ペニス―ツマン VS 2016年春アニメキャラ 最終話

「逃げなくちゃ……逃げなくちゃ……」
「晴風」の艦橋にて、航海長・知床鈴(しれとこりん)が涙目で操舵輪を握っていた。
「生きることから逃げなくちゃ……!」
 涙で溢れた瞳は、『虚無』で染まっていた。
「晴風」を沈めるべく、鈴は暗礁に向けて舵を切る。
「生きることから、逃げちゃ駄目だよ」
 背後から光宗が優しげに声をかけた。
 ひぅ……と悲鳴を漏らす鈴に対し、光宗が続ける。
「君がどんな『ナナキ』……トラウマを抱えているのかはわからないけど……それはちゃんと受け入れないといけないものなんだよ」
 光宗の言葉に、操舵輪を回す鈴に動揺が走った。
「私はね……その、よく『即席占い』みたいのことをしてたんだけど……」
 鈴の手を優しく握りながら、真咲が語りかけた。
「『横断歩道の白いとこだけ歩いて渡れたら風邪ひかない』みたいな感じでね……何かが出来なかったら、不幸になってしまうって思い込んでたの……」
 首を傾げる鈴に対して、真咲は微笑みながら
「でもね、何かを達成できれば、幸せになれるって考えれば、前向きになれると思うんの……例えば『今、戦っている人達が怪物に勝てるかどうか』で占ってみるとか」
「だって……でも……勝てるはずないです……みんな、みんな、やられちゃっているんです!」
 涙目で反論する鈴に対し、光宗と真咲が首を振る。
「全てを諦めるのは戦いを見届けてからでも、遅くはないよね?『ナナキ』よりも恐ろしい怪物を、あの人達は確実に追い詰めてる」
「一緒に勝つ方に賭けましょう。その方がきっと、ここで投げ出すよりも幸せになれるから」
 二人の言葉に、鈴は泣きながら崩れ落ちた。
 真咲が彼女の頭を撫でながら介抱しているのを見届けて、光宗は心の中でひとり呟く。
(僕は信じる。どんな『ナナキ』よりも醜悪なあの怪物を、みんなで力を合わせれば必ず倒すことが出来るって)
 艦橋から戦場となっている甲板を見下ろしながら、光宗もまた『勝利』に賭けた。

☆☆☆

「ゼロシステムがあればアニメキャラの無限のスケベな可能性を見ながら常人では耐えられないGがかかるオナニーを遂行できる」
 淡々と宣言するペニスーツマンを、スバルとエミリア・キュアミラクルキュアマジカルの四人が絶望的な眼差しで見つめていた。
 番場宗介の『影鰐』の腹の底よりあっさりと帰還した異形を前に、彼らは対抗策を失っていた。
 比類ない物理的な頑強さを誇り、その上『魔法』の類は『カウパーバリア』によって無力化される。
 特に後者は『魔法つかい』と『精霊使い』にとって致命的ともいえる特性であった。
(……考えろ……考えろ……何か、何かあるはずだろうがっ! ここまでアイツを追い詰めたってのに、これじゃあ、また無駄死になっちまうじゃねぇか!)
 スバルがこれまでのループの経験を反芻しながら必死に対抗策を考えている中、ペニスーツマンは気にせずに『ペペローション』を取り出した。
「『アクセルローション』!」
 雄々しく宣言しながらオレンジ色の容器を握り潰し、ペニスーツマンがローションを全身に浴びる。
 ローションによる摩擦の軽減から生まれる超スピードで、ペニスーツマンが容赦なく突貫した。
「ヌッッッ!?」
 ペニスーツマンは何かを足を取られてすっ転び、超スピードでドンガラガッシャンと瓦礫を巻き上げながら甲板を転がっていった。
「あ、アンタは……」
「『足元がお留守だぜ』って一回は言ってみたい台詞だよな?」
 膝丸燈が『大蓑蛾』の『糸』をもって、ペニスーツマンの足元を掬ったのであった。
 憔悴した様子で身体を引きずりながらも、燈はスバルへと問いかける。
「なぁ、その女の子達の『魔法』を打ち込めば、本当にあの化物を倒せるのか?」
「あ、あぁ……そのはずだったんだけど……アイツには……」
「要はヤツの汚ねぇ『ガマン汁』を取っ払えば、その『魔法』とやらが通じるようになるんだろう?」
 ミッシェル・K・デイヴスが引き継ぐように言う。
 黙って頷くスバルと『プリキュア』の少女達の元に、多数の人影が募っていく。
「……もう残された手立てはこの子達の『魔法』しかねぇ! そのためには、アイツを丸裸にする必要があるんだ!」
「なら、そのための露払いは任せろ」
『異世界人』達の意思が一つに統合された。
 ペニスーツマンという脅威を打倒するために。
「全てうやむやにしたい……『インセクト・エジャキュエーション』ッ!!!」
 燈とミッシェルの変態した姿をオカズに、ペニスーツマンが最大級の射精を放つ。
「「『共振(レゾナンス)』!!!」」
 焔魔堂ろくろと化野紅緒が手を繋ぎ合いながら、一つの霊刀を振るう。
双星の陰陽師』に受け継がれし秘術『共振』。
 互いの呪力を重ね増幅させる秘術をもって、二人は莫大なる呪力を込めた霊刀を振るい、『インセクト・エジャキュエーション』を切り裂いた。
 精液を浴びて失神したろくろは兎も角、まんこを破壊された紅緒が動ける理由。
 それは……
「……ざまぁ……みやがれ……」
 精巣を捻転され、『ハイメガザーメン砲』の直撃を受けた東方仗助が、気力を振り絞り立ち上がっていた。
 仗助が『クレイジー・ダイヤモンド』の能力をもって、ペニスーツマンとの戦いの中負傷していった『異世界人』達を治療していたのである。
「す、すごい……」
「さぁ! コレでHPを回復させてください! 最後にとっておいた虎の子の回復アイテムですよ」
「お前達が最後の希望だ。遠慮なく使ってくれ」
 呆気に取られながら陰陽師達の活劇を見守っている『プリキュア』の二人に、鬼斬の姫君・静御前義経が声をかけた。
 ミラクルとマジカルが手渡されたソウルエッグ(回復アイテム)を手に取り、眩い光に包まれていく。
「癒しの魔法が込められているのね! 助かるわ!」
「私のマナも使って。もどかしいけど、私も少しでも役に立ちたいの」
 エミリアの掌から注がれるとマナの光を受け、二人の魔力が充填されていく。
「アイツの真の恐ろしさは『免疫力』にあるんだ……一定以上の攻撃を受けると、その性質に対して耐性を得てしまう……それでも……」
 ペニスーツマンと相対する緑谷出久が、ブツブツと念仏のように呟く。
「『DELAWARE SMASH』ッ!」
「『エコーズ』ッ!」
『ワン・フォー・オール』により生み出された衝撃波と『エコーズ』の尻尾文字がペニスーツマンに打ち込まれる。
 無論、『個性』と『スタンド』に対して耐性をつけたペニスーツマンの『カウパーバリア』によって容易に防がれる。
「『スタンド』が効かないのは折り込み済みだよ。それでも本当に、君は『無敵』なのかな?」
「おまんこの食い上げだ~」
 広瀬康一が不敵な表情で語りかける。
 上機嫌のペニスーツマンが無視しながら反撃に転じようとした瞬間に、その身体がパパパパン!と弾けた。
「今のは『魔法』でも『超能力』でもない。唯の『科学反応』だよ、クソッタレ」
 ミッシェルが見下しながら宣言する。
『爆弾蟻』が産み出す揮発性の液体をプロレスにおける『毒霧』のように吹きかけたのである。
 出久と康一の攻撃に気を取られていたペニスーツマンは呆気なく直撃を受けていた。
「状況によっては、原始的な武器の方が効果をあるということだ! やれっ、無名!」
「この距離なら外さないよ」
 生駒が大量の『自決袋』を投擲し、無名の蒸気銃による狙撃が着火させていく。
 指向性爆弾の爆撃を受け、ペニスーツマンの『カウパーバリア』は全て剥がされた。
「今だっ!『彗星ホームラン』っ!」
 麗日お茶子が破損した艦砲の砲身をバットのように振り回し、ふわふわと浮かぶ瓦礫群を打ち飛ばした。
『無重力』によって浮かされた瓦礫の雨がペニスーツマンを襲撃し、その身体を軽々と吹き飛ばした。
「責任重大だね、マジカル」
「わたし達なら、きっとできるわ。いくわよ、ミラクル」
 真摯な表情で語りながら、二人の『プリキュア』は飛んでくるペニスーツマンへとリンクルステッキを掲げた。
「「リンクルステッキ・ダイヤ! 永遠の輝きよ、私たちの手に!」」
 リンクルストーン・ダイヤが装着され、リンクルステッキに光の力が巡っていく。
「「フル、フル、リンクル!」
 ミラクルとマジカルがステッキを振るうと、ダイヤモンド状の魔法陣が二人の眼前に現れる。
「それでもあぁーーーー!街はぁーーーーーーーーーー!!」
 最後の足掻きのようなものなのだろう。
 ペニス―ツマンは叫び声を上げながら、金色の光に包まれていく。
 その姿は『怒りのハイパーモード』。
 全ての能力が893倍に増幅されるという恐るべき形態である。しかし、代償として前立腺の感度が334倍になってまうという欠点も持つ、諸刃の剣ともいうべき姿であった。
 ペニスーツマンが空中で体勢を立ち直し、亀頭部をミラクルとマジカルの二人へと差し向け、精液の奔流を放たんとする。
「『ハイメガザーメン……」
「『シャマク』っ!」
 瞬間、ペニスーツマンの視界は暗闇に閉ざされた。世界の形も、色も臭いも、一切の感覚が封じられていく。
 それは、スバルが唯一習得した『魔法』であった。
 陰魔法『シャマク』。
 かつて魔獣ウルガルムを翻弄したときのように、スバルはここ一番で最大の切り札を使用した。
 スバルを中心に生成された黒雲の中で、ペニスーツマンはほんの数秒間、膠着した。
 そんな僅かな時間が決め手となった。
『『プリキュア・ダイヤモンド・エターナル!』』
 最初にペニスーツマンは巨大なダイヤモンドの中に捕らわれた。
 二人の掛け声を合図に、ダイヤモンドはペニスーツマンを載せて遥か上空まで射出。
 光の尾を引きながら成層圏まで達し、外気圏を悠々と突き抜けていく。
 宇宙空間を突き進み、太陽系を外れ、天の川銀河からも抜けていく。
「ほな………」
 宇宙の彼方まで運送されたペニスーツマンが明確な『死』を覚悟した。
 瞬間、ダイヤモンドはビックバンの如き大爆発を引き起こし、宇宙の片隅に豪奢な花火のような閃光が瞬かせた。
 金魔法『ダイヤモンド・エターナル』。
 みらいとリコが『プリキュア』として覚えた最初の『魔法』である。
「本当にお星様になっちゃった……」
「永く生きているけど、こんな『魔法』を見たのは初めてだよ……」
 エミリアを初めとした『異世界人』達は、想像を遥かに超えた『魔法』の威力を天を仰ぎながら見届けていた。
 世界を滅ぼす力を秘める『終末の獣』・パックすらもドン引きさせる『魔法』を放った張本人の二人は、脱力しながら甲板に倒れ込んでいた。
「やったね、リコ?」
「みんなが力を貸してくれたおかげよ。これで、ようやく一安心ね」
 変身が解除され、ただの女子中学生へと戻ったみらいとリコが微笑みながら語り合う。
「あぁ、ようやく一安心だよ……本当に、本当に長かった……」
 幾度なくペニスーツマンに挑んでは敗北してきた記憶を持つスバルが、感慨深く呟いた。

☆☆☆

 其処は、霧の深い森であった。
 得体の知れない果実がなる森林は、何処か異世界じみた雰囲気を醸し出していた。
「……2時間半くらい気絶してた」
 ペニスーツマンが一際大きな樹木に背を預け、身体を休めていた。
 その股間には、『黄金の果実』が眩く輝いている。
 絶体絶命の危機の中、ペニスーツマンは『鎧武』の世界で獲得した『オーバーロード』としての能力を使い『クラック』を展開、間一髪『ヘルヘイムの森』へと避難したのであった。
「本気のキモオタおたおたレイプ見せてくれよ……!」
 言いながらペニスーツマンは再び『クラック』を展開する。
 空間に生じた裂け目からは、青い地球が覗いていた
「『スペルマ流星群』のバリエーション……『プラネット・レイプ』!」
『クラック』へ向け、ペニスーツマンは星一つ孕ませる程のザーメンを射精した。
 直後に、ペニスーツマンとしての姿すら維持できなくなり、坂上逆孤が樹木の側にドカっと倒れ込んだ。
「……2日連続でシコってしまったため明日は反動で廃人になる」
 酷く憔悴した様子で、坂上が呟いた。

☆☆☆

「皆さん、本当にありがとうございました! 感謝の言葉もありません!」
「晴風」艦長・岬明乃が船員達を甲板まで引き連れていた。
 その全員が深々と頭を下げ、感謝の意を示している。
「いやぁ……俺達の身を守るためでもあった訳で……」
 何となく代表者になっているスバルが頭を掻きながら言葉を濁していると……
「晴風」の船体に影が落ちた。
「……な……なん、だ……?」
 スバルが怪訝な表情で空を見上げると、空を覆い尽くすかのように広大な巨大な『白濁の塊』が落下していた。
 理性が理解を拒み、思考が静止していく。
 ペニスーツマンの攻撃であると受け止めるのに、スバルは数秒程の時間を要した。
「さ、坂上ェェェェッッッ!!!」
 スバルが天に向けて咆哮する。
 同時に、『魔法』や『スタンド』、『個性』に『陰陽術』。
 あらゆる異能で『異世界人』達が『白濁の塊』を迎撃しようと試みるが……
 全ては無為に終わり、陽炎型航洋直接教育艦「晴風」は精液の直撃を受け、粉微塵に爆散した。

☆☆☆

 次の瞬間、スバルは硬い甲板の上で目を覚ました。
 寝起きのよさには定評があるスバルは瞬時に意識を覚醒させ、周囲を見渡した。
 そこは紛れもなく「晴風」の甲板ではあるが、先程まであった戦闘の痕跡は一切ない、綺麗に手入れの行き届いた甲板であった。
「畜生ォ……また、戻っちまったのか……!」
 ガンッ!床に拳を叩きつけながら、スバルが憎々しげに呟いた。
『死に戻り』が発動したということは、ペニスーツマンの攻撃でスバルが命を落としたという事実の証明である。
 宇宙の彼方まで追放しても尚、ペニスーツマンを倒しきることは出来なかった。
 絶望的な状況に辟易としながらも、スバルは隣で安らかに寝息を立てる銀髪の少女を見て決意する。
「俺は絶対に諦めねぇ……! アイツをブチのめして、エミリアと一緒に元の世界に帰るんだ……!」
 ナツキ・スバルの○○回目のループが始まる。