ペニス―ツマン in アローラ 後編

 サカコは徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。
「変身!」
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「我が名は哲学する男性器『ペニス―ツマン』……命をかけて、かかってこい!」
 突如出現した珍妙な姿形のモンスターを前に、幻と呼ばれるポケモンとも相対してきたミヅキ達でさえも息を飲んだ。
「うわわわっー!?」
「これは……ゾロアークの『イリージョン』のような幻惑効果か……いや、人間に『へんしん』していたとでもいうのか……?」
 ハウはただただ悲鳴を上げ、ククイ博士は何とか持ち前の知識で理解しようと試みている。
「……あの姿は……もしかして、お母様と同じ……」
 その異形は、リーリエの母親・ルザミーネが『ウツロイド』に寄生され融合した姿『マザービースト』を彷彿させた。
「これ以上の犠牲者を出さないためにも、わたし達でやっつける! アシレーヌ、『うたかたのアリア』!」
 顔を青くするリーリエを励ますように、ミヅキが力強くアシレーヌに指示を出す。
 アシレーヌは喉を震わせ歌唱し、水のバルーンの群れをペニスーツマンへ直撃させた。
……しかし
「インターネットでは冷静になったほうがいい」
 ペニスーツマンにはこうかはないみたいだ……。
「……どうしてっ!?」
「ガオガエン、『フレアドライブ』だ!」
「ジュナイパー、『リーフブレード』!」
 困惑するミヅキを援護するように、ハウとククイ博士がペニスーツマンへ追撃する。
 ガオガエンの炎を纏ったタックルとジュナイパーの葉っぱを束ねた剣がペニスーツマンへと叩き込まれる。
「カスが効かねえんだよ(無敵)」
 そのどちらも、こうかはなかった。
 驚愕に目を見開く三人だが、続けて指示を飛ばしていく。
「アシレーヌ、『ムーンフォース』で追撃!」
「ガオガエン、今度は『DDラリアット』で攻撃だ!」
「ジュナイパー、『かげぬい』を放て!」
 三種の技が直撃し粉塵が巻き起こるが、ペニスーツマンはポケットに手を突っ込みながら腰をカクカクと動かし挑発していた。
「頑張ってアシレーヌ、『ハイパーボイス』!」
「まだまだー、ガオガエン、『クロスチョップ』だ!」
「ジュナイパー、続けて『ブレイブバード』!」
「ファッ!?」
 声による振動波も十字に交差させた両手チョップも余裕をもって受け止めたペニスーツマンであったが、翼を折り畳み突撃するジュナイパーのひこう技『ブレイブバード』の直撃を受けた瞬間には、体をくの字に曲げながら吹き飛んでいた。
「『ブレイブバード』は通った……? ヌケニンの『ふしぎなまもり』のように、無力化できないタイプがあるということか!?」
 ポケモンの『わざ』の研究家であるククイ博士が分析を進める中、ミヅキが更なる追撃を加える。
「アシレーヌ、『サイコキネシス』!」
「ンアッー! 」
 アシレーヌが放った念動力波もまたペニスーツマンへ通じていた。
 甲高い叫び声を上げながら砂浜を転げ回るペニスーツマンを横目に、ククイ博士が一つの仮説を打ち立てる。
「みず、ほのお、くさ、フェアリー、あく、ゴースト、ノーマル、かくとうは効果がない……しかし、ひこうとエスパーの技は通じた……おそらくだが、ペニスーツマンは今までに戦った『キャプテン』や『しまキング』が得意とするタイプに耐性を身につけているはずだ」
 ククイ博士が唱えた仮説に、ミヅキとハウが困惑した様子で首を傾げる。
「えーと、どういうことー?」
「確かに、カヒリさんが襲撃されたとは聞いてないし、エスパータイプの『キャプテン』や『しまキング』はいないけど……」
「あとは、むし・どく・はがね・こおり・ドラゴンだね。ぼくの仮説が正しければ、これらのタイプの技であれば通用するはずだよ」
 思案顔で理解しようとするミヅキとハウへ、ククイ博士が補足した。
「だったらー、ガオガエン、『げきりん』!」
「ヒェッ!?」
 ドラゴンのオーラを纏ったガオガエンがペニスーツマンへと突貫する。
 情けない声を上げながら、ペニスーツマンは吹き飛ばされた。
「どうやら、仮説は正しいみたいだね?」
「私の『特性』を看破するとはお見事……しかし、その全てを理解している訳ではないようだ……」
 ペニスーツマンの不気味な呟きを振り切るように、三人は一気に勝負を決めにいった。
「アシレーヌ、『サイコキネシス』!」
「ガオガエン、そのまま『げきりん』だ!」
「ジュナイパー、『ブレイブバード』!」
 有効とされる三種のタイプの技を前に、ペニスーツマンは余裕の態度を崩さなかった。
「そんなんじゃ虫も殺せねぇぞォ!」
 しかし、こうかはないようだ……。
 先程の醜態が嘘のように、ペニスーツマンは平然と受け止める。
 その身体は、ヌラヌラとした透明な液体が太陽に反射し輝いていた。
「これぞ、我が『特性』……『カウパーバリア』! このペニスーツマンに同じ技は二度も通じぬっ!」
「馬鹿なっ!? たった一度でも技を受ければ、そのタイプに耐性を得てしまうとでもいうのか!? そんなデタラメな『特性』が存在するのか!?」
 ククイ博士が声を荒らげていた。
 ミヅキとハウも、その余りにも理不尽な能力を前に顔をしかめる。
「どうする……? 耐性を得てしまう前に、『いちげきひっさつ』で仕留めるしかしないか……? こおりタイプがまだ有効であるなら『ぜったいれいど』を当てれば……」
「『すなあらし』や『あられ』による天候効果によるダメージ……あとは『かたやぶり』や『いえき』等で『特性』自体を無力化するとか……?」
「でもー、おれ達のポケモン、そんな技覚えてないよー」
 ククイ博士とミヅキが何とか打開策を考えるも、ハウの指摘に閉口してしまう。
「さて……作戦会議は終わりましたかな? 今度はこちらからイキますぞ、『タネマシンガン(意味深)』!」
 ペニスーツマンの亀頭部から、子種(タネ)が連続して放射された。
「アォォン……!?」
「アシレーヌ!?」
 こうかはばつぐんだ!
『タネマシンガン』の弾幕を浴びたアシレーヌがビクビクと痙攣しながら大ダメージを受けた。
 悲痛な面持ちとなったミヅキが、やがて一つの決意をする。
「……リーリエ、お願いがあるの……」
「……ハッ!? はい、何でしょう?」
『どうみても精子です』と言いたげな表情で硬直していたリーリエが、ミヅキに声をかけられた事で我に返った。
「今からポケモンセンターに行って、1ぴきのポケモンを引き取ってきてほしいの……あいつに勝てるのは、もう『でんせつのポケモン』しかいないと思うから……」
 ミヅキの言葉の意図を察したリーリエが力強く頷いた。
「わかりました!『ほしぐもちゃん』ですね! 急いでとってきます!」
「お願い……それまでの時間は何とか稼いでみせる……!」
 ミヅキの宣言に続くように、ククイ博士とハウが複数のモンスターボールを取り出した。
ポケモンには様々な『わざ』があるんだ。どうにかしてみせるさ」
「がんばって時間かせぐからー、リーリエーもがんばってねー」
 ハウオリのビーチに砂塵が巻き起こる中、リーリエは走り出した。
 ミヅキ達とペニスーツマンの戦闘の激しさを背に感じながら、リーリエは懸命に駆けて行く。

☆☆☆

「フハハハハハハッッッ!『タネばくだん(意味深)』を喰らえ!」
「アマッ!?」
「そ……んな……」
 ペニスーツマンの笑い声が響き渡る。
 子種(タネ)の爆弾が炸裂し、長い美脚が特徴的なフルーツポケモン・アマージョは戦闘不能に追い込まれた。
 最後の手持ちポケモンを倒されたミヅキは……めのまえがまっくろになった。
「お待たせしました! 皆さん、大丈夫ですか!?」
 マスターボールを大事に抱えながら、リーリエがビーチへと戻ってきた。
 やがてリーリエは、白い砂浜に膝をつくミヅキと、同様の状態のハウとククイ博士の姿を目撃する。
「うそ……ハウさん……ククイ博士……ミヅキさんまで……」
 アローラ地方チャンピオン・ミヅキを筆頭に、彼女に匹敵する実力者であるククイ博士とハウが悉く敗れ去ったという事実にリーリエは驚愕する。
 そして、それ以上にリーリエは怒っていた。
「ひどいです! ひどすぎます! ポケモンさん達を必要以上に痛めつけて……それで、その、汚すなんて、ひどすぎる行為です!」
 ビーチに横たわるミヅキ達のポケモンは、どれも精液に塗れていたのである。
 それは、ポケモンバトルの領域を超えた陵辱的行為であるとリーリエは憤っていた。
 所謂『おこリーリエ』である。
「ならば、どうしますか?」
「こらしめてやります! 出てきて、『ほしぐもちゃん』っ!」
 たどたどしい挙動で、リーリエはマスターボールを投擲する。
「ラリオーナッ!!」
 太陽の使者として崇められし『でんせつのポケモン』が咆哮をあげながら降臨する。
 にちりんポケモンソルガレオ
 或いは『ほしぐもちゃん』。
 コスモッグの頃より、リーリエと共に冒険を繰り広げた仲間である。
「爆弾クンニリングス魔神、クサマンコ=ペロペロリーニョ様を信仰しなさい……!」
「ひぃっ!?」
 突如宗教めいたことを語り出したペニスーツマンにリーリエは悲鳴をあげてしまう。
 そんなリーリエを庇うように、ソルガレオは牙をむき出しに威嚇をした。
「……まっ、負けませんよ! ソルガレオさん、お願いしますっ!」
 リーリエの声に応じるように、ソルガレオは咆哮する。
 ソルガレオの額に紋章が浮かび上がり、その全身から太陽の如き閃光が放射される。
『ライジングフェーズ』と呼ばれし姿となったソルガレオが天高く跳躍した。
「射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。
 大自然に満ちる精力よ、我が睾丸へ集え……!」
 呪文めいた言葉を囁くと、ペニスーツマンもまたその姿を変貌させていく。
 アローラの大自然の力がペニスーツマンの金玉に集い、身体中を駆け巡る!
「……こ、これはナッシーさん……? いえ、まさか……!?」
 その姿は、リーリエに『ナッシーアイランド』で遭遇した『アローラのすがた』のナッシーを彷彿させた。
 胴体部はそのままに、亀頭部にあたる部分が異常なまでに伸びたアンバランスな造形。
 それは、アローラの大自然の力が生んだペニスーツマンの『リージョンフォーム』とも呼べる姿であった。
「ほ、本で読んだことがあります……男性の陰茎は勃起時に数倍以上に膨張するものであると……おそらく、これがペニスーツマンさんがゼンリョクした姿……なのでしょう……!」
 よくわからない解釈をしたリーリエが、真正面からペニスーツマンを見据えた。
「こちらもゼンリョクで応えるとしましょう! ソルガレオさん、『メテオドライブ』!」
「喰らいなさい、『ハイメガザーメン砲』!」
 ソルガレオが太陽の輝きを纏いながら、天降る隕石の如く突貫した。
 対するペニスーツマンもまた、伸びきった亀頭部の先端より、精液の奔流を射精する。
メテオドライブ』と『ハイメガザーメン砲』。
 二つのゼンリョクがぶつかり合い、時空を揺るがす程の衝撃が大気を震わせた。
 白濁とした閃光に呑まれ、たちまちリーリエは意識を失った。

☆☆☆

「リーリエ! 目を覚ましてっ!」
「うぅ……ここは……?」
 ミヅキの呼びかけに、リーリエは朧げに意識を覚醒させていく。
「……お気に入りのお洋服が……ベトベトです……」
 身体に違和感があり見下ろしてみると、そこにはベトベトした白い液体がぶっかけられていた。
「ペニスーツマンが撒き散らした白い汚いの、『ネバネバネット』みたいにくっついてなかなか落ちないの! 本当にメイワクだよね。何なんだろう、コレ?」
 気落ちするリーリエに賛同するように、ミヅキが声を荒らげる。
 無論、リーリエは『本で読みましたがこれは精子です』と即答できたが、口が裂けても言えなかった。
「あの、それで、ペニスーツマンさんは……?」
「大丈夫っ! リーリエとソルガレオが、ちゃんとやっつけてくれたよ!」
 ペニスーツマンがいなくなったことを確認したリーリエはひとまず安堵した。
「『メテオドライブ』は『特性』を無視して攻撃できる『わざ』だから、ペニスーツマンに有効だったんだろうね。いい選択だったよ、リーリエ」
「リーリエー、かっこよかったよー!」
 ククイ博士とハウが、頑張ったリーリエへと賛辞の言葉を送る。
「よかったです……! 皆さんがご無事で、本当によかった……」
 リーリエは太陽のように微笑みながら、アローラに平穏を取り戻したことを心の底から喜んだ。

☆☆☆

 淡い光を放つ結晶に照らされる薄暗い世界。
 そこは『ウルトラスペース』と呼ばれる異世界であった。
「なんやこの旧態依然とした化石企業は。全トイレ逆流して下総国ウンコカーニバル勃発してくたばれや。ハナクソがよぉ!」
 いちゃもんめいた言葉を垂れ流しながら、ペニスーツマンは『ウルトラビースト』と呼ばれしポケモン達を追いかけまわしていた。
 ソルガレオの『メテオドライブ』は、副産物として『ウルトラホール』を開く効果を持っている。
メテオドライブ』の直撃を受けたペニスーツマンは、開かれた『ウルトラホール』に咄嗟に身を隠すことで危機を間逃れたのである。
 辿り着いた『ウルトラスペース』は、ペニスーツマンにとってハーレムも同然の楽園であった。
 虫の類に欲情するペニスーツマンは、特に2匹のウルトラビーストに目をつけた。
 筋肉を見せつけるぼうちょうポケモン・マッシブーンとフェロモンを撒き散らすえんびポケモン・フェローチェ。
 逃げ回るマッシブーンとフェローチェに狙いを定め、ペニスーツマンはローションを手に取り叫ぶ。
「『アクセルローション』!

 知らなかったのか? ペニスーツマンからは、逃げられないっ!」
 ローションによる摩擦を軽減したことより生まれる超スピードで、ペニスーツマンは異形のウルトラビーストを性奴隷(なかま)にするべく追い立てる。
 薄暗い『ウルトラスペース』に、嬌声とも悲鳴ともいえない鳴き声が響き渡った。

ペニス―ツマン in アローラ 前編

 アローラ地方・アーカラ島。
 世界的に有名なリゾート地とされるハノハノビーチに、夜の帳が下りていた。
 日中は太陽に眩く照らされている純白の砂浜も、今は漆黒に染まっている。
 さざ波が静かに打ち寄せる中、闇に紛れるように一人のスーツ姿の男が佇んでいた。
「とうとう見つけたぞ。お前だな、近頃『島巡り』を荒し回っているというやつは」
 引き締まった上半身をさらけ出した、浅黒い肌の青年が語りかけた。
 アーカラ島の三人の『キャプテン』の一人、ほのおポケモンの使い手・カキである。
「誤魔化したってムダですよ。このアローラ地方で、そんなにキッチリとしたスーツを着てる人なんて、そうは居ないのですから」
「ライチさんを傷つけたこと、きっちりとお返しするんだからっ!」
 青色の髪の襟足が跳ねたショートヘアの少女・スイレン
 緑色の髪と大きな花飾りが特徴的な少女・マオ。
 残る二人の『キャプテン』の少女達もまた、スーツ姿の男を取り囲むように立ち塞がる。
「サカノウエ・サカコと申します。またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……」
 スーツ姿の男・サカコが堂々と名乗りを上げた。
 困惑する三人の『キャプテン』達を余所に、サカコは徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
「変身」
 突然の露出行為にひぃっ!?と悲鳴を漏らす少女達に構わずサカコが宣言すると、その逸物から神々しい光が放たれた。
 白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」
 眼前で出現した珍妙な姿形のモンスターに、様々なポケモンと相対してきた『キャプテン』達でさえも言葉を失っていた。
「……ポケモンとは程遠い異形……まさかお前が噂の『ウルトラビースト』とかいう存在なのか……?」
「ウルトラビースト先輩……」
 辛うじて口を開いたカキが困惑の言葉を浮かべ、対峙するペニスーツマンが曖昧な言葉を返す。
「……オォン!」
 やがてペニスーツマンはビクビクとその亀頭部を震わせ、三人の『キャプテン』を威嚇し始めた。
「頼むぞ、エンニュート!」
「お願いします、ヨワシ!」
「行っけぇ、ラランテス!」
『キャプテン』達は即座に、各々が鍛え、育て上げた『ぬしポケモン』と呼ばれる切り札を繰り出した。
 どくトカゲポケモン、エンニュートが喉を震わせ
『海の魔物』と恐れられる『むれたすがた』のヨワシが咆哮し
 鎌状の花びらを振りかざしながら、ラランテスが威嚇する。
「アローラを脅かす脅威……ここで排除させてもらう! エンニュート、『はじけるほのお』!」
 ヴェラ火山公園の『ぬしポケモン』、エンニュートが業火を吐き出した。
「アツゥイ!」
 直撃を受けたペニスーツマンは炸裂した炎に弾かれ、砂浜を転げ回る。
「ずいぶんとイキのよさそうな珍種ですね。ヨワシ、『みずてっぽう』で追撃を!」
 せせらぎの丘の『ぬしポケモン』、ヨワシが激流を放射した。
 特性『ぎょぐん』により『むれたすがた』となっているヨワシの『みずてっぽう』は『ハイドロポンプ』を凌ぐ威力を誇ると言われている。
「溺れるっ!溺れるっ!」
 激流に呑まれたペニスーツマンが奇声を上げながらのたうち回る。
「ラランテス! トドメの『ソーラーブレード』!」
 シェードジャングルの『ぬしポケモン』、ラランテスが光を束ねた斬撃を打ち放つ。
「……アーイキソ」
『パワフルハーブ』により力を溜める隙を補いながら繰り出した『ソーラーブレード』に引き裂かれ、ペニスーツマンは何やら諦めの言葉を呟いていた。
 ペニスーツマンの身体は軽々と吹き飛ばされ、ハノハノビーチの一角に大きな砂塵を巻き上げた。
「やったぁ! 」
 確かな手応えを感じ、マオが歓喜の声を上げる。
「気を抜くな。アレが何であれ、悪さをするならばオレ達で『捕獲』しなくてはならない」
「どうぞどうぞ。あいにく、わたしはみずポケモン専門なので」
 スイレンの軽口に頭を掻きながら、カキはペニスーツマンの元へと歩み寄っていく。
 エンニュートを傍らに携え、油断なくモンスターボールを構えながら近づくと
「『(スペルマ)りゅうせいぐん』!」
 ペニス―ツマンが突如、攻撃を繰り出した。
 その頭頂部から打ち上げた白濁の玉が花火の如く爆ぜ、ハノハノビーチを塗りつぶすように精液の隕石が降り注いだ。
 白濁の隕石群の直撃により、砂浜は視界を覆い尽くす程に巻き上げられた。
「な、何が起きたんだ……!?」
 ペニスーツマンの反撃により、状況は一変していた。
 突然生じた事態に驚愕しながらカキが周囲を見渡すと、傍らでは相棒のエンニュートが精液に塗れた状態で横たわっていた。
「馬鹿なっ! エンニュート!?」
「鍛えに鍛えあげたヨワシが……そんな……」
「ラランテス! お願い、目を覚ましてっ!」
 ペニスーツマンの『りゅうせいぐん』の一撃で、『キャプテン』達が誇りし三匹の『ぬしポケモン』は全滅していた。
「ドキッ☆加藤智大だらけの水泳大会!」
 ペニスーツマンが陽気な声で、意味不明な台詞を叫ぶ。
 カキ・スイレン・マオは怒りのままにモンスターボールを取り出した。
「出てこい、ガラガラ!」
「お願いっ、オニシズグモ!」
「仇をとって、アママイコ!」
『キャプテン』達は手持ちの中から最も高レベルのポケモンを繰り出した。
『アローラのすがた』のガラガラが炎を宿した骨を振り回し
 オニシズグモが頭部の水泡を震わせ威嚇し
 アママイコが可愛らしい顔で精一杯にらみつける。
「『ぬしポケモン』でさえも一撃でやられたんだ。出し惜しみは無しで行くぞ!」
 カキの言葉の意図を察した二人の少女は静かに頷いた。
 カキ・スイレン・マオのZクリスタルが光り輝く。
 カキは燃え盛る炎を模した踊りを
 スイレンは揺蕩う水面を模した踊りを
 マオを咲き誇る花を模した踊りを
 それぞれが捧げた。
 三人の『キャプテン』達の『ゼンリョクポーズ』に共鳴するように、ポケモン達がZパワーを身体にまとっていく。
 ガラガラ・オニシズグモ・ラランテスが解き放つ全力の『Zワザ』!
「『ダイナミックフルフレイム』!」
「『スーパーアクアトルネード』!」
「『ブルームシャインエスストラ』!」
 三種の『Zワザ』が炸裂し、夜のハノハノビーチの一角は眩く照らされた。

☆☆☆

 メレメレ島・ハウオリシティ。
 アローラ地方に建設されたポケモンリーグ
 その初代チャンピオンとなった少女・ミヅキは、リーリエと共にショッピングエリアへ訪れていた。
 長い金髪をポニーテールに結び、動きやすそうなミニスカートを履いた通称『がんばリーリエ』スタイルのリーリエであるが、その表情には影が落とされていた。
「わたし……心配です……『しまキング』さんや『キャプテン』さんが次々とやられてしまうなんて……」
 アローラ地方に突如出現した『スーツ姿の男』。
 その男が『しまキング(クイーン)』や『キャプテン』といったポケモンバトルの達人達を手当たり次第に襲い回っているという。
 ポニ島・ウラウラ島・アーカラ島の実力者はあらかた駆逐されているため、『スーツ姿の男』は残るここメレメレ島に現れるであろうと予想されていた。
「大丈夫。わたしはそう簡単にやられたりなんてしないよ」
 赤いニット帽がトレードマークの少女・ミヅキがにっこりと微笑んだ。
 数々の冒険を共に繰り広げ、多くの強敵達を打ち破り、最期にはアローラ地方のチャンピオンにまで登りつめた少女を、リーリエは心の底から信頼していた。
 それでも、心に突き刺さるような不安は拭えない。
「気をつけてください、ミヅキさん……いやな予感がするのです……その、噂で聞いた『向こうの世界』と関係する何かがやってきているのかもしれませんし……」
「大変だよぉー!!!」
 リーリエの言葉を、突如来訪した少年の声が遮った。
『島巡り』の冒険仲間の一人、ほがらかな笑顔が特徴的な少年・ハウである。
 しかし、その表情は珍しく焦燥した様子であった。
「じいちゃんがー! じいちゃんがやっつけられちゃったんだー! あとイリマさんもー!」
 ハウの言葉に、ミヅキとリーリエは驚愕に目を見開いた。
 ノーマルタイプの使い手、メレメレ島の『キャプテン』イリマ。
 そして、『しまキング』かつ『してんのう』の一角をも担う実力者であるハラが敗北したという事実に、ハウは悔しそうな面持ちで続ける。
「おれ、悔しいよー……じいちゃんのカタキをうちたい……だからさー、ミヅキも手伝ってー!」
「うん……わかったよ!」
 ミヅキは二つ返事で引き受けた。
 アローラの初代チャンピオンとして、これ以上の犠牲者が出るのが許せなかったのである。
「わたしも協力させてください! この通り、スプレーやお薬なら、たくさん持っていますからっ!」
 リーリエもまた、多種多様などうぐが収まっている赤いリュックサックを見せつけながら宣言する。
「ありがとー、リーリエー! さっそくだけど、なんかビーチの方で騒ぎが起きてるみたいだから、一緒に来てー!」
 ハウに先導される形で、ミヅキ・リーリエはブティックを去り、ビーチサイドエリアへと駆け出した。

☆☆☆

「なにやってんだ、グズマァァァアア!」
 真昼のビーチに一人の男の叫びが轟いた。
 元スカル団ボス・グズマの咆哮である。
 隣りにはエースポケモンであるグソクムシャが倒れ伏している。
「このおれが……よりにもよって『むしポケモン』使いにやられるとはな……」
 忌々しげな視線を送りながら、グズマが呟く。
 その眼前には、スーツ姿の男・サカコが虚空を見つめながら突っ立っていた。
「あーっ!『スーツ姿の男』ー! じいちゃんのカタキ、見つけたぞーっ!」
 ハウの大声に反応し、サカコはゆったりと視線を向ける。
「あのグズマがやられるなんて……」
 次いで駆けつけてきたミヅキが、険しい顔で言葉を漏らした。
 元スカル団ボス・グズマが『キャプテン』や『しまキング』にも引けを取らない実力者である事は、実際に手合わせした彼女自身が最もよく知っていた。
「ミヅキさん、ハウさん……お気をつけて……あの、ポケモンさん達をげんきにしましょうか?」
 リーリエが遠慮気味に声をかけるが、ミヅキは視線で下がるように伝えた。
 やがて、モンスターボールを手にした二人がサカコの前へと立ち塞がった。
「……サカノウエ・サカコと申します」
「おれはハウ! おまえがやっつけた『しまキング』ハラの孫だよー! じいちゃんのカタキ、とらせてもらうからねー!」
 丁寧に自己紹介するサカコを相手に、ハウは闘志をむき出しに応じる。
「あなたがアローラを荒し回っている『スーツ姿の男』なの?」
 ミヅキが単刀直入に切り出すと、サカコはクネクネと身を捩らせながら、二つのモンスターボールを取り出した。
「いかにも……! 一人一人相手をするのも面倒です。二人同時に、かかってきなさいっ!」
 サカコの挑発的な宣言に呼応するように、ミヅキとハウはポケモンを繰り出した。
「出てきて! ドデカバシ!」
「いっけぇ! ライチュウ!」
 その名の通り巨大な嘴が特徴的なとりポケモン・ドデカバシとサイコパワーで宙に浮いてる『アローラのすがた』のライチュウがペニスーツマンと対峙する。
「スピアー! アブリボン! 膣内(なか)で出すぞっ!」
 謎の口上と共に、サカコは2匹のむしポケモンを繰り出した。
 なお、ミヅキとハウは意味がわからず首を傾げているが、リーリエは顔を真っ赤に染めながら俯いていた。
「あの黄色いのはアローラではみないポケモンだねー?」
「あれはスピアーだよ。カントーに住んでたときに見たことがある。たしか、『むし』と『どく』タイプのポケモンだったと思う」
 ハウに視線で合図を送りながら、ミヅキが答える。
「……そっかー。うん、わかったよ! ライチュウ、スピアーに『サイコキネシス』!」
「ドデカバシ! アブリボンへ『ドリルくちばし』!」
 念動力波がスピアーを襲撃し、ドリルのように回転する嘴がアブリボンの小さな体を穿つ。
 こうかはばつぐんだ!
 ミヅキとハウは、各々のポケモンに的確に弱点を突かせる指示を下した。
「スピアー、『こうそくいどう』……アブリボン、『ちょうのまい』……」
 スピアーが翅を高速で羽ばたかせ、アブリボンが神秘的な舞を踊り、すばやさ等の能力値を上昇させていく。
「積んできた……一撃で倒せると思ったんだけど、ずいぶんと育て上げているみたいだね……」
 ミヅキが思わず漏らした感嘆の言葉にも反応せず、サカコは淡々と指示を下していく。
「スピアー、『ドリルライナー』」
ライチュウ、もう一度『サイコキネシス』だ!」
 眼にも映らぬ超スピードで迫り来るスピアーが、ドリルのように回転しながら毒針をライチュウへと突き刺した。
 きゅうしょにあたった!
 こうかばつぐんだ!
 スピアーの特性『スナイパー』の効果により、その威力は激増された。
 その一撃は、ハウが育て上げたライチュウをも容易くひんし状態へせしめた。
「うわぁ! ライチュウーっ!」
 慌てて駆け寄るハウを他所に、サカコが更なる指示を飛ばす。
「アブリボン、『しびれごな』」
「まひ」状態を引き起こすアブリボンの鱗粉がドデカバシへと降りかけられる。
 しかし……
 ドデカバシはミヅキを心配させまいと、気合で「まひ」を治した!
 トレーナーとの絆の力は、ときに何よりもポケモンバトルの行方を左右させる。
「ドデカバシ、『はがねのつばさ』!」
 ドデカバシの鋼の如く固めた翼がアブリボンへと叩きつけられる。
 こうかばつぐんだ!
 アブリボンもまたひんし状態となり崩れ落ちた。
「……じゃあ私アブリボンで普通にシコるね」
「これでお互いに残り一体、だね」
 サカコの言葉の意味が理解できず怪訝な表情となるが、ミヅキは構わずに続けることにした。
 すると、サカコは徐にネクタイを緩め始めた。
「ギアをあげていくぞっ!」
 スピアーのスピアナイトとサカコのメガストーンが反応した!
 ネクタイに埋め込まれたメガストーンが輝き、スピアーは共鳴するように眩い光を纏っていく。
 六枚に分割された翅に五本に増えた凶悪なる毒針。
 全体的にシャープなフォルムとなったその姿は紛れもなく、スピアーが『メガシンカ』した姿、メガスピアーであった。
「これは……『メガシンカ』だな。ミヅキ、気を引き締めてかかれよ!」
 いつの間にか現れた男がミヅキに檄を飛ばした。
 鍛え上げた上半身に白衣を羽織った独特のファッションが特徴的な『ポケモンはかせ』・ククイ博士その人である。
「ククイ博士……わかりました。ドデカバシ、『くちばしキャノン』準備開始!」
 ミヅキの指示を受け、ドデカバシは嘴を加熱し始めた。
メガスピアー、『どくづき』」
 サカコが抑揚のない声音で指示を下す。
 メガスピアーが猛毒に染まった針を突き刺すも、ドデカバシは真っ赤に加熱した嘴で受け止めた。
 メガスピアーは加熱中の嘴に接触したことにより「やけど」を負い、ドデカバシは「どくづき」の追加効果によって「どく」状態となった。
「いけっ!『くちばしキャノン』、発射!」
 ミヅキの掛け声と共に、ドデカバシの嘴の中で加熱されたエネルギーが一気に解放され、メガスピアーに襲いかかった。
「……残像だ」
 メガスピアーはサカコの指示に息を合わせて技をよけた!
 サカコもまたポケモンとの絆の力を見せつける。
「スキの多い技じゃあ避けられちゃう……ドデカバシ、最速最短で『ドリルくちばし』!」
メガスピアー、『シザークロス』」
 ドリルのように旋転させたドデカバシの嘴と鋏のように交差させたメガスピアーの毒針が、真正面から激突した。
「シザークロス」はドデカバシにとって「こうかはいまひとつ」となる技であるが、メガスピアーの特性『てきおうりょく』によってその威力は底上げされていた。
 何とか耐えていたドデカバシであったが、やがて「どく」のダメージに身体を蝕まれ、白い砂浜へと倒れ込んだ。
「うそ……『やけど』を負っていたのに、何て威力……」
 ぶつり技の威力が下がる「やけど」状態でドデカバシを退けたメガスピアーの力に、ミヅキは驚愕の声を漏らす。
 そんなメガスピアーもまた、「こうかばつぐん」となるひこう技を受けた上で「やけど」によるダメージが回り、ひんし状態となり倒れた。
「お見事……残りのポケモンは1体ですが……この場にいる全員でかかってくるのが良いでしょう。誰にも『ペニスーツマン』は止められないのですから……!」
 サカコの挑発的な言葉に、ククイ博士は不敵な笑みを浮かべる。
「ほぉ……それは、ぼくも参戦していいってことかな? あとで『いちゃもん』つけたって、聞かないからね?」
 ククイ博士はモンスターボールを取り出しながら、好戦的な視線をサカコへ注ぐ。
「おれだってー、まだまだ負けてないんだからねーっ!」
 ハウもまた、闘志を燃やしながら声を上げる。
「随分と強気なようだけど、『でんせつのポケモン』でも持っているのかな? それとも『ウルトラビースト』を捕獲したとか? 悪いけど、そのどちらとも、わたし達は渡り合っていたんだからねっ!」
 ミヅキの宣言を合図に、ククイ博士とハウがモンスターボールを投げる。
「お願いっ! アシレーヌ!」
「いっけぇ! ガオガエン!」
「頼んだよ! ジュナイパー!」
 人魚を彷彿させる姿のソリストポケモン・アシレーヌ
 眩く燃える炎のベルトが特徴的なヒールポケモン・ガオガエン。
 百発百中のアーチャーと呼ばれし矢羽ポケモン・ジュナイパー。
 ミヅキ・ハウ・ククイ博士は最も付き合いが長い、パートナーとも呼べるポケモンを繰り出した。
 対するサカコは徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言する。
「変身!」
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
「我が名は哲学する男性器『ペニス―ツマン』……命をかけて、かかってこい!」

 アローラ地方に君臨せし怪人『ペニス―ツマン』との激闘は続く。

ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ 最終話

「逃げなくちゃ……逃げなくちゃ……」
「晴風」の艦橋にて、航海長・知床鈴(しれとこりん)が涙目で操舵輪を握っていた。
「生きることから逃げなくちゃ……!」
 涙で溢れた瞳は、『虚無』で染まっていた。
「晴風」を沈めるべく、鈴は暗礁に向けて舵を切る。
「生きることから、逃げちゃ駄目だよ」
 背後から光宗が優しげに声をかけた。
 ひぅ……と悲鳴を漏らす鈴に対し、光宗が続ける。
「君がどんな『ナナキ』……トラウマを抱えているのかはわからないけど……それはちゃんと受け入れないといけないものなんだよ」
 光宗の言葉に、操舵輪を回す鈴に動揺が走った。
「私はね……その、よく『即席占い』みたいのことをしてたんだけど……」
 鈴の手を優しく握りながら、真咲が語りかけた。
「『横断歩道の白いとこだけ歩いて渡れたら風邪ひかない』みたいな感じでね……何かが出来なかったら、不幸になってしまうって思い込んでたの……」
 首を傾げる鈴に対して、真咲は微笑みながら
「でもね、何かを達成できれば、幸せになれるって考えれば、前向きになれると思うんの……例えば『今、戦っている人達が怪物に勝てるかどうか』で占ってみるとか」
「だって……でも……勝てるはずないです……みんな、みんな、やられちゃっているんです!」
 涙目で反論する鈴に対し、光宗と真咲が首を振る。
「全てを諦めるのは戦いを見届けてからでも、遅くはないよね?『ナナキ』よりも恐ろしい怪物を、あの人達は確実に追い詰めてる」
「一緒に勝つ方に賭けましょう。その方がきっと、ここで投げ出すよりも幸せになれるから」
 二人の言葉に、鈴は泣きながら崩れ落ちた。
 真咲が彼女の頭を撫でながら介抱しているのを見届けて、光宗は心の中でひとり呟く。
(僕は信じる。どんな『ナナキ』よりも醜悪なあの怪物を、みんなで力を合わせれば必ず倒すことが出来るって)
 艦橋から戦場となっている甲板を見下ろしながら、光宗もまた『勝利』に賭けた。

☆☆☆

「ゼロシステムがあればアニメキャラの無限のスケベな可能性を見ながら常人では耐えられないGがかかるオナニーを遂行できる」
 淡々と宣言するペニスーツマンを、スバルとエミリア・キュアミラクルキュアマジカルの四人が絶望的な眼差しで見つめていた。
 番場宗介の『影鰐』の腹の底よりあっさりと帰還した異形を前に、彼らは対抗策を失っていた。
 比類ない物理的な頑強さを誇り、その上『魔法』の類は『カウパーバリア』によって無力化される。
 特に後者は『魔法つかい』と『精霊使い』にとって致命的ともいえる特性であった。
(……考えろ……考えろ……何か、何かあるはずだろうがっ! ここまでアイツを追い詰めたってのに、これじゃあ、また無駄死になっちまうじゃねぇか!)
 スバルがこれまでのループの経験を反芻しながら必死に対抗策を考えている中、ペニスーツマンは気にせずに『ペペローション』を取り出した。
「『アクセルローション』!」
 雄々しく宣言しながらオレンジ色の容器を握り潰し、ペニスーツマンがローションを全身に浴びる。
 ローションによる摩擦の軽減から生まれる超スピードで、ペニスーツマンが容赦なく突貫した。
「ヌッッッ!?」
 ペニスーツマンは何かを足を取られてすっ転び、超スピードでドンガラガッシャンと瓦礫を巻き上げながら甲板を転がっていった。
「あ、アンタは……」
「『足元がお留守だぜ』って一回は言ってみたい台詞だよな?」
 膝丸燈が『大蓑蛾』の『糸』をもって、ペニスーツマンの足元を掬ったのであった。
 憔悴した様子で身体を引きずりながらも、燈はスバルへと問いかける。
「なぁ、その女の子達の『魔法』を打ち込めば、本当にあの化物を倒せるのか?」
「あ、あぁ……そのはずだったんだけど……アイツには……」
「要はヤツの汚ねぇ『ガマン汁』を取っ払えば、その『魔法』とやらが通じるようになるんだろう?」
 ミッシェル・K・デイヴスが引き継ぐように言う。
 黙って頷くスバルと『プリキュア』の少女達の元に、多数の人影が募っていく。
「……もう残された手立てはこの子達の『魔法』しかねぇ! そのためには、アイツを丸裸にする必要があるんだ!」
「なら、そのための露払いは任せろ」
『異世界人』達の意思が一つに統合された。
 ペニスーツマンという脅威を打倒するために。
「全てうやむやにしたい……『インセクト・エジャキュエーション』ッ!!!」
 燈とミッシェルの変態した姿をオカズに、ペニスーツマンが最大級の射精を放つ。
「「『共振(レゾナンス)』!!!」」
 焔魔堂ろくろと化野紅緒が手を繋ぎ合いながら、一つの霊刀を振るう。
双星の陰陽師』に受け継がれし秘術『共振』。
 互いの呪力を重ね増幅させる秘術をもって、二人は莫大なる呪力を込めた霊刀を振るい、『インセクト・エジャキュエーション』を切り裂いた。
 精液を浴びて失神したろくろは兎も角、まんこを破壊された紅緒が動ける理由。
 それは……
「……ざまぁ……みやがれ……」
 精巣を捻転され、『ハイメガザーメン砲』の直撃を受けた東方仗助が、気力を振り絞り立ち上がっていた。
 仗助が『クレイジー・ダイヤモンド』の能力をもって、ペニスーツマンとの戦いの中負傷していった『異世界人』達を治療していたのである。
「す、すごい……」
「さぁ! コレでHPを回復させてください! 最後にとっておいた虎の子の回復アイテムですよ」
「お前達が最後の希望だ。遠慮なく使ってくれ」
 呆気に取られながら陰陽師達の活劇を見守っている『プリキュア』の二人に、鬼斬の姫君・静御前義経が声をかけた。
 ミラクルとマジカルが手渡されたソウルエッグ(回復アイテム)を手に取り、眩い光に包まれていく。
「癒しの魔法が込められているのね! 助かるわ!」
「私のマナも使って。もどかしいけど、私も少しでも役に立ちたいの」
 エミリアの掌から注がれるとマナの光を受け、二人の魔力が充填されていく。
「アイツの真の恐ろしさは『免疫力』にあるんだ……一定以上の攻撃を受けると、その性質に対して耐性を得てしまう……それでも……」
 ペニスーツマンと相対する緑谷出久が、ブツブツと念仏のように呟く。
「『DELAWARE SMASH』ッ!」
「『エコーズ』ッ!」
『ワン・フォー・オール』により生み出された衝撃波と『エコーズ』の尻尾文字がペニスーツマンに打ち込まれる。
 無論、『個性』と『スタンド』に対して耐性をつけたペニスーツマンの『カウパーバリア』によって容易に防がれる。
「『スタンド』が効かないのは折り込み済みだよ。それでも本当に、君は『無敵』なのかな?」
「おまんこの食い上げだ~」
 広瀬康一が不敵な表情で語りかける。
 上機嫌のペニスーツマンが無視しながら反撃に転じようとした瞬間に、その身体がパパパパン!と弾けた。
「今のは『魔法』でも『超能力』でもない。唯の『科学反応』だよ、クソッタレ」
 ミッシェルが見下しながら宣言する。
『爆弾蟻』が産み出す揮発性の液体をプロレスにおける『毒霧』のように吹きかけたのである。
 出久と康一の攻撃に気を取られていたペニスーツマンは呆気なく直撃を受けていた。
「状況によっては、原始的な武器の方が効果をあるということだ! やれっ、無名!」
「この距離なら外さないよ」
 生駒が大量の『自決袋』を投擲し、無名の蒸気銃による狙撃が着火させていく。
 指向性爆弾の爆撃を受け、ペニスーツマンの『カウパーバリア』は全て剥がされた。
「今だっ!『彗星ホームラン』っ!」
 麗日お茶子が破損した艦砲の砲身をバットのように振り回し、ふわふわと浮かぶ瓦礫群を打ち飛ばした。
『無重力』によって浮かされた瓦礫の雨がペニスーツマンを襲撃し、その身体を軽々と吹き飛ばした。
「責任重大だね、マジカル」
「わたし達なら、きっとできるわ。いくわよ、ミラクル」
 真摯な表情で語りながら、二人の『プリキュア』は飛んでくるペニスーツマンへとリンクルステッキを掲げた。
「「リンクルステッキ・ダイヤ! 永遠の輝きよ、私たちの手に!」」
 リンクルストーン・ダイヤが装着され、リンクルステッキに光の力が巡っていく。
「「フル、フル、リンクル!」
 ミラクルとマジカルがステッキを振るうと、ダイヤモンド状の魔法陣が二人の眼前に現れる。
「それでもあぁーーーー!街はぁーーーーーーーーーー!!」
 最後の足掻きのようなものなのだろう。
 ペニス―ツマンは叫び声を上げながら、金色の光に包まれていく。
 その姿は『怒りのハイパーモード』。
 全ての能力が893倍に増幅されるという恐るべき形態である。しかし、代償として前立腺の感度が334倍になってまうという欠点も持つ、諸刃の剣ともいうべき姿であった。
 ペニスーツマンが空中で体勢を立ち直し、亀頭部をミラクルとマジカルの二人へと差し向け、精液の奔流を放たんとする。
「『ハイメガザーメン……」
「『シャマク』っ!」
 瞬間、ペニスーツマンの視界は暗闇に閉ざされた。世界の形も、色も臭いも、一切の感覚が封じられていく。
 それは、スバルが唯一習得した『魔法』であった。
 陰魔法『シャマク』。
 かつて魔獣ウルガルムを翻弄したときのように、スバルはここ一番で最大の切り札を使用した。
 スバルを中心に生成された黒雲の中で、ペニスーツマンはほんの数秒間、膠着した。
 そんな僅かな時間が決め手となった。
『『プリキュア・ダイヤモンド・エターナル!』』
 最初にペニスーツマンは巨大なダイヤモンドの中に捕らわれた。
 二人の掛け声を合図に、ダイヤモンドはペニスーツマンを載せて遥か上空まで射出。
 光の尾を引きながら成層圏まで達し、外気圏を悠々と突き抜けていく。
 宇宙空間を突き進み、太陽系を外れ、天の川銀河からも抜けていく。
「ほな………」
 宇宙の彼方まで運送されたペニスーツマンが明確な『死』を覚悟した。
 瞬間、ダイヤモンドはビックバンの如き大爆発を引き起こし、宇宙の片隅に豪奢な花火のような閃光が瞬かせた。
 金魔法『ダイヤモンド・エターナル』。
 みらいとリコが『プリキュア』として覚えた最初の『魔法』である。
「本当にお星様になっちゃった……」
「永く生きているけど、こんな『魔法』を見たのは初めてだよ……」
 エミリアを初めとした『異世界人』達は、想像を遥かに超えた『魔法』の威力を天を仰ぎながら見届けていた。
 世界を滅ぼす力を秘める『終末の獣』・パックすらもドン引きさせる『魔法』を放った張本人の二人は、脱力しながら甲板に倒れ込んでいた。
「やったね、リコ?」
「みんなが力を貸してくれたおかげよ。これで、ようやく一安心ね」
 変身が解除され、ただの女子中学生へと戻ったみらいとリコが微笑みながら語り合う。
「あぁ、ようやく一安心だよ……本当に、本当に長かった……」
 幾度なくペニスーツマンに挑んでは敗北してきた記憶を持つスバルが、感慨深く呟いた。

☆☆☆

 其処は、霧の深い森であった。
 得体の知れない果実がなる森林は、何処か異世界じみた雰囲気を醸し出していた。
「……2時間半くらい気絶してた」
 ペニスーツマンが一際大きな樹木に背を預け、身体を休めていた。
 その股間には、『黄金の果実』が眩く輝いている。
 絶体絶命の危機の中、ペニスーツマンは『鎧武』の世界で獲得した『オーバーロード』としての能力を使い『クラック』を展開、間一髪『ヘルヘイムの森』へと避難したのであった。
「本気のキモオタおたおたレイプ見せてくれよ……!」
 言いながらペニスーツマンは再び『クラック』を展開する。
 空間に生じた裂け目からは、青い地球が覗いていた
「『スペルマ流星群』のバリエーション……『プラネット・レイプ』!」
『クラック』へ向け、ペニスーツマンは星一つ孕ませる程のザーメンを射精した。
 直後に、ペニスーツマンとしての姿すら維持できなくなり、坂上逆孤が樹木の側にドカっと倒れ込んだ。
「……2日連続でシコってしまったため明日は反動で廃人になる」
 酷く憔悴した様子で、坂上が呟いた。

☆☆☆

「皆さん、本当にありがとうございました! 感謝の言葉もありません!」
「晴風」艦長・岬明乃が船員達を甲板まで引き連れていた。
 その全員が深々と頭を下げ、感謝の意を示している。
「いやぁ……俺達の身を守るためでもあった訳で……」
 何となく代表者になっているスバルが頭を掻きながら言葉を濁していると……
「晴風」の船体に影が落ちた。
「……な……なん、だ……?」
 スバルが怪訝な表情で空を見上げると、空を覆い尽くすかのように広大な巨大な『白濁の塊』が落下していた。
 理性が理解を拒み、思考が静止していく。
 ペニスーツマンの攻撃であると受け止めるのに、スバルは数秒程の時間を要した。
「さ、坂上ェェェェッッッ!!!」
 スバルが天に向けて咆哮する。
 同時に、『魔法』や『スタンド』、『個性』に『陰陽術』。
 あらゆる異能で『異世界人』達が『白濁の塊』を迎撃しようと試みるが……
 全ては無為に終わり、陽炎型航洋直接教育艦「晴風」は精液の直撃を受け、粉微塵に爆散した。

☆☆☆

 次の瞬間、スバルは硬い甲板の上で目を覚ました。
 寝起きのよさには定評があるスバルは瞬時に意識を覚醒させ、周囲を見渡した。
 そこは紛れもなく「晴風」の甲板ではあるが、先程まであった戦闘の痕跡は一切ない、綺麗に手入れの行き届いた甲板であった。
「畜生ォ……また、戻っちまったのか……!」
 ガンッ!床に拳を叩きつけながら、スバルが憎々しげに呟いた。
『死に戻り』が発動したということは、ペニスーツマンの攻撃でスバルが命を落としたという事実の証明である。
 宇宙の彼方まで追放しても尚、ペニスーツマンを倒しきることは出来なかった。
 絶望的な状況に辟易としながらも、スバルは隣で安らかに寝息を立てる銀髪の少女を見て決意する。
「俺は絶対に諦めねぇ……! アイツをブチのめして、エミリアと一緒に元の世界に帰るんだ……!」
 ナツキ・スバルの○○回目のループが始まる。

ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ その6

「全身全霊本気の二次元まんこへの愛をぶつけてこい。ちんこでも構わん。幻想の彼岸を飛び越えて羽ばたけやオタク、忌まわしき劣情と共に!」

 

魔法つかいプリキュア』朝日奈みらいと十六夜リコ。
『死に戻り』の青年、ナツキ・スバルと『精霊使い』のハーフエルフ、エミリア。
「晴風」船員の少女達の治療を終えた四人が、ペニスーツマンと相対していた。
「畜生……全員やられちまったのか……」
 苦虫を噛み潰したような面持ちで、スバルが思わず呟いた。
「それでも無傷という訳ではなさそうだよ。それなりの深手は負っていると見てもいいね」
 呑気な調子を崩さずに精霊猫・パックが分析した。
「……まだ死んでいないなら、私が必ず治すわ……治療する時間を稼いでくれた借りがあるんだもの……そのためにも、あの『魔獣』を倒さないと……!」
 エミリアが銀鈴のような声で囁きながら、精霊の光を結集させていく。
「くっさい臭いがプンプンするモフぅ〜〜〜! 鼻が曲がりそうモフぅ〜〜〜!」
 喋るぬいぐるみ・モフルンが涙目で鼻を押さえながら甲板を転げ回る。
「恐ろしい力を感じるわ……あの『ドクロクシー』にも匹敵するかもしれない禍々しい魔力……みらい、最初から全力でいくわよ!」
 秘められし力に圧倒されながらも、リコが戦う覚悟を決めた。
「わたし達は負けない! あなたを倒して、リコとモフルンと一緒に元の世界に帰るんだからっ!」
 真っ向からペニスーツマンを見据えながら、みらいが宣言した。
『『キュアップ・ラパパ!』』
 みらいとリコが魔法の呪文を高らかに唱え始めた。
「「『ダイヤ』! ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」
 モフルンの胸元にリンクルストーン・ダイヤが装着され、みらい・リコ・モフルンの三人は手を繋ぎながら眩い光を纏っていく。
「二人の奇跡・キュアミラクル!」
「二人の魔法・キュアマジカル!」
「「魔法つかいプリキュアっ!」」
 伝説の魔法つかい『プリキュア』へと変身を遂げた二人が決めポーズと共に名乗りを上げた。
「姿が変わった!? それに、すごいマナ量……」
「コレは『魔導の加護』…… いや、それ以上の力だね。ヒトの身で大したものだよ」
 エミリアが目を白黒させて驚き、パックもまた二人が発する圧倒的なマナを感じ取り感嘆の声を漏らした。
「エミリアたん、それに魔法少女のお二人さん……俺が一瞬、ヤツの注意を引きつける。その隙を狙って攻撃をしてくれ」
 言葉の意図が理解できず困惑している少女達を他所に、スバルはすぅと息を吸い込み
「聞け! 俺は『死に戻……
 瞬間、スバルの主観で、さながら時が止まったかのように風景が静止する。
 音も光もない世界の中、霧状の『漆黒の腕』が眼前に生成され、指一本動かせないスバルの心臓を優しく撫でるように握っていく。
 嗚咽すら許されない空間で激痛を味わいながらも、スバルは内心目論見が成功したことにほくそ笑む。
『死に戻り』の能力を他人に暴露しようとした際に負うペナルティ。
 それにはとある副産物が存在する。
「チンカスぺろぺろぺろぺろ美味しいですって馬鹿かお前はピザでも食えや!」
 突如、ペニスーツマンが亀頭部をスバルへと差し向けた。
 ペナルティを受けた後に、スバルは『魔女の残り香』と呼ばれる臭いを身に付ける。
 スバルは『魔獣』を引き付けるという特性を持つこの臭いを利用し、ペニスーツマンの意識を引き付けたのである。
「させない!『エルヒューマ』ッ!」
 エミリアとパックが突き出した両手から、数多の氷柱の弾丸が放出された。
 ペニスーツマンは身をクネクネと捩りながらら、氷柱の雨を浴び続ける。
「「ハァァァッッッ!!!」」
 スバルが発した『闇の魔法つかい』の如き力に気を取られたものの、意識を切り替えたキュアミラクルキュアマジカルが一足飛びに距離を詰めた。
 圧倒的なパワーを誇る『プリキュア』の拳がペニスーツマンの身体へと叩き込まる。
「……プールで遊び散らして全ての体力を失った」
 瓦礫の山へと突っ込んだペニスーツマンが、憔悴した様子で立ち上がる。
 12人もの『異世界人』達との激闘は、確実にペニスーツマンを消耗させていた。
『チンポチンポセイヤセイヤ! チンポチンポセイヤセイヤ!』
 ペニスーツマンの股間から野太い漢の掛け声のような呪文?が轟いた。スラックスの社会の窓口から覗く逸物には、桃色に輝く『賢者の石』が埋め込まれていた。
「『エクスプロージョン』、ナーウ」
 指輪を股間にかざし、ペニスーツマンが魔法を撃ち放つ。
 ウィザードの世界で習得した『指輪の魔法』を用いてペニスーツマンが反撃に出た。
「気をつけろっ! アイツは『魔法』も使ってくるんだ!」
 スバルの警告に、エミリアと二人の『プリキュア』が静かに頷いた。
「任せてっ!『リンクル・ムーンストーン』!」
「パック! お願い!」
 キュアマジカルが月のリンクルストーンの銀魔法をもって満月型のバリアを出現させ
 パックが雪の結晶の如き障壁を展開した。
 ペニスーツマンの『指輪の魔法』は、二人の防護魔法により完全に防がれる。
「くらいなさいっ! やぁ!」
『精霊使い』の強みは、精霊と術者が攻撃と防御の役割分担を行えるという点にある。
 パックが障壁で攻撃を防いでいる中、エミリアは巨大な氷塊を生成し、ペニスーツマンへと撃ち放った。
「『テレポート』、ナーウ」
 迫り来る氷塊を前にペニスーツマンが瞬間移動の魔法を発動し、空中へと間逃れた。
「逃がさないっ!『リンクル・アメジスト』!」
 キュアミラクルが扉のリンクルストーンを用いた銀魔法を発動させた。
 空中のペニスーツマンは光の扉に捕らえられ、元いた場所に転送される。
 瞬間移動の魔法に同系統の魔法で返されたペニスーツマンは、困惑の中で巨大な氷塊に押し潰された。
「あなた、氷の魔法が使えるのね?」
「えぇ、そうだけど……?」
「なら、力を合わせましょう! 同時に行くわよ!」
 キュアマジカルの言葉に数瞬ぽかんとなっていたエミリアだが、その意図を察した後に力強く頷いた。
「『リンクル・アクアマリン』!」
「『アルヒューマ』!」
 氷のリンクルストーンを用いた銀魔法と氷系統における最上級の呪文がペニスーツマンに浴びせられた。
「……涼し過ぎて凍え死んでる」
 氷塊から何とか這い出た矢先に二つの氷結魔法を喰らい、ペニスーツマンはなす術もなく氷漬けにされていく。
「IN MY DREAM……臭いオタの魔羅……部屋中に一杯敷き詰めて……」
 辞世の句のような事を呟いた後に、ペニスーツマンは氷像と化した。
「や、やっつけたのかな?」
「まだ、油断はできねぇな。アイツはそれこそ不死身に近いしぶとさなんだ。それこそ、宇宙にでも放り込まない限り、安心はできねぇ……」
 スバルの言葉に、ミラクルとマジカルの二人が顔を合わす。
「わたし達はそういう『魔法』が使えるよ!」
「確かに、浄化しきれるかは自信はないけど、少なくとも宇宙まで追放すれば、危機はなくなるってことよね」
「いやっ!? マジでか!? 本気で言った訳じゃなかったんだけど……それじゃあ一丁、あの猥褻物陳列罪をお星様にしてやってくれ」
 ミラクルとマジカルの言葉に仰天しながらも、スバルが促す。
 二人がリンクルステッキを氷像ペニスーツマンへと差し向けた、その時
「肛門の感覚が完全にバカになってる。何も信じられない」
 突如、ペニスーツマンは氷を溶かし現れた。
 お腹を冷やしてしまったため肛門を気にかけている様子である。
 そして、その全身はぬらぬらとした液体でテカっていた。
「マナ破壊術式か!? 何てことだ……!」
 珍しく焦燥した様子でパックが呟いた。
 ペニスーツマンはウィザードの世界において、『魔法』への耐性を身に付けていた。
 ペニスーツマンは『カウパーバリア』を排出することにより、マジカルとエミリアの氷魔法を内部より打ち破ったのである。
「そんな……それじゃあ、どんな『魔法』も通用しないってこと……?」
 エミリアの漏らした言葉に、ミラクルとマジカルの二人が驚愕する。
 二人の切り札たる金魔法『ダイヤモンド・エターナル』が封じられたという事実に、思考と身体が硬直してしまう。
「スキを見せたな!『まんこ破壊光線』!」
 ペニスーツマンがワイシャツをはだけさせ、乳首より桃色光線を放射した。
 呆気に取られる二人の『プリキュア』に向け、まんこを破壊せしめる怪光線が迫り来る。
「させるかぁッ!!!」
 過去のループで得た経験から攻撃を予測していたスバルが、身を呈して光線を受けた。
「男にゃまんこは付いてねぇんだよ! ざまぁみやがれ馬鹿野郎!」
 下品な事を叫ぶスバルに少女達が複雑な視線を向けている最中、ペニスーツマンの身体が突如消失した。
「な、何だ……?」
「済まなかった」
 物陰より、『影鰐』を宿す男・番場宗介が現れた。
 その姿は、『影鰐』の細胞が広がった影響で、全身が漆黒に染まっていた。
「ある程度は制御できるようにはなったが……目前の者を無差別に食い尽くすという『影鰐』の習性までは変えられなかった。故に、大勢の人がいる状況下では使えなかったのだ」
 番場の足元から伸びる巨大な怪異の影が、ペニスーツマンを丸呑みにし、ガジュリガジュリと咀嚼する。
「い、いや……まさかアンタがこんな切り札を隠し持ってたなんてな……マジでヒビった……こんなにアッサリと喰っちまうなんて……」
 異様な光景に恐怖しながらも、スバルは何とか言葉を紡ぐ。
「『影を喰らう』という特性上、『影鰐』に物理的な頑強さは関係ない。それにしても、慎重を期していたつもりだったが、それまで多くの犠牲者をゴガハァッッッ!?」
 突如、番場が苦悶しながら精液が混じった内容物を嘔吐した。
 足元の『影鰐』も同様に、吐き気を催した様に痙攣した後、ペニスーツマンをペッと吐き出した。
「『スペルマ流星群』」
 ペニスーツマンが静謐な声音で呟いた。
 ペニスーツマンは『影鰐』の腹の中を大量の精液で溢れさせることで、身体を逆流しながら帰還したのである。
「馬鹿……な……」
「世界中のオタクの性欲が暴走して取り返しのつかないことになれや。ヒトモドキで溢れ返れ地球」
 崩れ落ちる番場へ向け、ペニスーツマンが勝ち誇るように宣言する。
 ペニスーツマンと『異世界人』達の激闘は、最終局面を迎える。

ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ その5

スタンド使い東方仗助広瀬康一
『ヒーロー』緑谷出久と麗日お茶子。
「晴風」搭乗員の少女達の治療と避難誘導を終え、一足遅れて駆けつけた一同は呆気に取られた様子でペニスーツマンとの戦場となった甲板を眺めていた。
「野郎ォ……やってくれたじゃあねぇか……!」
 仗助が怒りに声を震わせながら呟く。
 眼前には、ペニスーツマンとの激戦の跡が色濃く残されていた。
 既に、8人もの「異世界人」達がペニスーツマンに敗れ去っているという事実に仗助は歯噛みする。
「東方君、落ち着いて! ……僕に作戦がある。そのために、君の協力が必要なんだ! 麗日さんも、広瀬君も、どうか聞いてほしい」
 真摯な表情で言う出久に、全員が頷き応じた。
 ペニスーツマンへの警戒をしながら、一同は出久の立案した『作戦』に耳を傾ける。
「しょ、正気なのかい? そんな事をしたら、君は……」
「ダメだよっ! そんなん絶対に危険やもん!」
 出久の考案した常軌を逸脱した『作戦』に、康一とお茶子が顔を青くして反論する。
 出久は首を振りながら
「確かにリスクはあるし、僕自身もすごく、その、痛い思いをするかもしれないけど……これくらい徹底してようやく勝機が出来るんだと思う。やられた8人の中には、プロの『ヒーロー』に匹敵するような実力者に見える人もいた。そんな人達があっさりと、あの『敵(ヴィラン)』に倒されたんだ。ここは石橋を叩いてでも、慎重に確実に行くべきだよ」
 出久が淡々とした口調で二人を説き伏せる中、仗助が険しい顔で彼を見据える。
「『本気』なんだな……?」
「本気……だよ」
 出久と仗助の視線が交差した。
 出久の瞳の中に宿る『ヒーロー』としての資質。
 仗助の世界でいうところの『黄金の精神』を見出したリーゼント頭の不良は、優しげな表情で微笑んだ。
「いいぜ。ブッとんでるアイデアだがよぉ、オメーの『作戦』に乗ってやる! 小学生が休み時間にフザけて描いた落書きみてーなバケモンを、いっちょ捻り潰してやろぉじゃあねぇか!」
 仗助の宣言に一同は頷き、ペニスーツマンと戦う『覚悟』を決めた。

☆☆☆

「明日も仕事仕事仕事仕事仕事仕事ゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミ就活就活就活就活就活就活仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事ゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミゼミ就活就活就活就活就活就活就活就活就活就活就活就活就活就活就活……」

 ブツブツと怨嗟めいた言葉を吐き出しながら、ペニスーツマンが「晴風」の甲板をフラフラと歩いていた。
「よぉ、随分と元気なさそぉじゃあないッスかぁ?」
 仗助が不敵な態度でペニスーツマンへと語りかける。
長時間労働を美徳と信じる哀れなSEが全員死ぬこと、それだけです」
「テメーの事情はどうでもいい……これ以上暴れまわるってんなら、俺の『クレイジー・ダイヤモンド』でテメーの『ちんちん』をひん曲げてやるからよぉ! 頭に付いてんのと股間にぶら下がってるの、両方ともなぁ!!!」
 全身にハートマークがあしらわれた人型のスタンド像を出現させながら、仗助は雄々しく宣言した。
「ギアを1つ上げていくぞッ!『ハイメガザーメン砲』!」
 ペニスーツマンの頭頂部より、瀑布の如き精液が仗助達へ向け放射された。
「『DELAWARE……SMASH』!」
 出久の指先から放たれた衝撃波が、ペニスーツマンの十八番を真っ向から打ち破る。
 平和の象徴・オールマイトより受け継ぎし『個性』、『ワン・フォー・オール』を込めた一撃が精液の奔流を八方へ飛散させた。
「畳み掛けろ!『エコーズ』ッ!!!」
 衝撃波のあおりを受け、仰け反っていたペニスーツマンに康一の『エコーズACT2(アクトツー)』が襲撃する。
「……畳で横になってよだれ垂らして死んでる」
『ドジュウウ』という尻尾文字を叩きつけられたペニスーツマンは、その身を焦がされながら曖昧な言葉を呟いていた。
 隙を見出した3人は駆け出し、一直線にペニスーツマンの元へと距離を詰める。
「頼むよ、東方君」
「あぁ……任せときな」
 覚悟を決めた面持ちで出久が強く拳を握り締める。
『クレイジー・ダイヤモンド』を携えた仗助が見守る中、出久はペニスーツマンの前へと力強く踏み込んだ。
「『DETROIT SMASH』ッ!」
『ワン・フォー・オール』の100%の出力で放たれた一撃がバグォン!と大気を震わせた。その威力に耐え切れず、出久の右腕は鈍い音を上げながらへし折れる。
「『タートル……ヘッドバット』!」
「もう一度……『SMASH』!」
 ペニスーツマンがギンギンに勃起した亀頭部を叩きつけ、出久は左腕に『ワン・フォー・オール』を込め迎撃する。
 ペニスーツマンは吹き飛び、甲板の縁に叩きつけられるが、ゆったりとした動作で平然と立ち上がった。
「今日は性欲に支配される一日にな『SMASH!』
 ペニスーツマンの言葉を遮るように、出久の『DETROIT SMASH』が三度炸裂した。
 両腕共に負傷した状態で『ワン・フォー・オール』の100%を放てた理由。
 それは……
「オメーの腕は俺の『クレイジー・ダイヤモンド』が『治す』ッ!

 遠慮なくブチかましていけッ!」
 出久が考えた『作戦』とは、自らの腕の負傷を『クレイジー・ダイヤモンド』で治療させながら、全力の『ワン・フォー・オール』を撃ち続けるという捨て身の戦法であった。
「『SMASH』ッ!『SMASH』ッ!『SMASH』ッ!『SMASH』ッ!『SMASH』ッ!『SMASH』ッ!」
「……会社が全部悪い……労働が……日本社会がに憎い……」
 なす術もなくボコボコに殴られながら、ペニスーツマンは怨嗟めいた言葉を呟いていた。
 一撃一撃に甲板が捲れ上がる程の威力を誇る『DETROIT SMASH』を、出久は歯を食いしばりながらペニスーツマンへと叩き込み続ける。
 折れた腕は瞬時に『クレイジー・ダイヤモンド』の能力によって治癒されるものの、殴る度に味わう骨折の激痛は出久の精神を消耗させていく。
(思った通り、こいつはUSJで遭遇した怪人『脳無』に近い『個性』を持っているんだ。あの怪物のように、生半可な攻撃は全て吸収されてしまう。だけど、オールマイトは……)
 かつてUSJを襲撃した敵(ヴィラン)連合がオールマイト対策として用意した怪人『脳無』。
 その怪物は『衝撃吸収』や『超速再生』など複数の『個性』を用いて、平和の象徴たるオールマイトを大いに苦しめた。
「オールマイトは言った!『ヒーローは常にピンチをぶち壊していくもの』だってっ!」
 脂汗を滲ませ、涙目になりながらも、出久は100%の『ワン・フォー・オール』を放ち続ける。
 オールマイトの100%を想定して設計された『脳無』は、彼自身が100%以上の力を発揮したことで打ち破られた。
 オールマイトより受け継ぎし思想・『Plus Ultra (更に向こうへ)』。
 憧れの『ヒーロー』を目指さんとする強靭なる精神が出久の心を支えていた。
「『DETROIT 』ォォォ……『SMASH』ゥゥッッッ!!!」
 最後に放った一撃は、『晴風』の船体そのものを傾かせる程の衝撃を生み出した。
 その成果を見届ける前に、出久の精神は事切れ膝から崩れ落ちる。
 陥没した甲板の底には、血塗れとなったペニスーツマンが仰向けに倒れていた。
「……ここでさかこ選手……日本社会にギブアップ……」
 何やら諦めの言葉を吐いているペニスーツマンの元へ、仗助が歩み寄った。
「呆れる程に『タフ』な野郎だな、テメーはよぉ…… だがな、ぶっ壊れないってんなら、それはそれで俺には考えがあるぜぇ?」
『クレイジー・ダイヤモンド』の拳を握り締めながら、仗助は不敵に言い放つ。
「『船員』の女の子達の目の毒かもしれないケドよぉ、テメーは悪趣味な『オブジェ』に仕立てあげてやっからなぁ!」
 仗助の宣言と共に、『クレイジー・ダイヤモンド』の無骨な拳が虫の息のペニスーツマンにブチかまされた。
「ドララララララララララララララララララララララララララララララアア!!!」
 暴風雨の如き拳のラッシュがペニスーツマンの全身に打ち込まれた。
 同時に、ペニスーツマンの身体は甲板の木板・鉄板・リノニウム等と融合していく。
 かつて殺人鬼・片桐安十郎を『アンジェロ岩』へ変貌させたときのように『治す』能力を応用することで、仗助はペニスーツマンを甲板の材質と同化させ『オブジェ』へ造り変えていた。
「まんこはまんこだしちんこはちんこなんだぞ!!! まんこはさあ、ちんこはさあぁああああああ!!!」
 錯乱したように叫びながら、ペニスーツマンは全身を震わせ融合していく甲板材を吹き飛ばそうと試みる。
 その動きは、さながら小便の後に残った残尿を飛ばすためにちんこを振るような動作であった。
「テメーのその『タフさ』はよぉ、正直『敬意』を払わざるを得ないぜ……」
 飛んでくる甲板材をスタンドの拳で防ぎながら、仗助は呆れた様子で呟いた。
「だがな、これで終いだ」
 瞬間、奇妙な事にペニスーツマンの身体がふわふわと宙に浮き出した。
 困惑した様子で手足をばたつかせるペニスーツマンだが、重力から解き放たれたかのようにその身体は上へ上へと浮いていく。
「さ……『触った』……!」
 瓦礫の影に潜んでいたお茶子が脱力した表情で呟いた。
 出久の立案した『作戦』において、彼女は最後の『切り札』となる役目を担っていた。
「もし僕の『個性』や東方君達の『スタンド』?でも倒し切れなかったら……そのときは麗日さんが『切り札』になって欲しいんだ」
『作戦』を立案していた最中、出久は真摯な表情でお茶子に語りかけた。
 麗日お茶子の『個性』・『無重力(ゼログラビティ)』。
 指先の肉球で触れた人や物体の引力を無効化する力である。
 一見ゆるふわにも見える彼女の『個性』を、出久は対ペニスーツマンの『切り札』とした。
「『引力』がないってことはよぉ〜、長い目で考えれば、宇宙の彼方まで追放されるってことだからなぁ!」
 仗助の言葉に今更慌てだしたペニスーツマンが、空中より亀頭部をお茶子へ差し向ける。
「もう遅いぜ、ドラァッ!」
『クレイジー・ダイヤモンド』が周囲の瓦礫を殴りつけた。それらはペニスーツマンが撒き散らした甲板材の一部であった。
「俺の『自動追尾弾』だぜ! 喰らいやがれッ!」
『治す』能力が発動し、瓦礫はペニスーツマンの身体に埋め込まれた甲板材に引き寄せられ飛んで行く。
「そして僕の『エコーズ』が『文字』を刻むッ!」
 タイミングを見計らっていた康一が『エコーズACT2』の『文字』を『自動追尾弾』に貼り付けた。
 瓦礫には『ドッグォンン』という『文字』がデカデカと刻み込まれていた。
「吹き飛ばせ『エコーズ』ッ!!!」
「尻がプリップリになる高校に通いたかった……」
 空中で遺言のような事を囁いているペニスーツマンの元へと『文字』が貼り付けられた『自動追尾弾』が迫り来る。
 やがて直撃した瓦礫は『エコーズ』の能力により『ドッグォンン』という擬音の力を顕現させ、ペニスーツマンを大気圏の外まで吹き飛ば……せなかった。
「なにがまんこだよ。ちんこをしごき倒せるからって調子乗ってんのとちゃいますか?」
 甲板に足をつけたペニスーツマンが乱れたネクタイを締め直しながら、何やらイチャモンめいた事をまくし立てていた。
 仗助・康一・お茶子の三人は唖然とした表情でペニスーツマンを見つめてた。
 十全に練った『作戦』は全てを功を成した。
 しかしながら、最後の最後でペニスーツマンは彼等の攻撃を無力化したのである。
「テメー……何を……しやがった?」
「『カウパーバリア』」
 仗助の問いにペニスーツマンが端的に答える。
 かつて仮面ライダーウィザードの『指輪の魔法』に耐性を身につけたときのように、ペニスーツマンは『個性』と『スタンド』を防ぐカウパー液を排出したのである。
 結果、お茶子の『無重力(ゼログラビティ)』と康一の『エコーズ』を無力化し、ペニスーツマンは五体満足で再び「晴風」へと降り立った。
「全てのまんこを破壊してほしい……

 それはただ一つの純粋で無垢な祈りの結晶……

 浅ましくも美しき切なる願い……『まんこ破壊光線』!」
「へ、あっ……アアアァァァァッッッ!?」
 謎の口上と共にペニスーツマンの乳首から桃色の光線が放射される。
 まんこを破壊せしめる怪光線の直撃を受け、お茶子は叫び声を上げながら倒れ伏した。
「『クレイジー・ダイヤモンド』ォォォッッッ!!!」
「『エコーズ』ゥゥゥゥッッッ!!!」
 仗助と康一、仲間を害され激昂した二人の『スタンド使い』が各々のスタンドを繰り出した。
 ペニスーツマンは迎え討つように、自らのスラックスを足元まで下ろし
―――チンポチンポセイヤセイヤ(体はちんこで出来ている)……
    精巣捻転・精索旋転・睾丸回転……

『我が精巣は捻れ狂う(テスティキュラー・トライズン)』ッッッ!!!」
 ペニスーツマンが己のキンタマを高速回転させながら、禍々しき言霊を紡いだ。
 瞬間、ビキィッ!と仗助と康一の股間に神経が捻れるような激痛か迸る。
「フ……ザけんなァ……ァァ!」
「グッ……アァァァァッッッ!?」
 腹部と精巣を繋ぐ精索を捻れさせ、精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)を引き起こす呪詛『我が精巣は捻れ狂う(テスティキュラー・トライズン)』。
 仗助は忌々しくペニスーツマンを睨みつけながらも膝をつき、康一は激痛から甲板を転げまわっていた。
「『ハイメガザーメン砲・スパイラルエフェクト』!」 
 ペニスーツマンが身を捻り、回転力を加えた『ハイメガザーメン砲』を射精した。
 回転により貫通力を増加させた精液の奔流は仗助の巨体を呑み込み、甲板に倒れていた康一をも巻き込みながら、二人の『スタンド使い』を蹂躙し、その意識を闇に葬った。
「圧倒的な恐怖と嫌悪感と暴力を与えることで性行為ができるんだぞ……凄いだろ……レイプは……」
 自らの力に酔いしれるような言葉を漏らしながら、ペニスーツマンは精液塗れとなった甲板をフラフラと歩いていった。

ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ その4

鬼斬』の姫君・静御前義経
双星の陰陽師』焔魔堂ろくろと化野紅緒。
 怪異の討伐者達とペニスーツマンが「晴風」の甲板の上で向かい合っていた。
「おちんちんをいじりまくってしまったのか????おちんちんを???いじりまくって???しまったのか????????」
「い、いじってねーよっ!」
 開幕早々に煽られたろくろが犬歯を剥き出しに吠える。
 傍らの相方を呆れた眼差しで見下しながら、紅緒が四種の霊符を取り出した。
「豪腕符・金剛符・韋駄天符・星動読符……陰陽呪装……」
 紅緒は狐面を被りながら
「砕岩獅子急急如律令……鎧包業羅急急如律令……飛天駿脚急急如律令……来災先観急急如律令……」
 静謐な声で詠唱し、攻撃力・防御力・敏捷力・先読みの強化という四つの呪装をその身に宿していく。
「祓い給え! 清め給え! 急急如律令っ!!!」
 ろくろもまた黒い霊符『星装顕符』を用いて、ケガレ堕ちした異形の右腕を解放した。
「バフかけまくりですねー。MMORPG発端のアニメとしては、負けていられませんっ!」
「負けずにこちらもやるとしよう!」
 呑気に言いながら、静御前義経が各々の武器を天に掲げ
「『弓気錬成(きゅうきれんせい)』!」
「『斬気錬成(ざんきれんせい)』!」
 二人の身体に光が満ちていき、各々の武器の威力が上昇していく。
「援護を……して!」
「いざ参るっ!」
 近接戦闘を得意とする紅緒と義経が一直線にペニスーツマンの元へと駆け出した。
「み恵みを受けても背く敵(あだなえ)は……篭弓羽々矢(かごゆみははや)もてぞ射落とすっ!」
「おぉ! かっこいい呪文ですっ!」
 隣ではしゃぐ静御前を無視しながら、ろくろは右手に握り締めていた石礫をばら撒いた。
「『ザーメンとりもち』っ!」
「『烈空魔弾』! 急急如律令っ!!!」
 ペニスーツマンが射精した粘着性の精液の塊を、呪力(しゅりょく)が込められた石礫が薙ぎ払う。
「ではわたしも援護を……『呪怨矢』っ!」
 状態異常を引き起こす呪いの矢が、ペニスーツマンに突き刺さった。
 移動速度低下により動作が鈍ったペニスーツマンへと、紅緒と義経が迫り来る
「合わせろ……合わせなさいっ!」
「ぬぅ、偉そうに」
 文句を言いながらも義経は大太刀を構え、紅緒と共にペニスーツマンへと突貫する。
「……『十六夜彼岸の舞』」
「何のぉ、『包茎ガード』!」
 目視できぬ程のスピードで、二振りの霊剣と大太刀による剣舞がペニスーツマンを襲撃する。四種の呪装を施した紅緒のスピードに、義経は『神喰い』との戦いの中で培った経験則をもって後追いしていく。
 ペニスーツマンは亀頭部の皮を引っ張り上げ防壁とすることで、剣戟を防ごうとする。
「しゅきしゅきだいしゅき~」
 皮一枚の守りはさほど意味を成さなかった。
 剣戟の嵐に身を切り刻まれながら、ペニスーツマンが曖昧な声をあげる。
「とどめだっ!」
 義経の声に合わせるように、紅緒が天高く跳躍した。
「……『鏡花落月断』っ!」
「『聖光煌閻斬』!!!」
 紅緒が二振りの霊剣を束ねて振り下ろし、極大の斬撃を上空から繰り出し
 義経が聖なる輝きを纏った一閃を、横一文字り斬り払う。
 陰陽師鬼斬の姫君、二つの『奥義』がペニスーツマンを十文字に引き裂いた。
「晴風」の装甲を捲りあげ、ペニスーツマンが錐揉み回転しながら吹き飛んでいく。
「よっしゃあ!」
「3分の尺に収まるくらいアッサリと倒せましたねぇ」
 横たわるペニスーツマンを見下ろしながら、ろくろと静御前が安堵した直後のことであった。
「今日もさかこ頑張ってくぞオイ!」
 突如、ペニスーツマンが飛び上がり、高らかに宣言した。
「まだ祓えて……ない!?」
「馬鹿な!? あれ程の攻撃を受けて?」
「オイオイオイ!!さかこさかこさかこ!!うんこぶりぶりぶりぶり!!レイプ!」
 狂ったような言葉を垂れ流すペニスーツマンに圧倒され、二人はただ呆気に取られて見ていた。
 その瞬間であった。
 ペニスーツマンがワイシャツを肌蹴させ、自らの乳首を露出させた。
「『まんこ破壊光線』!!!!」
 突如、ペニスーツマンの乳首から二条の桃色光線が放射された。
「あ、ぐ、アァァァァッッッ!?」
「何が起き、ガァァァァァァッッッ!?」
 桃色光線を受けた紅緒と義経が下半身を抑えながら崩れ落ちた。その表情はこれまでに経験したことのない苦痛を受けたかのように歪んでいた。
 女性器を直接破壊せしめる閃光『まんこ破壊光線』。恐るべき技である。
「紅緒ぉ! 何だ、何が起きてやがる!?」
「よくも義経ちゃんを! 喰らえ『天矢ノ誅罰』ッ!!!」
 混乱するろくろを余所に、仲間を傷つけられ激昂した静御前が弓スキルの奥義を撃ち放った。
 眩い聖光を纏った浄化の矢が直撃するも、ペニスーツマンは構わずに乳首を輝かせた。
「『まんこ破壊光線』」
「あぅ、あ、ギァァァァァァァッッッ!?」
 無情にも炸裂した桃色光線が静御前のまんこを破壊する。
 激痛に顔を引きつらせながら、静御前もまた甲板に膝をつく。
「テメェ……いい加減にしろォッッッ!!!」
 異形の右腕の拳を固く握り締め、ろくろがペニスーツマンの元へと飛び出した。
『星装顕符 』により現出した『ケガレ』の拳が、ペニスーツマンへと叩き込まれる。
「超天変ちんちん見な  強壮にも射精」
「こ、この野郎ォ!!!」
 ペニスーツマンはギンギン勃起させた己の亀頭部をもって、ろくろの拳を真正面から受け止めていた。
「『射精覚醒ドライセン』ッ!」
 ペニスーツマンは徐にスラックスのジッパーを下ろし、露出したちんこから白濁の奔流を放射した。
 精液の濁流を浴びたろくろは、その圧倒的な臭さに意識を闇に葬られた。
「……これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮」
 勝利の余韻に浸るように、ペニスーツマンが囁いた。

ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ その3

「坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します。またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……」
「晴風」の甲板に立つスーツ姿の男・坂上が、適当な調子で『異世界人』達へと名乗りをあげた。
 一見、平凡な風貌の男に見えるが、その瞳からは隠し切れない『虚無』が滲み出ていた。

RATtウィルス感染者』
『神喰い』
『ナナキ』
『ケガレ』
『敵(ヴィラン)』
『吐き気を催す邪悪』
『カバネ』
『テラフォーマー』
『魔獣』
『闇の魔法つかい』
『奇獣』

 その圧倒的な禍々しさは、『異世界人』達が対峙してきた様々な存在を彷彿させた。
 しかしながら、危険性という一点において、彼らの意思は統一されていた。
「……やばい……何人くらい、アイツを目撃した?」
「えっ? あの……」
 スバルが呆然とした表情で呟いた。
「他にこの艦を動かしている娘がいるだろっ!? アイツを目撃した可能性がある奴は何人いるかって聞いているんだ!」
 凄まじい剣幕で詰め寄られた明乃が狼狽しながら
「わたしも離れていたから何ともいえないけど……艦橋のみんなは、位置的に間違いなく目撃したと思います……」
「くそっ!」
 明乃の答えにスバルは焦燥した様子で拳を握りしめた。
「スバル君、説明をしてくれ。あのスーツの男が君の言う『奇獣』の元締めなのか? あの男を目視することで何が……」
「どぅぁしゅぃみゅぁしゅぅちゅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
 番場の言葉を坂上の奇声が遮った。
 相対する「異世界人」達の緊張感が高まる中、坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
「変身」
 一声と共に、坂上の逸物が神々しい光を放った。
 やがて白濁とした閃光に包まれながら、その姿が異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」
 突如、出現した珍妙な姿の異形に一同は言葉を失っていた。
「何だ……あの姿は……一体、どんな生物をベースにしてやがる?」
「どうみても、人間の雄の生殖器だろう」
 燈の漏らした言葉に、ミッシェルがうんざりとした様子で応じた。
「ふざけた外見に惑わされるな! あの姿になっているってことは、多分、アイツの能力は発動している!」
「冷静になれっ! 奴の異能を知っているのなら、全員に共有させるんだ!」
 生駒の指摘に頭を冷やしたスバルが重々しく口を開く。
「アイツの姿を目撃した人間は……何ていうか、『自殺衝動』に苛まれるんだ……本人が『虚無の哲学』とか呼んでいた能力だ……知ってれば気を強く持つことで抵抗できる力だけど、何も知らない艦の女の子達には対応する手段がねぇ!」
 スバルの解説に、その場にいる全員が息を呑んだ。
 中でも、明乃の顔色は真っ青に染まっていた。苦難を共に乗り越えてきた仲間達が揃って自殺してしまうという最悪な未来が彼女の脳裏をよぎる。
「しかも『虚無』は人から人に伝染する! 一人でも染まったとしたら、今頃はどんどん増殖しているかもしれねぇ!」
「マナ汚染のようなものかな? 魔法というよりは呪術寄りの力だね」
「そんな……私なら治癒魔法で助けられるかもしれない……すぐに行かないと!」
 呑気なペースを崩さない精霊猫パックとは対照的に、エミリアは焦燥感に駆られた様子であった。
「膣は凶器。セックスは殺人術。どんな綺麗事やお題目を口にしてもそれが真実」
「船員を助けるにせよ、誰かがアレを足止めしなければならないだろう」
 訳のわからない言葉を呟くペニスーツマンに目を向けながら、番場は言う。
「俺が行く」
 端的に宣言した生駒へと、全員の視線が注がれる。
「俺は医学には疎いし、異能をどうこうするような力はない……奴と戦う役目は俺が担うべきだ。俺は『カバネリ』だから、多少の負傷で死ぬことはないからな」
「わたしも行くよ、生駒。足止めとか言うけど、あのおちんちんの怪物、わたし達でやっつけちゃってもいいんでしょ?」
 微笑みながら語る無名に「その台詞は不吉だからやめておけ」と出そうになった言葉をスバルは何とか呑み込んだ。
「生憎、私も殴る蹴るしか能がないのでな。あの存在自体がセクハラな物体を叩くのに参戦させてもらおう」
「俺も残る。魔法や超能力やらで、船員の女の子達を治療できる奴は行ってくれ。ここは人命を優先させよう」
 燈とミッシェル、二人の戦士が注射器型の『薬』を取り出しながらペニスーツマンと戦う意思を表明する。
「『自殺衝動』なんてモンにはお手上げだけどよぉ、『怪我』なら『クレイジーダイアモンド』で治せるはずだぜぇ」
「『ピンクトルマリン』の癒しの力なら、何とかできるかもしれないわ!」
「『ケガレ祓い』の領域なら……陰陽術で対処できる……はず」
スタンド使い』・『プリキュア』・『陰陽師』。
 様々な異能を持つ者達が各々の領分で出来ることを確認していく。
「うぬぬ……回復スキル持ちはあまてらすしかいないのだが……」
「私たちはえーと……回復アイテムを持っていってあげましょう! 何しろアニメ本編で一度も使っていなかったもので、十分に余っていますからっ!」
鬼斬』の姫君、静御前義経が何処からか大量の寿司(回復アイテム)を取り出し、わたわたと駆けていく。
「僕達も行こう、真咲さん! 何か手伝えることがあるはずだよ」
「それなら僕達を手伝ってほしい! 雄英高校で習った災害救助マニュアルを活用すれば、きっと多くの人を救えるはずだからっ!」
『ヒーロー』として導くような出久の言葉に、光宗と真咲が力強く頷いた。
「皆さん……ありがとうございますっ! 船内を案内しますので、どうか力を貸してください!」
 明乃に先導されながら、『異世界人』達は甲板を離れていく。
「お前は戦士じゃないだろ? 戦うのは俺達に任せて、お前が持つ『予知』能力とやらで、皆を導いてくれ」
 行くべきか否か判断がつかず足踏みしていたスバルへと、燈が言い放つ。
「すまねぇ! 船員の女の子達を助けたら、必ず戻ってくる! 死ぬんじゃねぇぞ!」
 そう言い残し、スバルはエミリアと共に船内へと駆けていった。
 残された生駒・無名・燈・ミッシェルの4人がペニス―ツマンと対峙する。
「うぬぼれるなよ 邪悪なまんこ 最後のちんぽが枯れるまで
 ここからちんぽも さがらない」
 不気味な台詞を呟くペニス―ツマンへと4人が各々の武器を差し向ける。
「黙れよセクハラ野郎……粗末なモンおっ勃てやがって……直ぐに捻りつぶしてやるから覚悟しろ!」
 ミッシェルが放った宣戦布告の言葉が、ペニス―ツマンとの激闘の幕開けとなった。
『M.O.手術適応者』と『カバネリ』。
 人外の力を秘めし戦士達がペニス―ツマンへと対決する。

☆☆☆

『『人為変態』』
 燈とミッシェルがそう宣言しながら、注射器型の『薬』を首筋に突き刺し、『変態』を遂げる。
 頭部より触覚が生成され、体表は強化アミロースの甲皮に覆われていく。
 M.O.手術により得た地球生物の力。
『大蓑蛾(オオミノガ)』と『蟻』の能力を二人は解放する。
「これが、遥か未来の技術か……『カバネリ』とは違う、人の手で造り出された異形……どんな力を持っているのか……」
 生駒が変異していく二人の姿を見ながら、思わず呟いた。
 ロクに言葉を交わしていない二人とどのように連携をとるべきか考察していると
「先に行くよ」
 首元の枷紐を外し、『カバネリ』の身体能力を解放した無名が躊躇なく突貫していた。
「馬鹿っ! 先走るなっ!」
 生駒の警告を無視し、無名は二丁の蒸気銃を構えながら、ペニス―ツマンの元へと駆けていく。
「愛は時を越え、お前は祖国に帰れ……『おしっこレーザーカッター』ッ!」
 ペニス―ツマンの亀頭部より、ウォーターカッターの如き勢いで小便が放射された。
「おしっこ飛ばさないでよ。えんがちょー」
 言いながら、無名は軽々と跳躍しながら『おしっこレーザーカッター』を避け、蒸気銃の引き金に指をかける。
 数々の『カバネ』との戦闘で鍛え抜かれた腕前をもって、無名がペニス―ツマンを狙い撃つ。
 バシュン!バシュン!という轟音と共に、ペニス―ツマンの胸元へ噴流弾が叩き込まれた。
 ペニス―ツマンはクネクネと身を捩るだけで、怪我を負った様子はない
「頑丈だな、もうっ!」
 蒸気銃を撃ち続けながら、無名が凄まじい速度で距離を詰める。
「これでも、喰らえ!」
 無名が蒸気銃の先端に備え付けられた刃を、ペニス―ツマンの胸元へと勢いよく突き立てる。
『カバネ』の心臓皮膜でコーティングされた紅い刃が、ペニス―ツマンの心臓を容赦なく貫いた
 ……かのように見えた。
「全身がキャプテンアースになってきた」
「なっ!?」
 刃はジャケットに阻まれ、ペニス―ツマンは傷一つ負っていなかった。
 動揺する無名に向け、ペニス―ツマンがその亀頭部を向けると
「足を止めるな、無名っ!」
 生駒が背後より足払いをかけ、ペニス―ツマンを転倒させた。
 甲板に横たわるペニス―ツマンへと、生駒は右腕の『ツラヌキ筒』を振り下ろす。
「ハァァァッッッッッ!!!!」
 生駒の咆哮と共に、ガシュン!という爆音が轟いた。
 一撃必殺の威力を誇る『ツラヌキ筒』の鉄杭が、ペニス―ツマンの身体を頑強な甲板にめり込ませる。
「……駄目だっ! 無名、一旦引くぞっ!」
「えっ? なんで?」
 呆気にとられる無名の手を引き、生駒はペニス―ツマンから距離を取る。
 やがて、ペニス―ツマンはゆったりとした動作で何事もなかったかのように立ち上がる。
「……うそ。アイツは『カバネ』よりも頑丈だっていうの……」
「……俺達は援護に回るしかない。悔しいが、俺達の武器では奴に歯が立たないようだ……」
『噴流弾』に『ツラヌキ筒』。
 数多の『カバネ』を屠ってきた武器が通用しないという事実に歯噛みしながらも、生駒は現状を冷静に分析していた。
「どうやら、そちらのスチームパンク的な武器は通じないようだな」
「なら、俺達のSFチックな武器に任せな」
 ミッシェルと燈。
 共にマーズ・ランキングの上位ランカーである二人には『専用武器』が支給されていた。
 対テラフォーマー用起爆式単純加速装置『ミカエルズ・ハンマー』
 対テラフォーマー振動式忍者刀『膝丸』
『己の技術』か『己の特性』を最大限に活かすという点に特化した最新鋭の武器を構えながら、ミッシェルと燈がペニス―ツマンと対峙する。
「夏だ!まんこだ!全員死亡!!」
「そーいうのをセクハラっつってな……」
 陽気な声をあげるペニス―ツマンへと、ミッシェルは鋭い眼光で睨み付ける。
「地球では嫌がってる女子に勃起したペニスを見せつけると
 訴訟・罰金・減給・免職、もしくは……」
 瞬間、ミッシェルの右肘に装備された『ミカエルズ・ハンマー』が火を噴いた。
「こうなる!」
 爆発より生じた超加速の力を乗せ、ミッシェルがペニス―ツマンの亀頭部へと拳を叩き込む。
『弾丸蟻(パラポネラ)』×『対テラフォーマー用起爆式単純加速装置≪ミカエルズ・ハンマー≫』
 重量級の『テラフォーマー』でさえも上半身ごと爆砕できる程の一撃が、ドグォン!と大気を震わせた。
「『タートル……ヘッドバット』ッ!」
「ガァッ!?」
 大きく後方へ仰け反ったペニス―ツマンが振り子のように身を起こし、ガチガチに勃起した亀頭部をミッシェルの顔面へと叩き付けた。
 皮肉にも自らが得意とする頭突き(ヘッドバット)を喰らったミッシェルが人形の如く吹き飛んでいく。
「何、やってんだ、テメェッッッ!!!」
 ヒュンヒュンと柄に『糸』が張り付いた忍者刀『膝丸』がペニス―ツマンの周囲を飛び回る。
 やがて、ペニス―ツマンは『大蓑蛾(オオミノガ)』の能力によって生み出された生物界で最も強靭な『糸』に雁字搦めに拘束されていく。
「ミッシェルさんの顔に汚ねぇモンぶつけやがって……覚悟は出来てるんだろうな?」
「……全てを諦めて股間いじりまくってもんどり打って無限に寝てたい」
 何やら諦めの言葉を呟くペニス―ツマンと向かい合い、燈は油断なく忍者刀『膝丸』を構える。
(……燈とかいう奴、手練れだ。剣客としての腕は来栖やあの美馬にも匹敵するかもしれない……)
 体捌きや構えから燈の実力を推し量った生駒が息を呑み経過を見守る中、空気が弾けた。
『大蓑蛾(オオミノガ)』×『対テラフォーマー振動式忍者刀≪膝丸≫』
 日本古武術『膝丸神眼流』の術理をもって、燈が拘束されたペニス―ツマンへと忍者刀『膝丸』を振り下ろした。
「……なッ!? 」
 燈の渾身の一閃はペニス―ツマンに弾かれていた。
『テラフォーマー』の多糖類アミロースの甲皮すら切り裂く『膝丸』の斬撃が通じなかったという事実に燈の心に空白が生じた。
「……『フル勃起、装甲(アーマー)』……」
 ペニス―ツマンは膨張・硬化していき、生物界で最も強靭な『大蓑蛾(オオミノガ)』の『糸』が、内部からの圧力でブチブチと千切れていく。
 ペニス―ツマンは虫の類に欲情するという性癖を持つ。
 故に、『変態』したミッシェルと燈の姿を見て勃起し、ただでさえ頑強なその性質を強化させていたのは自明の理である。
「諦めるなっ! どこかに弱点があるはずだっ!『カバネ』の心臓のように、致命的な急所になりうるような箇所が!」
「……あぁ! 縛法(イト)や剣術(ケン)が通じねぇなら……足腰立たなくなるまで当身技(ブッたた)くまでだ……!」
 生駒と無名が、『ツラヌキ筒』と蒸気銃を構えながら、燈の隣に並び立つ。
 その瞬間を待ち望んでいたかのように、ペニス―ツマンが身体をぶるりと震わせた。
「『重加速』!」
 ペニス―ツマンの股間に、真紅の『ネオバイラルコア』が装着された。
 燈達はさながら時間の流れが変わったかのように、『どんより』としか身体を動かせなくなる空間に捕らわれていく。
『ドライブ』の世界で獲得した『ロイミュード』として能力を駆使し、ペニス―ツマンは『重加速』を発動させていた。
「……な、ん、だ、これ、は……!?」
「『おしっこレーザーカッター 3WAY弾』!」
 燈・生駒・無名の3人は、3方向に枝分かれしたおしっこに各々の胸を貫かれ、やがて甲板へと崩れ落ちた。
「でもちんちんはこんなにギンギンなんだもん。分からないよね〜〜〜〜〜〜」
 ペニス―ツマンの勝利の宣言が、「晴風」に響き渡った。

☆☆☆

「あああぁぁぁーーーーーッッッ!!! 死なせてくださいまし!!!」
「晴風」の水測員兼ラッパ手を務めるお嬢様、万里小路楓(まりこうじかえで)が薙刀を振り回し暴れていた。
キュアップ・ラパパ! ロープよ、あの人を捕まえて!」
『虚無の哲学』に汚染され、自殺衝動に苛まれた少女をみらいの魔法が捕えた。
 ロープに簀巻きにされたお嬢様へと、『スタンド使い』康一が近づき
「音を響かせろ『エコーズ』ッ! 」
『エコーズACT1』がその能力をもって万里小路に音を響かせる。
『生きて!』という康一の声が、彼女の頭に反響していく。
 かつて小林玉美(こばやしたまみ)の『ザ・ロック(錠前)』に心を縛られた母の自害を止めたときのように『エコーズ』の能力を応用し、万里小路の心へと直に声を伝えたのである。
「……あっ……わたくしは何を……?」
 正気を取り戻した万里小路が床にへたり込む。
「まりこうじさん! よかった、早く医務室へ」
 明乃に手を取られながら、困惑している様子の万里小路が医務室へと連れていかれる。
 艦橋をはじめ、無線室・水中聴音室・電探室・機関室等、明乃達は手分けをして艦内の至るところを巡り、『虚無』に捕らわれた少女を保護していた。
(これで全員の無事を確認できた……本当に、よかった……)
 万里小路の手を引きながら、明乃はひとまずは死傷者が生じたなかったことに安堵する。
 やがて、医務室までたどり着くが、そこは大多数の人がすし詰めにされているような有様であった。
「艦長……今度はどんなパンデミックが起きているんだ?」
「み、みなみさん? 大丈夫なの?」
「晴風」の衛生長兼保健委員を務める小さな天才、鏑木美波(かぶらぎみなみ)がやや憔悴した表情で声をかけた。
「大丈夫なわけないだろう……自傷行為を繰り返す生徒達で、医務室は大盛況だよ……」
「そっか……でも、みなみさんが無事でよかった」
 明乃の言葉に、美波は自嘲的な笑みを返しながら
「わたしだって無事なわけではない。『抗うつ剤』を投与して、辛うじて正気を保っているのだからな……自殺衝動を引き起こすウイルスなんて聞いたこともないが、神経伝達物質を乱すような特性を持っているのか?」
「大丈夫だよ……わたし達に手を貸してくれる人を見つけたから」
「あぁ、あのわけのわからない力を持つ輩か」
 明乃の言葉を裏付けるように、医務室では様々な『異世界人』達が異能を行使し、「晴風」のクルー達を治療していた。
 仗助の『クレイジーダイアモンド』が少女達の怪我を治していき
 エミリアの治癒魔法の光が汚染された精神を浄化する。
 そして……
「ほら、大人しく食べてくださいっ!」
「何しやがるんでぃ、べらぼぉーめ!」
 江戸っ子気質の機関長・柳原麻侖(やなぎわらまろん)がワイワイと騒いでいた。
 傍らの静御前が麻侖の小さな口に寿司(回復アイテム)を無理矢理に詰め込んでいる。
 やがて、傷だらけだった彼女の細腕は淡い光に包まれながら治癒されていく。
「あんなんで怪我はちゃんと治るんだから、医者としての存在意義を揺るがされるよ」
 美波の愚痴じみた言葉を、明乃は苦笑で応じるしかなかった。
「アビラウンケンソワカ……アビラウンケンソワカ……」
「あ、ありがとうございます……」
 ろくろと紅緒、二人の陰陽師は霊符を翳し、「晴風」給養員を務める杵崎姉妹の怪我を治療していた。
「これで、治癒符は使い切った! 俺達もあの『ケガレ』を祓いに行くぞ!」
「わたし達も持っているお寿司は全部食べさせました!『神喰い』の討伐に参りましょう!」
双星の陰陽師』、焔魔堂ろくろと化野紅緒。
鬼斬』の姫君、静御前義経
 怪異討伐の専門家達が医務室を飛び出した。
 ペニス―ツマンとの激闘は依然、続く。