ペニス―ツマン VS 鬼滅の刃

鬼狩りの剣士、竈門炭治郎・我妻善逸・嘴平伊之助の三名は人里離れた森の中を歩んでいた。
柱稽古がひと段落した最中、三人の拠点としている蝶屋敷付近の山で鬼が潜んでいるとの報告が入ったためだ。
各々の鎹鴉(かすがいからす)に導かれるように、炭治郎・善逸・伊之助の三人は、夜の帳が下りた森林を進んでいく。

「……なぁなぁ、炭治郎〜。そろそろ山を降りようよぉ〜」
「善逸……まだ鬼を見つけていないのに下りる訳にはいかないだろ?」

疲れ果てた声で呟く善逸に対し、炭治郎が呆れた様子で言葉を返した。

おざなりな対応をされた善逸は、納得がいかない様子で目をカッ!と見開き

「こんな人相書きを信用する方がどうかしてるだろっ! 首から下は洋装を着込んで、首から上はチンコが生えてる化物なんてさっ!」
などと叫んでいた。
至急された人相書きを天高く掲げながら、善逸はぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。
『ぺにすーつまん』と悍しい書体で書き記された怪人。
それは人相書きというよりは妖怪画と呼称するのが相応しい程に禍々しい姿であった。
様々な異形の鬼と相対してきた鬼殺隊の剣士である三人でも、このような変わり種をお目にかかったことはなかった。

「落ち着け、善逸。そういう形の鬼かもしれないぞ」
「いいや!違うね!絶対に子供の悪戯か何かだよ!俺達は無駄足を踏まされたんだよっ!」
「まぁまぁ……ともかく無駄口を叩く前に任務を遂行しよう。夜明けまでは見回りを続けるぞ」

喚く善逸を炭治郎が長男としての技量をもって宥めた。

「ギャハハハハッッッ!!! チンコの妖怪! 頭に弱点ぶら下げるなんて馬鹿みてぇだな! それに俺の方がチンコがデケェ!」

伊之助もまた喧しく騒いでいた。
掲げている刃こぼれした日輪刀の先には、ズタズタに裂かれた『ぺにすーつまん』の人相書きが突き刺さっていた。

「ちんこちんこ煩いぞ伊之助!まったく、禰󠄀豆子が居なくて本当によかった……」

山中で吠える伊之助を諫めながら、炭治郎は己が妹が同行していないことに安堵した。
日光を克服した最初の鬼となった禰󠄀豆子は現在、無残の手が及ばないよう鬼殺隊に匿われている為、任務には参加していない。
禰󠄀豆子もまた上弦の鬼とも戦い抜いたこともある猛者であるが、あのような卑猥な造形の異形と嫁入り前の妹を鉢合わせることにはとても抵抗があったのである。

「もし、コレが本物の鬼だとしたら、動きを見せない無残への手掛かりになるかもしれない。だから気を抜かずに……んっ?」

炭治郎はその優れた嗅覚で、善逸は聴覚、伊之助は触覚でもって違和感に気付いた。

「みんな、構えろっ! 何かが来るぞっ!」

炭治郎の言葉を受け、各々は日輪刀を構えながら油断なく来訪者を待ち構えた。

「はぁっ……はぁっ……よ、ようやく見つけたぞ……」

横道の藪の中より現れたのは、中世的な顔立ちの若い青年・タイムジャッカーのウールだった。
何やら息が上がっている様子である。

「何だぁ、お前……? 男なのに女みてーな格好しやがって! 弱っちそうな奴だな!」
「う、うわぁ……あ、アンタどこかの娼館から抜け出してきたのか……!?」

伊之助は困惑した様子で威嚇し、善逸はドン引きした声色で言葉を絞り出した。
青年の身に纏う衣装が常軌を逸脱していたからである。
頭には眩い黄色の鬘を被り、その上には兎の耳のようなリボンが付けられている。
上半身には臍出し袖無しのセーラー服。
鼠蹊部を申し訳程度に隠すミニスカートからは黒のTバックがはみ出ていた。
極め付けには、紅白の模様のニーソがその細い両脚を包み込んでいる。

「ち、ちがうっ! この格好は今の主人の趣味に合わせているだけだ! 僕は買春なんてやっていないっ!」
「嫌ァッッッ!!! 耳が腐るっ! 俺はそっちのケはないから! 心の底から勘弁してぇぇぇッッッ!」
「善逸! 失礼だぞ! 何か事情があるのかもしれないだろ! 俺達だって遊郭に潜入したことだってあるじゃないか!」
「あぁもう! 話を聞け!」
拒絶反応から悲鳴を上げる善逸を炭治郎が諫めた。
ウールはウンザリとした様子でため息を吐きながら

「ともかく、僕の目的はお前だ、我妻善逸」
「エェッ!? あ、アタイ……!?」

ウールに名指しされた善逸が吉原遊郭に潜入した時のようなテンションで狼狽える。

「僕の主人がお前をご指名なんだ。悪いようにはしないから、一緒に来てくれ」
「ふ、ふざけんなッ!!! そんな格好させるような奴のご指名にホイホイついて行ってたまるかよ!」
「まぁ、そうなるよね……仕方ない……」

拒否されるのは想定済みといった様子で、ウールはおもむろに右手を眼前に掲げた。

「ウオラァ! させるかぁーーー!!!」
「なっ!?」

突如、伊之助が日輪刀を投げつけた。
迫りくる刀に対し、ウールは咄嗟に体を反らせながら回避する。しかし次の瞬間には、首根っこの後ろを掴まれ地面に組み伏せられた。

「グゥ!? いつの間に……」
「暴れないでください! 俺達に危害を加えないと約束するのであれば、このまま解放しますから!」

日輪刀を投擲され気をそらされた瞬間にはもう、炭治郎は呼吸法により上昇させた身体能力を駆使し距離を縮めていた。
オーラやスウォルツとは違い、肉体的にはさほど強くないウールには炭治郎の力を振り解くことができない。

(く、くそぅ! 時間を止めることさえ出来ればこんな奴ら……!)

ウールは指を鳴らすことでタイムジャッカーとしての力、『時間停止』を発動することが出来る。
しかしながら、炭治郎により腕を万力の如き力で締め上げられている為、苦しげな声で呻くことしか叶わなかった。

「炭八郎、気を付けろ! そいつは鬼じゃねぇが、何か妙な力を使おうとしているぞ! その指が怪しいぜ! 俺の肌がビリビリと感じるんだよ!」
「わかっている! この人からは敵意の臭いを感じるから! 鬼が血鬼術を発動させる前のような危険な臭いも一緒にだ!」
「う、嘘だろ……生身の人間に、このタイムジャッカーであるこの僕が……!」

ウールは事前にタイムジャッカーの情報源を元に、我妻善逸が所属する鬼殺隊について調査を行っていた。
それは鬼と呼ばれし異形の撲滅を目的とする復讐者の集団。
鬼と渡り合う為に、隊員は独自の鍛錬を積み、超人的な技を身につけるという。
ウールの知識でいえば魔化魍から人々を守り続けた2005年の仮面ライダー響鬼に近い存在だろう。
どのような戦士であれど、アナザーライダーを生み出すときのように時間を止めさせすれば問題はないと高を括っていたことがウールにとって災いした。

「離せ! くそっ!」
「善逸は鬼殺隊に必要な、大切な仲間なんです……どうか諦めてください!」
「炭治郎ォォォーーーっ! ありがとなぁーーーっ! これで俺の貞操は守られたよぉーーーっ!」

敵を完全に取り押さえた炭治郎を見て、善逸は安堵の涙を流しながら奇声を上げた。
そんな最中であった。

「U.N.オーエンはオタクなのか?
お前ゆ虐見ながらシコッてんだろ? 」

何の前触れもなく、洋装を身に纏った男が現れた。
その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。

「撮った風景写真だけ見たいのにアニメキャプとかゲームのスクショとか野間口くんとかが混在してて絶望」
「いつの間に、居たんだ……!?」

物憂げな表情で洋装服の男が呟いた。
炭治郎は驚愕の表情で男を見据える。
気配も臭いも全く感じさせず出現した怪しげな男に対し、ウールを抑える手を緩めないままに対峙した。

坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「俺は鬼殺隊の竈門炭治郎だ! お前の目的は何だ!」
「やばい……やばいよ、炭治郎……そいつから酷く嫌な音がするんだ……鬼の音とは違うんだけど、聞いているだけで吐きそうになる気持ち悪い不協和音なんだ!」

警戒心を露わにする炭治郎に警告するように善逸が言葉を絞り出す。
そんなやり取りを気にもかけずに、洋装服の男・坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。

「またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……変身!」

逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。

「こんなことあるっ!?」

眼前に出現した異形はまさしく、人相書きに記されていた怪人『ぺにすーつまん』そのものであった。
あまりにも衝撃的なビジュアルに善逸は白目を剥いて気絶した。

「ま、待ってくれ、坂上……! 僕は失敗なんてしてない! これから挽回するところだったんだ! だから……」
「『ザーメンバンジーガム』」
「や、やめろォ!」

必死に弁解するウールへとペニスーツマンは容赦なく射精した。
組み伏せていた炭治郎は転がるようにして避けるが、ウールは粘着性の精液に絡め取られた。

「『ザーメンバンジーガム』はガムとゴムの両方の性質を持つクローバー︎」
「う、うわぁぁぁぁッッッ!!!」

ゴムの収縮の力で引き寄せられたウールは、そのままペニスーツマンが展開したクラックの穴へと放り込まれた。

「答えろ! お前は鬼舞辻無惨の手の者なのか!?」
「鬼舞辻無惨? いやぁ、知らないっすねぇ……偏差値20以下の人……?」
「無惨を知らない….? なら、この人のいう主人とはお前のことなのか!? 何故、善逸を狙うんだ!」
「いやだって、メインヒロインですしおすし……島風くんと化した善逸くん見たくない?」
「何を言っているんだ!?」
「マンコバズーカ下痢うんこコンサルティング株式会社」
「駄目だ! 会話が成り立たない!」

狂気じみた妄言をたれ流すペニスーツマンとの会話を切り上げ、炭治郎は改めて日輪刀を構え直した。

「猪突猛進! 猪突猛進!」

ウールへと投擲した日輪刀を拾った伊之助は、刃こぼれした二刀の日輪刀を掲げながら、ペニスーツマンへと突貫した。

「俺の推理が正しければこの職場催淫ガスが散布されて泣く泣く撤退することがある」
「勝手に泣いてやがれ! 紋逸の野郎はこの伊之助様の子分だ! テメェなんかには渡さねぇぞォォォッ!!!」

ネクタイを締め直しながら囁くペニスーツマンを無視しながら、伊之助が二刀を振りかざす。

「獣の呼吸 弐ノ牙 『切り裂き』!!」

ペニスーツマンの亀頭部へと、十文字の斬撃が刻まれた。

「なっ!? 硬てぇ!!」

しかしてその感触は、数々の鬼の頸を斬り落としてきた伊之助にとっても、経験したことのない程の強度であった。

「『タートルヘッドバッド』!」
「がはぁ!?」

困惑している伊之助へと、ペニスーツマンはのけ反った勢いを利用しながら、ガチガチに勃起した亀頭部を猪の被り物へと叩きつけた。

「伊之助! 大丈夫か!?」
「型破りなオナニーで保守的な日本企業を打破 してみせる……『アクセルローション』!」

吹き飛ばされた伊之助を炭治郎がどうにか受け止める。
そんな隙を見逃さず、ペニスーツマンは全身にローションを浴びることで技の準備を整えた。
摩擦力低減を利用した移動法『アクセルローション』により加速したペニスーツマンが高速で襲いかかる。

「雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』」
「んあっ!?」

迫り来るペニスーツマンを迎え撃ったのは、善逸が放った雷光の如き一閃であった。
ペニスーツマンの衝撃的なビジュアルを目撃し気絶していた善逸は『眠り』に入り、戦闘態勢に移っていたのである。

「『八閃』」
「あばばっっっ!? お腹でガスがぎゅるぎゅる言いまくっててうんこではなく俺の人間性だった……!?」

続けざまに善逸は合計で八度、ペニスーツマンを斬りつけた。
八回の踏み込みが一度にしか聞こえない程の神速での居合い斬りに、加速したペニスーツマンであってもなす術なく切り刻まれた。

「水の呼吸 捌ノ型 『滝壷』!」

駄目押しとばかりに、炭治郎が空中より怒涛の威力の打ち下ろしをペニスーツマンへと浴びせた。
技の直撃を受けて、もんどり打って転がるペニスーツマンを見ながら、炭治郎は苦い顔で呟く。

「何て硬さなんだ……! もしかしたら、上弦の鬼以上の強度かもしれない……!」

水の呼吸の中でも上位の威力を誇る捌ノ型『滝壷』でも傷一つ負わせることが出来なかったことに炭治郎は歯噛みする。
身体に負担はかかるが『ヒノカミ神楽』を使うしかないと決意しながら

「善逸! 伊之助! 同時に攻撃するぞ!」
「わかった」
「チィ! 俺に命令すんじゃねぇ!」

炭治郎の号令の元、三人の鬼狩りの剣士は即座に動いた。
かつての上弦の陸・墜姫を攻略した時のように、三人は連携を取りながらペニスーツマンへ迫っていく。

「むむっ!? 『ペニスミラージュ』!」

迫り来る剣士達を迎え撃つべく、ペニスーツマンは頭部から霧状のザーメンを射精した。幻覚効果を有する白濁した霧が辺りを立ちこめる。

「そんなもん効くかぁ! 獣の呼吸 拾ノ牙 『円転旋牙』!」

伊之助は両手の日輪刀を高速回転させ、白濁の霧を吹き飛ばした。

「雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』『神速』」

伊之助が霧払いした瞬間を射抜くように、善逸が稲光の如く駆け抜けた。
ペニスーツマンの亀頭部の根本へと超速度の居合抜きが刻まれる。

「いやーきついっす(素)……」
「まだだぁ! ヒノカミ神楽 『碧羅の天』!」

タタラを踏むペニスーツマンへ追い討ちをかけるように、炭治郎が切り札たるヒノカミ神楽をお見舞いした。

「ハッ…ハッ…アッー!アーツィ!アーツ!アーツェ!アツゥイ! ヒュゥー、アッツ!アツウィー、アツーウィ!アツー、アツーェ! すいませへぇぇ~ん!アッアッアッ、アツェ!アツェ!アッー、熱いっす!熱いっす!ーアッ! 熱いっす!熱いっす!アツェ!アツイ!アツイ!アツイ!アツイ!アツイ!アー・・・アツイ!」

炎を纏っていると錯覚する程の斬撃を受け、ペニスーツマンは身を焼かれるような痛みに悶絶した。

「ハッ……ハッ……ハッ……」
「呼吸が荒くなっている……攻撃が効いているのか……? いや、これは……まさか……!?」

息を荒らげるペニスーツマンを観察していた炭治郎に戦慄が走る。

「オラァ! チンコ野郎! その頸、伊之助様が貰ったぁ!」
「伊之助! 待つんだ!」

炭治郎の制止を振り切り、伊之助がペニスーツマンへと突撃した、その瞬間のことであった。

「摩羅の呼吸 壱ノ型 『破瓜の一突き』」
「がはぁ!?」

ペニスーツマンは、鋼の如く硬化させた亀頭部を槍のように突き刺し伊之助を迎撃した。
サーモンピンクの一撃を腹に受けた伊之助は、近くの大木に全身を叩きつけられた。

「雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』っ!」
「摩羅の呼吸 参ノ型 『螺旋扇情男根(らせんせんじょうだんこん)』」

善逸が超速の居合斬りを仕掛けるも、ドリルの如く回転し突貫するペニスーツマンにより弾かれ吹き飛ばされた。

「ぐっ……!?」
「伊之助! 善逸! くそっ! まさか呼吸法を使えるなんて!?」

人間を超越している異形が、身体能力を向上させる呼吸法を駆使するという驚異。
炭治郎はペニスーツマンを、上弦の鬼にも匹敵する、いまだかつてない強敵であると改めて認識した。

「……負けるものか!」

呼吸を整え、気炎を吐く。
やがて炭治郎の額の『痣』が黒々とした色に変化した。

「サルみたいにシコりたさが増してるんだけど、 かなり見すぼらしくなりました…… 」

炭治郎が放つ剣気が増したことを感じ取ったペニスーツマンが気圧させる。
構わずに、炭治郎は日輪刀を握りしめ、竈門家に伝わる神楽を舞った。

「摩羅の呼吸 伍ノ型 『大亀頭・拝み倒し』」
「ヒノカミ神楽 『陽華突』!」

ペニスーツマンが肥大化させた亀頭部を打ち下ろすと、炭治郎は天へと捧げる突きで迎え撃った。

「ヒノカミ神楽 『日暈の龍 頭舞い』!」
「摩羅の呼吸 肆ノ型 『暴れん棒・乱舞』」

龍が舞い踊るような剣戟と小便を切るためにちんこを振り回すような動きが激突する。

(重くて速い……! それに、悪臭で鼻が効かなくて動きが読めない……! 『隙の糸』も見つからないし、一体何なんだこの生き物は……!)

ヒノカミ神楽の連発によって、炭治郎の身体は悲鳴を上げていた。
それでも炭治郎は、一瞬でも気を抜けば押し切られると奮い立ち、ペニスーツマンへと刀を打ち込んでいく。

「ヒノカミ神楽 『炎ぶ……!?」
「摩羅の呼吸 捌ノ型 『八岐大蛇珍宝(やまたのおろちんぽ)』!」

ヒノカミ神楽がもたらした身体への負担により、技を繰り出すのが一瞬遅れてしまっていた。
そんな隙を見逃さず、ペニスーツマンは陰茎のしなりと慣性の法則を利用した勃起技を撃ち放った。
亀頭部が八つに増えたと錯覚する程のスピードで、鋼鉄のペニスの嵐が上下左右から炭治郎へと襲いかかる。

「お、おぉッ! 『炎舞一閃』ッ!!!」

炭治郎は咄嗟にヒノカミ神楽に雷の呼吸の踏み込みを掛け合わせた。
高速の突進から繰り出された灼熱の一撃は、遅れて技を打ち込んだにも関わらず、ペニスーツマンへと一方的に斬撃を刻み込んだ。

「ハァ……ッッッ! ハァ……ッッッ! こ、呼吸を整えないと……!」

身体への負担が限界まできた炭治郎が膝をつき、息を整えていく。
充分な手応えは感じたはずだとペニスーツマンへと視線を向けると

「ムクムクムク!(勃起)」

裂傷を刻まれながらも、ペニスーツマンは亀頭部をビンビンさせながら突っ立っていた。

「ま、マズい……早く呼吸を……」
「『ハイメガザーメン砲』」

ペニスーツマンの頭部より、莫大な量の精液が鉄砲水の如く射精された。
迫り来る驚異に対抗すべく、炭治郎が動かない身体に鞭打ちながら日輪刀を握り締めた、その時であった。

「水の呼吸 陸ノ型 『ねじれ渦』」

炭治郎の目の前に一人の青年が立ち塞がる。
彼が放った渦を巻くような剣戟により、精液の奔流は四方八方に飛び散った。

「義勇さん!」
「下がっていろ」

『水柱』冨岡義勇が助太刀に参上した。

『焦りから「おまんこがぐちょぐちょ!まるで漫湖だ〜〜〜Loveヶ崎!」って絶叫したら逮捕されて泣く泣く撤退することがある」

義勇が放つだだならぬ圧力を前に、ペニスーツマンが息を飲む。

「蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 『複眼六角』」
「ファッ!?」

義勇に気を取られていた虚を突くように、『蟲柱』胡蝶しのぶが舞い降りた。
蝶の紋様の羽織りを翻し、目にも止まられる速度の六連突きをペニスーツマンへと叩き込んだ。
炭治郎達が刻んだ傷へと寸分違わずに打ち込まれた連撃は、しのぶの日輪刀に仕込まれた毒をペニスーツマンへと蝕ませた。

「や、やめちくり〜」
「貴方に打ち込んだのは、『男性自身を鎮める薬』ですよ。その様子だと、充分に効果は発揮したようですね」

しのぶが笑顔で打ち込んだ毒の解説を行う。
鋼の如くガチガチに勃起していたペニスーツマンの亀頭部は、目に見えてフニャフニャになっていた。
如何なる勃起技も射精技も、勃起を封じられては用をなさない。
胡蝶しのぶは唯の一手でペニスーツマンを無力化していた。

「今日も定時で上がらせてもらいますぅ!」

ペニスーツマンは背後の空間にクラックを展開し、そそくさと逃げ去っていった。

その見事な逃げっぷりに、一同は鬼舞辻無惨を想起していた。
カァ……と鎹鴉の鳴き声が夜の森林に虚しく響いた。

星星星

「結局、アレは鬼じゃなかったんだろ! やっぱり無駄足じゃないかよ!」

花屋敷にて、善逸がいつものように喚いていた。

「そりゃあ、普通に無惨の名前を口にしていたし、血の臭いも全くしなかったし、少なくとも、人喰いではないはずだよ」
「そりゃあそうかもしれないけどさぁ! 俺は被害に遭いかけたんだよ! 性的に消費されたんだよ! 心の中の何かが奪われたんだよ!」
「善逸……俺達は鬼殺隊だろ。文字通り鬼を殺すのが目的だ。あのちんこ男が鬼とは関係ないのであれば、俺たちの出る幕はない。そうだろ」
「あぁもう! 正論なんて聞きたくないんだよ! もっと俺に優しくしろよぉ!」

ぎゃあぎゃあ喚く善逸を炭治郎が嗜める。
いつも通りの日常が繰り広げられていた。

「あのちんこ男……デカかった……いや、ミミズに小便かけて腫れた俺様のちんこの方がデカかったね!」
「下品な事を叫んでないで、静かになさってください!」

伊之助もまた、委員長タイプの鬼殺隊士・神崎アオイによって諌められていた。

(あのちんこ男……熊よりも猪よりもデカかった……! 鬼じゃあないってんなら奴はまさか山の王……!?)

独特の感性でペニスーツマンの姿に神秘性を見出した伊之助は、布団の中でガタガタと震えていた。

星星星

とある夜。
花屋敷が夜の帳の中で静まり返った時間に、与えられた自室で善逸はコソコソと着替えていた。
眩い黄色の鬘、兎の耳のようなリボン、臍出し袖無しのセーラー服、極短のミニスカートに黒のTバック、そして紅白の模様のニーソ。
紛れもなく『島風くん』の衣装そのものであった。
善逸宛で匿名で送られてきた衣装に身を包んだ善逸は鏡の前で己を見つめていた。

「やっぱり俺っていけるんじゃないかな……真剣に……」

己の中の新たな可能性を見つけた善逸が恍惚としていると

「善逸、稽古場に鍔を置きっぱなしにしてた……ぞ……」

ノックもせずに入ってきた炭治郎が笑顔のまま固まっていた。

「……こ、こんなことある……!?」
「……善逸……今後は、禰豆子にはあまりに近づかないでほしい……」
「待ってくれ炭治郎ォォォ!!! これは違うだぁーーーっ!!!」

善逸の甲高い叫びが夜の蝶屋敷に木霊した。

星星星

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?