ペニスーツマンが異世界転生 第3射精

「この野郎醤油瓶……!」

 坂上が金髪の少女を睨みつけ、啖呵を切った。
 逸物を露出させることで怪異ペニスーツマンへと変貌せんとジッパーに手をかけると
「兄ちゃんは下がってな」
 大きな掌に肩を叩かれた坂上が振り返った。
「見たところ貴方は『冒険者』ではないのでしょう? 僕たちにお任せあれ」
「我らが姫騎士アリサが必ずや『デザイア』の魔物を討伐してみせまする」
 筋骨隆々な戦士然とした大男、眼鏡をかけた魔法使い風の青年、身の丈以上の杖を抱えた僧侶のような老人にそれぞれ声をかけられた。
 件の金髪の少女の仲間であると、坂上は推測した。
「輝け!『 ピュアホワイトスパーク』!」
 姫騎士と呼ばれた少女アリサが剣を掲げると、純白の稲妻が剣先より迸った。
 稲妻が少女を取り囲む巨大な蟷螂達を貫き、虫達を炭へと変えていく。
 そんな光景を坂上が苦虫を噛み潰したような顔で見守っていた、そのときであった。
「よくもアタシの子供達を焼きやがったな!」
 舌ったらずの声が森林に木霊した。
 小さな幼女が、鋭い目付きで姫騎士とその仲間たちを見据えていた。
 緑色の体色に、小さな頭から長い触覚が生えたその姿は、明らかに人間離れした外見であった。
「エッッッッ!」
 しかし、坂上にとって、昆虫を擬人化したようなその姿はどストライクであった。
 思わず絶叫し、坂上は軽く射精をしてしまっていた。
「魔物生み出す元凶……『デザイア』の一角、スナッチ……! 今日があなたの命日になります!」
 姫騎士アリサが凛とした声音で、昆虫の如き幼女へと宣言した。
「魔物を生み出す? 違うな。生み出しているのはお前達人間の『欲望』さ! アタシ達はお前達の悪意をエサにしているだけにすぎないんだよ」
 魔物を生み出す元凶と呼ばれた虫幼女スナッチが不敵な笑みを浮かべて応じる。
 彼女がボロ布を継ぎ接ぎしたようなワンピースの上からお腹をさすった。
 そのお腹は、さながら臨月に入った妊婦のように、その小さな体にアンバランスな程に膨れていた。
 やがて、スナッチの股下から、ポロッと野球ボール程の大きさの『卵』が産み出された。
「……行け!『クッコロスパイダー』っ!」
 スナッチが自ら産み落とした『卵』を蹴り飛ばした。
 宙空を飛ぶ『卵』が緑色の閃光と共に爆ぜる。
 瞬間、坂上よりも頭一つ大きい針金細工の人形のようなシルエットが出現した。
「八個の単眼、発達した上顎、それに出糸突起……! え、エロい……!」
「剣よ、閃けっ!『ミルクホワイトストリーム』!」
 蜘蛛を人型にしたような怪物を前に何やら興奮している様子の坂上に気にかけず、姫騎士アリサが舞うように剣技を繰り出した。
「……ど……どうして……?」
 人間離れした速度で振るわれた剣技を、クッコロスパイダーは予測していたように避け、アリサの身体を糸で捕縛していた。
「さぁ、『欲望』を解放しろ!」
 スナッチが口元を三日月のように歪ませ、宣言した。
 糸で手足を拘束されたアリサが、蜘蛛の触肢に甲冑を取り外され、為す術もなく肌を露わにされていく。
「い、いや……助けて! みんな助けてぇッ!!!」
 クッコロスパイダーの口元から飛び出たグロテスクな生殖器が姫騎士の秘部を貫かんとする。
 仲間達に必死に助けを求めたアリサは、驚愕に目を見開いた。
「ハァッ……ハァッ……ハァッ……」
「ちくしょう勃起が半端ねぇ!」
「後生だ! 眼鏡を、フィニッシュ前に眼鏡をかけさせてくれ!」
 仲間達三人はアリサの痴態を見物しながら、あろうことか自慰に興じていた。
 仲間の一人、魔法使い風の青年のリクエストに応じて、クッコロスパイダーが何処からか取り出した眼鏡をそっとアリサにかけた。
「み、みんな……なに、を……?」
「鈍いヤツだなぁ!『クッコロスパイダー』はお仲間の『欲望』から生み出された魔物なんだよ! 揃いも揃って仲間達は、お前が魔物に敗北し、無様に純潔を散らす様を心の底で望んでいたのさ!」
 アリサが絶望に染まった表情で、改めて仲間達を見つめた。血走った眼でアリサの痴態を凝視しながら、一心不乱に己の逸物を擦る男達がそこにいた。
「すみません! すみません! 姫騎士アリサ! 至高のオカズが目の前にあるんです! オナニーせずにはいられないのです!」
「……アアア………アァァァァッッッ!!!」
 魔法使い風の青年から投げかけられた言葉が、姫騎士アリサの心を粉々に砕いた。
 獣のように咆哮するアリサを前に、クッコロスパイダーは黙々と己が務めを果たした。
 アリサが純潔を失ったのと同時に、仲間達三人は生涯最高ともいえる射精を果たした。
「蜘蛛は頭部の触肢にスポイトのように精液を貯めて、これを生殖器のように使い雌と交接するからなぁ……口からチンコが出たのはその名残なのか」
 スナッチの姿を見て既に射精を果たしていた坂上は、穏やかな海のように落ち着いた賢者タイムの精神で、クッコロスパイダーの生態について考察していた。
「……しんでしまえ……あなた達なんて……みんな……死んでしまえ……!!!」
 クッコロスパイダーに現在進行形で陵辱されているアリサが仲間達へ向かって怨嗟の叫びをあげた。
 瞬間、虫幼女スナッチのお腹がボコっと膨れ上がった。やがてその股下から、ポコンとバスケットボール程の大きさの『卵』が産み出される。
「アハハハッッッ! 今回のは大物だなぁ! いけぇ、『パイプカットマンティス』!」
 緑色の閃光と共に『卵』から生み出されたのは、身の丈5m以上もある巨大な蟷螂であった。
「ハァッ……ハァッ……ガァゥッッ!?」
 蟷螂の魔物・パイプカットマンティスが自慰に耽る仲間達を、その巨大な鎌でもって横一文字に両断した。
パイプカットどころじゃないんだよなぁ……」
 腰の辺りで切り離されている死体三体を前に、坂上が冷静なコメントを残す。
 そんな坂上へと、パイプカットマンティスが鎌を振り上げ威嚇した。
「別に私はオナニーなどしてないのに……男なら見境なしってことですかね」
 そんなことを呟きながら、坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
「変身!」
 坂上が威風堂々と宣言する。
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「我が名は哲学する男性器『ペニス―ツマン』……命をかけて、かかってこい!」
 ペニスーツマンの『異世界』における最初の戦闘の幕が切って落とされた。