ペニス―ツマン VS 鬼滅の刃

鬼狩りの剣士、竈門炭治郎・我妻善逸・嘴平伊之助の三名は人里離れた森の中を歩んでいた。
柱稽古がひと段落した最中、三人の拠点としている蝶屋敷付近の山で鬼が潜んでいるとの報告が入ったためだ。
各々の鎹鴉(かすがいからす)に導かれるように、炭治郎・善逸・伊之助の三人は、夜の帳が下りた森林を進んでいく。

「……なぁなぁ、炭治郎〜。そろそろ山を降りようよぉ〜」
「善逸……まだ鬼を見つけていないのに下りる訳にはいかないだろ?」

疲れ果てた声で呟く善逸に対し、炭治郎が呆れた様子で言葉を返した。

おざなりな対応をされた善逸は、納得がいかない様子で目をカッ!と見開き

「こんな人相書きを信用する方がどうかしてるだろっ! 首から下は洋装を着込んで、首から上はチンコが生えてる化物なんてさっ!」
などと叫んでいた。
至急された人相書きを天高く掲げながら、善逸はぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。
『ぺにすーつまん』と悍しい書体で書き記された怪人。
それは人相書きというよりは妖怪画と呼称するのが相応しい程に禍々しい姿であった。
様々な異形の鬼と相対してきた鬼殺隊の剣士である三人でも、このような変わり種をお目にかかったことはなかった。

「落ち着け、善逸。そういう形の鬼かもしれないぞ」
「いいや!違うね!絶対に子供の悪戯か何かだよ!俺達は無駄足を踏まされたんだよっ!」
「まぁまぁ……ともかく無駄口を叩く前に任務を遂行しよう。夜明けまでは見回りを続けるぞ」

喚く善逸を炭治郎が長男としての技量をもって宥めた。

「ギャハハハハッッッ!!! チンコの妖怪! 頭に弱点ぶら下げるなんて馬鹿みてぇだな! それに俺の方がチンコがデケェ!」

伊之助もまた喧しく騒いでいた。
掲げている刃こぼれした日輪刀の先には、ズタズタに裂かれた『ぺにすーつまん』の人相書きが突き刺さっていた。

「ちんこちんこ煩いぞ伊之助!まったく、禰󠄀豆子が居なくて本当によかった……」

山中で吠える伊之助を諫めながら、炭治郎は己が妹が同行していないことに安堵した。
日光を克服した最初の鬼となった禰󠄀豆子は現在、無残の手が及ばないよう鬼殺隊に匿われている為、任務には参加していない。
禰󠄀豆子もまた上弦の鬼とも戦い抜いたこともある猛者であるが、あのような卑猥な造形の異形と嫁入り前の妹を鉢合わせることにはとても抵抗があったのである。

「もし、コレが本物の鬼だとしたら、動きを見せない無残への手掛かりになるかもしれない。だから気を抜かずに……んっ?」

炭治郎はその優れた嗅覚で、善逸は聴覚、伊之助は触覚でもって違和感に気付いた。

「みんな、構えろっ! 何かが来るぞっ!」

炭治郎の言葉を受け、各々は日輪刀を構えながら油断なく来訪者を待ち構えた。

「はぁっ……はぁっ……よ、ようやく見つけたぞ……」

横道の藪の中より現れたのは、中世的な顔立ちの若い青年・タイムジャッカーのウールだった。
何やら息が上がっている様子である。

「何だぁ、お前……? 男なのに女みてーな格好しやがって! 弱っちそうな奴だな!」
「う、うわぁ……あ、アンタどこかの娼館から抜け出してきたのか……!?」

伊之助は困惑した様子で威嚇し、善逸はドン引きした声色で言葉を絞り出した。
青年の身に纏う衣装が常軌を逸脱していたからである。
頭には眩い黄色の鬘を被り、その上には兎の耳のようなリボンが付けられている。
上半身には臍出し袖無しのセーラー服。
鼠蹊部を申し訳程度に隠すミニスカートからは黒のTバックがはみ出ていた。
極め付けには、紅白の模様のニーソがその細い両脚を包み込んでいる。

「ち、ちがうっ! この格好は今の主人の趣味に合わせているだけだ! 僕は買春なんてやっていないっ!」
「嫌ァッッッ!!! 耳が腐るっ! 俺はそっちのケはないから! 心の底から勘弁してぇぇぇッッッ!」
「善逸! 失礼だぞ! 何か事情があるのかもしれないだろ! 俺達だって遊郭に潜入したことだってあるじゃないか!」
「あぁもう! 話を聞け!」
拒絶反応から悲鳴を上げる善逸を炭治郎が諫めた。
ウールはウンザリとした様子でため息を吐きながら

「ともかく、僕の目的はお前だ、我妻善逸」
「エェッ!? あ、アタイ……!?」

ウールに名指しされた善逸が吉原遊郭に潜入した時のようなテンションで狼狽える。

「僕の主人がお前をご指名なんだ。悪いようにはしないから、一緒に来てくれ」
「ふ、ふざけんなッ!!! そんな格好させるような奴のご指名にホイホイついて行ってたまるかよ!」
「まぁ、そうなるよね……仕方ない……」

拒否されるのは想定済みといった様子で、ウールはおもむろに右手を眼前に掲げた。

「ウオラァ! させるかぁーーー!!!」
「なっ!?」

突如、伊之助が日輪刀を投げつけた。
迫りくる刀に対し、ウールは咄嗟に体を反らせながら回避する。しかし次の瞬間には、首根っこの後ろを掴まれ地面に組み伏せられた。

「グゥ!? いつの間に……」
「暴れないでください! 俺達に危害を加えないと約束するのであれば、このまま解放しますから!」

日輪刀を投擲され気をそらされた瞬間にはもう、炭治郎は呼吸法により上昇させた身体能力を駆使し距離を縮めていた。
オーラやスウォルツとは違い、肉体的にはさほど強くないウールには炭治郎の力を振り解くことができない。

(く、くそぅ! 時間を止めることさえ出来ればこんな奴ら……!)

ウールは指を鳴らすことでタイムジャッカーとしての力、『時間停止』を発動することが出来る。
しかしながら、炭治郎により腕を万力の如き力で締め上げられている為、苦しげな声で呻くことしか叶わなかった。

「炭八郎、気を付けろ! そいつは鬼じゃねぇが、何か妙な力を使おうとしているぞ! その指が怪しいぜ! 俺の肌がビリビリと感じるんだよ!」
「わかっている! この人からは敵意の臭いを感じるから! 鬼が血鬼術を発動させる前のような危険な臭いも一緒にだ!」
「う、嘘だろ……生身の人間に、このタイムジャッカーであるこの僕が……!」

ウールは事前にタイムジャッカーの情報源を元に、我妻善逸が所属する鬼殺隊について調査を行っていた。
それは鬼と呼ばれし異形の撲滅を目的とする復讐者の集団。
鬼と渡り合う為に、隊員は独自の鍛錬を積み、超人的な技を身につけるという。
ウールの知識でいえば魔化魍から人々を守り続けた2005年の仮面ライダー響鬼に近い存在だろう。
どのような戦士であれど、アナザーライダーを生み出すときのように時間を止めさせすれば問題はないと高を括っていたことがウールにとって災いした。

「離せ! くそっ!」
「善逸は鬼殺隊に必要な、大切な仲間なんです……どうか諦めてください!」
「炭治郎ォォォーーーっ! ありがとなぁーーーっ! これで俺の貞操は守られたよぉーーーっ!」

敵を完全に取り押さえた炭治郎を見て、善逸は安堵の涙を流しながら奇声を上げた。
そんな最中であった。

「U.N.オーエンはオタクなのか?
お前ゆ虐見ながらシコッてんだろ? 」

何の前触れもなく、洋装を身に纏った男が現れた。
その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。

「撮った風景写真だけ見たいのにアニメキャプとかゲームのスクショとか野間口くんとかが混在してて絶望」
「いつの間に、居たんだ……!?」

物憂げな表情で洋装服の男が呟いた。
炭治郎は驚愕の表情で男を見据える。
気配も臭いも全く感じさせず出現した怪しげな男に対し、ウールを抑える手を緩めないままに対峙した。

坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「俺は鬼殺隊の竈門炭治郎だ! お前の目的は何だ!」
「やばい……やばいよ、炭治郎……そいつから酷く嫌な音がするんだ……鬼の音とは違うんだけど、聞いているだけで吐きそうになる気持ち悪い不協和音なんだ!」

警戒心を露わにする炭治郎に警告するように善逸が言葉を絞り出す。
そんなやり取りを気にもかけずに、洋装服の男・坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。

「またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……変身!」

逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。

「こんなことあるっ!?」

眼前に出現した異形はまさしく、人相書きに記されていた怪人『ぺにすーつまん』そのものであった。
あまりにも衝撃的なビジュアルに善逸は白目を剥いて気絶した。

「ま、待ってくれ、坂上……! 僕は失敗なんてしてない! これから挽回するところだったんだ! だから……」
「『ザーメンバンジーガム』」
「や、やめろォ!」

必死に弁解するウールへとペニスーツマンは容赦なく射精した。
組み伏せていた炭治郎は転がるようにして避けるが、ウールは粘着性の精液に絡め取られた。

「『ザーメンバンジーガム』はガムとゴムの両方の性質を持つクローバー︎」
「う、うわぁぁぁぁッッッ!!!」

ゴムの収縮の力で引き寄せられたウールは、そのままペニスーツマンが展開したクラックの穴へと放り込まれた。

「答えろ! お前は鬼舞辻無惨の手の者なのか!?」
「鬼舞辻無惨? いやぁ、知らないっすねぇ……偏差値20以下の人……?」
「無惨を知らない….? なら、この人のいう主人とはお前のことなのか!? 何故、善逸を狙うんだ!」
「いやだって、メインヒロインですしおすし……島風くんと化した善逸くん見たくない?」
「何を言っているんだ!?」
「マンコバズーカ下痢うんこコンサルティング株式会社」
「駄目だ! 会話が成り立たない!」

狂気じみた妄言をたれ流すペニスーツマンとの会話を切り上げ、炭治郎は改めて日輪刀を構え直した。

「猪突猛進! 猪突猛進!」

ウールへと投擲した日輪刀を拾った伊之助は、刃こぼれした二刀の日輪刀を掲げながら、ペニスーツマンへと突貫した。

「俺の推理が正しければこの職場催淫ガスが散布されて泣く泣く撤退することがある」
「勝手に泣いてやがれ! 紋逸の野郎はこの伊之助様の子分だ! テメェなんかには渡さねぇぞォォォッ!!!」

ネクタイを締め直しながら囁くペニスーツマンを無視しながら、伊之助が二刀を振りかざす。

「獣の呼吸 弐ノ牙 『切り裂き』!!」

ペニスーツマンの亀頭部へと、十文字の斬撃が刻まれた。

「なっ!? 硬てぇ!!」

しかしてその感触は、数々の鬼の頸を斬り落としてきた伊之助にとっても、経験したことのない程の強度であった。

「『タートルヘッドバッド』!」
「がはぁ!?」

困惑している伊之助へと、ペニスーツマンはのけ反った勢いを利用しながら、ガチガチに勃起した亀頭部を猪の被り物へと叩きつけた。

「伊之助! 大丈夫か!?」
「型破りなオナニーで保守的な日本企業を打破 してみせる……『アクセルローション』!」

吹き飛ばされた伊之助を炭治郎がどうにか受け止める。
そんな隙を見逃さず、ペニスーツマンは全身にローションを浴びることで技の準備を整えた。
摩擦力低減を利用した移動法『アクセルローション』により加速したペニスーツマンが高速で襲いかかる。

「雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』」
「んあっ!?」

迫り来るペニスーツマンを迎え撃ったのは、善逸が放った雷光の如き一閃であった。
ペニスーツマンの衝撃的なビジュアルを目撃し気絶していた善逸は『眠り』に入り、戦闘態勢に移っていたのである。

「『八閃』」
「あばばっっっ!? お腹でガスがぎゅるぎゅる言いまくっててうんこではなく俺の人間性だった……!?」

続けざまに善逸は合計で八度、ペニスーツマンを斬りつけた。
八回の踏み込みが一度にしか聞こえない程の神速での居合い斬りに、加速したペニスーツマンであってもなす術なく切り刻まれた。

「水の呼吸 捌ノ型 『滝壷』!」

駄目押しとばかりに、炭治郎が空中より怒涛の威力の打ち下ろしをペニスーツマンへと浴びせた。
技の直撃を受けて、もんどり打って転がるペニスーツマンを見ながら、炭治郎は苦い顔で呟く。

「何て硬さなんだ……! もしかしたら、上弦の鬼以上の強度かもしれない……!」

水の呼吸の中でも上位の威力を誇る捌ノ型『滝壷』でも傷一つ負わせることが出来なかったことに炭治郎は歯噛みする。
身体に負担はかかるが『ヒノカミ神楽』を使うしかないと決意しながら

「善逸! 伊之助! 同時に攻撃するぞ!」
「わかった」
「チィ! 俺に命令すんじゃねぇ!」

炭治郎の号令の元、三人の鬼狩りの剣士は即座に動いた。
かつての上弦の陸・墜姫を攻略した時のように、三人は連携を取りながらペニスーツマンへ迫っていく。

「むむっ!? 『ペニスミラージュ』!」

迫り来る剣士達を迎え撃つべく、ペニスーツマンは頭部から霧状のザーメンを射精した。幻覚効果を有する白濁した霧が辺りを立ちこめる。

「そんなもん効くかぁ! 獣の呼吸 拾ノ牙 『円転旋牙』!」

伊之助は両手の日輪刀を高速回転させ、白濁の霧を吹き飛ばした。

「雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』『神速』」

伊之助が霧払いした瞬間を射抜くように、善逸が稲光の如く駆け抜けた。
ペニスーツマンの亀頭部の根本へと超速度の居合抜きが刻まれる。

「いやーきついっす(素)……」
「まだだぁ! ヒノカミ神楽 『碧羅の天』!」

タタラを踏むペニスーツマンへ追い討ちをかけるように、炭治郎が切り札たるヒノカミ神楽をお見舞いした。

「ハッ…ハッ…アッー!アーツィ!アーツ!アーツェ!アツゥイ! ヒュゥー、アッツ!アツウィー、アツーウィ!アツー、アツーェ! すいませへぇぇ~ん!アッアッアッ、アツェ!アツェ!アッー、熱いっす!熱いっす!ーアッ! 熱いっす!熱いっす!アツェ!アツイ!アツイ!アツイ!アツイ!アツイ!アー・・・アツイ!」

炎を纏っていると錯覚する程の斬撃を受け、ペニスーツマンは身を焼かれるような痛みに悶絶した。

「ハッ……ハッ……ハッ……」
「呼吸が荒くなっている……攻撃が効いているのか……? いや、これは……まさか……!?」

息を荒らげるペニスーツマンを観察していた炭治郎に戦慄が走る。

「オラァ! チンコ野郎! その頸、伊之助様が貰ったぁ!」
「伊之助! 待つんだ!」

炭治郎の制止を振り切り、伊之助がペニスーツマンへと突撃した、その瞬間のことであった。

「摩羅の呼吸 壱ノ型 『破瓜の一突き』」
「がはぁ!?」

ペニスーツマンは、鋼の如く硬化させた亀頭部を槍のように突き刺し伊之助を迎撃した。
サーモンピンクの一撃を腹に受けた伊之助は、近くの大木に全身を叩きつけられた。

「雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』っ!」
「摩羅の呼吸 参ノ型 『螺旋扇情男根(らせんせんじょうだんこん)』」

善逸が超速の居合斬りを仕掛けるも、ドリルの如く回転し突貫するペニスーツマンにより弾かれ吹き飛ばされた。

「ぐっ……!?」
「伊之助! 善逸! くそっ! まさか呼吸法を使えるなんて!?」

人間を超越している異形が、身体能力を向上させる呼吸法を駆使するという驚異。
炭治郎はペニスーツマンを、上弦の鬼にも匹敵する、いまだかつてない強敵であると改めて認識した。

「……負けるものか!」

呼吸を整え、気炎を吐く。
やがて炭治郎の額の『痣』が黒々とした色に変化した。

「サルみたいにシコりたさが増してるんだけど、 かなり見すぼらしくなりました…… 」

炭治郎が放つ剣気が増したことを感じ取ったペニスーツマンが気圧させる。
構わずに、炭治郎は日輪刀を握りしめ、竈門家に伝わる神楽を舞った。

「摩羅の呼吸 伍ノ型 『大亀頭・拝み倒し』」
「ヒノカミ神楽 『陽華突』!」

ペニスーツマンが肥大化させた亀頭部を打ち下ろすと、炭治郎は天へと捧げる突きで迎え撃った。

「ヒノカミ神楽 『日暈の龍 頭舞い』!」
「摩羅の呼吸 肆ノ型 『暴れん棒・乱舞』」

龍が舞い踊るような剣戟と小便を切るためにちんこを振り回すような動きが激突する。

(重くて速い……! それに、悪臭で鼻が効かなくて動きが読めない……! 『隙の糸』も見つからないし、一体何なんだこの生き物は……!)

ヒノカミ神楽の連発によって、炭治郎の身体は悲鳴を上げていた。
それでも炭治郎は、一瞬でも気を抜けば押し切られると奮い立ち、ペニスーツマンへと刀を打ち込んでいく。

「ヒノカミ神楽 『炎ぶ……!?」
「摩羅の呼吸 捌ノ型 『八岐大蛇珍宝(やまたのおろちんぽ)』!」

ヒノカミ神楽がもたらした身体への負担により、技を繰り出すのが一瞬遅れてしまっていた。
そんな隙を見逃さず、ペニスーツマンは陰茎のしなりと慣性の法則を利用した勃起技を撃ち放った。
亀頭部が八つに増えたと錯覚する程のスピードで、鋼鉄のペニスの嵐が上下左右から炭治郎へと襲いかかる。

「お、おぉッ! 『炎舞一閃』ッ!!!」

炭治郎は咄嗟にヒノカミ神楽に雷の呼吸の踏み込みを掛け合わせた。
高速の突進から繰り出された灼熱の一撃は、遅れて技を打ち込んだにも関わらず、ペニスーツマンへと一方的に斬撃を刻み込んだ。

「ハァ……ッッッ! ハァ……ッッッ! こ、呼吸を整えないと……!」

身体への負担が限界まできた炭治郎が膝をつき、息を整えていく。
充分な手応えは感じたはずだとペニスーツマンへと視線を向けると

「ムクムクムク!(勃起)」

裂傷を刻まれながらも、ペニスーツマンは亀頭部をビンビンさせながら突っ立っていた。

「ま、マズい……早く呼吸を……」
「『ハイメガザーメン砲』」

ペニスーツマンの頭部より、莫大な量の精液が鉄砲水の如く射精された。
迫り来る驚異に対抗すべく、炭治郎が動かない身体に鞭打ちながら日輪刀を握り締めた、その時であった。

「水の呼吸 陸ノ型 『ねじれ渦』」

炭治郎の目の前に一人の青年が立ち塞がる。
彼が放った渦を巻くような剣戟により、精液の奔流は四方八方に飛び散った。

「義勇さん!」
「下がっていろ」

『水柱』冨岡義勇が助太刀に参上した。

『焦りから「おまんこがぐちょぐちょ!まるで漫湖だ〜〜〜Loveヶ崎!」って絶叫したら逮捕されて泣く泣く撤退することがある」

義勇が放つだだならぬ圧力を前に、ペニスーツマンが息を飲む。

「蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 『複眼六角』」
「ファッ!?」

義勇に気を取られていた虚を突くように、『蟲柱』胡蝶しのぶが舞い降りた。
蝶の紋様の羽織りを翻し、目にも止まられる速度の六連突きをペニスーツマンへと叩き込んだ。
炭治郎達が刻んだ傷へと寸分違わずに打ち込まれた連撃は、しのぶの日輪刀に仕込まれた毒をペニスーツマンへと蝕ませた。

「や、やめちくり〜」
「貴方に打ち込んだのは、『男性自身を鎮める薬』ですよ。その様子だと、充分に効果は発揮したようですね」

しのぶが笑顔で打ち込んだ毒の解説を行う。
鋼の如くガチガチに勃起していたペニスーツマンの亀頭部は、目に見えてフニャフニャになっていた。
如何なる勃起技も射精技も、勃起を封じられては用をなさない。
胡蝶しのぶは唯の一手でペニスーツマンを無力化していた。

「今日も定時で上がらせてもらいますぅ!」

ペニスーツマンは背後の空間にクラックを展開し、そそくさと逃げ去っていった。

その見事な逃げっぷりに、一同は鬼舞辻無惨を想起していた。
カァ……と鎹鴉の鳴き声が夜の森林に虚しく響いた。

星星星

「結局、アレは鬼じゃなかったんだろ! やっぱり無駄足じゃないかよ!」

花屋敷にて、善逸がいつものように喚いていた。

「そりゃあ、普通に無惨の名前を口にしていたし、血の臭いも全くしなかったし、少なくとも、人喰いではないはずだよ」
「そりゃあそうかもしれないけどさぁ! 俺は被害に遭いかけたんだよ! 性的に消費されたんだよ! 心の中の何かが奪われたんだよ!」
「善逸……俺達は鬼殺隊だろ。文字通り鬼を殺すのが目的だ。あのちんこ男が鬼とは関係ないのであれば、俺たちの出る幕はない。そうだろ」
「あぁもう! 正論なんて聞きたくないんだよ! もっと俺に優しくしろよぉ!」

ぎゃあぎゃあ喚く善逸を炭治郎が嗜める。
いつも通りの日常が繰り広げられていた。

「あのちんこ男……デカかった……いや、ミミズに小便かけて腫れた俺様のちんこの方がデカかったね!」
「下品な事を叫んでないで、静かになさってください!」

伊之助もまた、委員長タイプの鬼殺隊士・神崎アオイによって諌められていた。

(あのちんこ男……熊よりも猪よりもデカかった……! 鬼じゃあないってんなら奴はまさか山の王……!?)

独特の感性でペニスーツマンの姿に神秘性を見出した伊之助は、布団の中でガタガタと震えていた。

星星星

とある夜。
花屋敷が夜の帳の中で静まり返った時間に、与えられた自室で善逸はコソコソと着替えていた。
眩い黄色の鬘、兎の耳のようなリボン、臍出し袖無しのセーラー服、極短のミニスカートに黒のTバック、そして紅白の模様のニーソ。
紛れもなく『島風くん』の衣装そのものであった。
善逸宛で匿名で送られてきた衣装に身を包んだ善逸は鏡の前で己を見つめていた。

「やっぱり俺っていけるんじゃないかな……真剣に……」

己の中の新たな可能性を見つけた善逸が恍惚としていると

「善逸、稽古場に鍔を置きっぱなしにしてた……ぞ……」

ノックもせずに入ってきた炭治郎が笑顔のまま固まっていた。

「……こ、こんなことある……!?」
「……善逸……今後は、禰豆子にはあまりに近づかないでほしい……」
「待ってくれ炭治郎ォォォ!!! これは違うだぁーーーっ!!!」

善逸の甲高い叫びが夜の蝶屋敷に木霊した。

星星星

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?

ペニス―ツマン VS アベンジャーズ

※時系列は『シビルウォー』の前くらい

 国民的ヒーロー・超人・スパイ等が集まり結成されたドリームチーム『アベンジャーズ 』は、ヒドラの残党を追跡していた。
 メンバー達はナイジェリアの郊外にある古びたビルの廃墟の前に集合していた。
 ヒドラの残党が潜んでいるとの情報を掴んだ為である。

「トニー達と合流した後に、敵のアジトへ突入しよう。ただ……その、上手く言えないが……嫌な予感がする。禍々しい気配を感じるというか……ともかく皆、気を引き締めてかかってくれ」

アベンジャーズ 』のリーダーである『キャプテン・アメリカスティーブ・ロジャースが仲間達へと言葉を投げかけた。
 第二次大戦中から戦い抜いてきた戦闘経験が、何かしらの警鐘を鳴らしている様子であった。

「キャップ! 生体反応を探ってみたんだが、建物の中には、どうやら一人しか居ないみたいだぜ」
 そんなキャプテンへと『ファルコン』サム・ウィルソンが状況を報告した。
 支援偵察型のロボットドローン『レッドウィング』を駆使し、建物内部をスキャンして得た情報である。

「一人しか居ないというのは妙だな……敵の狙いは待ち伏せか……それとも情報自体がガセだったか……」
ヒドラが潜んでいるというのは、確実に裏を取った情報よ。反応が一人だけというのは気になるところだけど、何かしらの理由があるはず。例えば……」
 弓矢の達人『ホークアイ』クリント・バートン。
 諜報活動に長けた女スパイ『ブラック・ウィドウ』ナターシャ・ロマノフ。
 元S.H.I.E.L.D.のエージェントである二人がサムが得た情報を元に考察を始めた。

「仮に待ち伏せしようとする腹づもりなら……我々『アベンジャーズ 』をたった一人で相手取ろうと考えているのか? とんだ傲慢さだ。いやはや、肖りたいものだよ」
「トニー……君がこれ以上傲慢さを磨きあげたら、どんな生き物になってしまうんだい?」
 エージェント達の考察を遮るように、二人の鋼の戦士が上空より舞い降りた。
『アイアンマン』トニー・スターク。
『ウォーマシン』ジェームズ・ローズ。
 共にパワードスーツを駆使するヒーローである。

「トニー……多忙な所を協力してもらって、すまない」
「君にするな。ナイジェリアなんて、ニューヨークからでもプライベートジェットがあればひとっ飛びさ。僕だって『アベンジャーズ』の古株だ。『ニュービー』達に負けてはいられないってね」

 スティーブが労いの言葉を投げかけ、トニーは大げさに身振りを交えながら肩をすくめた。
 そんなトニーの視線の先には『アベンジャーズ』に新たに加わった二人のメンバーが佇んでいた。

「皆様のお役に立てるよう尽力しましょう」
「えぇ……少しでもこの力が役に立てば……」
 究極のアンドロイド『ヴィジョン』
 可憐なサイキッカー『スカーレット・ウィッチ』ワンダ・マキシモフ。
『ウルトロン』との戦いを経て、新たに『アベンジャーズ 』へと加わったメンバーである。

「全員集まったようだな。これより、アジトへと突入する。生体反応は一人だけになっているようだが……伏兵が潜んでいる可能性は否定できない。敵は元S.H.I.E.L.D.の特殊部隊出身の者も居るはずだ。くれぐれも油断せずに行こう!」

 キャプテンアメリカの指揮の元、『アベンジャーズ 』は廃墟のビルへと突入した。

☆☆☆

 廃墟のビルの内部は、外見とは打って変わって、銃火器や研究機材等が所狭しと詰め込まれていた。
 ヒドラの残党が潜んでいるという情報は確かな様子であった。
 キャプテンアメリカを中心に、『アベンジャーズ』は細心の注意を払いながら、捜査を進めていく。

「隣の部屋から生体反応を一人確認した。どうやら本当に一人で待ち構えているようだ」
「……気を引き締めて行こう」
 トニーからの報告を受け、キャプテンアメリカは真摯な面持ちで号令をかけた。

「『アベンジャーズ 』だ! 武器を捨てて投降しろ!」
 キャプテンアメリカが先陣を切り、ドアを蹴破るような勢いで部屋へと突入し、ヒドラの残党と思われる人物へと投降を呼びかけた。

「キモオタを5人集めて最強のキモオタ、キモオタXを作りたいんですよ〜。確かにキモオタXを作るのは難しい。でも俺はぜ〜〜〜ったいに作るぞ?」

 粗末なパイプ椅子に腰かけたスーツ姿の男が、何やら訳の分からないひとり言を呟いていた。
 その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
 その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
 また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
 はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。

「君は……ヒドラの協力者か? それとも……」
2.5次元オタク女性さんだらけの店で一人でスパゲッティ食ってる」
「何だって?」
「柔らかい尻になりたい」

 相対しているキャプテンアメリカにさえ、男は視界に入れていない様子であった。
 虚空を見つめながら、何やら狂人めいた言葉を吐いている。

「体格からして兵士ではないようね。でも、とてもじゃないけど正気だとは思えない……洗脳を受けているのかもしれないわ」
「あるいは強化人間か……ワンダ、どう思う?」

 ナターシャとトニーの推測に対し、ワンダは悲しげな表情で答えた。

ヒドラの人体実験は過酷だから……その過程で精神が崩壊してしまった人も多くいたわ……この人も実験の犠牲者の一人かもしれない……」

(バッキーのように洗脳を受けているかもしれないということか……)

 ヒドラに洗脳されし暗殺者『ウインター・ソルジャー』バッキー・バーンズ。
 スティーブは自らの生涯の親友を思い浮かべながら、悲痛な表情を浮かべた。

「落ち着いて聞いてくれ。大人しく投降するのであれば、我々は決して手荒には……」
坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「そ、そうか……僕はスティーブ・ロジャース

 突如、パイプ椅子から立ち上がり自己紹介を始めたスーツ姿の男に、対話の可能性を見出したキャプテンアメリカが律儀に名前を名乗った。

「またの名を、哲学する男性器『ペニスーツマン』……オタクのみんなももうゴールしていいぞ(死刑宣告)」

 坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。

「変身!」

 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
 瞬間、『アベンジャーズ 』のメンバーに戦慄が走った。その珍妙な姿形とは裏腹に、『チタウリ軍団』や『ウルトロン』のような恐るべき力を感じ取ったのである。

「『アベンジャーズ 』! 戦闘開始だ!」

 思考を切り替え、キャプテンアメリカが号令を下す。
 次の瞬間にはパパパンッ!と乾いた銃声が響いた。
 真っ先に動いたブラック・ウィドウがハンドガンの引き金を引いた為である。

「早く健康な肉体と穏やかな精神が欲しい。今はそれだけです」

 正確無比な射撃により、ペニスーツマンの胸元に三発の銃弾が撃ち込まれたが、意に介した様子はなかった。

「……銃弾程度では、傷一つ負わないようね」
「なら、これはどうだ!」

 アイアンマンが掌よりリパルサーレイを照射した。
 粒子ビームを浴びたペニスーツマンは吹き飛ばされ、実験機材を巻き込みながら転がっていく。

「臀部が痛えなあーーー!!健康な尻に取り替えてえなああああああああ!!!!!!!『おしっこレーザーカッター』!」

 ペニスーツマンの亀頭部より、ウォーターカッターの如き勢いで小便が放射された。
 アイアンマンとスカーレット・ウィッチは飛翔し、キャプテンアメリカとブラック・ ウィドウは素早く身を伏せることでこれを回避した。

「建物内は狭くて不利だ。ワンダ、この男を外まで飛ばしてくれ!」

 スカーレット・ウィッチへ指示を飛ばしながら、キャプテンアメリカがペニスーツマンへと突貫する。

「助けてください、臭い屁が止まりません……『タートルヘッドバット』!」
「ハァッ!!!」
 ペニスーツマンが鋼の如くガチガチに勃起した亀頭部を迫り来るキャプテンアメリカへ叩きつけた。
 キャプテンアメリカはその象徴たるヴィヴラニウムの盾を構え真っ正面から受け止めた。
 ギィーンッ!と衝撃音が鳴り響く中、キャプテンアメリカが叫ぶ。

「ワンダ、今だ!」
「ハァァッッッ!!!」

 キャプテンが作った隙を見逃さず、スカーレット・ウィッチがテレキネシスをペニスーツマンへと浴びせた。

「……腰と尻に刻印蟲埋め込まれてる」

 真紅のエネルギーがペニスーツマンに纏わりつき、その身体は宙に浮いていく。
 コンクリートの壁をぶち抜き、ペニスーツマンは廃墟ビルの外まで吹き飛ばされた。

「尻が痛くてペンギン歩きしかできなくなった」

 よろよろと起き上がるペニスーツマンの前に、逃走経路を潰すため外に控えていた四人のヒーローが立ちふさがった。

ヒドラの強化人間か……それにしても、趣味の悪い姿をしてるな」
「人間の頭を巨大なペニスにすげ替えるなんて、何を食べたらそんな発想に至るのかね」
「洗脳されている可能性を考慮して、キャップからは出来れば生け捕りにしろと指示が出ている。なるべく殺すなよ?」
「得体の知れない力を秘めているようです……! 皆さま、どうか油断なさらぬよう……」

 ホークアイ・ウォーマシン ・ファルコン・ヴィジョンの四人がペニスーツマンと相対する。

「今回の旅行、タクヤさんの体みたいな時間配分になってしまったのが反省だンアーーーッッッ!?」

 腕を組みしたり顔?で反省点を語るペニスーツマンに、ホークアイが射ち放った矢が突き刺さる。
 電撃を放つトリックアローがペニスーツマンの身体を痙攣させた。

ホークアイって人の武器、銃じゃダメなの?」
「お前!? 俺を知っているのか?」
「今だ!!!『ハイメガザーメン砲』!」

 会話で動揺を誘い隙を見出したペニスーツマンが、精液の奔流を亀頭部より放射した。

「なっ!?」

 ホークアイは精液の奔流に呑み込まれ、その衝撃と悪臭に意識を刈り取られた。
 ウォーマシンとファルコンは上空に逃れ、ヴィジョンは密度操作の能力を用いて透過し回避した。

「あのペニス男、恐ろしい量の精液を射精したぞ!」
「クソッ! よくもクリントを!」

 宙を駆けながら、ウォーマシンが両腕からバルカン砲を、ファルコンが二丁のマシンピストルを、ペニスーツマンへ向け撃ち放つ。

「会社のソフトボール大会やスポーツ大会、立食形式の懇親会には二度と行かねえ。それが俺の忍道だから……」

 銃弾の雨を浴びながらも、ペニスーツマンはクネクネと身を捩りながら何やら決意めいたものを語っていた。

「銃撃が効いていない! 奴は見かけよりも頑じょウァァァッッッ!!!」
「サムッ!?」

 ファルコンの鋼の翼は、粘着性の精液により絡め取られていた。
 飛行能力を失ったファルコンは無残にも墜落していき、やがて地面に叩きつけられた。

「『ザーメンとりもち』」
「サムにザーメンを当てたというのか! 攻撃の精度も高い……!」
「ローディ……下がってください……!」

 複数のミサイルすら回避する空中機動能力を誇るファルコンに、ペニスーツマンは易々とザーメンをぶっかけた。
 その攻撃の精密性に戦慄するローディを守るように、ヴィジョンがペニスーツマンと対峙する。

「インフィニティーストーンを6つ集めた和田さんは指パッチンして全世界の女子大生を暴行するけど代償に死ぬのでエクゾディア5枚集めた和田さんが勝つと思います」
「貴方は……この額の石が目的なのですか……!?」

 ペニスーツマンはネクタイを締め直しながら、ヴィジョンの額に熱烈な視線?を向けていた。
 アンドロイドであるはずのヴィジョンが悍ましさに表情を歪ませた。

「オタクに必要なのは安定した雇用と健康な肉体とキモくない趣味とsyamuゥゥゥーーーーッッッ!!!」

 突如、背後より撃ち込まれ複数の小型ミサイルにより、ペニスーツマンは爆炎に身を包まれた。
 アイアンマンが発射したマイクロミサイルである。

「ローディ、状況はどうなっている?」
「クリントとサムがやられた! そしてどうやら、奴の目的はヴィジョンの額にあるストーンのようだ」
「そうか……奴の目的はストーンをおびき寄せることだったのかもしれないな……」

 ヴィジョンの額の石は、ロキが持っていた『杖(セプター)』に内包されていた『マインドストーン』である。
 インフィニティストーンの1つである『マインドストーン』を元に、マキシモ姉弟の特殊能力やウルトロンは生み出された。
 巨大な力を秘めし『マインドストーン』を得ることが、ペニスーツマンの目的であるとトニーは推測した。

「ヴィジョンという人、高潔な心を持っているのは分かったが顔の色が親しみにくすぎる」
「見慣れればチャーミングに感じるさ。魅力がわからないような輩に、ウチのヴィジョンを渡す訳にはいかないな」

 軽口を叩きながらも、トニーは怒りを胸にアイアンスーツのガントレットをペニスーツマンへ差し向けた。
 相対するペニスーツマンは、懐からローションを取り出した。

「『アクセルローショ……あ痛ッ?」

 ペニスーツマンが取り出したローションは、キャプテンアメリカがフリスビーのように投擲した盾によって砕かれていた。

「小癪な……アヒィッッッ!?」

 ペニスーツマンの背広に小さなバッチのようなディスクが貼り付けられた。ブラック・ウィドウの持つリストバンド型の装備『ウィドウ・バイト』から発射されたスタンガンである。
 3万ボルトの電撃が身体を駆け巡り、ペニスーツマンが悶絶する。

「ハァァーーーッッッ!!!」
「はわわ……塗るバンテリンを臀部に塗りたくった結果、尻からサイコフィールドが発生している……」

 ペニスーツマンの身体が真紅のエネルギーに包まれると、やがて両腕を後ろで交差するような形で蹲った。
 スカーレット・ウィッチがテレキネシスを用いてペニスーツマンを拘束したのである。

「今だ、トニー! 最大火力を浴びせるんだ!」
瓦礫に当たった反動で戻ってきた盾をキャッチしながら、キャプテンが叫ぶ。

「言われるまでもないさ。ローディ! ヴィジョン!」

 アイアンマンが両手からリパルサーレイを放ち、肩部からマイクロミサイルを掃射した。
 ウォーマシンは両腕両肩の銃火器を解放し、バルカン砲・ミサイルの一斉掃射を浴びせた。
 そしてヴィジョンは額の『マインドストーン』を輝かせ、極太のエネルギービームを発射した。
 数多のミサイル群と強烈なエネルギービームの洗礼を受けたペニスーツマンは、その身を焦がされながら瓦礫の山へと吹き飛ばされる。

「……腰がくしゃみ程度の衝撃に耐えられん」

 三人のヒーローの一斉攻撃を受けたペニスーツマンが、頼りない足取りで起き上がった。

「Killiter Ichaival tron……」

 突如、廃墟に無駄にいい声が響き渡った。
 集音マイク型のペンダントへ握りしめながら、ペニスーツマンが聖詠を唱えたのである。

「クリスちゃん……シンフォギアの力、お借りします……」

 シンフォギア・システム。
 FG式回天特機装束の名称である。
シンフォギアの世界』で出会い、交戦した雪音クリスから得た『魔弓イチイバル』の力を、ペニスーツマンは発現させた。
 その両手にボウガン型のアームドギアが出現し、腰部に赤いリアアーマーが形成されていく。

「Yes! Party Time!! Yes! Golden Time!!」

 やがて、ペニスーツマンが纏うシンフォギアからポップな音楽が流れ始めた。
 シンフォギア・システムは、身に纏う者の戦意に共振・共鳴し、旋律を奏でる機構が内蔵されている。
 心の内から浮き上がる旋律を歌い上げることで、ペニスーツマンはその機能を十全に発揮する。

「パワードスーツとは……奴はまだ切り札を隠し持っていたのか!?」
「アレはナノテクか? 僕にもまだ構想段階だというのに、まさかペニス男に技術面で先を越されるとは……」

 キャプテンアメリカとアイアンマンがペニスーツマンが纏ったスーツに警戒を示した。

「揺らせ!激しく Heart Beat! 君の Emotion! さらけ出せたら無敵だ・ね!
 歌おう Singing! 踊ろう Dancing!」
「それにしても、何で奴は歌っているんだ? あのアーマーにはカラオケ機能でも付いてるとでもいうのか……?」

 シンフォギアの機能を知らないローディは、熱心に歌い続けるペニスーツマンの行動に疑問を呈する。

「こ・こ・から ちゃんと見てるよっ!」

 歌詞に合わせるように、ペニスーツマンが熱烈な視線?をヴィジョンへ向けた。
 身をこわばらせるヴィジョンに対し、ペニスーツマンがアームドギアを変形させた。

「目と目があった時 始まるのはLove Story??」

ーBILLION MAIDENー
 ペニスーツマンがアームドギアを変形させた四門のガトリング砲を掃射した。
 狙いはヴィジョンである。
 ヴィジョンは密度操作の能力を用いて透過しようと試みたが……

「がっ……!? な、何故……密度の操作が……!?」

 イチイバルの弾丸はヴィジョンを捉え、アンドロイドの身体に風穴を開けていた。
 シンフォギア・システムにはノイズの位相差障壁を無効化する為に、攻撃対象を『調律』し、通常物理法則下へと無理矢理引きずり出す機能が備わっている。
 能力を無力化され致命傷を受けたヴィジョンが、無念の表情を浮かべ地面へと倒れた。

「食い気味な気持ち 持て余す Hey Boys!!
 Right Now!! 聞かせて Right Here!! 私に」

ーMEGA DETH PARTYー
 ペニスーツマンの歌唱が響くと同時に、腰部のリアアーマーから数多のミサイルが撃ち放たれた。

「よくも、ヴィジョンをやってくれたな!」
「火力ならこちらも負けていない!」

 アイアンマンが両手からリパルサーレイを放射し、ウォーマシンは両腕のバルカン砲を用いて、飛来するミサイル群『MEGA DETH PARTY』を撃ち落としていくが……

「ウワァァァーーーッッッ!」
「ローディーーーッ!!! 」

 撃ち漏らした一つのミサイルがウォーマシンを直撃した。

「フライデー、ローディのバイタルをチェックしろ!」

 トニーが瞬時に駆け寄り、ローディのバイタルをAIにチェックさせた。
 幸い命に別状はなかったが、衝撃によりローディの意識が奪われていた。

「勝負のコスチューム 迷ってる Hey Girls!!」

ーまんこ破壊光線ー
 歌い上げながら、ペニスーツマンがスカーレット・ウィッチへと身体を向けると、その両乳首から桃色の怪光線を放射した。

「い……いや……」
「ワンダっ!」
 本能的に危険を感じ取ったことでかえって竦んでしまったスカーレット・ウィッチをブラック・ウィドウが突き飛ばした。

「アァァァッッッ!?」

 女性器を破壊せしめる怪光線を受け、ブラック・ウィドウが崩れ落ちた。

「Right Now!! コールして Right Here!! アイツに
 良い子を脱ぎ捨て 輝く夜に繰り出そう!」
「このままでは全滅する! 皆、一箇所に固まり互いを守り合うんだ!」

QUEEN's INFERNDー
 クロスボウから連射されたエネルギー矢の豪雨をヴィヴラニウムの盾で防ぎながら、キャプテンアメリカは懸命に指示を飛ばしていた。
 気絶したブラック・ウィドウを背負い、ペニスーツマンの攻撃の雨の中進んでいると

「ネオンの中で泳〜ぐ〜 熱帯魚のように 今日こそっ!……ん?」
「下がるんだ! ワンダ!」

 キャプテンの制止の言葉も虚しく、真紅のエネルギーを両手に蓄えながら、スカーレット・ウィッチがペニスーツマンへと突撃していた。

「ナターシャは私を庇って……それだけじゃない……よくも仲間達を……!」

 ペニスーツマンと真っ向から相対したスカーレット・ウィッチがその真紅のエネルギーを霧状に噴射した。
 かつて『アベンジャーズ』の面々が苦しめられた、マインドコントロールの能力である。

「……平成の終わりにかこつけて半生を振り返ろうと思ったんですけど精神崩壊したので止めました……」
「これで大人しく……こ、これは……うぅ……」

 マインドコントロールの能力を受けたペニスーツマンは虚空を見つめながら立ち尽くしていた。歌唱が止まったことにより、纏っていたシンフォギア『イチイバル』は粒子となって消失した。
 しかし、スカーレット・ウィッチはペニスーツマンの心理、即ち『虚無の哲学』に触れてしまっていた。
 それは常人では耐え難い狂気の坩堝。
 強化人間であるワンダさえもその意識を葬られた。
 これで戦闘可能な『アベンジャーズ』のメンバーは、キャプテンアメリカとアイアンマンの二人だけとなった。
 両者は並び立ち、早口で作戦を立てていく。

「僕が時間を稼ぐ……! トニー、君はメンバーを回収し離脱してくれ!」
「おいおい! 何を言っているキャプテン! あのペニス男はとてもじゃないが……」
「これまでの戦いで奴は消耗している。僕でも多少の時間は稼げるはずさ。君はスーツの機動力を活かし、メンバーを回収して逃す。これが今の状況で取れる最善の行動のはずだ!」
「消耗していると言ったな! このまま二人で戦い押し切るべきではないのか!?」
「奴の力量は底が知れない! そんなリスクは犯せない! ここは『アベンジャーズ』の全滅を避けるべきだ」

 言い切ると盾を構え、キャプテンは走り出した。
 トニーの脳裏にかつてのトラウマが蘇る。『アベンジャーズ』が自分一人を残して全滅してしまうという、最悪の幻想を。

「クソッ! こんなときにソーやハルクがいれば……!」

 キャプテンアメリカの背を見送りながら、トニーは毒づいた。
 別世界アスガルドから来訪した雷神『ソー』。
 超怪力を誇る緑の巨人『ハルク』ブルース・バナー。
 共に『アベンジャーズ』の古参メンバーであり、戦闘力においては最強を誇るといっても過言ではない力を持つヒーローである。
 ソーは故郷アスガルドへ帰り、バナー博士はソコヴィアでの戦いの後から行方不明になっていた。
 いない者に縋るなんてヤキが回ったものだ、などと内心で自嘲しながら、トニーは負傷したメンバーを抱え、安全な場所へ運んでいった。

☆☆☆

「ハァァ〜〜〜『ペニスウィング』!」
 ガキィン!と金属音が鳴り響いた。
 ペニスーツマンのガチガチに勃起させた亀頭部とキャプテンアメリカの盾が衝突した音である。
 衝撃に耐えきれずキャプテンは吹き飛ばされ、瓦礫へと体を打ち付けられた。全身が精液に塗れており、星条旗をモチーフとしたユニフォームもボロボロになっていた。
 満身創痍のキャプテンアメリカは歯を食いしばり立ち上がり、そして不敵にファイティングポーズを取りながら

『“I can do this all day.” (決して諦めない)』

 そう宣言した。
 キャプテンアメリカの心はペニスーツマンにさえも折ることは出来なかった。

「……普段何気なく接してる会社の人も実はこの世の終わりみたいなパンツ履いてるかもしれない」

 何度でも立ち向かってくるキャプテンに対し、ペニスーツマンは気圧された様子であった。
 そして攻撃を躊躇した、その瞬間であった。

 ビカッ!と雷が迸った。
 虹色の柱と共に。

「落雷……! これは……!」

 落雷で生み出されたクレーターの中心には、鋼のハンマーを手にした筋骨隆々とした大男が立っていた。
 その隣には、大男よりも更に一回り大きな緑色の巨人が咆哮していた。

「ソー! ハルク!」
「我が親友ヘイルダムより、世界を滅ぼす程の危険を感じたと報告を受けてだな。及ばずながら助太刀に来たぞ、キャプテン!」
「ありがとう! 何よりも心強い援軍だよ。それで、ハルクの方は……?」
「ウォォォッッッ!ハルク、コロシアムに、帰る!」

 ハルクは子供のようにただをこねていた。
 とある星まで流れ着き、バトルロイヤルのチャンピオンとして君臨してチヤホヤされていたところを、『虹の橋』により突然拉致された為である。

「ヘイルダムの千里眼で探し出したのだが、何故か別の惑星に居たぞ」
「それは気になるところだが、今の状況では後回しだな……」

 捜索していたブルース・バナーが眼前にいる。
 ナターシャに早く伝えたいという気持ちを抑え、キャプテンは言う。

「突然呼び寄せてしまって、すまない。ただ今だけは、協力をしてもらえないか?」
「チンポコの男、ぶっ飛ばしたら、帰れる?」
「あぁ、遠慮なくぶっ飛ば(Smash)してくれ!」

 瞬間、ハルクはペニスーツマンへと飛びかかった。緑色の豪腕がペニスーツマンの亀頭部へと叩き込まれる。

異世界召喚系の作品、タカヤ-夜明けの炎刃王-しか分かんねえんだよな……」

 ハルクの怪力に吹き飛ばされたペニスーツマンが、ふらふらとを頼りない足取りで立ち上がる。
アベンジャーズ』との連戦は、確実にペニスーツマンを消耗させていた。

「雷を見たからまさかとは思ったが、ソーに、ハルクまでいるじゃないか! 一体どんなトリックを使ったんだ?」

 負傷したメンバーの避難を終えたアイアンマンが合流した。その声色は困惑と、隠しきれない歓喜が滲み出ていた。

「新しく虫歯が見つかったんですけど次の診察まで3週間空くのでもう終わりですね……」

 強力な助っ人の登場に、ペニスーツマンは心なしか怖気ついている様子であった。
 そんなペニスーツマンの背後へと、ドォーン!と爆音が轟いた。
 駄目押しとばかりにもう一人、最期の助っ人が流星の如く降臨した。

「これがフューリーの言ってた『ペニス星人』? 本当にこんなふざけた生き物が存在するのね」

 異星人の力を得た超人『キャプテンマーベル』キャロル・ダンヴァースは、眩いエネルギーを全身に煌めかせ、ペニスーツマンを油断なく見据えていた。

「彼女は……ワンダのような強化人間か? フューリーの名前を出していたようだし、味方だと考えていいだろう」
「おいおい、誰かあの娘の知り合いはいないのかい?」
「知らないな。だが気に入った! 向こう気の強い面構えがな!」

アベンジャーズ』のBIG3キャプテンアメリカ・アイアンマン・ソーの面々がキャプテンマーベルの登場に困惑したが、思考を切り替え受け入れた。

「チンポコの男、ぶっ飛ばすのは、ハルクだ!」
「別に競争するつもりはないんだけど……」

 対抗心を燃やし吠えるハルクに対し、輝くエネルギーを両腕に纏いながらキャプテンマーベルは呆れた様子で腕を組む。
 キャプテンアメリカは自らの象徴たる盾を構え、アイアンマンはガントレットを敵へと差し向け、ソーはムジョルニアを天高く掲げた。

「皆、行くぞ……アベンジャーズ・アッセン……」
「今日は、定時で上がらせてもらいますぅ!」

 キャプテンアメリカが号令をかけようとした刹那、劣勢を悟ったペニスーツマンは背後の空間にクラックを展開した。そそくさとヘルヘイムの森へと避難し、やがてその場から消失した。

☆☆☆


「ひとまずは、我々の勝利だ。皆、よくやってくれた」

 突如撤退したペニスーツマンに対し唖然としていたが、切り替えキャプテンアメリカは勝利を宣言した。

 ソーやハルクはほぼ何もしていない為、どうにも不完全燃焼な表情を浮かべている。

「それで、君は何者なんだ?」
「私はキャロル・ダンヴァース。恩師マー・ベルの思想を受け継いだヒーロー『キャプテンマーベル』よ」

 トニーとキャロルが簡単に自己紹介を交わす。
 トニーは顎に手を添えながら

「そうか、よろしく。ところで、さっきはフューリーの名前を出してきたが……」
「そうだった! フューリー! 彼に謝りに行かないと!」
「ん、どうしてだい?」

 キャロルの慌てように、トニーが怪訝な顔で問う。

「通信機には『地球でペニス星人が暴れてる。君の力で鎮めてくれ』とメッセージが入っていたの。普通にセクハラメールだと思って出会い頭にぶっ飛ばしてしまったんだけど……念のために現場に来てみたら本当だったみたいで……」
「それは……ご愁傷様だな……」

 キャロルの力は凄まじい。
 果たしてフューリーの身体が原型を保っているかどうか疑問である。

「あのペニス星人は、私が責任をもって、宇宙の果てまで追いかけてでも仕留めるわ」
「僕らも同じだ。ここまでやられたからには、必ず『復讐(アベンジ)』を果たしてみせるさ」

アベンジャーズ』がペニスーツマンを明確な敵と見定めた。
 ペニスーツマンの明日はどっちだ。

☆☆☆

 哲学する男性器『ペニスーツマン』
 いくつもの世界を周り、その瞳は何を見る?

ペニスーツマンが異世界転生 第3射精

「この野郎醤油瓶……!」

 坂上が金髪の少女を睨みつけ、啖呵を切った。
 逸物を露出させることで怪異ペニスーツマンへと変貌せんとジッパーに手をかけると
「兄ちゃんは下がってな」
 大きな掌に肩を叩かれた坂上が振り返った。
「見たところ貴方は『冒険者』ではないのでしょう? 僕たちにお任せあれ」
「我らが姫騎士アリサが必ずや『デザイア』の魔物を討伐してみせまする」
 筋骨隆々な戦士然とした大男、眼鏡をかけた魔法使い風の青年、身の丈以上の杖を抱えた僧侶のような老人にそれぞれ声をかけられた。
 件の金髪の少女の仲間であると、坂上は推測した。
「輝け!『 ピュアホワイトスパーク』!」
 姫騎士と呼ばれた少女アリサが剣を掲げると、純白の稲妻が剣先より迸った。
 稲妻が少女を取り囲む巨大な蟷螂達を貫き、虫達を炭へと変えていく。
 そんな光景を坂上が苦虫を噛み潰したような顔で見守っていた、そのときであった。
「よくもアタシの子供達を焼きやがったな!」
 舌ったらずの声が森林に木霊した。
 小さな幼女が、鋭い目付きで姫騎士とその仲間たちを見据えていた。
 緑色の体色に、小さな頭から長い触覚が生えたその姿は、明らかに人間離れした外見であった。
「エッッッッ!」
 しかし、坂上にとって、昆虫を擬人化したようなその姿はどストライクであった。
 思わず絶叫し、坂上は軽く射精をしてしまっていた。
「魔物生み出す元凶……『デザイア』の一角、スナッチ……! 今日があなたの命日になります!」
 姫騎士アリサが凛とした声音で、昆虫の如き幼女へと宣言した。
「魔物を生み出す? 違うな。生み出しているのはお前達人間の『欲望』さ! アタシ達はお前達の悪意をエサにしているだけにすぎないんだよ」
 魔物を生み出す元凶と呼ばれた虫幼女スナッチが不敵な笑みを浮かべて応じる。
 彼女がボロ布を継ぎ接ぎしたようなワンピースの上からお腹をさすった。
 そのお腹は、さながら臨月に入った妊婦のように、その小さな体にアンバランスな程に膨れていた。
 やがて、スナッチの股下から、ポロッと野球ボール程の大きさの『卵』が産み出された。
「……行け!『クッコロスパイダー』っ!」
 スナッチが自ら産み落とした『卵』を蹴り飛ばした。
 宙空を飛ぶ『卵』が緑色の閃光と共に爆ぜる。
 瞬間、坂上よりも頭一つ大きい針金細工の人形のようなシルエットが出現した。
「八個の単眼、発達した上顎、それに出糸突起……! え、エロい……!」
「剣よ、閃けっ!『ミルクホワイトストリーム』!」
 蜘蛛を人型にしたような怪物を前に何やら興奮している様子の坂上に気にかけず、姫騎士アリサが舞うように剣技を繰り出した。
「……ど……どうして……?」
 人間離れした速度で振るわれた剣技を、クッコロスパイダーは予測していたように避け、アリサの身体を糸で捕縛していた。
「さぁ、『欲望』を解放しろ!」
 スナッチが口元を三日月のように歪ませ、宣言した。
 糸で手足を拘束されたアリサが、蜘蛛の触肢に甲冑を取り外され、為す術もなく肌を露わにされていく。
「い、いや……助けて! みんな助けてぇッ!!!」
 クッコロスパイダーの口元から飛び出たグロテスクな生殖器が姫騎士の秘部を貫かんとする。
 仲間達に必死に助けを求めたアリサは、驚愕に目を見開いた。
「ハァッ……ハァッ……ハァッ……」
「ちくしょう勃起が半端ねぇ!」
「後生だ! 眼鏡を、フィニッシュ前に眼鏡をかけさせてくれ!」
 仲間達三人はアリサの痴態を見物しながら、あろうことか自慰に興じていた。
 仲間の一人、魔法使い風の青年のリクエストに応じて、クッコロスパイダーが何処からか取り出した眼鏡をそっとアリサにかけた。
「み、みんな……なに、を……?」
「鈍いヤツだなぁ!『クッコロスパイダー』はお仲間の『欲望』から生み出された魔物なんだよ! 揃いも揃って仲間達は、お前が魔物に敗北し、無様に純潔を散らす様を心の底で望んでいたのさ!」
 アリサが絶望に染まった表情で、改めて仲間達を見つめた。血走った眼でアリサの痴態を凝視しながら、一心不乱に己の逸物を擦る男達がそこにいた。
「すみません! すみません! 姫騎士アリサ! 至高のオカズが目の前にあるんです! オナニーせずにはいられないのです!」
「……アアア………アァァァァッッッ!!!」
 魔法使い風の青年から投げかけられた言葉が、姫騎士アリサの心を粉々に砕いた。
 獣のように咆哮するアリサを前に、クッコロスパイダーは黙々と己が務めを果たした。
 アリサが純潔を失ったのと同時に、仲間達三人は生涯最高ともいえる射精を果たした。
「蜘蛛は頭部の触肢にスポイトのように精液を貯めて、これを生殖器のように使い雌と交接するからなぁ……口からチンコが出たのはその名残なのか」
 スナッチの姿を見て既に射精を果たしていた坂上は、穏やかな海のように落ち着いた賢者タイムの精神で、クッコロスパイダーの生態について考察していた。
「……しんでしまえ……あなた達なんて……みんな……死んでしまえ……!!!」
 クッコロスパイダーに現在進行形で陵辱されているアリサが仲間達へ向かって怨嗟の叫びをあげた。
 瞬間、虫幼女スナッチのお腹がボコっと膨れ上がった。やがてその股下から、ポコンとバスケットボール程の大きさの『卵』が産み出される。
「アハハハッッッ! 今回のは大物だなぁ! いけぇ、『パイプカットマンティス』!」
 緑色の閃光と共に『卵』から生み出されたのは、身の丈5m以上もある巨大な蟷螂であった。
「ハァッ……ハァッ……ガァゥッッ!?」
 蟷螂の魔物・パイプカットマンティスが自慰に耽る仲間達を、その巨大な鎌でもって横一文字に両断した。
パイプカットどころじゃないんだよなぁ……」
 腰の辺りで切り離されている死体三体を前に、坂上が冷静なコメントを残す。
 そんな坂上へと、パイプカットマンティスが鎌を振り上げ威嚇した。
「別に私はオナニーなどしてないのに……男なら見境なしってことですかね」
 そんなことを呟きながら、坂上は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
「変身!」
 坂上が威風堂々と宣言する。
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「我が名は哲学する男性器『ペニス―ツマン』……命をかけて、かかってこい!」
 ペニスーツマンの『異世界』における最初の戦闘の幕が切って落とされた。

ペニスーツマンが異世界転生 第2射精

 まるで星空の中に放り出されたような、神秘的な空間であった。
 上下左右真っ暗な闇に包まれた中、遥か遠くで星々が瞬く宇宙のような異空間に、怪異ペニスーツマンから人間の姿へ戻ったサラリーマンが覇気のない表情で漂っていた。
「驚かないで聞いて欲しいのだが……君は死んでしまったのだよ、坂上逆孤(さかのうえさかこ)君。否、『ペニスーツマン』と呼ぶべきなのかな?」
「……はぁ。あの姿でも電車に轢かれれば死ねるものなんですねぇ……」
 眼前に出現した『人型の影』から徐に言葉が投げかけられた。
 どこか他人事のような返事をするスーツ姿の男、坂上へと『人型の影』は続ける。
「奇異な能力を宿す男、坂上よ。哀れにも冤罪で命を落とした君に、今一度チャンスを与えよう。君にはとある世界へと……」
「『異世界転生』……でしょうか?」
 言葉を遮られた『人型の影』が、ユラユラとその輪郭を揺らした。
「日本人は説明の手間が省けて助かるよ。その通り、ファンタジーな世界へと旅立ち、その能力を活かし、力を振るって欲しい。その奇異な力は現代の日本では持て余していたことだろう」
「持て余していたことを否定はしませんが……」
「ならば問題あるまい。転生者には所謂『チート能力』などと呼ばれる特典が与えられるのだが……」
 どうも煮え切らない態度をとる坂上を押し切るように『人型の影』が強引に話を進める。
「君には必要あるまい。既に特殊な能力を身につけているようだからな」
「出来ればスマホ繋がるようにして頂けると助かるのですが……現代っ子なので……」
 坂上の申し出に、数瞬『人型の影』が考え込むと
「そうか。ならば『異世界で使用可能なスマートフォンの持ち込み』という特典をつけておこうか。それでは、良き活躍を期待している」
『人型の影』の激励の言葉を最後に、坂上は眩い光に包まれ、やがてその意識を刈り取られた。

☆☆☆

「……どうすればいいのだろう」
 スーツ姿の男、坂上逆孤は途方に暮れていた。
 鬱蒼と茂る深林の中、木陰で体育座りしながら、坂上はただスマホを弄っていた。
「こんな森の中に放り出されるとは思わなかった……」
 怪異ペニスーツマンへと変貌する能力を持っていても、基本は平凡極まりないサラリーマンである坂上に、サバイバル技術など持ち合わせているはずもない。
 唯一の生命線であるスマホで『アウトドアで役立つサバイバル技術』などを検索しているが、豆知識をいくら仕入れたところで、直面している現実的な問題に解決するには至らなかった。
「着の身着の儘で転生されたものだから、ペットボトルもビニールシートも清潔な布も持っていないんだよなぁ……」
 ひとまず飲み水を確保しようとネット検索したものの、出てくるのは『ペットボトルで濾過する方法』やら『朝露を集める方法』やら気の遠くなる知識ばかりであった。
「一応は『チート能力』?扱いだからなのか、スマホのバッテリーが114514%で固定されているのがせめてもの救いか……」
 そんなことを呟きながら、坂上はフラフラと深林を探索していく。
 何にせよ水と食料を確保しなければ、と意気込み歩き慣れない森林をえっちらおっちらと進んでいく。
「解除方法が分からなくていまだに英検の試験監督と日雇いバイトの募集メール届く……んん?」
 スマホに表示される新着メールを見ながらうんざりと呟いていると、坂上は違和感を覚えた。
 キョッ!キョッ!キョッ!という怪音が森林に響いているのである。
 その奇怪な音は、坂上には聞き覚えがあるものであった。
「間違いない。これは蟷螂の鳴き声ですね……」
 坂上は人間の女体ではなく、虫の類に欲情する性癖を持つ男である。
 故に、昆虫の生態に関して造詣が深く、その知識を活かし鳴き声を分析したのであった。
 坂上は、さながら誘蛾灯に惹かれる羽虫のように、その鳴き声の出所へと歩んでいった。

「光よ集え、『ホワイトエッジ』!」

 其処には、妖精の如き美貌の少女が舞うように剣を振るっていた。

 白銀の鎧を着込んだ金髪の少女が、巨大な蟷螂の群れを相手に、光を纏った大剣をもってその悉くを斬り伏せていた。
異世界』に相応しい幻想的な光景を目撃した坂上は……

更年期障害だから唐突に世界にブチギレてしまう……!」

 斬り伏せられる蟷螂達を見て、怒りに震えていた。
 やがて坂上は、スラックスのジッパーに手をかけ、戦う決意を固めた。

ペニス―ツマンが異世界転生 第1射精

「この人痴漢です!」

 電車内に金切り声が響いた。
 同時に、気が強そうな女性が一人のサラリーマンの腕を捻じり上げるように掴んでいた。
「何もしていません」
 周囲の注目を集めているサラリーマンは、覇気のない声で呟いた。
「いいから、降りなさい!」
 男の言葉は一括され、やがて周囲の人間に固められたサラリーマンは電車の外に引きずり下ろされた。
「駅員が来るまで大人しくしてなさい」
 女性が吐き捨てるように言い放つ。
 周囲の男達に乱暴に腕を掴まれたスーツ姿の男はただ立ち尽くしていた。
 その男の瞳には『虚無』が秘められていた。
 その表情は難問に挑み続ける哲学者のように苦悩に満ちているようで
 また単位を修得できずに留年が決まった大学生のような絶望を秘めて
 はたまたFXで有り金全部溶かす人の顔のようでもあった。
「……今日見た夢:えむさんかTwitterで『ちんちんをモルゲッソヨする(女性器に挿入するという意味)時なんですけど〜』と語り始める……」
 スーツ姿の男が覇気のない表情のままにブツブツと呟いた。
 怪訝な表情で睨みつける女性を前に、スーツ姿の男は徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出した。
 モノホンの痴漢じゃないか!?と傍観していた人々が身構える中、スーツ姿の男は威風堂々と宣言した。
「変身」
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ぺ、ペニスーツマンだぁ!?」
 野次馬の一人が驚愕の声を上げた。
 都市伝説。
 巷の噂の中で語られし現代の妖怪。
 曰く、哲学を極めた深淵に潜みし魔物。
 曰く、ストレスで変貌したサラリーマンの末路。
 曰く、単位を修得できず留年が決まった大学生の怨嗟。
 曰く、小学生の落書き。
 キッチリとしたスーツ姿の上に、ビンビンに勃起したペニスがおっ立つ異様な姿。
 様々な説で語られし怪異が人々の眼前に出現した。
「け、警察、だれか警察ゥゥゥッッッ!!!」
 痴漢されたと主張する女性が、金切り声を上げながらポーチから取り出した催涙スプレーを噴射した。
「ンアアアアアァァァォ!!!」
 スプレーの刺激を受けた怪異・ペニスーツマンは、その頭部……否、『亀頭部』をビクビクと膨張させた。
 瞬間、ペニスーツマンの亀頭部から白濁の液体が放射された。
 さながらポンプ車の放水の如く、勢いよく吐き出された精液によって、女性は向こう側のホームまで吹き飛ばされた。
「自慰と真摯に向き合わずにシコると本当に摩訶不思議なシチュエーションでシコる羽目になって何やってんだろう俺……感が強まる……」
 射精した後の賢者タイムに陥っていたペニスーツマンが、ふと周囲を見渡した。
 そこでは、呆気にとられた表情でスマートフォンを向ける民衆に取り囲まれていた。
「ち、違うんです! 今のは刺激でつい……」
 人々から向けられる軽蔑と好奇と恐怖が入り混じった視線に耐えられず、ペニスーツマンは逃げ出した。
 人混みを押しのけながら、制服姿の男達が逃げるペニスーツマンを追っていく。
 駅員のみならず、そこには警察も混ざっていた。
「このままでは痴漢扱いされて逮捕されてしまう!」
 言いながら、ペニスーツマンは線路に飛び降りた。
 少しでも駅員達から離れたい一心で、ペニスーツマンが線路の上を走り抜けようとした、その瞬間であった。
 ギギギギギャイーーーンギャリギャリンッ!
 ドカシッボッグガガガガガガボガボガ!
 ガコココココバキバキバキャキャキャ!
 ガコッガコッガッコガッグゴゴゴゴゴ!
 グモッチュイーーンボゴゴゴゴゴ……プチッ!
 列車に轢かれたペニスーツマンは、そんな轟音を響かせながら、この世界から消え失せた。

ペニス―ツマン VS けもの

 多くの木々が立ち並ぶ苺坂自然公園にて、二人の少女が困惑した様子で立ち尽くしていた。
「ここは、どこなんだろう?」
 大きな鞄が特徴的な大人しめな印象の少女、通称『かばんちゃん』が不安げな声を漏らす。
「わからないよー。でも、こっちからいい匂いがするから、とりあえずいってみよー?」
 猫耳と尻尾を持つアニマルガール、サーバルが活発的な笑顔を絶やさずに言葉を返す。
 ゴコクエリアへ向け、旅を続けていた二人は突如、見知らぬ場所に移動していた。
 海上を進んでいたジャパリバスは影も形もなくなり、彼女達の案内役であるラッキービーストからの応答もない。
「ほらほら、はやくはやくー」
「ちょ、ちょっと、サーバルちゃん!?」
 異常ともいえる事態にもう少し情報を集めないと……などと逡巡するかばんちゃんの手を取り、サーバルは強引に歩き出した。
 鼻をすんすんと鳴らしながら歩むサーバルに、困った顔でかばんちゃんは付いていく。
 やがて、二人は『キラキラパティスリー』と書かれた看板が目を引く建物へと辿り着いた。
 辺りに漂う甘い香りに誘われるように、サーバルは躊躇なくそのドアを開ける。
「こんにちはー!」
「ご、ごめんくださいー……」
 サーバルは元気よく、かばんちゃんは遠慮気味に声をあげながら中へと入った。
「いらっしゃいませー!スイーツショップ『キラキラパティスリー』へようこそ!」
 真新しい店内の販売スペースから、1人の少女が屈託のない笑顔で出迎えた。
「スイーツ……ショップ……? ここはお店、なんですか?」
 アルパカ・スリが営んでいた『ジャパリカフェ』を思い浮かべながら、かばんちゃんが尋ねると
「はいっ! でも、ごめんなさい……今は準備中なんです。それでも今、新作のスイーツを試作してるので、よかったら食べていってください」
「よくわからないけど、おいしいものを食べさせてくれるの? ありがとー」
 食べものに釣られたサーバルがずいずいと店の奥へと入っていく。
「わたしはサーバルキャットのサーバルだよ。あなたはどんな『動物』なの?」
「わたしは宇佐美いちか。えーと『動物』……? 強いていうなら、『うさぎ』に似てるってよく言われるかな?」
「そっかー。じゃあ、ウサギちゃん、だね」
 茶髪のツインテールが特徴的な少女・宇佐美いちか。
 またの名を『いちごショートケーキ』のアニマルスイーツより生まれしプリキュア、キュアホイップ。
「伝説のパティシエ」プリキュアへ変身する力を秘めた少女である。
「そちらのあなたのお名前は?」
「ぼくの名前は、かばんです。よろしくお願いします」
 かばんちゃんといちかが笑顔で挨拶を交わす。
 この瞬間が、けものフレンズキラキラ☆プリキュアアラモード、異なる世界の邂逅の始まりであった。

☆☆☆

 店内の工房へかばんちゃんとサーバルが案内されると、大きな本を抱えた小柄な少女と活発な印象の少女に出迎えられた。
「新しいお客さんか? 今日は珍しいお客がよく来る日だな」
「うむむ……どうみても身体は粘土で出来てるみたいです……どんな原理で動いているのでしょう……?」
 八重歯を覗かせる少女・立神あおい。
 本を読みながら難しい顔で何やら考察している少女・有栖川ひまり。
 共に、いちかと同様にアニマルスイーツの力を持つプリキュアである。
 そんな二人の視線の先には、ペンギンのような生物が居た。
「おまんこぉ^~(挨拶)」
「えぇー!?」
 粘土のような身体を持つペンギン、通称ケツデカピングーから放たれた卑猥な言葉に、かばんちゃんが困惑の声をあげた。
「この子もお客さんなの。試しにスイーツを食べさせてあげたら、気に入っちゃったみたいで……」
「そ、そうなんですか……あはは、変わった鳴き声の動物ですね……」
 苦笑しながら説明するいちかに、かばんちゃんが愛想笑いで返した。
「この子は『ペンギン』なのかなー? ペンギンのフレンズ達なら知ってるけど、元の姿をみるのは初めてだよー」
 ジャパリパークのアイドルユニット・PPP(ペパプ)を思いだしながら、サーバルがケツデカピングーの頭を撫でようと近寄ると
「きしょい…(拒絶)」
「ひどいよっ!」
 拒絶されたサーバルがぷんすか怒っているのを尻目に、ケツデカピングーがあおいに擦り寄った。
「ちょっとすいません(おかわり)いいですか?」
「何だ? そんなにアイスが気に入ったのか? しょーがない奴だな」
 あおいに試作品のアイスを手渡されたケツデカピングーが、ペッチャクッチャと下品な音を立てながら舐め回す。
「この子……明らかに日本語喋ってませんか?」
「気のせいだろ? 鳴き声がたまたまそう聞こえるだけだって」
 怪訝な顔で呟くひまりとは対照的に、あおいは呑気な態度を崩さない。
 一人だけ妙に懐かれていることに気分を良くしているのかもしれない。
「さぁ、めしあがれ! 今日の出会いでキラっとひらめいた新作のスイーツ、『ペンギンアイス』です!」
 いちかがサーバルとかばんちゃんにペンギンの形にデコレートされたアイスを手渡した。
「何これ~! すっごく、あま~い!」
「これは『料理』……なんでしょうか? すごく、すごく、おいしいです!」
 サーバルが飛び上がるように喜び、かばんちゃんもまた珍しく大声をあげるほどにその味に感動していた。
 ジャパリ図書館で『料理』について学んだかばんちゃんであるが、これほどの味を再現するのは難しいだろう。
「これは、スイーツ、なんだっけ? あなたはスイーツ作りが得意なフレンズなんだね!」
「いやぁ~、それほどでも~」
 サーバルの真っ直ぐな賞賛に、いちかが大きなツインテールを揺らしながら照れていた。
「全身がプレミアムフライデーになってきた」
 突如、少女達の交流を打ち切るように、一人のスーツ姿の男が現れた。
「坂上逆孤(さかのうえさかこ)と申します」
「お客さんですか? ごめんなさい、今は準備中で……」
「ハゲろ…ハゲろ…(陰口)」
 突然の来訪者にもいちかが丁寧に対応していると、ケツデカピングーが歯茎を剥き出しに威嚇した。
 それは動物が天敵に遭遇したような反応であった。
「こいつの飼い主ってワケじゃあ、ないようだな?」
 あおいがケツデカピングーを庇うように立ち塞がる。
 スーツ姿の男・坂上は虚無を秘めた瞳で工房を見渡しながら
「なにがものづくりだよボケが。一生ものつくってろよハナクソが」
「なっ!? 何なんですか、あなたは!?」
 坂上の暴言に、警戒心を露わにしたひまりもまた立ち上がる。
「ペニスーツマンってなんだ。ペニスに世界を救えるのか。会社を破壊してくれるのか。教えてくれペニスーツマン」
「かばんちゃん、サーバルちゃん! 下がって!」
 いちかは咄嗟に叫んでいた。
 坂上の纏う、瘴気とも言うべき圧力が増大したことを感じたのである。
 坂上はスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと露出させ、力強く宣言した。
「変身!」
 一声と共に、坂上の逸物が神々しい光を放った。
 やがて白濁とした閃光に包まれながら、その姿が異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「ペニス―ツマン、爆現」
 眼前に出現した卑猥な形の怪異に、一同に緊張が走る。
「セルリアン!? フレンズの姿から変わるなんて!?」
 その姿は、サーバル達と幾度なく交戦したジャパリパークの外敵『セルリアン』を彷彿させた。
「まさか、あなたもキラキラルを狙う悪い妖精さんなの!?」
 想いが込められたスイーツに宿るエネルギー『キラキラル』。
 いちか達プリキュアは、これを付け狙う『悪の妖精』を思い浮かべた。
「ペニスーツマンってなんだ。ペニスに世界を救えるのか。会社を破壊してくれるのか。教えてくれペニスーツマン。闇を切り裂くちんぽはお前か……?」
「何いってるのかわからないよー……」
 ペニスーツマンの狂気じみた台詞に、珍しく怯えた様子でサーバルが尻込んでいた。
「みんな、いくよ!」
 いちかの一声のもと、あおいとひまりはスイーツパクトを取り出し戦う覚悟を決める。
「「「キュアラモード・デコレーション!!!」」」
『いちごショートケーキ』
『りすプリン』
『らいおんアイス』
 各々のアニマルスイーツをパクトにセットすると、いちか達はクリームエネルギーに包まれその姿を変貌させていく。
「元気と笑顔を!レッツ・ラ・まぜまぜ!キュアホイップ! できあがり!」
「知性と勇気を!レッツ・ラ・まぜまぜ!キュアカスタード!できあがり!」
「自由と情熱を!レッツ・ラ・まぜまぜ!キュアジェラート!できあがり!」
スイーツを守護せし『伝説のパティシエ』・キラキラ☆プリキュアアラモードが威風堂々と名乗りをあげた。
「オーオーオー。オーオーオー。
 悲しきペニスが夜に叫ぶ。
 一つのちんぽが涙を落とす。
 今日のペニスと明日のペニスは男と男と男と男。
 社会を抱きしめ世界を犯せ!」
 雄々しい宣言と共に、ペニスーツマンが亀頭部をビクビクと膨張させる。
 ペニスーツマンとの激闘が幕を切った。

☆☆☆

「ハァァァッッッ!!!」
 キュアホイップが裂帛の気合いの気合いと共に、小さなスティックを振るった。
 キュアホイップを筆頭とするプリキュア達は、キラキラルより生じる『クリームエネルギー』と呼ばれる力を武器とする。
 淡いピンク色のホイップクリームのようなエネルギーが『拳』の如き形状となり、ペニスーツマンの身体に打ち込まれた。
「くっせえちんぽ体操第一、ちんぽを大きく振って背伸びの運動」
 店外まで吹き飛ばされたペニスーツマンであるが、呑気に体操をする程に余裕の様子であった。
「わたしも戦うよ! ウサギちゃんに、えーと……」
「キュアカスタード。アニマルスイーツは『りすプリン』です」
「あたしはキュアジェラート!『らいおんアイス』だ」
「リスちゃんに、ライオンちゃんだね! よろしくっ!」
 簡潔に自己紹介を済ませたサーバルと三人のプリキュア達が店の外まで駆ける。
「ペンギンさんはぼくに任せてください。皆さん、どうかお気をつけて……」
「おまんこぉ^~(激励の言葉)!」
 かばんちゃんとケツデカピングーの激励の言葉に頷きながら、一同が尚も体操を続けるペニスーツマンと対決した。
(それにしても、どうしてここのフレンズさんは、耳や尻尾を隠していたんだろう?)
 いちか達アニマルスイーツを力の源とするプリキュア達は、そのモチーフとなった動物の能力を秘めている。
 例をあげれば、キュアホイップは『うさぎ』のような耳や尻尾が生え、跳躍力や聴力といった力が増大する。
 動物的特徴が現れるその姿を見たかばんちゃんが、プリキュア達をサーバルのようなアニマルガール・即ちフレンズであると誤解したのも無理はないことだろう。
「『野生解放』のようなものなのかな……? とにかく、ぼくに出来ることがないか考えないと……!」
 ヒトのような外見から変化した点について気になるところであったが、拘泥している余裕はないとかばんちゃんは切り替えた。
 サーバル達を幾度なく救ってきた『ヒト』としての能力。
 考え抜くことによって、かばんちゃんは戦いに加勢することを決意する。
「きみはおちんちんをいじりまくって気持ち良くなるフレンズなんだね!気持ち悪い……死ねよ『ハイメガザーメン砲』!」
 ペニスーツマンの十八番がサーバルとプリキュア達へと迫り来る。
「させねぇぞ!」
 キュアジェラートが吠えながら、水色のクリームエネルギーを氷壁に変化させ、精液の奔流を防いだ。
「今のは……!? あなたもキラキラルの力が使えるのっ!?」
 ペニスーツマンが射精したザーメンをクリームエネルギーと勘違いしたキュアホイップが唖然とする。
「どうみても精子ですっ!一緒にしちゃダメですよ!」
 ツッコミを入れながらも、キュアカスタードはリスの俊足をもってペニスーツマンの周囲をグルグルと駆け回り、紐状に生成したクリームエネルギーでペニスーツマンを縛り上げていく。
「圧倒的な力を掛けられてアライさんが五体バキバキになって死ぬシーンばかり考えてしまう。常識人なので」
「ひどいよっ! そんなことをしたら、許さないんだからー!」
 縛られながらも悪態を吐くペニスーツマンに、激昂したサーバルが迫り来る。
「うみゃみゃみゃみゃみゃう!!!」
「何のぉ、『包茎ガード』!」
 仲の良いフレンズを侮辱された怒りを胸に、サーバルがペニスーツマンへと爪を立てまくる。
 キュアホイップ達の仲間であるプリキュア・キュアマカロンの引っ掻き攻撃を彷彿させるそれは、『疾風のサバンナクロー』と呼ばれしフレンズの技であった。
 包皮でもって攻撃を受けたペニスーツマンは、擦過傷だらけとなり転げ回る。
「……内臓が疲れ切ってる……」
 皮一枚の守りはさほど意味はなく、相応のタメージを受けた様子であった。
「今だよ! みんなでトドメを!」
 フラフラとたたらを踏むペニスーツマンを追撃するべく、三人のプリキュアがスーツ姿の猥褻物を取り囲んだ。
「「「「キラキラキラルン、キラキラル!」」」」
 キュアホイップ・キュアカスタード・キュアジェラートが織りなす三色のクリームエネルギーがペニスーツマンを覆うと、やがてそれは『ケーキ』の形へと生成されていく。
 必殺の呪文が高らかに唱えあげられると、キラキラルに秘められし浄化の力がペニスーツマンの身体を駆け巡った。
「おおおおおおおおおチンポおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああうううううううううううちんぽおおおおおおお!!!『スペルマ流星群』ッッッ!」
 雄叫びと共に、ペニスーツマンが白濁の玉を亀頭部より打ち上げた。
 クリームエネルギーで生成された『ケーキ』を内側から破り、やがて上空まで達した白濁の玉が花火の如く爆ぜた。
 瞬間に、辺り一帯を塗り潰すかのような精液の豪雨が降り注ぐ。
「あわわわっ!?」
「ひぃっ!? 汚いですっ!」
「このぉ、なんてことしやがるんだ!」
「くさいよっ!」
 三人のプリキュアとサーバルは、その動物的な身体能力をフルに活用し、地面を穿つ勢いで降り注ぐ精液の豪雨を回避した。
しかし……
「みなさんっ! 一箇所に固まっては……! 」
 建物の中から戦いを観察していたかばんちゃんが叫んだときにはもう遅かった。
 ペニスーツマンは射精量を巧みにコントロールすることによって精液の豪雨を操り、サーバル達の動きを誘導したのである。
「これは虚無によって磨かれた我が魂の射精……

『咥え勃てよ、我が怒張(ブューチェ・ルチェケェ・モン・ペニス)』!」
 一箇所にまとめられた3人のプリキュアとサーバルへと、ペニスーツマンの切り札たる『宝具』が炸裂した。
 ペニススーツマンの亀頭部より放出された虚無の業火に、一同は身を竦ませる。
 迫り来る業火に気を取られた刹那、地面より湧き勃つ槍の如く鋭利なペニスの群れが、プリキュアとサーバルの身体を串刺しにした。
「……うぅぅ……」
 咄嗟に身をよじることで致命傷を避けたプリキュア達であったが、それでも被害は甚大だった。
「いたいよー……」
 特に負傷しているのは両脚を鋭利なペニスに貫かれたサーバルであった。
 その高い瞬発力やジャンプ力ぅも、今は活かすことは出来ないだろう。
「サーバルちゃん! みなさん、大丈夫ですか!?」
 ペニスーツマンの恐るべき力によってサーバル達が蹂躙されたという事実に、かばんちゃんは歯噛みする。
 何かいい作戦がないか必死に知恵を絞っていると、隣で戦いを見物していたケツデカピングーが突如身を乗り出した。
「この野郎醤油瓶…!」
 ケツデカピングーが啖呵を切り、ペニスーツマンと相対する。
 その視線の先には、傷を負ったキュアジェラートが横たわっていた。
 特に懐いていたあおい(キュアジェラート)を傷つけられたことに、ケツデカピングーは憤っているのだ。
「殺すわ……!(轢殺)」
 ケツデカピングーがその粘土のような身体をボール状に丸め、勢いよく転がりながらペニスーツマンへと突撃した。
「『タートルヘッドバット』!」
 ケツデカピングーは呆気なくペニスーツマンの鋼の亀頭部に弾かれ、『キラキラパティスリー』の壁へとペシャリと叩きつけられた。
「ハゲろ…ハゲろ…(陰口)」
「ペンギンさん、大丈夫ですか!?」
 悪態を吐きながらも、ケツデカピングーが立ち上がる。
 心配した様子のかばんちゃんが近寄ると、ケツデカピングーは激しく身振り手振りで何かを伝えようと動き回った。
「お慈悲^~……お慈悲^~……」
「えぇと、何がいいたいんだろう……これは、氷……?」
 ケツデカピングーが発狂したような身振りでキュアジェラートが生成した『氷壁』を指差していた。
『氷』がどうしても必要なのだと、かばんちゃんは読み取った。
「サーバルちゃん……ウサギさん、リスさん、ライオンさん……ちょっとだけ、待っててね」
 かばんちゃんは、背負っていた大きな鞄から一つの道具を取り出した。
「憎しみに囚われてくっせえちんぽを見失ってるんとちゃいますか?  ちんぽは常に君の股間にあ……ん???」
「えいっ!」
 かばんちゃんはパンフレットを折り曲げて作った『紙飛行機』を飛ばしていた。
 突然投げられた紙飛行機にペニスーツマンが気を取られている隙に、かばんちゃんは小走りでキュアジェラートのもとまで駆け寄った。
「ライオンさん、すみませんが、さっきのように氷を出すことはできませんか? もしかしたら、このピンチをひっくり返せるかもしれないんです!」
「……わかった……やってみるよ……」
 キュアジェラートが残った力を振り絞り、周囲に淡い水色のクリームエネルギーを撒き散らした。
 かばんちゃんは、あちらこちらに出現した小さな氷塊のうち、手頃なモノの氷柱を折りケツデカピングーの元に届けた。
「ライオンさんに作ってもらったけど、ここれでいいですか?」
「Here we go(承諾)」
 手渡された氷柱を手に取り、ケツデカピングーはキュアジェラートが生み出した氷塊へとを連続して打ち付けていく。
 キィーン……と澄んだ音が鳴り響いた。
 規則正しい法則によって奏でられるその音は……
「これは……『音楽』……? ペンギンさんは何を……?」
「雪の城もらえるまでまだ絆ポイント41万いるってウッソだろお前」
 かばんちゃんが放った紙飛行機は、ペニスーツマンの『おしっこレーザーカッター』によって撃ち落とされていた。
 ビクビクと脈動する亀頭部を差し向けられ、かばんちゃんが身構えた瞬間に異変が起こった。

 

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 魔神とでも形容すべき、醜悪なる存在『ケツデカ課長』がケツデカピングーの奏でる音楽に誘われ召喚されたのである。
「た、食べないでください……」
 それは、巨大なセルリアンにも勇敢に立ち向かったかばんちゃんでさえも腰を抜かす程の威容であった。
「めちゃくちゃジェイデッカー観たくなってきた」
 眼前に出現した脅威に、ペニスーツマンが射精せんと亀頭部の狙いをクソデカい顔面に定めた。
「もっとおちんちん舐めてぇ~(攻撃指示)」
 ケツデカピングーの指示のもと、ケツデカ課長はむんずとペニスーツマンを掴み取ると、その巨大な口で咥え始めた。
 スボボッッッ!!!と怪音を立てながら吸い込むケツデカ課長のバキュームフェラに、ペニスーツマンはなす術もなく搾り取られていく。
「……うぐぐ……精巣捻転・精索旋転・睾丸回転……」
 ペニスーツマンもさるもの、全身を舐るようにしゃぶられながらも金玉を高速回転させ、男性器破壊の呪詛を紡いでいた。
「『我が精巣は捻れ狂う(テスティキュラー・トライズン)』ッッッ!!!」
 ンアァァンッッッ!?という甲高い悲鳴がケツデカ課長から漏れ出た。
 ケツデカ課長は白濁とした粒子を撒き散らしながら、魔神の『座』とでもいうべき世界へと還っていく。
 ペニスーツマンをその口に咥えたままに。
「……今宵はこれにて大往生……」
 そんな台詞を残しながら、ペニスーツマンはケツデカ課長と共に虚無の彼方へと消え去った。

☆☆☆

「……何とか……追い払えたんだね……」
 ペニスーツマンが放った宝具『咥え勃てよ、我が怒張(ブューチェ・ルチェケェ・モン・ペニス)』により、満身創痍となっているプリキュア達であるが、どうにか一命は取り留めていた。
「ペンギンちゃんはすごいだね! あんなに大っきくて強いフレンズを呼び出せるなんて!」
「おちんちんしゃぶらせてください(混乱)!」
 サーバルに話しかけられたケツデカピングーは、何やら混乱している様子であった。
「どーしたの? えっ、うそ!? かばんちゃんっ!?」
 怪訝に思ったサーバルが視線を向けると、ケツデカピングーの近くでは、かばんちゃんが苦しげな表情で蹲っていた。
「かばんちゃんっ! 大丈夫!? ケガしちゃったの!?」
「……うぅ……」
 サーバルが心配気に声をかけるが、苦しそうな呻き声が返ってくるのみであった。
「どうしたの!? おまたのあたりが痛いの?」
「……うぅ……お、おちんちんのあたりが……捻れるように、痛いんです……」
 股間を抑えて蹲るかばんちゃんが絞り出すような声で呟いた。
「ど、どうしよう……ペロペロすれば治るのかな……?」
「ちょっと、待ってくださいっ!」
 オロオロと狼狽えるサーバルに、キュアカスタードの姿から戻ったひまりが声をあげた。
「捻れるような痛みと言いましたね? もしかしたら、精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)かもしれません! 今すぐ救急車を呼びましょう!」
 博識なひまりによってかばんちゃんの病状は解明された。
 ペニスーツマンが最期に放った呪詛『我が精巣は捻れ狂う(テスティキュラー・トライズン)』。
 精巣捻転症を引き起こす呪詛は、ケツデカ課長のみならず、かばんちゃんにも影響を及ぼしていたのだ。
 すぐに駆け付ける救急車によってかばんちゃんは適切な処置を受けることができるだろう。
 精巣捻転を治療した後に、かばんちゃんとサーバルの旅は続く。
 キラキラ☆プリキュアアラモードとケツデカピングーの出会いを胸に秘めて、二人の旅はまだまだ続いていく。

 終わり。

ペニス―ツマン in アローラ 後編

 サカコは徐にスラックスのジッパーを下ろし、己の逸物をぼろんと出しながら宣言した。
「変身!」
 逸物から放たれる白濁とした閃光に包まれながら、その姿は異形へ変貌していく。
 身体には変化は見られず、依然きっちりとしたスーツが着込まれていた。
 しかしながら……その頭部が陰茎というか男性器というか亀の頭のような形状へ変化していたのである。
「我が名は哲学する男性器『ペニス―ツマン』……命をかけて、かかってこい!」
 突如出現した珍妙な姿形のモンスターを前に、幻と呼ばれるポケモンとも相対してきたミヅキ達でさえも息を飲んだ。
「うわわわっー!?」
「これは……ゾロアークの『イリージョン』のような幻惑効果か……いや、人間に『へんしん』していたとでもいうのか……?」
 ハウはただただ悲鳴を上げ、ククイ博士は何とか持ち前の知識で理解しようと試みている。
「……あの姿は……もしかして、お母様と同じ……」
 その異形は、リーリエの母親・ルザミーネが『ウツロイド』に寄生され融合した姿『マザービースト』を彷彿させた。
「これ以上の犠牲者を出さないためにも、わたし達でやっつける! アシレーヌ、『うたかたのアリア』!」
 顔を青くするリーリエを励ますように、ミヅキが力強くアシレーヌに指示を出す。
 アシレーヌは喉を震わせ歌唱し、水のバルーンの群れをペニスーツマンへ直撃させた。
……しかし
「インターネットでは冷静になったほうがいい」
 ペニスーツマンにはこうかはないみたいだ……。
「……どうしてっ!?」
「ガオガエン、『フレアドライブ』だ!」
「ジュナイパー、『リーフブレード』!」
 困惑するミヅキを援護するように、ハウとククイ博士がペニスーツマンへ追撃する。
 ガオガエンの炎を纏ったタックルとジュナイパーの葉っぱを束ねた剣がペニスーツマンへと叩き込まれる。
「カスが効かねえんだよ(無敵)」
 そのどちらも、こうかはなかった。
 驚愕に目を見開く三人だが、続けて指示を飛ばしていく。
「アシレーヌ、『ムーンフォース』で追撃!」
「ガオガエン、今度は『DDラリアット』で攻撃だ!」
「ジュナイパー、『かげぬい』を放て!」
 三種の技が直撃し粉塵が巻き起こるが、ペニスーツマンはポケットに手を突っ込みながら腰をカクカクと動かし挑発していた。
「頑張ってアシレーヌ、『ハイパーボイス』!」
「まだまだー、ガオガエン、『クロスチョップ』だ!」
「ジュナイパー、続けて『ブレイブバード』!」
「ファッ!?」
 声による振動波も十字に交差させた両手チョップも余裕をもって受け止めたペニスーツマンであったが、翼を折り畳み突撃するジュナイパーのひこう技『ブレイブバード』の直撃を受けた瞬間には、体をくの字に曲げながら吹き飛んでいた。
「『ブレイブバード』は通った……? ヌケニンの『ふしぎなまもり』のように、無力化できないタイプがあるということか!?」
 ポケモンの『わざ』の研究家であるククイ博士が分析を進める中、ミヅキが更なる追撃を加える。
「アシレーヌ、『サイコキネシス』!」
「ンアッー! 」
 アシレーヌが放った念動力波もまたペニスーツマンへ通じていた。
 甲高い叫び声を上げながら砂浜を転げ回るペニスーツマンを横目に、ククイ博士が一つの仮説を打ち立てる。
「みず、ほのお、くさ、フェアリー、あく、ゴースト、ノーマル、かくとうは効果がない……しかし、ひこうとエスパーの技は通じた……おそらくだが、ペニスーツマンは今までに戦った『キャプテン』や『しまキング』が得意とするタイプに耐性を身につけているはずだ」
 ククイ博士が唱えた仮説に、ミヅキとハウが困惑した様子で首を傾げる。
「えーと、どういうことー?」
「確かに、カヒリさんが襲撃されたとは聞いてないし、エスパータイプの『キャプテン』や『しまキング』はいないけど……」
「あとは、むし・どく・はがね・こおり・ドラゴンだね。ぼくの仮説が正しければ、これらのタイプの技であれば通用するはずだよ」
 思案顔で理解しようとするミヅキとハウへ、ククイ博士が補足した。
「だったらー、ガオガエン、『げきりん』!」
「ヒェッ!?」
 ドラゴンのオーラを纏ったガオガエンがペニスーツマンへと突貫する。
 情けない声を上げながら、ペニスーツマンは吹き飛ばされた。
「どうやら、仮説は正しいみたいだね?」
「私の『特性』を看破するとはお見事……しかし、その全てを理解している訳ではないようだ……」
 ペニスーツマンの不気味な呟きを振り切るように、三人は一気に勝負を決めにいった。
「アシレーヌ、『サイコキネシス』!」
「ガオガエン、そのまま『げきりん』だ!」
「ジュナイパー、『ブレイブバード』!」
 有効とされる三種のタイプの技を前に、ペニスーツマンは余裕の態度を崩さなかった。
「そんなんじゃ虫も殺せねぇぞォ!」
 しかし、こうかはないようだ……。
 先程の醜態が嘘のように、ペニスーツマンは平然と受け止める。
 その身体は、ヌラヌラとした透明な液体が太陽に反射し輝いていた。
「これぞ、我が『特性』……『カウパーバリア』! このペニスーツマンに同じ技は二度も通じぬっ!」
「馬鹿なっ!? たった一度でも技を受ければ、そのタイプに耐性を得てしまうとでもいうのか!? そんなデタラメな『特性』が存在するのか!?」
 ククイ博士が声を荒らげていた。
 ミヅキとハウも、その余りにも理不尽な能力を前に顔をしかめる。
「どうする……? 耐性を得てしまう前に、『いちげきひっさつ』で仕留めるしかしないか……? こおりタイプがまだ有効であるなら『ぜったいれいど』を当てれば……」
「『すなあらし』や『あられ』による天候効果によるダメージ……あとは『かたやぶり』や『いえき』等で『特性』自体を無力化するとか……?」
「でもー、おれ達のポケモン、そんな技覚えてないよー」
 ククイ博士とミヅキが何とか打開策を考えるも、ハウの指摘に閉口してしまう。
「さて……作戦会議は終わりましたかな? 今度はこちらからイキますぞ、『タネマシンガン(意味深)』!」
 ペニスーツマンの亀頭部から、子種(タネ)が連続して放射された。
「アォォン……!?」
「アシレーヌ!?」
 こうかはばつぐんだ!
『タネマシンガン』の弾幕を浴びたアシレーヌがビクビクと痙攣しながら大ダメージを受けた。
 悲痛な面持ちとなったミヅキが、やがて一つの決意をする。
「……リーリエ、お願いがあるの……」
「……ハッ!? はい、何でしょう?」
『どうみても精子です』と言いたげな表情で硬直していたリーリエが、ミヅキに声をかけられた事で我に返った。
「今からポケモンセンターに行って、1ぴきのポケモンを引き取ってきてほしいの……あいつに勝てるのは、もう『でんせつのポケモン』しかいないと思うから……」
 ミヅキの言葉の意図を察したリーリエが力強く頷いた。
「わかりました!『ほしぐもちゃん』ですね! 急いでとってきます!」
「お願い……それまでの時間は何とか稼いでみせる……!」
 ミヅキの宣言に続くように、ククイ博士とハウが複数のモンスターボールを取り出した。
ポケモンには様々な『わざ』があるんだ。どうにかしてみせるさ」
「がんばって時間かせぐからー、リーリエーもがんばってねー」
 ハウオリのビーチに砂塵が巻き起こる中、リーリエは走り出した。
 ミヅキ達とペニスーツマンの戦闘の激しさを背に感じながら、リーリエは懸命に駆けて行く。

☆☆☆

「フハハハハハハッッッ!『タネばくだん(意味深)』を喰らえ!」
「アマッ!?」
「そ……んな……」
 ペニスーツマンの笑い声が響き渡る。
 子種(タネ)の爆弾が炸裂し、長い美脚が特徴的なフルーツポケモン・アマージョは戦闘不能に追い込まれた。
 最後の手持ちポケモンを倒されたミヅキは……めのまえがまっくろになった。
「お待たせしました! 皆さん、大丈夫ですか!?」
 マスターボールを大事に抱えながら、リーリエがビーチへと戻ってきた。
 やがてリーリエは、白い砂浜に膝をつくミヅキと、同様の状態のハウとククイ博士の姿を目撃する。
「うそ……ハウさん……ククイ博士……ミヅキさんまで……」
 アローラ地方チャンピオン・ミヅキを筆頭に、彼女に匹敵する実力者であるククイ博士とハウが悉く敗れ去ったという事実にリーリエは驚愕する。
 そして、それ以上にリーリエは怒っていた。
「ひどいです! ひどすぎます! ポケモンさん達を必要以上に痛めつけて……それで、その、汚すなんて、ひどすぎる行為です!」
 ビーチに横たわるミヅキ達のポケモンは、どれも精液に塗れていたのである。
 それは、ポケモンバトルの領域を超えた陵辱的行為であるとリーリエは憤っていた。
 所謂『おこリーリエ』である。
「ならば、どうしますか?」
「こらしめてやります! 出てきて、『ほしぐもちゃん』っ!」
 たどたどしい挙動で、リーリエはマスターボールを投擲する。
「ラリオーナッ!!」
 太陽の使者として崇められし『でんせつのポケモン』が咆哮をあげながら降臨する。
 にちりんポケモンソルガレオ
 或いは『ほしぐもちゃん』。
 コスモッグの頃より、リーリエと共に冒険を繰り広げた仲間である。
「爆弾クンニリングス魔神、クサマンコ=ペロペロリーニョ様を信仰しなさい……!」
「ひぃっ!?」
 突如宗教めいたことを語り出したペニスーツマンにリーリエは悲鳴をあげてしまう。
 そんなリーリエを庇うように、ソルガレオは牙をむき出しに威嚇をした。
「……まっ、負けませんよ! ソルガレオさん、お願いしますっ!」
 リーリエの声に応じるように、ソルガレオは咆哮する。
 ソルガレオの額に紋章が浮かび上がり、その全身から太陽の如き閃光が放射される。
『ライジングフェーズ』と呼ばれし姿となったソルガレオが天高く跳躍した。
「射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。射精するぞ(みたせ)。
 大自然に満ちる精力よ、我が睾丸へ集え……!」
 呪文めいた言葉を囁くと、ペニスーツマンもまたその姿を変貌させていく。
 アローラの大自然の力がペニスーツマンの金玉に集い、身体中を駆け巡る!
「……こ、これはナッシーさん……? いえ、まさか……!?」
 その姿は、リーリエに『ナッシーアイランド』で遭遇した『アローラのすがた』のナッシーを彷彿させた。
 胴体部はそのままに、亀頭部にあたる部分が異常なまでに伸びたアンバランスな造形。
 それは、アローラの大自然の力が生んだペニスーツマンの『リージョンフォーム』とも呼べる姿であった。
「ほ、本で読んだことがあります……男性の陰茎は勃起時に数倍以上に膨張するものであると……おそらく、これがペニスーツマンさんがゼンリョクした姿……なのでしょう……!」
 よくわからない解釈をしたリーリエが、真正面からペニスーツマンを見据えた。
「こちらもゼンリョクで応えるとしましょう! ソルガレオさん、『メテオドライブ』!」
「喰らいなさい、『ハイメガザーメン砲』!」
 ソルガレオが太陽の輝きを纏いながら、天降る隕石の如く突貫した。
 対するペニスーツマンもまた、伸びきった亀頭部の先端より、精液の奔流を射精する。
メテオドライブ』と『ハイメガザーメン砲』。
 二つのゼンリョクがぶつかり合い、時空を揺るがす程の衝撃が大気を震わせた。
 白濁とした閃光に呑まれ、たちまちリーリエは意識を失った。

☆☆☆

「リーリエ! 目を覚ましてっ!」
「うぅ……ここは……?」
 ミヅキの呼びかけに、リーリエは朧げに意識を覚醒させていく。
「……お気に入りのお洋服が……ベトベトです……」
 身体に違和感があり見下ろしてみると、そこにはベトベトした白い液体がぶっかけられていた。
「ペニスーツマンが撒き散らした白い汚いの、『ネバネバネット』みたいにくっついてなかなか落ちないの! 本当にメイワクだよね。何なんだろう、コレ?」
 気落ちするリーリエに賛同するように、ミヅキが声を荒らげる。
 無論、リーリエは『本で読みましたがこれは精子です』と即答できたが、口が裂けても言えなかった。
「あの、それで、ペニスーツマンさんは……?」
「大丈夫っ! リーリエとソルガレオが、ちゃんとやっつけてくれたよ!」
 ペニスーツマンがいなくなったことを確認したリーリエはひとまず安堵した。
「『メテオドライブ』は『特性』を無視して攻撃できる『わざ』だから、ペニスーツマンに有効だったんだろうね。いい選択だったよ、リーリエ」
「リーリエー、かっこよかったよー!」
 ククイ博士とハウが、頑張ったリーリエへと賛辞の言葉を送る。
「よかったです……! 皆さんがご無事で、本当によかった……」
 リーリエは太陽のように微笑みながら、アローラに平穏を取り戻したことを心の底から喜んだ。

☆☆☆

 淡い光を放つ結晶に照らされる薄暗い世界。
 そこは『ウルトラスペース』と呼ばれる異世界であった。
「なんやこの旧態依然とした化石企業は。全トイレ逆流して下総国ウンコカーニバル勃発してくたばれや。ハナクソがよぉ!」
 いちゃもんめいた言葉を垂れ流しながら、ペニスーツマンは『ウルトラビースト』と呼ばれしポケモン達を追いかけまわしていた。
 ソルガレオの『メテオドライブ』は、副産物として『ウルトラホール』を開く効果を持っている。
メテオドライブ』の直撃を受けたペニスーツマンは、開かれた『ウルトラホール』に咄嗟に身を隠すことで危機を間逃れたのである。
 辿り着いた『ウルトラスペース』は、ペニスーツマンにとってハーレムも同然の楽園であった。
 虫の類に欲情するペニスーツマンは、特に2匹のウルトラビーストに目をつけた。
 筋肉を見せつけるぼうちょうポケモン・マッシブーンとフェロモンを撒き散らすえんびポケモン・フェローチェ。
 逃げ回るマッシブーンとフェローチェに狙いを定め、ペニスーツマンはローションを手に取り叫ぶ。
「『アクセルローション』!

 知らなかったのか? ペニスーツマンからは、逃げられないっ!」
 ローションによる摩擦を軽減したことより生まれる超スピードで、ペニスーツマンは異形のウルトラビーストを性奴隷(なかま)にするべく追い立てる。
 薄暗い『ウルトラスペース』に、嬌声とも悲鳴ともいえない鳴き声が響き渡った。