ペニス―ツマン VS 仮面ライダーゼロワン
人工知能搭載人型ロボ・ヒューマギアが、様々な仕事をサポートする新時代。
AIテクノロジー企業『飛電インテリジェンス』の若き社長、飛電或人は苦い顔で様々な書物と睨めっこしていた。
社長室に備え付けられた豪奢なデスクの上に散乱しているのはアダルトグッズ関連の資料である。
「……イズ、やっぱり考え直さない? 飛電がアダルト産業に参入するなんて……」
「お言葉ですが或人様、性の分野は馬鹿にできない規模のマーケットなのですよ。これからの時代をリードする事業に相応しいかと」
側に控えるのは社長秘書を務める秘書型AIアシスタント、イズである。
朗らかな笑顔で事業についての見識を補足されたが、納得いかない様子の或人の表情は険しいままである。
「いつぞやのお仕事勝負のときにも、天津さんが似たような事を言ってたよね。それ、本当なのかなぁ……? いや、もちろんアダルト産業を軽視している訳じゃないんだけど」
「事業拡大するにあって、コンサルタントをお招きしました。アダルト業界に精通したスペシャリストの方で、必ず飛電の発展のためになりうる人材かと。一度或人様にお目通しいただければと思うのですが、いかがでしょうか?」
「また俺の知らない間に話が進められている!? いや待って待って!! もうそこまで来ているの!? 俺、その人の名前も経歴も何も知らないんだけど!?」
「お見えになられたようです。案内致します」
混乱している或人を気にせずに、イズは秘書としての業務に励むためスタスタと離れていった。
やがて、履歴書がどこかにないか慌ててデスクを漁っていた或人の元に、その男は現れた。
その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。
「こちらが元株式会社まんこソフトウェア代表取締役社長を務め、『ドスケベ総合リゾート ドスケ部』のラブホテル経営をも手掛けたアダルト事業のスペシャリスト、現在は株式社飛電インテリジェンスのアダルト事業の販売コンサルタントを担当する膣階堂陰唇(ちつかいどう・いんしん)様です」
「よろしくオナシャス」
「って、アンタは坂上逆孤(さかのうえさかこ)じゃないか!? お仕事勝負のときの!!」
或人の突っ込みにイズと膣階堂、改め坂上は目を見開き驚愕した。
「ッッ!? 申し訳ございません、或人様! まさかヒューマギアの分析を欺く程の変装能力とは…… 自らのいたらなさを恥じ入るばかりです……」
「この坂上の完璧な変装を見破るとは……」
「いや、鼻の下にあからさまな付け髭をくっつけただけじゃないの! どうして誰も気づかないんだよ!」
飛電インテリジェンスの新規事業のコンサルタントとして現れた男は、あろうことか無効試合に終わった『お仕事5番勝負』のアダルトグッズ販売対決にてZAIA側に雇われた営業マン、坂上であった。
付け髭をベリベリと剥がしながら坂上が虚無に満ちた視線を或人へ向ける。
「バレてしまっては仕方ない。ロボスナちゃんのバックアップデータを渡してもらいましょうか。あの子、私がキモ過ぎて機能停止しちゃったのよね……」
「そういえばアンタにはヒューマギアを持ち逃げされていたな! 彼女は会社の大切な商品であり、社員なんだ! 絶対に返してもらうぞ!」
或人が鋭い視線で坂上を睨み、飛電ゼロワンドライバーを装着する。
『ジャンプ!』『オーソライズ』
或人がベルトの右側にある認証装置『オーソライザー』に『ライジングホッパープログライズキー』をスキャンすると、バッタ型のライダモデルが衛星ゼアから転送された。
ライダモデルが坂上を威嚇するように社長室を跳ね回る。
相対する坂上は朧気な表情を崩さず、スラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
「「変身!!」」
『プログライズ!』
『飛び上がライズ!ライジングホッパー!』
『A jump to the sky turns to a rider kick』
或人が『ライジングホッパープログライズキー』をライズスロットにセットする。
バッタ型のライダモデルが分離・変形し或人の身体に装着され、やがて仮面ライダーゼロワン『ライジングホッパー』へと変身を遂げた。
「ペニスーツマン、爆現」
坂上は己の逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれ、その姿を異形へと変貌させていく。
身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
サーモンピンクの怪人・ペニスーツマンが威風堂々とゼロワンと対峙する。
「前のように呆気なく終わると思うなよ! 久々のトリちゃんで行くぞ!」
お仕事勝負の時の戦闘ではゼロワンの強みを活かす前にペニスーツマンの猛攻を浴び、敗北している。
前回の二の舞にはさせないと気合を入れ、ゼロワンは『フライングファルコンプログライズキー』をオーソライズさせた。
『プログライズ!』
『Fly to the sky! フライングファルコン!』『Spread your wings and prepare for a force』
ハヤブサ型のライダモデルがアーマーへと分解し、ゼロワンのパワードスーツに装着されていく。
派生形態である『フライングファルコン』へと変身を遂げたゼロワンは付与された飛行能力を駆使して宙を舞う。
「オナニーーーーーーー️カムサハムニダ️️️ 『ペニスウィング』!!!」
「おりゃあ! 捕まえた!」
ペニスーツマンが奇声を上げ、鋼のように勃起させた亀頭部を振り回すが、猛禽類の如く飛翔するゼロワンに捕らえられた。
両肩の主翼に内蔵された「ウイングフェアレンサー」からエネルギーが迸り、ペニスーツマンを抱えたゼロワンが猛烈な勢いで社長室の壁をブチ破る。
「或人様!?」
「イズ! 俺のデスクの中に……あっ、こらっ! 暴れるな!!」
「今後の人生1秒たりとも仕事したくない。何もしたくない。虚空になりたい……」
狼狽するイズを横目に、ペニスーツマンを捕らえたゼロワンは飛電インテリジェンス本社の外へと飛び出していく。
「おちんちんさんへ。私に黙って自傷行為するのはやめてください……『カウパーバリア』」
「うわぁ!? このっ! 滑る!?」
ペニスーツマンが危機的状況から抜け出すべくヌメヌメとしたカウパー液を排出した。
ゼロワンの拘束からすっぽ抜けたペニスーツマンが上空から落下する。
「最近虚空のほうも俺を見つめてくるようになった……」
「しまった!? よりにもよって人が多い所に!!」
市民の憩いの場である自然公園へと落下したペニスーツマンは虚無めいた言葉を吐きながら、その亀頭部をビクビクと膨張させた。
「騒がしいちんぽ 笑えないちんぽ
思い付く限り 眩しいちんぽ
明けないちんぽ 落ちてゆくちんぽ
僕のちんぽ掴んでほら『スペルマ流星群』」
詩的な言葉を呟いた後に、ペニスーツマンが白濁の玉を亀頭部より打ち上げた。
天高く打ち上げられた白濁の玉は花火の如く爆ぜ、辺り一帯を塗り潰すかのような精液の豪雨が降り注ぐ。
アスレチックで遊ぶ子供達やベンチで身を寄せ合うカップルにも構わず放ったペニスーツマンの範囲攻撃がゼロワンへと襲いかかる。
『プログライズ!』
『Warning, warning, this is not a test!』
警告音が鳴り響く中、バッタ型のライダモデルのアーマーがゼロワンへと装着されていく。
「そうはさせるか!」
『ハイブリッドライズ!』
『シャイニング!アサルトホッパー!』
『No chance of surviving this shot』
アサルトグリップを接続した『シャイニングホッパープログライズキー』を使用し、ゼロワンは派生形態である『シャイニングアサルトホッパー』へと変身した。
「『シャインシステム』起動!」
青きエネルギー波動弾『シャインクリスタ』が或人の脳波コントロールを元に縦横無尽に疾走する。
コンクリートをも穿つ勢いで降り注ぐ精液の豪雨は、『シャインクリスタ』から八方に放たれるレーザーにより全てが蒸発した。
「何とか全員守ることが出来た……! アイツ、なんて無茶苦茶な攻撃をするんだ!」
「月曜日、心機一転すべての仕事が崩壊する日……!」
範囲攻撃から市民を守り抜いた或人が安堵するも、ペニスーツマンは攻撃の手を緩めない。
ハッ、ハッ、ハッ・・・・・・と不気味なリズムで呼吸を刻みながら、ペニスーツマンは頭の男根をダラリと垂らしながら姿勢を落とした。
「摩羅の呼吸 弐ノ型 『叡智叡智一閃(えちえちいっせん)』ッッッ!?」
「……その技はもう見ている」
居合抜きの如く超高速で男根を振るう、雷の呼吸を組み込んだペニスーツマンの勃起技が空を切る。
『シャイニングアサルトホッパー』の超高速移動と演算能力を用いて、ペニスーツマンの技を見切ったのである。
隙だらけのペニスーツマンの背後より、ゼロワンがアックスモードのオーソライズバスターを振りかぶる。
『Progrise key confirmed. Ready for buster』
『バスターボンバー!』
『ライジングホッパープログライズキー』を装填した放ったオーソライズバスターの一撃が、ペニスーツマンの身体をくの字に曲げながら吹き飛ばす。
「腰がバグってて自動的にパリコレみたいな歩き方になってしまう」
吹き飛ばされ大木へと全身を叩きつけられたペニスーツマンが身体をクネクネと捩りながら立ち上がる。
「タフな奴だな……でも、アンタが負けを認めるまで、いつまでも付き合ってやるよ! いくぞ、次はコイツだ!」
『エブリバディジャンプ!』
『オーソライズ!』
ゼロワンが『メタルクラスタホッパープログライズキー』をスキャンさせた。
『メタルライズ!』
『Secret material! 飛電メタル!』
『メタルクラスタホッパー!』
『It's high quality』
サバクトビバッタを模したライダモデルの群れがゼロワンの身体に群がるように覆っていく。
それらは銀色の装甲へと変化し、やがて仮面ライダーゼロワン『メタルクラスタホッパー』へと変貌させた。
「仕事辞めてとしあきで食っていこうかな?
うっそ〜 『ハイメガザーメン砲』!」
フェイントを混ぜつつ、ペニスーツマンが十八番である精液の奔流を亀頭部より射精した。
迫り来る脅威を前にゼロワンは一歩も動かず、ただ無造作に手を翳した。
「お前の攻撃は全て、予測済みだ!」
あらゆる分子を分解する機能を持つクラスターセルがバリアのように密集し、『ハイメガザーメン砲』を防いだのである。
「降参するなら今のうちだぞ!」
『ドッキングライズ』
ゼロワンがプログライズホッパーブレードとアタッシュカリバーを接続する。
「100時間寝たい。私の望みはそれだけです」
「後悔するなよ! どぉりゃああ!!!」
『アルティメットライズ』
ゼロワンがプログライズホッパーブレードを大きく振るい、最強の必殺技『アルティメットストラッシュ』を撃ち放った。
巨大なクラスターセルの斬撃がペニスーツマンへと迫り来る。
「……マラガミ神楽『艶舞(えんぶ)』!」
それは戦いにおいては不自然な程に優雅な所作であった。
白濁の炎を纏った艶やかな男根の一振りが、『アルティメットストラッシュ』を真正面から打ち破る。
「な、何なんだその技は……!?」
「ラーニングするのはヒューマギアだけの特権ではないという事どすえ」
前回の戦いのときのデータよりも遥かに強化されたペニスーツマンの技に、或人は驚きを禁じ得なかった。
動揺している隙を見逃すはずもなく、ペニスーツマンはぬるりとゼロワンへ歩み寄る。
「マラガミ神楽『歓喜天・大膨張(かんきてん・だいぼうちょう)』!」
ペニスーツマンの亀頭部が気球のように肥大化していく。
白濁とした炎を纏った超質量の打ち下ろしがゼロワンへと襲い掛かる。
「うわあああああ!!!」
クラスターセルを密集させたシールドでも受け切ることが出来ず、マラガミ神楽の直撃を受けたゼロワンは変身解除まで追い込まれた。
「何て強さなんだ……でも、まだ俺には希望がある……!」
満身創痍となった或人だか、その目の戦意は微塵も衰えていなかった。
「プログライズホッパーブレードにはヒューマギアのバックアップデータが保存されているんですよねぇ? あれ、渡して貰えませんかねぇ? そうしてもらえば大人しく立ち去りますんでぇ……」
「ヒューマギアのバックアップデータをみすみす渡すなんて
そんな提案は……ていやんでぇ!!!
はい、アルトじゃあ〜〜〜……ないとォォ!!!」
ペニスーツマンの譲歩するかのような提案に、或人は持ちネタのギャグをもって否定した。
「は? (威圧)」
「今のは、貴方が持ち掛けた愚かな『提案』と江戸弁で『何を言っていやがるのだえ』の転訛である『てやんでぇ』をかけた、大変素晴らしいギャグです」
珍しく不機嫌な様子で言葉を漏らすペニスーツマンに、突如現れたイズが懇切丁寧にギャグを説明した。
「イズ! よかった、間に合ったんだな!」
「はい、或人様。これを……」
イズが取り出したのは蒼く装飾された『ライジングホッパープログライズキー』であった。
切り札『リアライズver.』のプログライズキーを受け取った或人が真剣な表情でイズを見つめる。
「イズ……アイツは強敵だ。力を貸してくれ」
「承知しました。或人様」
或人の頼みを待ち望んでいたかのように、イズは即座に『飛電ゼロツードライバー』を取り出し装着した。
『ジャンプ!』
『ゼロツージャンプ!』
『Let's give you power! Let's give you power!』
或人がプログライズキーをオーソライズさせ、イズがゼロツーリベレーターを展開させる。
待機音声が鳴り響く中、三種のバッタ型のライダモデルが出現し飛び跳ね回る。
「チョモランマのてっぺんから〜
チンポーチンポー シコりたい♪」
戦闘体制へ移ろうという二人を前に、ペニスーツマンは腰をガクガクを振りながら不敵に挑発した。
「「変身!」」
『イニシャライズ! 』
『ゼロツーライズ! 』
『リアライジングホッパー!』『A riderkick to the sky turns to take off toward a dream』
『Road to Glory has to Lead to Growin' path to change one to two!』
『仮面ライダーゼロツー!! It's never over』
飛電或人の強き想いから生まれた仮面ライダーゼロワンの最終形態『リアライジングホッパー』。
飛電或人の夢の集大成であるゼロワンを超えたゼロワン『仮面ライダーゼロツー』。
二人の仮面ライダーが並び立つ。
「「お前を止めるのは!」 」
「俺たちだ!」「私たちです!」
「まあ射精は止められないんですけどね」
二人の決め台詞ににべもなく返し、ペニスーツマンは亀頭部を横に傾けゴキっと肩を鳴らした。
「OTAKU OTAKU OTAKU〜
オタクが逮捕〜♪ オタクが逮捕〜♪」
陽気な歌を口ずさみながら、ペニスーツマンが地面を滑るように突貫する。
二人が変身している最中に油断なく『ペペローション』を全身に浴びていたのだ。
「『アクセルローション』のバリエーション……『ペニスピナー』!!」
ローションによる摩擦の軽減から生まれる超スピードを維持したまま、フィギュアスケート選手の如く高速回転したペニスーツマンが迫り来る!
「「ハァァ!!!」」
「ファッ!?」
ゼロワンとゼロツーが瞬時に消え失せ、同時にペニスーツマンの側面から蹴りを打ち込んだ。
予測能力と超高速移動を駆使し、ペニスーツマンの攻撃にカウンターを喰らわせたのである。
ペニスーツマンは明後日の方向へネイマールのように回転しながら地面を転げ回り、やがて木製のベンチを破壊しながら静止した。
「何もしてないのに腰がぶっ壊れた……それにしても、2対1とは卑怯な……」
ペニスーツマンが腰を押さえながらフラフラと立ち上がる。
(ウヴァさんと雁夜おじさんは有給を取っている……
カミリキインベスくんは自分探しの旅に出てるし……
ウールくんは後ろからパンツを引っ張るイタズラをしたら口を利いて貰えなくなった……
スピアーとアブリボンはポケモンバンクに預けてしまっている……となれば)
「現れよ、我が眷属……アナザークウガ!!」
ペニスーツマンがオーブを取り出し、白濁とした光『エロフォトン』を集約させ秘められた力を解放する。
現れたのは仮面ライダークウガを基にした異形の巨大怪人、アナザークウガだった。
「『アナザーライダー』ッ!?」
突如現れた巨躯を前に、或人が警戒を強める。
『魔王』を名乗る青年、常盤ソウゴとその仲間達が対峙し続けてきたという、歴史改変を目論む時間犯罪者『タイムジャッカー』。
そして彼らが生み出した異形の存在『アナザーライダー』。
ゼロワンの世界を舞台に仮面ライダージオウと共に繰り広げた『アナザーゼロワン』そして『アナザー1号』との激闘は記憶に新しい。
「お・・・・・・お・・・・・・オクレ兄さん」
しかし、その体色は勇ましい赤ではなく、禍々しい黒でもなく、弱々しい白だった。
アナザークウガはそう弱々しく呟いた後に、煙のように消失した。
「よくわかんないけど、アテは外れたようだな!」
「結局『スーパータイムジャッカー』って何だったんですかねぇ……結局のところ信頼できるのは己がイチモツだけか……」
ペニスーツマンが思考を切り替ると、ゼロワンとゼロツーへと頭の男根を差し向けた。
「くらいなさい……『おしっこレーザーカぉッッッ!?」
突如背後から衝撃を受けたペニスーツマンは地面へと叩きつけられた。
ゼロワンが超高速で背後まで移動し、蹴撃を喰らわせたのである。
ウォーターカッターの如き勢いで放射されるはずだった小便が、頭の男根からチョロチョロと漏れ出る。
「ならばその足を止めるっ! どんよりとせよ、『重加そヘァッッッ!?」
ペニス―ツマンの股間に装填された真紅の『ネオバイラルコア』が、超高速で接近したゼロツーによって蹴り上げられた。
仮面ライダードライブの世界で獲得した『ロイミュード』として能力『重加速』は不発に終わる。
「こうなったら距離を取って魔法をあ痛ッ!?」
ペニスーツマンが仮面ライダーウィザードの世界で習得した『指輪の魔法』をもって反撃を試みるも、左手のウィザードリングをゼロワンの手刀によって弾かれ失敗に終わる。
「猪口才なっ! これでもくらえ『ザーメンとりもアヒィィッッッ!?」
粘着性のザーメンを射精する『ザーメンとりもち』は、ゼロツーがペニスーマンの裏筋を優しくそっと撫でたことにより暴発させられた。
「きょ、今日は定時で上がらせてもらいってあれぇ!? い、いつものパターンが……!」
劣勢を悟ったペニスーツマンが鎧武の世界の『オーバーロード』の能力で『クラック』の中へ逃げ込もうとするも、ゼロワンとゼロツーにより逃げ道を塞がれた。
ペニスーツマンのサーモンピンクな顔色が絶望に染まっていく。
「お前にはもう何もさせない! イズ、このまま押し切るぞ!」
「はい! 或人様!」
仮面ライダーゼロツーに備わりし次元跳躍装置『クォンタムリーパー』は様々な可能性を同一世界上に展開させる事を実現させる。
衛星ゼアが予測する2兆通りの可能性の中からペニスーツマンに有効とされる攻撃を最適に選択し、最速で実行し続けているのである。
ゼロワンとゼロツーによる無慈悲なまでの波状攻撃が、ペニスーツマンをなす術なく追い詰めていく。
「ちょ、ちょっと本当にシャレにならない……こうなれば久々の『怒りのハイパーモード』ォォ!!!」
ペニス―ツマンの全身が金色の光に包まれていく。
『怒りのハイパーモード』と呼ばれしその姿は、全ての能力が893倍に増幅される恐るべき形態である。しかし、代償として前立腺の感度が334倍になってまうという欠点も持つ、諸刃の剣ともいうべき姿であった。
「怒りのハイパーマラガミ神楽『金精大明神・朝太刀の舞(こんせいだいみょうじん・あさだちのまい)』!!!」
『リアライジングインパクト!』
『ゼロツービッグバン!』
金色のオーラを刃状に男根に纏わせ、ペニスーツマンが渾身のマラガミ神楽をお見舞いする。
対するゼロワンとゼロツーは各々のプログライズキーを押し込み、必殺のダブルライダーキックをもって真っ向から激突した!
☆☆☆
破壊的な激突音が轟いた後に、立っていたのは二人の仮面ライダーであった。
ダメージによりペニスーツマンの姿を維持できなくなった坂上逆孤は地べたに蹲っている。
「四肢全てから出血しており唇も噛んでめちゃめちゃ腫れとる……」
坂上は地面に這いつくばりながら虚無の表情で敗北を噛み締めていた。
もはや打つ手なしと思考を放棄しかけた、その瞬間であった。
「さぁ、坂上さん! 待ち逃げしたウチの商品を返してもらうぞって、あれ?」
ゼロワンの変身を解除した或人が坂上に近づいたのと同時に、一体のヒューマギアが眼前に突如出現した。
緑の体色と身体の至る所に昆虫の造形が含まれている異形の少女型のヒューマギア。
それはまさしく坂上がお仕事勝負の際に持ち逃げした愛玩ヒューマギア『電撃分身スナッチちゃん』であった。
「……解析の結果、この個体はお仕事勝負の時に私がプロデュースした愛玩ヒューマギア『電撃分身スナッチちゃん』で間違いないようです」
同じく変身を解いたイズが耳のモジュールをピカピカと光らせながら、機能停止し無造作に横たわるスナッチちゃんを分析した。
「とうとう堪忍したってことかな、坂上さんって居ない!?」
或人とイズがスナッチちゃんに気を取られていた間に、坂上は影も残さず消えていた。
好き勝手に暴れて荒らし回った罪を償ってもらいたい気持ちはあったが、ひとまず大事な商品を取り戻せたことに或人は安堵する。
「坂上さんを取り逃しちゃったのは残念だけど、スナッチちゃんも戻ってきてひとまずは一件落着ってところかな?」
或人が大きく伸びをしながら、そう結論した。
「はい……しかし、今回の騒動は私の失態です……やはり、アダルト産業に参入する計画は白紙に戻されるのでしょうか?」
ペニスーツマンという強敵を撃退したものの、イズの表情は浮かないままだ。
坂上という脅威を引き入れてしまったことに、責任を感じている為である。
「いやいや白紙になんて戻さないって! あと、ちょっと考えたんだけど……もし嫌じゃなければ、イズが新規事業の責任者になってもらえないかな?」
或人の申し出を受けたイズが驚きの表情で瞠目する。
「ほら、お仕事勝負のときも凄い活躍していたし、外部の人間に任せるよりも飛電のことを誰よりも知り尽くしているイズに任せるのが適任かなーって。もちろん、社長秘書との兼任になるから忙しくなるとは思うけど……」
「お任せください、或人様。必ずやり遂げてみせます」
或人の提案をイズは即断即決で受け入れた。
「それに私は秘書型ヒューマギアで叡智(えっち)な分野に対応できる機能がありますので、適任かと思います」
「前にも言ったと思うけど、秘書ってそういうもんじゃないでしょ!」
「秘書は叡智な概念なので妥当かと。では小粋なジョークでもって、これを証明するとしましょう」
イズが菩薩の如き表情で微笑む。
嫌な予感が走った或人が表情を強張らせた。
「万国祭はまんこ臭「はい! アウトォォ!!!」
イズの言葉を或人の絶叫が遮った。
或人とイズの力で、飛電インテリジェンスはこれからも発展していくだろう。
人とヒューマギアが共存し笑い合える世界を作るという夢に向けて、二人は飛んでいく。
☆☆☆︎
「まったく世話が焼ける……」
中性的な容姿の青年、ウールが坂上を背負い路地裏を歩いている。
ペニスーツマンの姿も維持できなくなる程の絶体絶命のピンチに、ウールはロボスナちゃんで或人とイズを気を引いた上で、『タイムジャッカー』の能力で時間を停止し逆上を回収したのであった。
「今回だけは助けてあげるよ。本来の歴史で僕はスウォルツやオーラに裏切られて死んでいたんだろ? 命を救ってもらった借りはこれでチャラだから、ってこら! 勃起するな! 放り投げるぞ!」
ウールくんのツンデレ的な台詞に坂上のイチモツがむくむくと起こり立つ。
プリプリと怒りながらウールは、坂上が展開した『クラック』の中へと入り、ペニスーツマン一門の本拠地へと帰還した。