ペニスーツマン VS コードギアス

 ジルクスタンと超合衆国の間に協定が結ばれた。
 乾いた砂漠の街中にあるアジトでそう報告を受けた細身の青年がほっと息をついた。
『悪逆皇帝』として死に、『共犯者』C.C.の我儘によって生き返った『絶対遵守』の力を持つ青年ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアである。

『黒の騎士団』の活躍により、ルルーシュは『戦士の国』ジルクスタンから最愛の妹ナナリーを取り戻すことに成功した。
 事後処理については、かの大将軍ボルボナ・フォーグナーが各方面との交渉を取り持ったとのことだ。
『ゼロレクイエム』によった成し遂げられた平和の世界にこれ以上の血が流れるのは、ルルーシュにとっても本望ではない。
 後顧の憂いがなくなったルルーシュは一つの決意を固めていた。

(もうナナリーは一人で立派に生きられる……俺がいたら邪魔になるだけだ……『ゼロ』はスザクに託した……ならば俺がやることは、C.C.と……)
ルルーシュッ! 大変だ!」

 ドアを蹴破る勢いで飛び込んできた扇要に、思索に耽っていたルルーシュが驚愕する。

「な、何事だっ!?」
「見たこともないような怪物に、いつのまにかアジトが包囲されているんだ!」
「怪物だと? ジルクスタンの新型兵器だとでもいうのか!? 具体的に報告をしろ!」

 ルルーシュは即座に思考を切り替え、緊急事態の対応に集中した。

☆☆☆

「A班C班は『鹿』を引きつけ後退! E班は密集している『蝙蝠』を殲滅! K班は10秒後に現れる『白虎』を奇襲しろ!」

 数十分後、ルルーシュは声を張り上げ『黒の騎士団』に指示を飛ばしていた。
『蜃気楼』の次世代機となる蒼きKMF『月虹影』の索敵能力を駆使し戦況を解析しながら、突如現れた驚異への対処を的確に行っている。
 扇要の報告の通り、『黒の騎士団』は未知なる怪物の襲撃を受けていた。
 灰色の体色にずんぐりとした達磨のような体型の異形が、やがて各種の獣の特性を備えし成長型へと変貌する。
 それは『インベス』と呼ばれし異世界の侵略者であった。

「……ジルクスタンの生物兵器とは考えられないな……このような切り札があれば、あの一戦のときにシャムナが出し惜しみする理由がない……後、考えられるのはギアス饗団関係だが……」
「残念ながら私にもあのような化物に見覚えはない。少なくともギアス饗団絡みではないだろう。分派である『ファルラフ』も同様のはずだ」
 緑髪の美女C.C.が端的にルルーシュの分析を補足した。
「……だろうな。そもそも協定が結ばれた舌の根が乾かぬ内に反故にするような愚を、フォーグナーが犯すはずがない……であれば、これはジルクスタンとは関連しない、完全なイレギュラーだと考えるのが妥当だろう」
『予言』の力を持つ強敵シャムナとの激戦の疲労が抜けてないルルーシュが憔悴した様子で声を絞り出す。
「……どのような未確認生物でも、未知なるギアスユーザーであろうとも、ナナリーへの驚異となるならば……この俺が排除する!」
 この場には最愛の妹ナナリーもいる。
 ルルーシュは未知なる驚異と相対する覚悟を口にした。

☆☆☆

「ハァァッ! 焼け落ちろ!」

『黒の騎士団』のエースパイロット、紅月カレンが咆哮した。
 同時に真紅のボディが輝くKMF『紅蓮特式』の右腕より輻射波動砲が放射される。
 輻射波動を浴びたインベス達の体液は瞬時に沸騰され、やがて一匹残らず爆散した。

「せっかく全部終わったと思ったのに、何だってのよもうっ!」

 復活したルルーシュと共にナナリーを取り戻しひと段落といった矢先に、未知なる怪物達は現れた。
 平穏を乱した怪物達に向けてカレンが怒りを露わにする。

「ここから先は通さない! ハァァ!!! 」

 純白のKMFランスロットsiN』を駆るのは新たなる『ゼロ』となった青年、枢木スザクである。
 龍のような造形の怪物、セイリュウインベス強化体と対峙した『ランスロットsiN』がエナジーウイングを輝かせながら空中を疾走する。
 やがて、MVS(メーザー・バイブレーション・ソード)の一閃が龍の首を切り落とした。

「怪物の数は多いけれど、今のところKMFで問題なく対処出来ている。問題は、奴らは……」
「そう、問題は『怪物は何処から現れた』かだ……」
 スザクとルルーシュが通信で会話を交わす。
「ジルクスタンとの協定は結ばれたとはいえ、決して警戒は怠ってはいなかった。あれだけの数の敵が『黒の騎士団』の警戒網を掻い潜ったなんて、僕には未だに信じられないよ」
「俺は『黒の騎士団』に落ち度があるとは考えていない。まだ仮説だが、敵は未知なるギアスユーザーである可能性が高い」
「またギアスっ!? 今度は一体どんなインチキ能力だっていうのよ!!」
『認識阻害』のギアスの使い手クジャパット。
 かの暗殺部隊の隊長に苦戦した記憶も新しいカレンが悪態をついた。
「今回の襲撃の首謀者は、怪物のような戦力とは別に、恐らくだが『空間を跳躍する能力』を有しているはずだ」
 ルルーシュが立てた仮説に、スザクとカレン、二人のエースパイロットが息を飲む。
「『空間を跳躍する能力』か。なるほど、そんな能力があるならどのような警戒網も無力化されるはずだね」
「……確証はあるの?」
 カレンの指摘に応ずるように、ルルーシュは二人へと映像データを送信した。
「『月虹影』の機能を駆使し集めた監視カメラの映像データだ。空間に出現する亀裂のようなモノを通り怪物達が現れるらしい。つまり、首謀者は戦場のいつ如何なる場所にも自らの戦力を自在に配置することが可能なのだろう」
「そんなギアスを持つ相手にどうやって戦えというの……?」
「……君の声を聞けばわかる。対抗策はあるんだろう、ルルーシュ?」
 ルルーシュの分析にカレンは顔をしかめるが、スザクは確証を持って問いかけた。
「戦場にタイムラグなく戦力を配置出来る能力は脅威ではあるが、裏を返せば首謀者の意図が色濃く反映されるという訳だ。実際に怪物達が不自然に発生した為に、能力を突き止めることが出来たからな」
 ルルーシュは不適に笑いながら解説を続ける。
「未知なる戦力や特異なギアスを持っていたとしても、それを扱う頭脳が三流以下ならば意図を読むのも容易い。首謀者は不自然にバラけるように怪物を配置している。大方こちらの戦力を分散させるのが目的だろう。念の為、ナナリーの側にはジェレミアとアーニャを配置したが……要らぬ心配だろう。敵の狙いは一つ、戦力を分散させることで手薄になる……」
「司令塔であるルルーシュか、側に仕えるこの私、ということだろう?」
 ルルーシュの解説を遮るように、C.C.が結論を言い放った。
 不満気な顔で押し黙るルルーシュを見て、満足した様子でC.C.が微笑んだ。
「僕達を近くに配置したのは、敵の狙いを外す為だったということか」
 ルルーシュとC.C.が乗る『月虹影』の側には
『紅蓮特式』と『ランスロットsiN』が配置されている。
 戦力が偏り過ぎており、通常では考えられない采配のようにも見えるが、これは首謀者が襲撃してきた際に最大戦力で迎え撃つための秘策であった。
「……その通りだ。俺の予測だとそろそろ首謀者が現れてもいい頃だが……」
「待ってルルーシュ、スザク! 民間人が巻き込まれている!」
 カレンの指摘に、ルルーシュとスザクの二人が前方へと意識を向ける。
 そこには一人のスーツ姿の男がぽつんと突っ立っていた。
「日本人が何故こんな所に!? ともかくここは危険だ! そこの君っ! 避難誘導に従ってすぐにこの場から……グゥッ!?」
 スザクがスピーカーを通して避難を促したその瞬間、目を押さえて蹲った。
 スザクはかつてルルーシュに『生きろ』という呪いにも似た『ギアスの呪縛』をかけられた。
 現在、スザクは強靭な精神力でこれを制御し、自らの潜在能力を引き出す力に変えている。
「……お前は一体、何者なんだ」
 警戒心を露わにしながら、スザクが呟いた。
『ギアスの呪縛』が反応したということは即ち、スーツ姿の男がスザクの命を脅かす程の驚異を秘めていることを示している。
「アラサーになるとシコるのも命がけだからアベンジャーズみたいな顔つきになりますよ」
 スザクの問いかけを無視しながら、スーツ姿の男は訳の分からないひとり言を呟いた。
 その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
 その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
 また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
 はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。
坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「サカノウエ、日本人か……年齢は20代後半……体格的に兵士や工作員には見えないが……」
 名乗りを上げたスーツ姿の男・坂上を注意深く観察し、ルルーシュが分析をしていると
「またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』…… 」
 坂上が放つ瘴気とも形容できる圧力が増大した。
 やがて坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言する。
「変身!」
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニスーツマン……爆現!」
「一体何なんだあの怪物は!?」
「……妙だな、あの男はギアスユーザーでもコードユーザーでもないようだが……」
 ペニスーツマンへと変身を遂げた坂上が威風堂々と名乗りをあげる。
 坂上のショッキングな変貌に狼狽するルルーシュを他所に、C.C.は怪訝な表情でペニスーツマンを観察していた。
「このままではサイズ感が合わないっすね。『妖術 肥大蕃息の術』!」
 突如、ペニスーツマンの股間から小槌が生えた。やがて腰をカクカクを振ることで妖術が発動し、ペニスーツマンの身体はムクムクと肥大化していく。
 やがてその身体はKMFと同じく4.5m程のサイズまで成長した。
「巨大化しただと!?」
 突如巨大化した未確認生物に驚愕し、思考が追いついていない様子のルルーシュへとペニスーツマンかその亀頭部を差し向けた。
「在宅勤務中にオナニー!! 何考えてる日本人!? 『ハイメガザーメン砲』!!」
ルルーシュ! 下がって!」
 日本人への不満をぶち撒けながら、ペニスーツマンが代名詞ともいえる技を射精する。
『月虹影』へと放たれた白濁の奔流を、カレンが操縦する『紅蓮特式』が遮った。
 輻射波動を円盤状に収束させ作り出したシールドによって受け止められたザーメンの奔流は、その熱量により一瞬で蒸発し消失した。
「くっさいっ!!! アイツ、なんてもん飛ばしてくるのよ!」
 蒸発したザーメンによって生じた悪臭にカレンが顔を顰める。
戊辰戦争で散った幕臣の集合体がトトロなんだよね……」
「そこだっ!」
 虚空を見つめて独り言を呟くペニスーツマンへ向けて、スザクが駆る『ランスロットsiN』が『ヴァリス』を撃ち放った。
 エメラルドの閃光にペニスーツマンが防御行動も取らずに呑まれていく。
「……暑すぎて焼きオタクになってる」
 ハドロン砲の洗礼を浴びたペニスーツマンがネクタイを締め直しながら平然と言い放った。
 多少スーツが焦げ付いているものの、負傷した様子はない。
「強化された『ヴァリス』がまるで通用しないなんて……!」
『シーセブン・アンチマテリアル・ヴァリス』。
 最新鋭へとバージョンアップされたはずの武装が効果をなさないことにスザクが絶句する。
「なら、こいつを喰らえ!」
『紅蓮特式』の代名詞ともいえる右腕の武装・『輻射推進型自在可動有線式徹甲砲撃右腕部』より放たれた輻射波動砲がペニスーツマンへと容赦なく浴びせられた。
 マイクロ波の嵐によって全身を加熱されたペニスーツマンは
「……暑すぎて熱田神宮になってる」
 と全身をクネクネと捩りながら呟いていた。
 あまりこたえていない様子である。
「何なのよ! あの生き物は!?」
ハドロン砲や輻射波動でも効果が薄いとなると、尋常ではないエネルギー兵器に対する耐性を有しているのだろう。ならば……!」
「わかっているよ!」
 ルルーシュの分析に応ずるように、『ランスロットsiN』が二振りのMVSを掲げた。
 意図を理解したカレンもまた『試製一號熱斬刀』を『紅蓮特式』の左腕に装備させた。
「ひとりにひとつずつもらえる自由と情熱のペニス……『カウパーバリア』からの『アクセルローション』!!!」
 ペニスーツマンの亀頭部よりヌメヌメとしたガマン汁が分泌された。
 続け様に、摩擦係数を下げることにより加速する奥義『アクセルローション』により、ペニスーツマンが高速で突撃していく。
 本来はぺぺローションを用いる技であるが巨大化した分の量を用意することが出来なかった為に、自らのカウパー液で代用した格好だ。
「神斬りにいくううううううあああああああ」
「は、速いっ!? このぉッッッ!!!」
 咆哮しながら迫り来るペニスーツマンへと『紅蓮特式』の肩部から『飛燕爪牙』が放たれる。
 しかし高速のKMF戦闘に慣れているカレンでさえも、滑るように疾走するペニスーツマンを捕らえることは叶わなかった。
「『アクセルローション』のバリエーション『ペニスピナー』!」
「舐めるなァァァ!!!」
 フィギュアスケート選手の如く高速回転し突貫するペニスーツマンに対し、カレンは正面から迎え撃った。
『紅蓮特式』の右腕の先に輻射波動を収束し展開させた『輻射回転衝角防御壁』をペニスーツマンへと叩き込む。
 灼熱のドリルとサーモンピンクのドリルが真っ向から激突する!
 やがて強大な衝撃波と共に両者は勢いよく弾かれた。
「カレン!! 無事か!?」
「今日の着地点が見えないのでこのまま粉砕骨折して死のうと思います……」
 スザクからの呼びかけに対し、応答したのはペニスーツマンのみであった。
 激突の衝撃によりカレンは気絶し、『紅蓮特式』も沈黙している。
「うおぉぉぉ!!!」
 己を鼓舞する為に哮けり、スザクが『ランスロットsiN』を縦横無尽に疾走させた。
 ペニスーツマンを驚異的な敵であると認識した上で、『ギアスの呪縛』の力を利用し自らの潜在能力を引き出していく。
ランスロットsiN』がエナジーウィングを煌めかせ、横回転しながらペニスーツマンへと迫り来る。
「むむっ!?『タートルヘッドバッド』!!」
 横回転し放たれた『ランスロットsiN』のキックを、ペニスーツマンが鋼の亀頭部でもって迎撃した。
「ハァァ!!!」
「……ぴえん超えてpain(痛みを伴うほどのぴえん)……」
 横蹴りの威力を受け止められずふらつくペニスーツマンへとスザクが追い討ちをかける。
ランスロットsiN』が振るう二刀のMSVの乱舞がペニスーツマンを切り刻んでいく。
「ぺ、『ペニスウィング』!!!」
 ペニスーツマンが亀頭部を横薙ぎに叩きつけ、『ランスロットsiN』が振るっていた二刀のMSVを弾き飛ばした。
「まだまだぁ!!!」
 スザクは微塵も怯まずに吠え、『ランスロットsiN』の両腕腰部から4基の『スラッシュハーケン』を射出した。
 両腕と両脚の付け根に楔を打ち込まれたペニスーツマンは、宙空で磔になったように拘束される格好となった。
「今は死を待つだけの人生ですね」
「この距離ならぁぁ!!!」
ランスロットsiN』が拘束したペニスーツマンを引き寄せ、ゼロ距離から『ヴァリス』の引き金を引いた。
「何!?」
 しかし、スザクの決死の接射攻撃は空を切る形に終わった。
「今日のゴール、それは霧の中」
 ペニスーツマンは咄嗟に自らに施した『肥大蕃息の術』を解呪していた。
 人間サイズへと縮小した結果、打ち込まれた『スラッシュハーケン』は外れ、『ヴァリス』のゼロ距離射撃を回避することが叶ったのである。
「『スペルマ流星群』のバリエーション『ネバネバ流星群』!!!」
 ペニスーツマンは亀頭部から白濁の玉の射精し、やがて花火の如く弾けたそれは精液の雨を撒き散らした。
 至近距離で弾けた精液の雨はスザクの操縦技術でもっても回避することは出来ず、『ランスロットsiN』の純白のボディが白濁に汚されていく。
 それは『ザーメンとりもち』で放たれるような、粘着性のある精液であった。
「くそっ!? 動け! 動いてくれ!!!」
 粘着性のザーメンに全身をぶっかけられた『ランスロットsiN』は完全に沈黙していた。
 各部の関節は固められ、脚部のランドスピナーも動かず、コクピットブロックを切り離すことさえも叶わない。
「『ブレイズルミナス』も体液に吸収されてしまうのか!? エナジーウィングも動かせない!? すまないルルーシュ! 僕達は失敗した! 逃げて作戦を立て直してくれ!」
 スザクの悲痛な叫びが沈黙した『ランスロットsiN』の中で木霊した。


☆☆☆


「一体どうなっているんだ!?」

『月虹影』のキーボードへとルルーシュが乱暴に拳を叩きつけた。

KMFに匹敵にする身体能力に人並みの知能を持つ怪物だと!? こちらの常識が一切通用しない相手に、どのような戦略を立てろというんだ!?」
「ついで言うとKMFを無力化するザーメンを吐き出すぞ」
「体液と言え!」
 軽口を叩くC.C.を叱りつけるルルーシュに余裕はない。
 スザクとカレン。
『黒の騎士団』が誇る最大戦力を無力化されたルルーシュは窮地に追い込まれていた。
ルルーシュ……私は二度同じ事を言うつもりはないぞ?」
「……わかっている」
 C.C.に諌められるまでもなく、ルルーシュは冷静さを取り戻し、改めて思考を加速させる。
「スザクとカレンとの戦闘から導き出された奴の能力・特性・性格・目的……全てを暴き出し、戦略を立てる!」

 ルルーシュが尊大に宣言し、C.C.は不敵に微笑んだ。

☆☆☆

「疲れすぎてつかこうへいになってる」

 ペニスーツマンが憔悴した様子で呟いた。
『紅蓮特式』と『ランスロットsiN』との連戦は確実にペニスーツマンを消耗させていた。

はえー?」

 もう一仕事頑張るぞいっ!と気合いを入れようとした矢先に、突如眼前の『月虹影』が両手を上げる姿勢をとった。
 俗に言う降伏のポーズである。
 コクピットブロックも開いており、ペニスーツマンを受け入れる体制だ。
 ペニスーツマンは特に警戒することもなく『月虹影』の中へと踏み込んでいった。

「ちょっとぉ、暗いんですけどぉ?」

 内部は全ての電源が落とされており、暗闇に染まっていた。
 ペニスーツマンが文句を言いながらキョロキョロと手探りで中を調べようとした、そのときであった。

「サカノウエ・サカコ……いや、ペニスーツマン、だったか……? ともかく我々は降伏する」

 突如電源が入り、ホールドアップの姿勢のルルーシュとC.C.がペニスーツマンを出迎えた。

はえー? そんな簡単に諦めちゃっていいんですか? ちょっと、解釈違いなんですケド……まぁ、いいや」

 少し落胆した様子のペニスーツマンが胸元から懐中時計のようなものを取り出した。

「C.C.さんの力、いただきますぅ」
「好きにするがいい。ただし、目的を果たした後はこの場から去ると約束しろ」
「ヒロインレース、最初から最後までずーっとC.C.さんが先頭引っ張ってそのままゴールしたな」
「うん? あぁ、まぁな……?」


 突拍子もないことを言われ困惑するC.C.へとペニスーツマンは『ブランクウォッチ』を押し当てた。


「ぐっ!? 私に、触れたな……!」
 ペニスーツマンが押し付けた『ブランクウォッチ』 へ力が流出していくのを感じながらも、C.C.は自らの能力を発動させた。
「お……お……オクレ兄さん……」
 C.C.の額のコードが輝き、『ショックイメージ』がペニスーツマンを直撃した。
 ペニスーツマンはトラウマの奔流に呑まれながら、何やらうわ言を呟いている。
 底無しの虚無のような精神のペニスーツマンと共鳴したC.C.もまた頭を押さえている。
「うぅ……! る、ルルーシュ!」
 C.C.が叫び、ルルーシュの作戦が成功したことを伝えた。
 電源を落とした『月虹影』へ入った際に、ペニスーツマンは『暗い』と発言していた。
 これで目はないが、何らかの形で視覚情報を得ていることが確定した事で条件はクリアされた。
 次にC.C.の『コード』の力を求めて接触した際に『ショックイメージ』を発動し、隙を作る。
 コードユーザーでもなく、視覚がある知的生物であれば『絶対遵守』のギアスは有効であるとルルーシュは結論したのだ。


「《ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる》」
 ルルーシュが『絶対遵守』のギアスの力で、荘厳に宣言する。


「《死ぬまで射精しろ!》」


 ルルーシュの『命令』がペニスーツマンの脳髄へと刻まれていく……


「イエス・ユアハイネス!」


 虚な瞳?で重々しく承ったペニスーツマンの亀頭部から白濁の爆発が生じた。

☆☆☆

「ゴハァッ! ゲホォッ!」

 全身が精液でベトベトになりながらむせるルルーシュが『月虹影』から抜け出した。

「緊急の策にしてはまぁまぁ上手くいったんじゃないか?」

 同じくエロ漫画でしかお見えにならないような状態のC.C.がルルーシュの肩を支えている。

「あ、あんなものが策と言えるものか……一か八かの賭けを策などと……」

 憔悴した様子のルルーシュが言葉を絞り出す。

「勃起したペニスを叩けつけたり、ザーメンを浴びせたりと、口にするのも悍しい奴の技の数々だが……突き詰めると萎えていたら無力化できるという訳か。死ぬまで射精させるという命令は致命的に違いないだろう」

 C.C.が感心した様子でルルーシュの作戦を褒め称えるが、内容が内容なだけにルルーシュは気まずく苦い表情になっていた。

「ひとまずは無力化したが……アレは一体何だったんだろうな……」
「『ショックイメージ』のときに奴の記憶を垣間見たが……一言で表すならアレの正体は『異なる世界を巡る旅人』だな」

 C.C.の表現にルルーシュを怪訝な表情で首をかしげる

「『旅人』だと?」
「そう、『旅人』だ。この世界であれだけ暴れ回って撃退された以上、もう別の世界に旅立っているだろう。アレはそういう、傍迷惑で無責任で曖昧な生き物だ」

 C.C.の解釈が正しければ、ペニスーツマンはもうこの世界には居ないという。
 完全に理解出来た訳ではないが、C.C.の言葉を信じる事にして、ルルーシュは漸くひと段落つくことにした。

「……ともかくシャワーを浴びたい」
「そうだな。ところで、こんな姿をナナリーに見られでもしたら、あらぬ誤解を生んでしまうのではないか?」
「絶対にナナリーに見られないようにしろよ! いいか!? 絶対にだぞ!!!」
 魔女のように微笑むC.C.へとルルーシュが喚いた。
 危機を乗り越え、絆が深まった二人は並んで歩んでアジトへ戻っていく。
 明日からもまた並んで歩んで生きていくことになるのは映画の結末の通りである。

☆☆☆

「か、『カウパーバリア』でギアスへの耐性を得なかったらテクノブレイクするところだった……!」

『ギアス』への耐性を身につけて、ようやく『絶対遵守』の命令から解放されたペニスーツマンがヘルヘイムの森で仰向けに倒れていた。
 ペニスーツマンは起き上がり、懐から新しく手に入れた『ライドウォッチ』を取り出した。

「ようやく手に入れた『C.C.ライドウォッチ』……これにウヴァさんから借りたコアメダルを混ぜ込んでっと……」

 ウヴァさんのクワガタコアメダルが『C.C.ライドウォッチ』に吸い込まれていく。
 やがて『ライドウォッチ』の絵柄に写し出されたC.C.のイラストに、大きな角・正確には大顎が追加で描かれた。

「『クワガタC.C.ライドウォッチ』、ゲットだぜ。次はこのウール君とかいう生意気そうな少年をメスにしたいなぁ〜〜〜」

 手に入れた『クワガタC.C.ライドウォッチ』を満足げに眺めながら、ペニスーツマンが更なる欲望を吐き出した。

☆☆☆

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?