさえも折ることは出来なかった。

「……普段何気なく接してる会社の人も実はこの世の終わりみたいなパンツ履いてるかもしれない」

 何度でも立ち向かってくるキャプテンに対し、ペニスーツマンは気圧された様子であった。
 そして攻撃を躊躇した、その瞬間であった。

 ビカッ!と雷が迸った。
 虹色の柱と共に。

「落雷……! これは……!」

 落雷で生み出されたクレーターの中心には、鋼のハンマーを手にした筋骨隆々とした大男が立っていた。
 その隣には、大男よりも更に一回り大きな緑色の巨人が咆哮していた。

「ソー! ハルク!」
「我が親友ヘイルダムより、世界を滅ぼす程の危険を感じたと報告を受けてだな。及ばずながら助太刀に来たぞ、キャプテン!」
「ありがとう! 何よりも心強い援軍だよ。それで、ハルクの方は……?」
「ウォォォッッッ!ハルク、コロシアムに、帰る!」

 ハルクは子供のようにただをこねていた。
 とある星まで流れ着き、バトルロイヤルのチャンピオンとして君臨してチヤホヤされていたところを、『虹の橋』により突然拉致された為である。

「ヘイルダムの千里眼で探し出したのだが、何故か別の惑星に居たぞ」
「それは気になるところだが、今の状況では後回しだな……」

 捜索していたブルース・バナーが眼前にいる。
 ナターシャに早く伝えたいという気持ちを抑え、キャプテンは言う。

「突然呼び寄せてしまって、すまない。ただ今だけは、協力をしてもらえないか?」
「チンポコの男、ぶっ飛ばしたら、帰れる?」
「あぁ、遠慮なくぶっ飛ば(Smash)してくれ!」

 瞬間、ハルクはペニスーツマンへと飛びかかった。緑色の豪腕がペニスーツマンの亀頭部へと叩き込まれる。

異世界召喚系の作品、タカヤ-夜明けの炎刃王-しか分かんねえんだよな……」

 ハルクの怪力に吹き飛ばされたペニスーツマンが、ふらふらとを頼りない足取りで立ち上がる。
アベンジャーズ』との連戦は、確実にペニスーツマンを消耗させていた。

「雷を見たからまさかとは思ったが、ソーに、ハルクまでいるじゃないか! 一体どんなトリックを使ったんだ?」

 負傷したメンバーの避難を終えたアイアンマンが合流した。その声色は困惑と、隠しきれない歓喜が滲み出ていた。

「新しく虫歯が見つかったんですけど次の診察まで3週間空くのでもう終わりですね……」

 強力な助っ人の登場に、ペニスーツマンは心なしか怖気ついている様子であった。
 そんなペニスーツマンの背後へと、ドォーン!と爆音が轟いた。
 駄目押しとばかりにもう一人、最期の助っ人が流星の如く降臨した。

「これがフューリーの言ってた『ペニス星人』? 本当にこんなふざけた生き物が存在するのね」

 異星人の力を得た超人『キャプテンマーベル』キャロル・ダンヴァースは、眩いエネルギーを全身に煌めかせ、ペニスーツマンを油断なく見据えていた。

「彼女は……ワンダのような強化人間か? フューリーの名前を出していたようだし、味方だと考えていいだろう」
「おいおい、誰かあの娘の知り合いはいないのかい?」
「知らないな。だが気に入った! 向こう気の強い面構えがな!」

アベンジャーズ』のBIG3キャプテンアメリカ・アイアンマン・ソーの面々がキャプテンマーベルの登場に困惑したが、思考を切り替え受け入れた。

「チンポコの男、ぶっ飛ばすのは、ハルクだ!」
「別に競争するつもりはないんだけど……」

 対抗心を燃やし吠えるハルクに対し、輝くエネルギーを両腕に纏いながらキャプテンマーベルは呆れた様子で腕を組む。
 キャプテンアメリカは自らの象徴たる盾を構え、アイアンマンはガントレットを敵へと差し向け、ソーはムジョルニアを天高く掲げた。

「皆、行くぞ……アベンジャーズ・アッセン……」
「今日は、定時で上がらせてもらいますぅ!」

 キャプテンアメリカが号令をかけようとした刹那、劣勢を悟ったペニスーツマンは背後の空間にクラックを展開した。そそくさとヘルヘイムの森へと避難し、やがてその場から消失した。

☆☆☆


「ひとまずは、我々の勝利だ。皆、よくやってくれた」

 突如撤退したペニスーツマンに対し唖然としていたが、切り替えキャプテンアメリカは勝利を宣言した。

 ソーやハルクはほぼ何もしていない為、どうにも不完全燃焼な表情を浮かべている。

「それで、君は何者なんだ?」
「私はキャロル・ダンヴァース。恩師マー・ベルの思想を受け継いだヒーロー『キャプテンマーベル』よ」

 トニーとキャロルが簡単に自己紹介を交わす。
 トニーは顎に手を添えながら

「そうか、よろしく。ところで、さっきはフューリーの名前を出してきたが……」
「そうだった! フューリー! 彼に謝りに行かないと!」
「ん、どうしてだい?」

 キャロルの慌てように、トニーが怪訝な顔で問う。

「通信機には『地球でペニス星人が暴れてる。君の力で鎮めてくれ』とメッセージが入っていたの。普通にセクハラメールだと思って出会い頭にぶっ飛ばしてしまったんだけど……念のために現場に来てみたら本当だったみたいで……」
「それは……ご愁傷様だな……」

 キャロルの力は凄まじい。
 果たしてフューリーの身体が原型を保っているかどうか疑問である。

「あのペニス星人は、私が責任をもって、宇宙の果てまで追いかけてでも仕留めるわ」
「僕らも同じだ。ここまでやられたからには、必ず『復讐(アベンジ)』を果たしてみせるさ」

アベンジャーズ』がペニスーツマンを明確な敵と見定めた。
 ペニスーツマンの明日はどっちだ。

☆☆☆

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?