ペニス―ツマン VS けもの

 多くの木々が立ち並ぶ苺坂自然公園にて、二人の少女が困惑した様子で立ち尽くしていた。
「ここは、どこなんだろう?」
 大きな鞄が特徴的な大人しめな印象の少女、通称『かばんちゃん』が不安げな声を漏らす。
「わからないよー。でも、こっちからいい匂いがするから、とりあえずいってみよー?」
 猫耳と尻尾を持つアニマルガール、サーバルが活発的な笑顔を絶やさずに言葉を返す。
 ゴコクエリアへ向け、旅を続けていた二人は突如、見知らぬ場所に移動していた。
 海上を進んでいたジャパリバスは影も形もなくなり、彼女達の案内役であるラッキービーストからの応答もない。
「ほらほら、はやくはやくー」
「ちょ、ちょっと、サーバルちゃん!?」
 異常ともいえる事態にもう少し情報を集めないと……などと逡巡するかばんちゃんの手を取り、サーバルは強引に歩き出した。
 鼻をすんすんと鳴らしながら歩むサーバルに、困った顔でかばんちゃんは付いていく。
 やがて、二人は『キラキラパティスリー』と書かれた看板が目を引く建物へと辿り着いた。
 辺りに漂う甘い香りに誘われるように、サーバルは躊躇なくそのドアを開ける。
「こんにちはー!」
「ご、ごめんくださいー……」
 サーバルは元気よく、かばんちゃんは遠慮気味に声をあげながら中へと入った。
「いらっしゃいませー!スイーツショップ『キラキラパティスリー』へようこそ!」
 真新しい店内の販売スペースから、1人の少女が屈託のない笑顔で出迎えた。
「スイーツ……ショップ……? ここはお店、なんですか?」
 アルパカ・スリが営んでいた『ジャパリカフェ』を思い浮かべながら、かばんちゃんが尋ねると
「はいっ! でも、ごめんなさい……今は準備中なんです。それでも今、新作のスイーツを試作してるので、よかったら食べていってください」
「よくわからないけど、おいしいものを食べさせてくれるの? ありがとー」
 食べものに釣られたサーバルがずいずいと店の奥へと入っていく。
「わたしはサーバルキャットのサーバルだよ。あなたはどんな『動物』なの?」
「わたしは宇佐美いちか。えーと『動物』……? 強いていうなら、『うさぎ』に似てるってよく言われるかな?」
「そっかー。じゃあ、ウサギちゃん、だね」
 茶髪のツインテールが特徴的な少女・宇佐美いちか。
 またの名を『いちごショートケーキ』のアニマルスイーツより生まれしプリキュア、キュアホイップ。
「伝説のパティシエ」プリキュアへ変身する力を秘めた少女である。
「そちらのあなたのお名前は?」
「ぼくの名前は、かばんです。よろしくお願いします」
 かばんちゃんといちかが笑顔で挨拶を交わす。
 この瞬間が、けものフレンズキラキラ☆プリキュアアラモード、異なる世界の邂逅の始まりであった。

☆☆☆

 店内の工房へかばんちゃんとサーバルが案内されると、大きな本を抱えた小柄な少女と活発な印象の少女に出迎えられた。
「新しいお客さんか? 今日は珍しいお客がよく来る日だな」
「うむむ……どうみても身体は粘土で出来てるみたいです……どんな原理で動いているのでしょう……?」
 八重歯を覗かせる少女・立神あおい。
 本を読みながら難しい顔で何やら考察している少女・有栖川ひまり。
 共に、いちかと同様にアニマルスイーツの力を持つプリキュアである。
 そんな二人の視線の先には、ペンギンのような生物が居た。
「おまんこぉ^~(挨拶)」
「えぇー!?」
 粘土のような身体を持つペンギン、通称ケツデカピングーから放たれた卑猥な言葉に、かばんちゃんが困惑の声をあげた。
「この子もお客さんなの。試しにスイーツを食べさせてあげたら、気に入っちゃったみたいで……」
「そ、そうなんですか……あはは、変わった鳴き声の動物ですね……」
 苦笑しながら説明するいちかに、かばんちゃんが愛想笑いで返した。
「この子は『ペンギン』なのかなー? ペンギンのフレンズ達なら知ってるけど、元の姿をみるのは初めてだよー」
 ジャパリパークのアイドルユニット・PPP(ペパプ)を思いだしながら、サーバルがケツデカピングーの頭を撫でようと近寄ると
「きしょい…(拒絶)」
「ひどいよっ!」
 拒絶されたサーバルがぷんすか怒っているのを尻目に、ケツデカピングーがあおいに擦り寄った。
「ちょっとすいません(おかわり)いいですか?」
「何だ? そんなにアイスが気に入ったのか? しょーがない奴だな」
 あおいに試作品のアイスを手渡されたケツデカピングーが、ペッチャクッチャと下品な音を立てながら舐め回す。
「この子……明らかに日本語喋ってませんか?」
「気のせいだろ? 鳴き声がたまたまそう聞こえるだけだって」
 怪訝な顔で呟くひまりとは対照的に、あおいは呑気な態度を崩さない。
 一人だけ妙に懐かれていることに気分を良くしているのかもしれない。
「さぁ、めしあがれ! 今日の出会いでキラっとひらめいた新作のスイーツ、『ペンギンアイス』です!」
 いちかがサーバルとかばんちゃんにペンギンの形にデコレートされたアイスを手渡した。
「何これ~! すっごく、あま~い!」
「これは『料理』……なんでしょうか? すごく、すごく、おいしいです!」
 サーバルが飛び上がるように喜び、かばんちゃんもまた珍しく大声をあげるほどにその味に感動していた。
 ジャパリ図書館で『料理』について学んだかばんちゃんであるが、これほどの味を再現するのは難しいだろう。
「これは、スイーツ、なんだっけ? あなたはスイーツ作りが得意なフレンズなんだね!」
「いやぁ~、それほどでも~」
 サーバルの真っ直ぐな賞賛に、いちかが大きなツインテールを揺らしながら照れていた。
「全身がプレミアムフライデーになってきた」
 突如、少女達の交流を打ち切るように、一人のスーツ姿の男が現れた。
「坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「お客さんですか? ごめんなさい、今は準備中で……」
「ハゲろ…ハゲろ…(陰口)」
 突然の来訪者にもいちかが丁寧に対応していると、ケツデカピングーが歯茎を剥き出しに威嚇した。
 それは動物が天敵に遭遇したような反応であった。
「こいつの飼い主ってワケじゃあ、ないようだな?」
 あおいがケツデカピングーを庇うように立ち塞がる。
 スーツ姿の男・坂上は虚無を秘めた瞳で工房を見渡しながら
「なにがものづくりだよボケが。一生ものつくってろよハナクソが」
「なっ!? 何なんですか、あなたは!?」
 坂上の暴言に、警戒心を露わにしたひまりもまた立ち上がる。
「ペニスーツマンってなんだ。ペニスに世界を救えるのか。会社を破壊してくれるのか。教えてくれペニスーツマン」
「かばんちゃん、サーバルちゃん! 下がって!」
 いちかは咄嗟に叫んでいた。
 坂上の纏う、瘴気とも言うべき圧力が増大したことを感じたのである。
 坂上はスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと露出させ、力強く宣言した。
「変身!」
 一声と共に、坂上の逸物が神々しい光を放った。
 やがて白濁とした閃光に包まれながら、その姿が異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」
 眼前に出現した卑猥な形の怪異に、一同に緊張が走る。
「セルリアン!? フレンズの姿から変わるなんて!?」
 その姿は、サーバル達と幾度なく交戦したジャパリパークの外敵『セルリアン』を彷彿させた。
「まさか、あなたもキラキラルを狙う悪い妖精さんなの!?」
 想いが込められたスイーツに宿るエネルギー『キラキラル』。
 いちか達プリキュアは、これを付け狙う『悪の妖精』を思い浮かべた。
「ペニスーツマンってなんだ。ペニスに世界を救えるのか。会社を破壊してくれるのか。教えてくれペニスーツマン。闇を切り裂くちんぽはお前か……?」
「何いってるのかわからないよー……」
 ペニスーツマンの狂気じみた台詞に、珍しく怯えた様子でサーバルが尻込んでいた。
「みんな、いくよ!」
 いちかの一声のもと、あおいとひまりはスイーツパクトを取り出し戦う覚悟を決める。
「「「キュアラモード・デコレーション!!!」」」
『いちごショートケーキ』
『りすプリン』
『らいおんアイス』
 各々のアニマルスイーツをパクトにセットすると、いちか達はクリームエネルギーに包まれその姿を変貌させていく。
「元気と笑顔を!レッツ・ラ・まぜまぜ!キュアホイップ! できあがり!」
「知性と勇気を!レッツ・ラ・まぜまぜ!キュアカスタード!できあがり!」
「自由と情熱を!レッツ・ラ・まぜまぜ!キュアジェラート!できあがり!」
スイーツを守護せし『伝説のパティシエ』・キラキラ☆プリキュアアラモードが威風堂々と名乗りをあげた。
「オーオーオー。オーオーオー。
 悲しきペニスが夜に叫ぶ。
 一つのちんぽが涙を落とす。
 今日のペニスと明日のペニスは男と男と男と男。
 社会を抱きしめ世界を犯せ!」
 雄々しい宣言と共に、ペニスーツマンが亀頭部をビクビクと膨張させる。
 ペニスーツマンとの激闘が幕を切った。

☆☆☆

「ハァァァッッッ!!!」
 キュアホイップが裂帛の気合いの気合いと共に、小さなスティックを振るった。
 キュアホイップを筆頭とするプリキュア達は、キラキラルより生じる『クリームエネルギー』と呼ばれる力を武器とする。
 淡いピンク色のホイップクリームのようなエネルギーが『拳』の如き形状となり、ペニスーツマンの身体に打ち込まれた。
「くっせえちんぽ体操第一、ちんぽを大きく振って背伸びの運動」
 店外まで吹き飛ばされたペニスーツマンであるが、呑気に体操をする程に余裕の様子であった。
「わたしも戦うよ! ウサギちゃんに、えーと……」
「キュアカスタード。アニマルスイーツは『りすプリン』です」
「あたしはキュアジェラート!『らいおんアイス』だ」
「リスちゃんに、ライオンちゃんだね! よろしくっ!」
 簡潔に自己紹介を済ませたサーバルと三人のプリキュア達が店の外まで駆ける。
「ペンギンさんはぼくに任せてください。皆さん、どうかお気をつけて……」
「おまんこぉ^~(激励の言葉)!」
 かばんちゃんとケツデカピングーの激励の言葉に頷きながら、一同が尚も体操を続けるペニスーツマンと対決した。
(それにしても、どうしてここのフレンズさんは、耳や尻尾を隠していたんだろう?)
 いちか達アニマルスイーツを力の源とするプリキュア達は、そのモチーフとなった動物の能力を秘めている。
 例をあげれば、キュアホイップは『うさぎ』のような耳や尻尾が生え、跳躍力や聴力といった力が増大する。
 動物的特徴が現れるその姿を見たかばんちゃんが、プリキュア達をサーバルのようなアニマルガール・即ちフレンズであると誤解したのも無理はないことだろう。
「『野生解放』のようなものなのかな……? とにかく、ぼくに出来ることがないか考えないと……!」
 ヒトのような外見から変化した点について気になるところであったが、拘泥している余裕はないとかばんちゃんは切り替えた。
 サーバル達を幾度なく救ってきた『ヒト』としての能力。
 考え抜くことによって、かばんちゃんは戦いに加勢することを決意する。
「きみはおちんちんをいじりまくって気持ち良くなるフレンズなんだね!気持ち悪い……死ねよ『ハイメガザーメン砲』!」
 ペニスーツマンの十八番がサーバルとプリキュア達へと迫り来る。
「させねぇぞ!」
 キュアジェラートが吠えながら、水色のクリームエネルギーを氷壁に変化させ、精液の奔流を防いだ。
「今のは……!? あなたもキラキラルの力が使えるのっ!?」
 ペニスーツマンが射精したザーメンをクリームエネルギーと勘違いしたキュアホイップが唖然とする。
「どうみても精子ですっ!一緒にしちゃダメですよ!」
 ツッコミを入れながらも、キュアカスタードはリスの俊足をもってペニスーツマンの周囲をグルグルと駆け回り、紐状に生成したクリームエネルギーでペニスーツマンを縛り上げていく。
「圧倒的な力を掛けられてアライさんが五体バキバキになって死ぬシーンばかり考えてしまう。常識人なので」
「ひどいよっ! そんなことをしたら、許さないんだからー!」
 縛られながらも悪態を吐くペニスーツマンに、激昂したサーバルが迫り来る。
「うみゃみゃみゃみゃみゃう!!!」
「何のぉ、『包茎ガード』!」
 仲の良いフレンズを侮辱された怒りを胸に、サーバルがペニスーツマンへと爪を立てまくる。
 キュアホイップ達の仲間であるプリキュア・キュアマカロンの引っ掻き攻撃を彷彿させるそれは、『疾風のサバンナクロー』と呼ばれしフレンズの技であった。
 包皮でもって攻撃を受けたペニスーツマンは、擦過傷だらけとなり転げ回る。
「……内臓が疲れ切ってる……」
 皮一枚の守りはさほど意味はなく、相応のタメージを受けた様子であった。
「今だよ! みんなでトドメを!」
 フラフラとたたらを踏むペニスーツマンを追撃するべく、三人のプリキュアがスーツ姿の猥褻物を取り囲んだ。
「「「「キラキラキラルン、キラキラル!」」」」
 キュアホイップ・キュアカスタード・キュアジェラートが織りなす三色のクリームエネルギーがペニスーツマンを覆うと、やがてそれは『ケーキ』の形へと生成されていく。
 必殺の呪文が高らかに唱えあげられると、キラキラルに秘められし浄化の力がペニスーツマンの身体を駆け巡った。
「おおおおおおおおおチンポおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああうううううううううううちんぽおおおおおおお!!!『スペルマ流星群』ッッッ!」
 雄叫びと共に、ペニスーツマンが白濁の玉を亀頭部より打ち上げた。
 クリームエネルギーで生成された『ケーキ』を内側から破り、やがて上空まで達した白濁の玉が花火の如く爆ぜた。
 瞬間に、辺り一帯を塗り潰すかのような精液の豪雨が降り注ぐ。
「あわわわっ!?」
「ひぃっ!? 汚いですっ!」
「このぉ、なんてことしやがるんだ!」
「くさいよっ!」
 三人のプリキュアとサーバルは、その動物的な身体能力をフルに活用し、地面を穿つ勢いで降り注ぐ精液の豪雨を回避した。
しかし……
「みなさんっ! 一箇所に固まっては……! 」
 建物の中から戦いを観察していたかばんちゃんが叫んだときにはもう遅かった。
 ペニスーツマンは射精量を巧みにコントロールすることによって精液の豪雨を操り、サーバル達の動きを誘導したのである。
「これは虚無によって磨かれた我が魂の射精……

『咥え勃てよ、我が怒張(ブューチェ・ルチェケェ・モン・ペニス)』!」
 一箇所にまとめられた3人のプリキュアとサーバルへと、ペニスーツマンの切り札たる『宝具』が炸裂した。
 ペニススーツマンの亀頭部より放出された虚無の業火に、一同は身を竦ませる。
 迫り来る業火に気を取られた刹那、地面より湧き勃つ槍の如く鋭利なペニスの群れが、プリキュアとサーバルの身体を串刺しにした。
「……うぅぅ……」
 咄嗟に身をよじることで致命傷を避けたプリキュア達であったが、それでも被害は甚大だった。
「いたいよー……」
 特に負傷しているのは両脚を鋭利なペニスに貫かれたサーバルであった。
 その高い瞬発力やジャンプ力ぅも、今は活かすことは出来ないだろう。
「サーバルちゃん! みなさん、大丈夫ですか!?」
 ペニスーツマンの恐るべき力によってサーバル達が蹂躙されたという事実に、かばんちゃんは歯噛みする。
 何かいい作戦がないか必死に知恵を絞っていると、隣で戦いを見物していたケツデカピングーが突如身を乗り出した。
「この野郎醤油瓶…!」
 ケツデカピングーが啖呵を切り、ペニスーツマンと相対する。
 その視線の先には、傷を負ったキュアジェラートが横たわっていた。
 特に懐いていたあおい(キュアジェラート)を傷つけられたことに、ケツデカピングーは憤っているのだ。
「殺すわ……!(轢殺)」
 ケツデカピングーがその粘土のような身体をボール状に丸め、勢いよく転がりながらペニスーツマンへと突撃した。
「『タートルヘッドバット』!」
 ケツデカピングーは呆気なくペニスーツマンの鋼の亀頭部に弾かれ、『キラキラパティスリー』の壁へとペシャリと叩きつけられた。
「ハゲろ…ハゲろ…(陰口)」
「ペンギンさん、大丈夫ですか!?」
 悪態を吐きながらも、ケツデカピングーが立ち上がる。
 心配した様子のかばんちゃんが近寄ると、ケツデカピングーは激しく身振り手振りで何かを伝えようと動き回った。
「お慈悲^~……お慈悲^~……」
「えぇと、何がいいたいんだろう……これは、氷……?」
 ケツデカピングーが発狂したような身振りでキュアジェラートが生成した『氷壁』を指差していた。
『氷』がどうしても必要なのだと、かばんちゃんは読み取った。
「サーバルちゃん……ウサギさん、リスさん、ライオンさん……ちょっとだけ、待っててね」
 かばんちゃんは、背負っていた大きな鞄から一つの道具を取り出した。
「憎しみに囚われてくっせえちんぽを見失ってるんとちゃいますか?  ちんぽは常に君の股間にあ……ん???」
「えいっ!」
 かばんちゃんはパンフレットを折り曲げて作った『紙飛行機』を飛ばしていた。
 突然投げられた紙飛行機にペニスーツマンが気を取られている隙に、かばんちゃんは小走りでキュアジェラートのもとまで駆け寄った。
「ライオンさん、すみませんが、さっきのように氷を出すことはできませんか? もしかしたら、このピンチをひっくり返せるかもしれないんです!」
「……わかった……やってみるよ……」
 キュアジェラートが残った力を振り絞り、周囲に淡い水色のクリームエネルギーを撒き散らした。
 かばんちゃんは、あちらこちらに出現した小さな氷塊のうち、手頃なモノの氷柱を折りケツデカピングーの元に届けた。
「ライオンさんに作ってもらったけど、ここれでいいですか?」
「Here we go(承諾)」
 手渡された氷柱を手に取り、ケツデカピングーはキュアジェラートが生み出した氷塊へとを連続して打ち付けていく。
 キィーン……と澄んだ音が鳴り響いた。
 規則正しい法則によって奏でられるその音は……
「これは……『音楽』……? ペンギンさんは何を……?」
「雪の城もらえるまでまだ絆ポイント41万いるってウッソだろお前」
 かばんちゃんが放った紙飛行機は、ペニスーツマンの『おしっこレーザーカッター』によって撃ち落とされていた。
 ビクビクと脈動する亀頭部を差し向けられ、かばんちゃんが身構えた瞬間に異変が起こった。

 

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 魔神とでも形容すべき、醜悪なる存在『ケツデカ課長』がケツデカピングーの奏でる音楽に誘われ召喚されたのである。
「た、食べないでください……」
 それは、巨大なセルリアンにも勇敢に立ち向かったかばんちゃんでさえも腰を抜かす程の威容であった。
「めちゃくちゃジェイデッカー観たくなってきた」
 眼前に出現した脅威に、ペニスーツマンが射精せんと亀頭部の狙いをクソデカい顔面に定めた。
「もっとおちんちん舐めてぇ~(攻撃指示)」
 ケツデカピングーの指示のもと、ケツデカ課長はむんずとペニスーツマンを掴み取ると、その巨大な口で咥え始めた。
 スボボッッッ!!!と怪音を立てながら吸い込むケツデカ課長のバキュームフェラに、ペニスーツマンはなす術もなく搾り取られていく。
「……うぐぐ……精巣捻転・精索旋転・睾丸回転……」
 ペニスーツマンもさるもの、全身を舐るようにしゃぶられながらも金玉を高速回転させ、男性器破壊の呪詛を紡いでいた。
「『我が精巣は捻れ狂う(テスティキュラー・トライズン)』ッッッ!!!」
 ンアァァンッッッ!?という甲高い悲鳴がケツデカ課長から漏れ出た。
 ケツデカ課長は白濁とした粒子を撒き散らしながら、魔神の『座』とでもいうべき世界へと還っていく。
 ペニスーツマンをその口に咥えたままに。
「……今宵はこれにて大往生……」
 そんな台詞を残しながら、ペニスーツマンはケツデカ課長と共に虚無の彼方へと消え去った。

☆☆☆

「……何とか……追い払えたんだね……」
 ペニスーツマンが放った宝具『咥え勃てよ、我が怒張(ブューチェ・ルチェケェ・モン・ペニス)』により、満身創痍となっているプリキュア達であるが、どうにか一命は取り留めていた。
「ペンギンちゃんはすごいだね! あんなに大っきくて強いフレンズを呼び出せるなんて!」
「おちんちんしゃぶらせてください(混乱)!」
 サーバルに話しかけられたケツデカピングーは、何やら混乱している様子であった。
「どーしたの? えっ、うそ!? かばんちゃんっ!?」
 怪訝に思ったサーバルが視線を向けると、ケツデカピングーの近くでは、かばんちゃんが苦しげな表情で蹲っていた。
「かばんちゃんっ! 大丈夫!? ケガしちゃったの!?」
「……うぅ……」
 サーバルが心配気に声をかけるが、苦しそうな呻き声が返ってくるのみであった。
「どうしたの!? おまたのあたりが痛いの?」
「……うぅ……お、おちんちんのあたりが……捻れるように、痛いんです……」
 股間を抑えて蹲るかばんちゃんが絞り出すような声で呟いた。
「ど、どうしよう……ペロペロすれば治るのかな……?」
「ちょっと、待ってくださいっ!」
 オロオロと狼狽えるサーバルに、キュアカスタードの姿から戻ったひまりが声をあげた。
「捻れるような痛みと言いましたね? もしかしたら、精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)かもしれません! 今すぐ救急車を呼びましょう!」
 博識なひまりによってかばんちゃんの病状は解明された。
 ペニスーツマンが最期に放った呪詛『我が精巣は捻れ狂う(テスティキュラー・トライズン)』。
 精巣捻転症を引き起こす呪詛は、ケツデカ課長のみならず、かばんちゃんにも影響を及ぼしていたのだ。
 すぐに駆け付ける救急車によってかばんちゃんは適切な処置を受けることができるだろう。
 精巣捻転を治療した後に、かばんちゃんとサーバルの旅は続く。
 キラキラ☆プリキュアアラモードとケツデカピングーの出会いを胸に秘めて、二人の旅はまだまだ続いていく。

 終わり。